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この情報の最も新しい更新日は10月31日(金)です。

最精鋭 外部と遮断

金総書記の

  警護強化

護衛総局 第6局が担当

(産経 10月31日 朝刊)

[概要]韓国紙「中央日報」が30日に報じた韓国当局の分析によると、金総書記に対する身辺警護が強化され、外部からの接触が完全に遮断された状態であることが明らかになった。金総書記の警護は、護衛総局の中でも最も精鋭とされる「第6局」だけが担当している。

 韓国政府の高官は金総書記の症状に対して、「死去していないのは間違いない。だが、正常でないことも確かだ。現状では完全な回復は少し難しいとみられる」と語った。

 金総書記は8月14日に軍部隊の現地指導を行って以来、公の場から姿を消し、「顔なき統治」は30日で77日になった。これは94年に父親の金日成主席が死去して、喪に服した87日間のケースを除けば最長になった。

[コメント]金総書記の病気が当初報じられた「脳溢血」ならば、もし、回復症状が見られるのは1〜2週間後の早い段階ではないか。これほど長い時間が経過すると、脳機能は深刻なダメージを受けたことを証明しているのでは。これほど長期化すれば、経過が「良好」ということはあり得ないと思う。

 私の義母が8年前に「くも膜下出血」で倒れたことがある。1月2日の朝8時半頃に自宅で倒れ、救急車で運ばれた救急病院でくも膜下出血を告げられた。その時、脳外科の医師から「この病気は1/3が即死で、1/3が数日で死亡する。生き残った1/3にもマヒなどの深刻な後遺症が出る」と言われたことを覚えている。

 脳外科のベテラン医師が緊急に呼ばれ、正午過ぎから夜の8時頃まで手術が行われた。いわゆるクリップ手術というもので、脳の血管で穴のあいた部分をクリップで挟んで止血するのである。さらに脳内から首筋(内部)を通って横隔膜(腹部)までのパイプが通された。これは脳内圧力(出血)をパイプを通して横隔膜で抜き、異常圧力による脳のダメージを防ぐための処置と聞いた。

 この手術は大成功で、義母の意識は翌日に戻った。術後2日目には普通の会話ができた。心配した体のマヒもなく、ただ片方の聴力(耳)だけがなくなった。くも膜下出血だったという話しを信じてもらえないほどだった。退院後は一人でタクシーに乗って美容院に行き、デパートで買い物をして、一人で外食して帰宅することに支障がなかった。(そんな体調が7年間以上続いた)。

 だから金正日が発症直後に、回復したという韓国報道にはそれなりの説得力を感じていた。しかしこれほど長く金総書記の姿が見えないなら、脳が深刻なダメージを受けている可能性が高いと思う。

 すでに長男の金正男がパリに行き、堂々と脳外科の最高権威であるフランス人医師に治療を依頼するほどである。金正日の症状は隠し通せるほど甘くはないと思う。いくら金総書記の身辺を精鋭の第6局で固めても、外国人医師を通じて金正日の症状が外部に漏れることは隠せない。フランスの情報機関は昔から荒っぽいから、この医師の経理申告(税金)を徹底的に洗うと脅せば、医師から金正日の症状をフランス政府要人が知ることはたやすい。金正男はそのことを承知(権謀術数)でフランス人医師に治療を依頼している。

 いつも言うことだが、日本政府も”その時”に備えて緊急対応に備えるべきと思う。ついに米ソ冷戦で分断された最後の国家が消え去ろうとしている。

韓国、新計画策定へ

北朝鮮混乱に

  対応策 

米との調整が課題

 共同作戦計画 5029

(朝日 10月30日 朝刊)

[概要]韓国政府関係者によると、韓国政府は北朝鮮と戦争に至らないものの、北朝鮮国内が混乱する非常事態に備えた独自の対応策の検討に入ったことを明らかにした。北朝鮮からの難民、韓国人人質事件などの対処を検討し、省庁別のマニュアル化の作業を行う。これは9月に表面化した金総書記の健康悪化説が作業を後押ししている。

 対応策のうち北朝鮮難民への対応では、収容所や食糧、韓国では撲滅した伝染病ワクチンの確保などを目指す。また、盧武鉉前政権までの太陽政策で拡大した南北交流で、開城工業団地や金剛山観光地などにいる韓国人(常駐・1636人・29日現在)への対応策も検討する。

 今回の対応策には軍事的な措置は含まれないが、韓国は別途に米国との間で共同の軍事計画作りを進める。具体的には、両国が99年に基本的な想定と戦略方針を定めた概念計画「5029」を「実戦」に耐える作戦計画に格上げする。

 5029が想定する@大量破壊兵器(WMD)の管理不能 A大量難民の発生 B飢餓など人道問題の発生 C北朝鮮内での人質事件の発生 D内戦の発生ーーの5つのケースも見直す。ただ、5029が想定していた5件のケースは、約10年前のデータで、再検討すれば難民など数値が大きく変動する可能性がある。また、WMDの拡散阻止に強い意欲を示す米国との間で、政策の優先順位をめぐる調整などの課題が山積みしている。

 米国はテロ集団がWMDを奪った場合、軍事力行使を辞さないという考えを示している。これに対して韓国政府は、まず北朝鮮政府にWMD拡散阻止を求めるなど、可能な限り軍事力の行使を控えたい考えが強い。北朝鮮の非常事態は主に北朝鮮内で進行するので、状況把握が難しいという課題も抱えている。

[コメント]この記事でもふれているが、米韓軍には北朝鮮と戦争状態を想定した共同作戦計画「5027」がある。しかしすでに米韓軍と北朝鮮軍の全面戦争は想定自体が無理である。北朝鮮軍の旧式な兵器システム、原始的な通信・指揮・情報、貧弱な補給・兵站能力、訓練・演習の未熟と、どれをとっても北朝鮮軍は米韓軍とまともに戦える相手ではない。もう「作戦計画5027」は歴史の金庫にしまい込んでもいいと思う。

 そこで「作戦計画5029」を今の状況に合わせ、対応を整えておくことは必須の課題である。しかし北からの難民対策や緊急食糧支援など、すべて軍事力で対応することは限界がある。そこで韓国政府は民政部門で出来る範囲と能力の具体的な検討に入った。

 同じことは、日本でも検討すべきことである。日本政府は韓国政府の北朝鮮緊急支援計画について、日本の備蓄米(100万トン程度)の提供、日本に漂着した北朝鮮難民の韓国移送などを決めているという。この他にも感染症ワクチンの準備、難民一時収容所の設置、海上警備パトロールの実施、武装難民の武装解除など、日本でも明日にも起こる可能性の非常時への準備である。

 昨日の韓国紙「東亜日報」(29日付け)によれば、韓国政府は金総書記の容体が悪化したという情報を入手し、確認を急いでいるという。韓国政府関係者の話しとして、「26日に金総書記の身辺に深刻な問題が生じたとの情報が入り、関係当局が確認作業に追われている」と報じた。(この部分、産経新聞 10月30日 朝刊より)

 やはり中国が推測するように、末尾に9のつく年は大変動が起こり、来年の2009年に朝鮮半島で北朝鮮が消滅することになるのだろうか。 

米軍のシリア越境攻撃

対テロ特殊作戦か

シリア圧力の見方も

米当局者「作戦は成功」

シリア外相「テロ攻撃だ」

(読売 10月28日 朝刊)

[概要]シリア東部のイラク国境地帯アブカマルで26日に起きた戦闘は、テロリストのイラク侵入を阻止する米軍の特殊作戦の可能性が高いが、この時期にシリア攻撃を行った背景には、不透明な部分も残る。イラク政府報道官は27日、ロイター通信に「攻撃されたのはイラクを攻撃するテロリストの拠点だった」と語った。

 この攻撃は日没前に行われ、攻撃の事実を内外に示す米国の意図も感じ取れる。退陣前のブッシュ政権がシリアに軍事力を誇示し、アサド大統領がテロリストをかくまうのをやめるように圧力をかけたとの見方もある。

 しかしシリアは、属国扱いしてきた隣国レバノンと初めて外交関係を樹立、国際社会からの孤立状態を脱しつつある。今回の米軍の攻撃は、シリアの外交的な立場をむしろ強化したともいえ、アサド大統領は米次期政権をにらみ、対シリア政策の見直しを働きかけるとみられる。

 AFP通信によると、米当局者は27日、米軍によるシリア攻撃を認めた上で、「作戦は成功だった」と述べた。作戦の目的はシリアからイラクに流入するテロリストの一掃が目的との認識を示した。一方、シリアのムアッリム外相は27日、ロンドンで記者会見を行い、米軍のヘリがシリア領内に侵入し、民間人を殺害したとして、「国際法上のテロ攻撃だ」と強く非難した。米政府に対して、事実関係の調査と釈明を求めた。

[コメント]米軍ヘリから攻撃されたアブカマルの農場はイラク国境から8キロの場所にあるという。アブカマルはシリアからイラクに渡る武装勢力の越境拠点と知られている。(この部分 毎日新聞 10月27日付け 夕刊)。

 米軍の攻撃は4機のヘリが投入され、特殊部隊員を乗せた2機が着陸し、地上でも掃討作戦が実施された。米軍がシリアに越境攻撃をしたのは初めて。

 それでは米軍の特殊作戦(昼間)はどのように行われるのか。その基本形について説明すると、まずテロリストが潜むと推測される建物や施設に空から奇襲の空爆が行われる。使われる機体はF−15E戦闘機やF−18スーパーホーネット戦闘機などの精密誘導爆弾(威力が大きすぎる)ではなく、AC−130対地攻撃機やAH−64攻撃ヘリなどを使って対地攻撃が行われる。その間、上空には無人偵察機が旋回し、地上から打ち上げられる銃弾の発火位置(赤外線)を探知する。その場所にさらに上空のAC−130機の105ミリ砲や、AH−64のロケット弾が撃ち込まれる。

 次は敵の風上側に大量の煙幕弾が投下される。地上に降下し、特殊部隊員を降ろすヘリを煙幕で隠すためである。煙で視界を遮られたゲリラは、ヘリや特殊部隊員を銃撃することができない。こうして地上に散開した特殊部隊員は風上から風下の敵に向かって攻撃を行う。

 攻撃終了後は、再び、煙幕が張られ、特殊部隊員は風上に着陸したヘリで回収されて撤退する。その間、15分〜20分ぐらいの地上戦闘でテロリストの拠点(武器庫や弾薬庫)は完全に破壊される。米軍が射殺したゲリラは顔写真が撮られ、死体から指紋を採るぐらいの証拠は採取される。

 今回の米軍の特殊作戦は、シリアへの初の越境作戦だったという点と、明るい昼間に行われたことに特徴がある。明るい昼間に作戦が行われたので、戦闘の一部始終が米軍によってビデオ撮影され、特殊部隊員の養成教材として活用される。これはシリアからの非難(民間人を攻撃)に備えるためでもある。

 このように、日本の海自の特別警備隊が特殊部隊だといっても、米軍の特殊部隊と規模や実績と比較するには無理がある。お互いの違いを自覚することも大事なことである。

武装勢力と対話へ

パキスタン軍が

 対テロ方針転換

「武力だけでは永久に勝てぬ」

 −−掃討作戦司令官

(毎日 10月26日 朝刊)

[概要]パキスタン軍がアフガン国境付近で続けているイスラム武装勢力掃討作戦で、同軍が武力による掃討から「対話による解決」に方針転換を図っていることがわかった。これを受け、パキスタン国会も22日、対テロの見直しを政府に求める決議を全会一致で採択した。

 アフガンでもカルザイ政権が武装勢力タリバンとの対話路線を模索している。パキスタンが対話路線にかじを切れば、米国がこの地域で進める対テロ戦戦略は大きな転換を迫られることになる。

 パキスタン軍で掃討作戦を指揮するパシャ中将は議会上下院に対し、今月8日、極秘裏に国境地帯の軍事情勢の説明を開始。「武力だけでは永久に勝てない」として武装勢力と対話による政治解決が必要という結論を伝えた。武装勢力を封じ込めない理由を、住民が武装勢力を支持しているためと指摘した。アフガン政府がタリバンと対話路線に転換したことも、パキスタン軍が戦闘に固守する姿勢を転換させた。

 パキスタンは経済が極度に悪化し、債務不履行(デフォルト)に陥る可能性があるとして、国際通貨基金(IMF)に緊急融資を求めている。経済悪化の理由に、国際的なエネルギーや食糧の急騰のほか、対テロ戦争で国内治安が悪化し、外国からの資金が流出していることがある。

 一方、アフガンから米軍の越境攻撃は最近になって連日のように続き、地元民が武装勢力支援に転じる原因になっている。パキスタン側は治安改善のために、米軍に越境攻撃をやめる様に求めるという。地元メディアによるとパキスタン国内でも対テロ戦見直しを支持することが圧倒的。選挙で選ばれたザルダリ人民党政権は国会や世論を無視できないとみられる。

[コメント]パキスタンのこの変化も、アフガンのカルザイ政権がタリバンと対話路線に切り替えたのと同様に、この地域での戦闘に重大な変化を呼び起こすことになる。このような構造的ともいえる変化は、米大統領選で民主党のオバマ候補の優位が決定的になり、ブッシュ政権とは別の対テロ戦略が採られるという読みがあるからと思う。その点では、すでにブッシュ後の政情に向かって動き出している。

 ここで勘違いしてはいけないのは、アフガンとパキスタン両政府は、武装勢力でもタリバンとの和解は目指しても、外国人が多いアルカイダとは一線を引いている。たとえ地元部族でも、アルカイダを支援する者には容赦しない攻撃を行うと思う。またアメリカ軍のアルカイダ攻撃は容認するだろう。両政府の狙いは、タリバンとアルカイダを分離させることである。またアルカイダと辺境州の部族と切り離すことである。

 そうしてアフガン・パキスタン国境付近であぶりだしたアルカイダを、一気に殲滅するというのが、オバマ候補が演説した対テロ作戦の根幹である。その際、パキスタンは国土がアメリカの対テロ戦争の主戦場になることを避けるためには、自国民をアルカイダから分離させるしか方法はない。これはパキスタンの生き残り作戦なのである。

 そのようなパキスタンの姿勢(戦略)をアメリカが許すかという点だが、間違いなくオバマ新大統領は支持すると思う。そうしないとアメリカの対テロ戦争は終わらないからである。アメリカの金融危機も莫大な対テロ戦争の出費を止めることが緊急の課題になっている。

 アフガンとパキスタンがこのように舵を切りだすと、この地域の和平構築に向けた日本の支援はやるべきことが山ほどあるし、かつ、確実な効果(ハイリターン)が期待できる。具体的には、アルカイダの掃討が終われば、もはや辺境州などと呼ばないで、この地域の開発を国際社会(機関)に働きかけて支援するなどのことである。戦争よりも平和によって受ける恩恵がはるかに大きなことを住民に知ってもらうのだ。

安保不慣れな中曽根外相

「お粗末」答弁で

 参院外交委紛糾

アフガン掃討作戦は

  武力行使に当たらない

(毎日 10月24日 朝刊)

[概要]23日の参院外交防衛委員会で実質審議入りした新テロ対策特措法改正案は、安全保障に不慣れな中曽根弘文外相の憲法解釈に関する答弁で紛糾した。

 発端は米軍などのアフガン掃討作戦について、外相が「武力行使に当たらない」と明言したことで審議が中断した。今まで政府(外務省)の見解は、同作戦はアフガン政府が多国籍軍に治安維持を依頼した形で、国際法上は武力行使ではないが、日本憲法でいう武力行使は制約が多く、「慎重な検討が必要」と断定を避けてきた経緯がある。

 外相の答弁を受け、犬塚直史(民主党)が「(憲法の)武力行使でないなら、自衛隊をアフガン本土に出せるのか」と追求。あわてた政府は「憲法では武力行使に当たりうる」(河村建夫官房長官)などと釈明に追われた。

[コメント]この記事を読んで紛糾した理由が理解できず、2度、3度、読み直してやっと理解できた。そして中曽根外相が文教族で安保問題に不慣れで紛糾したのではなく、政府(外務省)の屁理屈的な解釈(軍事常識)に問題があると考えた。これでは勝手にねじ曲げられた憲法が可哀相である。

 今のアフガンのカルザイ政権は、アメリカがタリバン後を考えて作り出した傀儡政府である。まず誰でも理解できるこの認識が必要だ。傀儡政府が出来るまでのアフガン戦争(対タリバン)はアメリカ軍の武力行使で、傀儡政府が誕生した後はアフガン政府から依頼された治安維持活動で国際法上は武力行使ではないという”屁理屈”が問題である。外務省はこんな身勝手な屁理屈を述べて、国際的な同意を得られると思っているのか。その身勝手さを憲法のせいにして屁理屈をいう。

 これ以上に、外務省のいい加減さを証明できるものはないかも知れない。私が憲法改正を主張するのは、ここまでねじ曲げられた憲法解釈を正す時がきたと思うからだ。これで外務省はアフガン政府から治安活動を依頼されれば、自衛隊のアフガン派遣は出来るという解釈に切り替えようとしている。外務省はアフガンの治安活動は武力行使であるという認識を意図的に否定している。

 どうして日本はここまで安全保障政策をねじ曲げてきたのか。それは外務省が自衛隊の役割を米軍追随のための武装組織としか考えてこなかったからである。これから日本は自衛隊の平和的な国際貢献の時代を迎えることになる。もはや外務省の屁理屈は日本の安全保障に有害である。それを正すのは現憲法を改正するしかないまでに追い詰められた。

 護憲の人も憲法を壁に貼って、手を合わせて「平和、平和」と念じる時代ではない。憲法の精神を変えることなく改正し、憲法を平和大国のために活用する時代なのである。 

露、イラン、カタール

ガス版OPEC

  創設へ

世界埋蔵量6割、連携強化

(産経 10月23日 朝刊)

[概要]天然ガスの埋蔵量で世界1〜3位のロシア、イラン、カタールの3カ国は21日、石油輸出国機構(OPEC)と同様に、天然ガスの生産量や価格を調整するカルテルを形成することに合意した。3カ国埋蔵量が世界の6割を占め、さらに参加国が広がれば7割以上の埋蔵量を握る可能性がある。ガスを輸入に頼る欧州などが警戒を強めることは必至だ。

 3カ国は01年から存在する非公式組織「ガス輸出国フォーラム」(GECF)を常設組織に発展させることを念頭にしてきた。インターファックス通信は来月18日、モスクワで開かれる会合で何かの規約が採択される見通しと報じた。ロシアの国営天然ガス企業「ガスプロム」のミレル社長も、「ガス版OPEC」の表現は避けながら、3カ国が「ガスの探査、採掘、輸送、共同市場調査まで、価格を形成する過程の全体」について緊密に連携する考えを示している。

 天然ガスについてはパイプラインを通じた長期的な供給契約が主流で、「ガス版OPEC」の実効性を疑問視する見方がある。しかしカタールのように船舶で輸送可能な液化天然ガスによる供給が増え、中期的にはカルテロ組織が大きな影響力を持つとの見方が強い。

 ロシアは06年に、親欧米系政権が誕生した隣国のウクライナに、外交圧力を加えるためにガスの供給を停止したことがある。また、ロシアが結成を目指しているガスのカルテルをめぐっては、06年にNATOで機密文書が明らかになって以来、欧米諸国の強い警戒を招いている。

 欧米はロシアを回避する中央アジア産ガスのパイプライン敷設を模索するなどの経緯があり、天然ガス獲得をめぐる駆け引きはいっそう激しさを増しそうだ。

[コメント]「ガス輸出国フォーラム」(GECF)に参加している国はロシア、イラン、カタールを含む16カ国である。この会合が始まった01年には、ガス版OPECではないことを宣言していた。しかし今回のガスプロムのミレル社長の言葉は、欧州の各国では戦闘宣言のように聞こえたはずだ。心底震え上がるのではないか。

 ロシアの狙いは天然ガスの供給を調整して価格を上げ、その資金で新たな天然ガス田の開発を行うというガス田開発戦略がある。その成長とともに欧米のロシア依存度は高まっていく。また06年のウクライナのように、反露親欧的な国家にはガス供給を中断して外交圧力に使うこともやる。しかしロシアの石油や天然ガスは、宗教や共産主義のような思想ではない。このエネルギーを使って冷戦のような政治環境を作り出すことはできない。エネルギーの供給と需要を通じて互いが繋がっているだからだ。

 私が新冷戦という言葉を嫌うのは、このような世界のエネルギー構造が冷戦のような封じ込めや対立という構造で語ることができないからだ。これは軍事力の限界を越えている。世界は石油や天然ガスを送る側(産油国)と、エネルギーを受ける側(消費国)だけで動いていない。これからはパイプラインや石油(天然ガス運搬船)タンカーを破壊するテロリストや反グローバル化の過激派が存在する。

 そればかりではない。世界には宗教や民族、領土や帰属まで、冷戦思考では解決できない問題が山積みされている。私は来月の米大統領選で、マケイン候補では複雑化した世界情勢に対応できないと考えていた。オバマ候補が勝つことはほぼ間違いないが、アメリカは安易に対立を好まず、世界が和解する方向に進んでいくことを期待している。

海保、海賊への武器使用

「公海上の攻撃は

  合憲」

憲法9条が禁じる

「武力の行使」にあたらない

(朝日 10月22日 朝刊) 

[概要]政府は21日の閣議で、海上保安官が公海上で海賊など国籍不明の不審船に武器を使用することについて、「国籍がない船舶の場合、我が国法令上の犯罪を取り締まるための武器使用は、国際法上、問題となることはない。憲法9条が禁じる『武力の行使』にはあたらない」との答弁書を決定した。これは民主党の長島昭久衆院議員の質問主意書に対する答弁。

[コメント]01年に起きた東シナ海の不審船銃撃・自爆事件の時は、ウソでも不審船が中国の国旗を掲げたので、自爆した不審船に海保(※)が行った銃撃では、中国側のクレームが来るかと心配した。しかし不審船を逃走・追跡中に、海保(※)は中国・海上警察に問い合わせ、不審船が中国籍の漁船ではない旨の連絡(確認)を受けていた。

 それでも心配であったので、このHPで日本は水深100メートル前後に沈んでいる不審船を引き上げるように提言した。不審船の船内から武器や通信機が見つかれば、海保(※)が中国の漁船を銃撃したのではないことを証明できるからである。また、北朝鮮の関与を証明できるからである。

 今ではあの時の海保(※)の行動は、断固とした対応で不審船を取り締まったと称賛されているが、実は公海上で航海の自由を認めている国際法ギリギリの対応だった。あの不審船は日本の領海を侵してはいなかったからだ。

 今回の答弁書は、ソマリア沖の海賊やアデン湾の海賊に、海保が取り締まりのために武器を使用しても問題がないというお墨付きになる。海上自衛隊の交戦規定(ROE)よりも、はるかに柔軟に武器の使用が可能になった。海保はこれを機会に真剣にソマリア沖への派遣を検討して欲しい。

 また陸自(空自も?)はスーダン南部のPKO活動(10月4日の What New を参照)に部隊派遣を視野に入れて準備が始まると思う。これらは自衛隊、海上保安庁ともに、臨時新法(特措法)制定が必要がない国際貢献である。

 次の総選挙で民主党が衆議院の過半数を得て、衆参で与党になっても現実化できる自衛隊の国際貢献策であると思う。

 アフガンは国軍の規模拡大に日本が経済支援を行い、タリバンの資金源になっている麻薬(アヘン)撲滅に貢献する方法がある。タイやミャンマー南部にあった”黄金の三角地帯”を潰した同じ方法が使える。

※海保と書くところを、間違って海自と書いていました。読者の方からメールで厳しく誤字を指摘されました。あわてて訂正しました。すいませんでした。

中朝国境が大きく変化

中国、「統一朝鮮」

  にらむ

貿易拠点整備 急ピッチ

(読売 10月21日 朝刊)

[概要]中国が改革・開放政策を導入して30年がたった。中国東北部の吉林省、黒竜江省、遼寧省も大きく変化した。北朝鮮、ロシア、韓国を巻き込みながら、変ぼうする国境地帯や沿海部の最新事情を現場から報告する。(特集「変貌東北」 第1回目)

 中朝国境を流れる鴨緑江で、夜の闇に包まれる午後7時過ぎに、中国吉林省・長白朝鮮自治県の岸辺から、木とタイヤで作ったいかだに荷物を積んだ二人の男が、水深数十センチの川を対岸の北朝鮮両江道の恵山市に渡っていく。近くを散歩中の男は「中国の朝鮮族住民と北朝鮮兵士の密輸さ」とこともなげに話す。中国側からは食糧や服、家電、ガソリン、化学肥料が運ばれる。北朝鮮からは水産物や漢方薬材、鉱物、時にはニセ煙草などの違法商品が中国に運ばれる。中国の長白地区にはたいした産業がないから、地元の警察も見て見ぬふりをしている。

 しかしこの一帯が大きく変化しようとしている。9月8日、恵山市の対岸にある長白朝鮮自治県に地元政府などが5000万元(約7億5000万円)以上を投じて卸売りセンターを建設した。中朝国境で最大規模の商業センターがうたい文句だ。将来は中国と北朝鮮の自由に往来が出来る自由貿易区を設けたいと意気込んでいる。すでに同センターには国内業者100店舗が出店を決定している。「北朝鮮では密輸で儲けた金持ちが生まれている。北朝鮮は国境貿易で最後に残るフロンティア。リスクも大きいが、前途を信じる」(出店する中国人男性)。

 急ピッチでインフラ整備が進むのは、韓国マネーを呼び込むと同時に、「将来の『統一朝鮮』をにらんだ中国政府の戦略がある」(外交筋)とみられる。「統一朝鮮」出現後に朝鮮族を中国内につなぎ留めるため、国境地帯に「富」の集積地を作っておこうという狙いだ。

 金正日の健康悪化説はこの地域にも広く流れている。金総書記の病気次第で長白の将来が左右される。北朝鮮情勢が依然不透明なことが最大の懸念材料だ。

[コメント]私が初めて海外に出たのは27才の時だった。羽田空港から日航機で北極圏経由の北回りでパリに向かった。私のカメラバッグには3台のカメラがあった。そのうちの一台のニコンFMは質流れの中古を買って、”予備カメラ”兼”帰りの航空券”にするつもりだった。そのころヨーロッパに渡った若い貧乏旅行者の中には、パリの空港に着いた時に、両腕に10個の腕時計をしている者がいた。いずれもSEIKO製の中古品で、スペインやモロッコなどで売れば数ヶ月の旅費を稼ぐことが出来たからである。国境という線で商品を行き来させれば、それくらい稼ぐことは訳ないことだった。まあ規模は小さいが、これは密輸の醍醐味みたいなものだと思っている。

 そのような密輸を木とタイヤで作った筏(いかだ)ではなく、国境の拠点に自由交易センターを作って合法的に行えば、莫大な富を生む金の卵の養鶏場になる。北朝鮮は軽工業産業を発展させて、統一後の産業育成を図るだけが安定の方法だけではない。第1次産業と第2次産業を国境交易で交換させて富を得る方法もある。

 北朝鮮の閉鎖的な独裁政治さえ変化して、南北が統一して改革・開放すれば、中国東北部の発展に乗じる(貢献)ことができる。これは北朝鮮のチャンスだと思う。

 北朝鮮の独裁体制は、戦前の日本の天皇制を真似ている。日本人であれば、その独裁の終わらせ方も見つけることができるのではないか。一見、強固に見える北朝鮮の体制も、強固すぎて脆くなっているという指摘ができる。例えば、もし金正日の後継者に次男の正哲氏を担ぐグループが、警護の甘い中国滞在中の長男正男氏を暗殺すれば、北朝鮮の体制は一気に崩壊するような弱さである。

イスラエル軍

米がレーダー配備

 Xバンドレーダー

対イラン、単独行動防ぐ狙いも

(毎日 10月19日 朝刊)

[概要]米国がイスラエルへのイラン弾道ミサイル攻撃を想定して、イスラエル軍の防衛力向上を進めている。米欧のイランとの外交姿勢に不信感を抱き、イスラエルが単独でイラン武力行使に走らない歯止めのためだ。

 イスラエルの国営放送などによると、同国南部のネバティム空軍基地に先月下旬、米軍の早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」が配備された。Xバンドレーダーは約4700キロ離れた野球ボール大の物体を探知できるという。イスラエルとイランの距離は約1500キロ。イランの中距離弾道ミサイル「ハシャブ」は発射後11分でイスラエルに到達するが、Xバンドレーダーが発射直後に探知すれば、イスラエルの弾道迎撃ミサイル(神浦・・・アロー・対弾道ミサイル)で迎撃することが可能になる。

 このXバンドレーダーは米軍関係者が約120人が駐留して運用する。このためイスラエルには「軍の機密も筒抜けになる」との懸念が出ている。

 また米政府は先月末、開発中の次世代戦闘機(神浦・・・第5世代)のF−35戦闘機25機をイスラエルに売却する計画を承認した。F−35は燃料補給なしにイランまで飛行できるが、米国防総省はあくまで、「イスラエル軍の防衛力向上のため」と説明している。

 イスラエルはイラン核開発を核兵器保有のためと警戒。イスラエル政府高官は「イランは欧米との対話を隠れみのに着々と計画を進めている。国際社会の対イラン制裁は十分でない」と不満が根強い。フランスのクシュネル外相は今月、イスラエル紙にイランの核開発を阻止する上で対話の重要性を強調し、「まず『空爆』ありと考えない」とけん制した。英紙ガーディアンは先に、「ブッシュ米大統領が今春、イスラエルからの攻撃容認の要請を拒否した」と伝えている。

[コメント]イランのハシャブ弾道ミサイルは北朝鮮のノドンに酷似している。私の感じでは、イランのハシャブはノドンと同じ(改良型)と見ている。そしてイスラエルのネバティム空軍基地に配備されたXバンドレーダーは、日本の車力・空自基地(青森県)に配備されものと同型の移動式・Xバンド・早期警戒レーダーだ。

 しかしXバンドレーダーを首都エルサレム周辺やイスラエル北部の空軍基地に配備しないで、なぜ南部のネバティム空軍基地に配備したのか。それがイスラエル政府のいう軍事機密が隠されていることになる。というのは、イスラエル軍は国家存亡の危機を迎えると、核攻撃を行うことは暗黙の了解事項として知られている。その際、核施設で組み立てられた核爆弾は、ネバティム基地に運ばれ、攻撃機に搭載されて核爆撃に向かう。その核基地を米軍が防衛することで、イスラエル軍の核報復力を維持させて敵の核攻撃を抑止させる戦略なのだ。

 なぜネバティム基地が選ばれたかというと、基地の位置がイスラエル南部にあるからである。南部であればイランからの弾道ミサイルの到達をわずかに遅らせることができるからだ。だから、もしイランがイスラエルに核攻撃を行う場合、最初の攻撃目標は核搭載の攻撃機が飛び立つネバティム基地ということになる。これらのことが、イスラエル軍の核機密がバレルとイスラエル政府が懸念している。しかし核戦略の常識を知っていれば、難なく解ける機密なのである。

 ところで、北朝鮮と日本、イランとイスラエル、似たような軍事環境に直面してきた。違うと言えば、イスラエルはアメリカにイラク空爆など武力行使の承認を求め、日本はアメリカの攻撃力(報復力)に依存して6カ国協議で北朝鮮の脅威を取り除こうとしている点である。

 しかしイスラエルにF−35戦闘機の売却を承認したなら、日本のF−15戦闘機の後継であるFX(次期主力戦闘機)にF−35戦闘機選定の可能性が高まった。しかしF−35戦闘機は開発が終わったばかりで、米軍(空軍、海軍、海兵隊)に配備が行き渡るのはこれからである。日本の空自となるとかなり先のことになるのは必至である。それまではF−15戦闘機の改修でF−35を待つことになる。

 こんな平和な日本と、戦争が日常的なイスラエルと、アメリカは同じ軍事対応をしていることに違和感を持ってしまう。アメリカにとって北朝鮮の軍事的な脅威は、東アジアに在日米軍を維持して、自衛隊を米軍に貢献させるために必要なのかと考えてしまう。

首相、民主案に賛同

ソマリア沖に海自

”海賊対策”で検討

衆院テロ対策特別委で

 新法検討の意向

(朝日 10月18日 朝刊)

[概要]麻生首相は17日の衆院テロ対策特別委員会で、東アフリカのソマリア沖で横行している海賊対策のため、新法を検討することを明らかにした。首相は、ソマリア沖での海自の国際貢献を求めた長島昭久氏(民主党)らに対し、「海賊行為は新たな脅威になりつつある。法制上どういうものがあるか検討したい」と述べた。その上で、「一つの艦船が航行するだけで海賊行為の抑止力が働きうる。与野党で検討する用意は十分にある」と、野党側に協力を求めた。

 具体的には、▽海自艦船が対象海域を航行する商船を護衛 ▽哨戒機が海賊の動向を監視 ▽後方支援として他国の海賊対策船に給油ーーなどの案が検討課題になりそうだ。ソマリア沖周辺では、テロ対策としてすでに米国を中心とする多国籍軍が海上阻止活動実施。さらに6月の国連安保理の「ソマリア領海での海賊の取り締まりを認める決議」をうけて、欧州連合(EU)の有志国が海軍艦船を派遣する計画を立てている。

 問題は、海賊が単なる犯罪集団ではなく、反政府勢力などの場合、自衛隊の実力行使が憲法が禁じる「武力行使」に該当しかねないことだ。首相は「軍艦に向かって襲ってくる海賊船はあまり聞いたことがない」と述べるにとどまり、突っ込んだ議論を避けた。

 防衛省によると、ソマリア沖やアデン湾では、今年に入り未遂を含めて66件の海賊事件が発生している。4月には日本郵船の大型原油タンカー「高山」が襲撃を受け、8月にも日本企業が管理するタンカーが海賊に約20日間乗っ取られる事件が起きた。

[コメント]日本の世論調査で支持が低いインド洋における海自の給油活動に代わる案として、与野党合意の苦肉の策(代替え案)で海賊対策が出てきた印象を受ける。すなわち国際貢献を装う”逃げ道”としての海賊対策ではないか。それにこの記事が指摘しているように、海賊船でも反政府テロ集団と犯罪集団の区別が明確でない。もし反政府テロ集団の要員移送や武器運搬船の不審船なら海軍艦船が対応する軍事事案となるが、物取りや身代金目的の犯罪グループの海賊船なら日本では海上保安庁が対応する警察事案となる。

 EUの有志国が国連決議に基づいて海軍艦船を派遣するというのは、その程度でお茶を濁してアメリカからのアフガン派遣を断る理由にするためと思われる。しかし日本ほどの国力を持つ国がそれと同じでは国家の品格を落としてしまう。

 さらに付け加えれば、具体案として2番目にある”哨戒機のよる動向監視”は、現実的方法として不可能である。おそらく哨戒機活用の考えは、海自のP3Cによる北朝鮮の不審船監視の実績を参考にしていると思うが、P3C哨戒機では海賊船を特定できないのである。

 その理由は、海自が不審船を特定する方法を知ればわかる。まず北朝鮮の不審船は通信手段に短波無線機(アマチュア無線機を改造)を使っていた。この電波を防衛省・情報本部の出先機関である全国の通信監視所が傍受し、不審船の位置を特定していた。そこにP3Cが飛来して不審船の確認作業を行う。ソマリアの海賊船が単独で行動すれば無線交信を行わない可能性が高い。

 不審船の上空に飛来したP3Cは、上空から不審船の赤外線探査を行って船の機関が船体中央にあることを確認する。これは機関の熱源でわかるのである。不審船の船体後部には小型の作業船を内蔵しているため、船の機関を中央に配置するという特異な構造をしていた。だから上空から赤外線探査を行えば、北朝鮮の不審船と日本の漁船との区別が容易につく。しかし海賊船は漁船やプレジャー・ボートがそのまま使われ、P3Cが上空を飛行しても海賊船と漁船の区別はつきにくい。

 先週の土曜日、自転車で横浜に行った折、山下公園で「船乗りが撮った世界」という写真展をやっていた。その写真の1枚に、海賊対策というのがあった。それは貨物船のデッキに案山子(かかし)を立たせている写真だった。通常の貨物船の海賊対策は、まず見張りを厳重にして乗り込むスキを与えない。夜間は接近する小型船にサーチライトを当てるなどの威嚇を行う。そして小型船が接近してくれば、デッキから消防ホースの水を放水して威嚇(水没)させるーーなどが行われている。

 このように海自の装備と訓練、それに海自に求められてきた任務とは、ソマリア沖の海賊対策と違うような気がしないだろうか。自衛隊の国際貢献は”取りあえず”危なくない海自を派遣では、海自の任務ばかり拡大して過飽和になってしまう。最近の海自でおきた一連の不始末は、そのような海自への過剰な任務負担にも一因があると思う。

 とりあえず海自にお願いするーーーそんな政治家の思考に軍事知識の無さを感じた。日本の政治家に豊富な軍事知識を求めているわけではいが、せめて日本が目指す国家戦略の方向性を指し示して頂きたい。いつも軍事は泥縄式でその場しのぎであるように見えるのだが。

 そこで私は日本が平和大国を目指した国家戦略を構築することを提案している。もし日本がソマリア沖の海賊対策に参画するなら、それは海上保安庁の巡視船(外洋型)にお願いしたい。そして海保には海賊対策と並行して、周辺国で海洋警察の育成も期待したい。今は小さなタネでも将来は大きく育つ木を植えてほしいのだ。それが平和大国・日本が行う海賊対策であると信じている。

中国潜水艦2隻

米空母威嚇狙う

海自 東シナ海で探知

(産経 10月17日 朝刊)

[概要]中国の潜水艦が今月上旬、東シナ海に展開しているのを自衛隊が探知していた。潜水艦は2隻で、1隻は04年11月に日本領海を侵犯した同型の漢(ハン)級攻撃型原潜で、もう一隻は通常型(ディーゼル)潜水艦とされる。自衛隊がこれらの潜水艦を探知したのは日本の領海外で、領海侵犯などはしていない。

 この時期、米軍・横須賀基地(神奈川県)に配備されたばかりの米原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)が、韓国の釜山で行われる韓国海軍の祈念式典参加のために周辺海域を航行していた。海自は中国側の潜水艦がGWを待ち伏せして、GWのデータ収集や示威行動を行おうとしていると見て、P3C哨戒機などで監視飛行を強化していた。

 06年10月、通常型の宋級攻撃型潜水艦が沖縄沖で米空母キティホークを追尾し、約8キロの魚雷射程圏内で海上に浮上しており、「今回も同様のデモンストレーションを狙っていたのではないか」(防衛省幹部)と見ている。米軍は偵察衛星などで事前に潜水艦の動向を監視して把握しており、GWを迂回させて潜水艦に追尾させなかった。

 中国海軍は新型の建造などで潜水艦戦力の増強に伴い、潜水艦の活動を活発化させている。中国海軍にとって米空母は最大の敵で、新配備のGWの能力を強く警戒。今後もGWに継続的な軍事作戦を展開する可能性があり、海自は中国潜水艦の動向を注視するという。

[コメント]このように全国紙の1面に来るような潜水艦情報を、情報本部の1空佐ごときが新聞記者に話すと送検(起訴猶予)されて懲戒免職になる。しかし防衛省の幹部なら国民の知る権利に答えたことになるという実例である。

 さて今回はどうして海自が中国の潜水艦を探知したか。それを知るには敷設艦「むろと」(4,500トン)のことを抜きに語れない。「むろと」は1980年に竣工したというからもう28年も前の艦になる。今まで「むろと」の任務は潜水艦並みに秘密が徹底されてきた。ところが28年もたてば秘密厳守を命じる方に無理がある。敷設艦「むろと」の任務は海底に潜水艦探知の水中感応装置(ケーブル)を張り巡らすことである。

 すなわち潜水艦が通過しそうな海底に水中探知器(音、磁気)を張り巡らせて、潜水艦が通過すれば陸上の監視所に警報を出す。すでに同装置は昭和42年に津軽海峡に設置(聴音)され、47年には対馬海峡にも設置(聴音)されている。しかし初期のものは聴音器も大きい(直径4メートル、幅2,5メートルの円筒形)ものを海底ケーブルで繋ぐので、魚のぶつかる音や海流の音も拾って雑音が多かったと聞いた。しかし最新のものはケーブル(センサー埋め込み式)も細くて、聴音センサーに「チタン酸バリウム素子」を使って集音能力を上げ、その聴音データをデジタル化したために雑音を除去しやすく、水中で起こる温度差や塩分濃度差による音の屈折も修正できるという。

 東シナ海で活動する中国の潜水艦は敷設艦「むろと」が海底に張り巡らした潜水艦・探知センサーシステムから逃れることはできない。P3C哨戒機が潜水艦を追尾するのは、この海底センサーの警報を受けてからである。さらに護衛艦や対潜ヘリが潜水艦追跡に加わって、海自による国籍不明の潜水艦狩り(ASW)が行われる。

 そのような自衛隊からの対潜水艦・情報を受けて、米空母GWは日本の近海を自由に航行できるのである。このように米海軍が自衛隊に感謝することがあっても、インド洋の燃料給油を日本が中止したからといって米政府から罵られる筋合いはない。それは軍事を知らない外務省の論理である。

 ついでに言うと、この記事に書かれている米軍の偵察衛星から水中の潜水艦を探知・追跡できるシステムはまだ完成(稼働)していない。それによってGWが中国の潜水艦を迂回したというは、海自の「むろと」が海底に敷設した探知ケーブルのことを隠したつもりかも知れないが、あまりにも幼稚すぎて海自のことをバカにしたように聞こえる。

国境の遺跡

  2人死亡13人負傷

カンボジア、タイ

   銃撃戦

両国の関係が急速に険悪化

(毎日 10月16日 朝刊)

[概要]カンボジア・タイ国境にあるヒンズー寺院遺跡「プレアビヒア」近くで15日、両軍による銃撃戦が発生し、約1時間にわたって銃やロケット弾を撃ち合った。この戦闘でカンボジア兵士2人が死亡、6人が負傷し、タイ軍兵士7人が負傷した。カンボジア軍は国境を侵犯したタイ軍兵士10人を拘束したという。同地点では今月3日にも銃撃戦があり、兵士3人が負傷した。両国は互いに相手側が先に発砲したと非難し、両国の関係は急速に悪化している。

 プレアビヒア寺院遺跡付近は4,6平方キロにわたり国境線が未確定で、両国が領有権を主張して争っている。13日にカンボジア側がタイ兵士の「国境侵犯」を非難し撤退を要求すると、タイ側が拒否し、約80人だった兵士を500人に増強した。

 事態悪化の背景は、カンボジア側がタイの内政混乱に乗じて攻勢をかけ、優位に立とうとしたことがある。一方、タイ政府は国内の政治問題を国民の目からそらす材料になることもあり、真っ向から対決姿勢を打ち出した。

(写真は 産経新聞 10月16日付け 朝刊に掲載された拘束されたタイ軍兵士。左の迷彩服はカンボジア軍兵士 ロイター配信)

[コメント]総合的に新聞各紙の情報を整理すると、国境近くにあるプレアビヒア寺院遺跡にはタイ側からとカンボジア側から通じる参拝路の2本がある。そのうちのカンボジア側からの参拝路をタイ軍が封鎖(圧迫)した。そこでカンボジア政府が13日にタイ政府を強く非難するとともに、同地域からのタイ軍の撤退を求めた。タイ軍は14日夜に戦車30両と兵士500人を集結させて居座った。ついに15日午後2時過ぎに同地で戦闘(銃撃戦)が始まった。この銃撃戦でカンボジア軍に拘束されたタイ軍兵士は20名という情報もある。(タイ政府は拘束を否定した)

 この銃撃戦は国境紛争(領土問題)というよりも、タイ国内の政治情勢が強く反映している戦闘だと思う。まずタイ軍部には、カンボジア領内にカジノやホテルなどのビジネス利権をもつタクシン元首相(英国に亡命申請中)の影響下にあるといわれるソムチャイ現政権に対する強い不満がある。カンボジア政府が単独で行ったプレアビヒア寺院遺跡の世界遺産登録を、ソムチャイ政権が容認したことに怒っている。実はタイにおけるプレアビヒア寺院遺跡の観光利権はタイの軍部が握っているからだ。

 そこでタイの軍部は”タイの領土を売るな”とタイ国民のナショナリズムに訴えた。ちなみにタイ軍部は独自の商業テレビ局を持っている。しかしナショナリズムの本音はプレアビヒア寺院遺跡・観光利権の確保である。そのあたりの事情はタイやカンボジアの人なら誰でも知っている。

 そんなタイ軍のために働くのが、迷彩服のかわりに黒い戦闘服を着たタイの国境警備隊(Thahan Phran タハン・フラン)だ。これは志願制の準軍隊で非正規戦を担う任務を持っている。兵員数は約2万人規模(ミリタリーバランス 06より)である。本日付の産経新聞に掲載されたカンボジア軍につかまったタイ軍兵士の写真(上)が彼らである。タイ政府がタイ軍の兵士が拘束されたことはないというのはタハン・フランがタイ軍の正規軍でないからである。まあ、はっきり言えば、タハン・フランはタイ軍の使い捨て兵士なのである。タイ軍の将軍たちの利権を守るために、たとえタイ軍の下級兵士でも利権のために死ねとは言えないからだ。

 増強されたタイ軍の戦車30両と兵士500人は、戦闘に投入されたというよりも、この銃撃戦が拡大したり飛び火しないための措置である。もし戦車30両と500人が攻撃を始めれば、戦死者2名、負傷者6名では済まない。

 昔は、タイ国内の浮浪者や犯罪者など、かなり悪質な者がタハン・フランに送り込まれたた。タイとカンボジアやミャンマー国境で野営しながら24時間警備という過酷な環境には、彼らのような者に銃と賃金を与えて警備する必要があった。だから彼らもタイ軍に面倒を見て貰っている手前、軍に命じられれば逆らえない事情がある。

 90年代の初め、タイ軍(情報部)の案内でカンボジア北西部のポル・ポト派支配地域を取材で訪れれる時、ジャングルの中の掘っ立て小屋で暮らし、未舗装で車一台がやっと通れる国境のチャックポイント(けものみち)を警備する黒服の男たちを度々目撃した。タイ軍の護衛がなければ絶対に一人で通過したいとは思わない雰囲気だった。

 そのような事情を知らなければ、プレアビヒア寺院遺跡をめぐるタイ軍とカンボジア軍の銃撃戦の真相を知ることは難しい。この地域のカンボジア軍は元々ポル・ポト派兵士で、昔はポル・ポト派兵士とタハン・フランの関係は良好だった。タイからカンボジアのプノンペン(首都)やホーチミン市(ベトナム)への密輸品の通行料を山分けしたからだ。

特別警備隊

 養成課程  3曹(25)死亡

格闘訓練、

 隊員15人が発案

集団暴行の可能性

(読売 10月15日 朝刊)

[概要]海自の第一術科学校(広島県江田島市)の「特別警備隊」養成課程で、9月9日、他の隊員との格闘訓練中に起きた事故で、3曹が死亡(25日)した事故は、格闘訓練を実施した隊員たちが発案して実施したことがわかった。使用するマウスピースも隊員たちが自分で準備してことが判明。この事故は格闘訓練の名を借りた集団暴行の可能性がでてきた。

 海自によれば、死亡した3曹は9月11日付けで同過程を辞め、別の部隊(神浦・・・原隊の潜水艦)への異動が決まっていた。9日は同課程の最終日で、同課程に在籍する他の隊員15人は、自分たちで格闘訓練を行うことを決め、準備を進めた。しかし死亡した3曹が、一人50秒間、15人連続して格闘する厳しい訓練を認識していたかわからないという。

 同課程では今年5月にも、途中で辞める隊員に、16人が同様の格闘訓練を行い、辞める隊員が歯を折るケガを負ったが、この時は教官がこの格闘訓練を提案していた。このため事故調では、隊員から訓練を発案した経緯について聞き取り調査している。

[コメント]海自の”特別警備隊”養成課程は全部で2年間と聞いている。今回は今年3月に入校して 9月に終了する養成訓練・基礎コース(6か月)なのだろうか。そうであれば、全課程卒業(終了)前に行われる最終想定(実戦形式の訓練)に続く最初の第1段階だろう。第1段階では、新しく養成課程に入ってきた者の体力錬成など、基礎的な訓練が主体となる。ひと言で言えば、激しい運動で無駄な脂肪や筋肉を落とし、これからの厳しい訓練に耐える体(からだ)と気力を作る基礎段階だ。養成コースの隊員にとっては、精神的にも肉体的にも、一番きつい(地獄の)時期でもある。MP5サブ・マシンガンをバリバリぶっ放したり、ヘリからファースト・ロープで船の甲板に降下するのは、まだまだ先の訓練である。

 ところで、この記事の言いたいことだが、今回の訓練(事故)は隊員が勝手に行ったもので、教官が命じたものではないから、教官の責任は軽減すると言いたいのだろうか。この記事を読んで、教官が記者に弁解(説明)して、事故の責任逃れをしているような後味の悪いものを感じる。5月に辞めていった隊員に対して、教官が1対16の格闘訓練を命ずれば、同じように次ぎに辞めていく3曹に対し、隊員たちが自主的に連続格闘訓練を行うのは常識である。この世界(軍隊)では、そのように部下が気を回す(目先が利いて)ことが重要視されるのだ。この記事は責任論という問題で、教官が逃げ出そうとしているように感じてならない。

 上官は部下を思いやる心がなくては繋がらない。兵士は友を思いやる心がなくては戦えない。この記事を読んでこの教官のあり様が情けなくなった。同紙の1面にある「編集手帳」に私と同じ気持ちが書かれていた。

>>以下、引用>>

 昔、江田島の海軍兵学校で部外の講師を招いて講演の最中、生徒の一人がおならをした。教官が「今、屁をした者、出てこい」というと、5人の生徒が名乗り出たという。これには「部外者の先生がひどく感心した」と作家の阿川弘之さんが「海軍こぼれ話」(光人社)に書いている。場所も同じ、海の安全保障を担う志も同じでありながら、友を守るためならば身を捨てるのもいとわない高潔な伝統精神はどこに消えたのだろうか。

>>引用おわり>>

 今回の事件を指して、”旧海軍の「しごき」が復活してきたのでは”という見方がある。私の見方は逆で、”海自は米海軍を見過ぎて旧海軍の良き伝統が失われた”と考えている。

特別警備隊

海自訓練で

  隊員死亡

集団暴行が常態化か

(産経 10月13日 朝刊)

[概要]海自の特殊部隊「特別警備隊」の隊員を養成する第1術科学校(広島県江田島市)の特別警備過程で9月、同過程を中途でやめ、潜水艦部隊への移動を控えた男性3等海曹(25)が、1人で 隊員15人相手の格闘訓練をやらされ、頭を強打して約2週間後に死亡していたことが12日にわかった。

 関係者によると、9月9日午後、「徒手格闘」の訓練が行われ、3曹一人に対して、15人の隊員が次々と交替しながら50秒間ずつ格闘した。午後4時55分頃、3曹は14人目の相手からアゴにパンチを受け、意識不明に。江田島の病院に搬送後、呉市内の病院に転送された。意識が戻らず、9月25日に死亡。死亡解剖の結果、死因は急性硬膜下血腫だった。

 教官らは3曹の遺族に、「(異動の)はなむけのつもりだった」と説明しており、同過程を途中でやめる隊員に対し、訓練名目での集団暴行が常態化していた疑いがある。海自警務隊は傷害致死容疑などで教官や隊員から詳しく事情を聞いている。

 7月にも別の隊員が、異動直前の格闘訓練で隊員16人の相手させられ、歯を折るなど負傷していたことが判明している。

 海自の特別警備隊(特警隊)は99年3月の北朝鮮・不審船事件をきっかけに、01年3月に自衛隊初の特殊部隊として江田島に隊員70人で新設された。主な任務は海上警備行動の発令時に、不審船の武装解除を担当する。秘匿性が高く、海自は活動実態を明らかにしていない。特警隊の隊員は第1術科学校の「特別警備過程」で養成される。

[コメント]これは正常な訓練ではない。15人の学生が一列にならび、教官が吹く笛に従い、前に立つ3曹に対して50秒間ほど組み手を行う。教官が50秒後に笛を吹けば、次は2番目の学生が飛び出して組み手を交替する。これを連続させれば、一人で受ける3曹はフラフラになり、呼吸も意識も乱れるほどに疲労する。それでも襲いかかる学生は教官の手前、手を抜くことが出来ないで、ケリやツキを連発して3曹を全力で攻撃する。

 このような格闘訓練は養成課程を修了し、ある程度部隊で経験を積み、特殊格闘にも慣熟した教官クラスが学生相手に展示で行うようなものである。養成課程の徒手格闘程度なら、1対1、良くて1対2で十分で、むしろ突く、蹴る、払う、投げる、かわす、刺す、締めるなどの基本動作を繰り返し教えるべきだ。

 途中でやめて行く者に対して、15人相手の組み手をやったと聞いて、相撲の「かわいがり」とかわらないと思った。悪質なイジメであり、訓練を指導した教官の過失致死罪の適応はしかたないと思う。

 実は海自の特警隊((SBU)は秘密部隊である。現在の編制、個人装備、指揮系統はすべて非公開となっている。昨年(07年)の6月28日に宮島付近で初めてマスコミに公開されたが、隊員は黒マスクをつけて顔を隠した。その点では陸自の特殊作戦群に位置づけは近い。

 しかし訓練は厳しく、精鋭といわれても、実出動する機会は皆無で、自分たちのことを話すことも出来ない。その上、わずか70人の小部隊である。極めて風通しが悪い組織になっている。いつかはこんな陰湿な事件が起こる可能性が高い組織だった。

 特警隊からこのような陰湿な事件の再発を防ぐ方法は2つである。ひとつは透明性をあげること。今さら特警隊が秘密・秘密といったところで、それで抑止効果が高まることは少ない。むしろ部隊を周知させて、国から適正な予算を得て、装備や訓練の高度化を図る方が重要であると思う。ふたつめは、米海軍のSEALを真似てもSEALにはなれない。求められる作戦レベルが違いすぎる。そこで特警隊の半分ぐらいを陸自の第一空挺団と要員交換するのである。これからは特警隊であっても高々度自由降下から海中に降りて、潜水具を使って水中から敵地に秘密潜入する訓練も必要になる。

 統幕に特殊作戦部をつくり、共同運用するぐらいの改革は必要だ。それにしてもまた海自か。海自は過飽和の任務を受けて、組織全体が歪(ゆが)みはじめたように見えてくる。

3連休のため

本日、更新休止

掃除、買い物、運動、夕食

(10月13日 体育の日)

  昨日の午前中は、朝から快晴で、気温も18度程度でした。「よし、自転車で横浜に行こう」と思いついたのは午前10時頃でした。服を着替え、タイヤの空気を点検し、自宅出発は10時20分でした。築地市場の横を抜け、品川水族館から大田区を通って多摩川を渡るのに1時間はかかりませんでした。

 休日ですから、主要道路はガラガラです。幅の広い歩道が両側に広がっています。川崎から横浜までは快調に飛ばしました。横浜の”みなとミライ”に着いたのは12時頃です。約1時間半しかかかっていません。都心から横浜まで意外と近かった。

 それから中華街に急行して、ジャンボ・肉まん(500円)にかぶりつきました。中華街は連休と昼食時の観光客であふれ、自転車を押して歩くこともできません。山下公園までいって「船乗りが撮った」野外写真展を見ました。この写真展はよかった。それから山下公園を1時間ばかりウロウロして、午後2時になったので帰るために横浜出発です。

 帰路はわざと道を間違えたりして、自宅到着は午後4時10分でした。走行したのは往復70〜80キロぐらいと思います。帰宅すると心地よい疲労感でした。それから驚いたのは、私が食べたのはジャンボ肉まん1個と缶ジュース1本ですから、自転車とはいえ人間の体はエネルギー効率がよくできていますね。

 本日は、これから書斎の掃除をして、秋、冬ものの上着を買いにいきます。午後は2時間ほどウォーキング(速歩)で14キロ(2万歩)を目標に河川敷を歩きます。それからカミさんとおばあちゃんが入院している病院で落ち合って夕食の買い物です。昨夜は外食で焼き肉(子供のリクエスト)でしたから、今夜は野菜たっぷりの焼きビーフンなんかがいいですね。

6者協議優先へ譲歩

米、北朝鮮への

  テロ指定解除

核検証、深刻施設のみ

(朝日 10月12日 朝刊)

[概要]米国務省のマコーマック報道官は11日午前、緊急記者会見を開き、北朝鮮に対するテロ支援国家を解除したことを発表した。6者協議の枠組み維持を最優先した米政府が譲歩し、北朝鮮が申告した施設に限った検証計画を受け入れ、見返りにテロ指定解除を決めた。

 米政府は北朝鮮が指定解除の遅れに反発して寧辺の核施設復旧を始めたことに危機感を強め、検証合意と指定解除の実現を急いでいた。北朝鮮が実際に施設再稼働に踏み切れば、これまで通りに6者協議を続けることが困難になるとの懸念があったためだ。

 北朝鮮はテロ支援国指定を米国の「敵視政策」の象徴ととらえ、解除を強く求めていた。これで一部の経済制裁はなくなり、米朝関係正常化の大きな障害が取り除かれた。しかし北朝鮮には核実験や人権問題などをめぐる多くの制裁が引き続き課されており、制裁解除でも実際的な影響はほとんどないと思われる。

 ただ、拉致問題を抱える日本政府や被害者の家族にとっては衝撃といえる。マコーマック報道官は会見の冒頭で、「米政府は拉致問題に関する日本の立場を心から支持する」と強調。北朝鮮に対して日本の懸念に対処するように強く求める、とした。

[コメント]北朝鮮がアメリカを軍事力で脅す方法がひとつだけある。38度線の軍事境界線近くの地下施設で、盛んに軍の車を移動させたり、軍用無線機で通話し、活発な軍事活動が行われていることを見せるのである。普段は閉鎖してある地下陣地の入口の数カ所を開け、中の野砲やロケット砲を動かしてみる。在韓米軍は偵察活動でそのような動きを捉えて、奇襲攻撃の前兆かと震え上がるだろう。これが北朝鮮軍の生物・化学兵器による恫喝である。

 核実験場でケーブル(通信線)を積み上げたり、草や廃材を燃やして煙を出したり、寧辺の核施設で蒸気を発生させたり、ミサイル実験場で人や車を動かしてみる。そんなことは”ゴッゴ”で脅すという幼稚な方法である。ゴッコとは戦争ごっこやプロレスゴッコのゴッコである。そんなことはアメリカや韓国は十分に理解して、騙されたフリをしているだけだ。本当に怖い北朝鮮の生物・化学兵器が配備され、在韓米軍や韓国軍がどのような部隊や兵器を使っても、発射前に壊滅させることができないからだ。

 数日前の新聞で、在韓米軍の司令官が、「北朝鮮が小型核弾頭を保有しているとして対応している」と述べていたが、あの小型核弾頭は生物・化学兵器を弾頭に搭載した兵器のことであると思う。軍事常識に従うなら、アメリカ軍が北朝鮮の小型核弾頭に対応するのは、アメリカは韓国に小型核弾頭を持ち込んで対抗するという意味(核抑止力)になる。しかし米軍が艦船や航空機でも、韓国や日本に核兵器を持ち込むことは禁止されている。在韓米軍の司令官は、小型核兵器とは生物・化学兵器という大量破壊兵器のことを比喩して話した。そのように理解すべきなのだ。

 やはり今回のテロ指定解除は、アメリカの緊急避難的な対応だと思う。北朝鮮が金正日の様態悪化で暴走し出し、軍事境界線近くの地下陣地に配備されている大量の生物・化学弾頭が、ソウルや在韓米軍の頭上に誤射されないためである。

朝鮮労働党63周年

金総書記談話

  肉声なし

動静注目

(産経 10月11日 朝刊)

[概要]北朝鮮は10日、朝鮮労働党創建63周年を迎えた。健康悪化説が流れる金総書記が記念行事のマスゲームを観覧するか注目されていたが、会場に姿を現したとの情報はない。国営の朝鮮中央放送と平壌放送は10日午後9時、金総書記が5日に寄せた談話を、アナウンサーが50分間読み上げて放送した。

 金総書記は今月4日、北朝鮮メディアが51日ぶりに「金総書記がサッカー観戦をした」と動静を報じた。その後、中朝国交正常化59周年(6日)、党総書記推戴(すいたい)11周年(8日)と記念日が続いたが、動静は伝えられていない。以前は、動静が長く途絶えた末に金総書記が姿を見せると、すぐにその後の動静報道が続いていた。

[コメント]北朝鮮のメディアが今月5日、写真も映像もない「サッカー観戦」の報道が、逆に健康不安説を高めたことで謀略放送がとれなくなった。それなら誰もが、影武者を使わないのかと考えるだろう。しかし最新のハイテクでは、顔認証技術が格段に進歩し、影武者を使ってもテレビ画像で容易に見抜くことができる。

 先日、東京ビッグサイトで行われた「危機管理産業展2008」で、私が最も関心があったのは画像認識の関連商品と、現在開発中の画像認識の新技術である。画像認識といっても、混雑した街角に備えられた防犯カメラが指名手配の犯人の顔をヒットするものから、宇宙から撮影した偵察画像などから地上の細かい様子を探るものまである。

 街角の防犯カメラで怪しい人相を識別するハイテク技術は、すでに難解な段階ではなく、逆に高性能になりすぎてプライバシー保護の点から設置が難しくなったと聞いた。

 以前、北朝鮮の偵察ヘリが同型の韓国軍の偵察ヘリに偽装し、特殊部隊の奇襲用に使われる可能性があるという指摘に、現在は軍用ヘリと携帯式対空ミサイルについたIFF(敵味方識別装置)で瞬時にチャックするので、韓国軍ヘリに偽装しても北朝鮮軍のヘリは撃墜される書いたことがある。

 また北朝鮮軍の特殊部隊が偽装した漁船などに乗って韓国に秘密潜入し、韓国軍兵士の戦闘服や銃を持った武装工作員が暗躍するという話しには、現在は非接触認証カードがあるから韓国軍に偽装することは出来ないと指摘した。非接触認識カードとは、あらかじめ韓国軍兵士にICチップを組み込んだ個人カードを配布し、路上などを通過する時に自動的に個人を認証するカードだ。いくら韓国軍の姿にそっくりでも、このカードを持たないとすぐに偽装したニセ兵士と見破ってしまう。本物の韓国軍兵士は、数日おきに部隊でチェックし、カードの応答システムを変更して奪取を防ぐ措置をとる。(これを応用したものに非接触定期券がある。服のポケットやカバンに定期券を入れまま、改札口を通過できる)

 今の軍用のハイテクはそのようなことを可能にするのだ。金正日の影武者が現れれば、テレビ画像でも瞬時に見破ってしまう。人骨を二度火葬にすれば、DNA(横田めぐみさんの)は取れないと判断するような北朝鮮には理解できないことかもしれない。

アフガン政府、掃討路線転換

タリバンとの

 対話模索

米も交渉排除せず

(読売 10月10日 朝刊)

[概要]治安状況に改善の兆しが見えないアフガンで、同国政府や駐留外国軍が旧支配戦力タリバンとの交渉で、事態打開を模索し始めた。アフガンのカルザイ大統領は9月末に、首都カブールで記者団に「私は数日前、『親愛なる兄弟よ、同胞の殺害をやめ、平和のために尽くしてほしい』と、タリバンの最高指導者オマル師に呼びかけた」と語った。

 同時に、過去2年間にわたり、タリバンに影響力を持つサウジのアブドラ国王に書面などで交渉の仲介を依頼していることを明らかにした。オマル師の側近だったザイーフ元駐パキスタン大使が8日、AFP通信に語ったところでは、国王の仲介で9月下旬、タリバンの代表者とアフガン政府関係者がメッカで夕食をともにしたという。政府側代表としてザイーフ氏やカルザイ大統領の兄も出席した模様だ。

 アフガンの外国軍が相次いで増派をして掃討作戦に力を入れたが、武力による治安回復の見通しが立たず、今年になってタリバンのテロや破壊を活発化させている。「我々はこの戦争に(軍事的に)勝てない」(マーク・カーレントンスミス駐アフガン英軍司令官)というほど戦況が悪化している。現地の国連支援団も和平には政治的な交渉の必要性を強調するようになった。

 しかし01年のタリバン政権崩壊までは、オマル師らの下で一体性を保持してきたが、敗走後は小グループに分散し、それぞれ別の野戦司令官が率いているのが実態。アフガンとパキスタンの国境付近に潜伏中と思われるオマル師の生死も不明だ。このため、タリバンの一部が交渉のテーブルについても、タリバン全体の活動を止めるのは不可能との見方が強い。

 イラクやアフガンを管轄する米中央軍のデビッド・ペトレイアス次期司令官は8日、ワシントンの政策研究機関ヘリテージ財団で講演し、アフガンでタリバンの一部のグループとの交渉を排除しない姿勢を明らかにした。これは今までアメリカがアフガンで行ってきた掃討作戦の路線変更を示唆させるものとして注目されそうだ。ペトレイアス氏は講演で、イラクでスンニ派部族と米軍が共闘してアルカイダを掃討した例を上げ、アフガンでも和解に応じる武装勢力を通じてタリバンの強硬派を孤立させれば、武力衝突を減少させることは可能と語った。ペトレイアス氏は9月までイラク駐留米軍司令官を務め、今月中に中央軍司令官に就任する。

[コメント]この記事は、先日、このコーナーで取り上げた、2段下(8日)の「タリバンと和解交渉」の関連記事である。8日の毎日の記事と違う点は、ペトレイアス次期司令官がタリバンを交渉に応じる勢力と、あくまで武装闘争を主張するグループに分離し、和平交渉を行うことを示唆したことである。和平交渉に応じた勢力には、政治勢力としてアフガン政府に加わることを認め、麻薬密売とは別な政治資金を提供するという意味だ。その次ぎにアルカイダと強硬派タリバンとを分離させることを考えている。これは政治的手段と軍事的手段を併用する掃討作戦で、あくまで非正規戦における効果的な軍事作戦のひとつである。

 またオマル師の生死であるが、オマル師は生存していることは間違いない。タリバンに影響力のあるサウジの国王がオマル師とアフガン政府を仲介し、カルザイ大統領がオマル師に呼びかけ、オマル師に和平の手紙を送り、米中央軍の次期司令官までオマル師影響下にあるタリバンとの和平を認める発言をしている。そこまでオマル師に呼びかけることは、オマル師が生存しているという情報を得ているからだと思う。

 もしオマル師がすでに死んでいれば、タリバンの強硬派はオマル師死亡を公表して、この和平案に対抗するしかない。また強硬派のタリバンもパキスタンという策源地を失えば、今までのようにアフガンでの戦闘を継続することは難しい。さらに闘争資金になっている麻薬取引(密売)まで潰されると、さらにアフガンで闘争を続けることは難しくなる。

 この程度の作戦は、軍事力を最高・最強の政治手段と考えない日本人がもっとも得意とする分野である。NATO軍のISAFのように、軍事力と民間援助団体のNPOを組み合わせた復興支援と治安回復を兼ねた作戦とは明らかに違う。あくまで、まずタリバンの穏健派と強硬派、次ぎにタリバンとアルカイダを分離させ、同時にタリバンの麻薬密売を買い占めて、軍事力には密輸ルートを破壊して断ち切る掃討作戦である。

 これなら日本人が頭(知恵)を出して対テロ戦争に協力することはできる。インド洋の給油活動しか思いつかない日本の政治家や官僚にかわり、このような新しい軍事思考で日本の国際貢献ができる方法を考えるべきと思う。本気で日本に本格的な軍事知識を普及させることの重要性を感じる。そうでなければ、これからの自衛隊がかわいそうである。

政権の鬼門クリア

給油支援延長へ

解散ありき 民公譲歩

(朝日 10月9日 朝刊)

[概要]早期解散の環境を整えようと、民主党が重要法案の採決に次々と応じる在庫一掃作戦」に打って出た。公明党も支持母体が総選挙に向けて走り出しているとして民主党に同調。景気減速への懸念が広がっても、民主党は早期解散圧力をかけ続け続ける考えだ。審議3日間で補正予算案の衆院採決に応じ、補給支援特措法案改正案は反対ながら早期採決を容認する方針を固めた。

 公明党は福田政権末期には、「本当に補給法支援特措法を臨時国会でやらなくちゃいけないのか。3分の2の再可決をやったうえでの選挙は考えにくい」(木庭参院幹事長)としていたが、総選挙前の再可決容認に転じた。その背景には、民主党と歩調を合わせることで、麻生首相に解散の決断を促す狙いが透けて見える。あきらめかけていた「11月中の投開票」の可能性が出てくるとの計算も働き、「再可決容認」に転じた。

 補給支援特措法案が今国会で成立する見通しになった8日、麻生首相は上機嫌で記者団の前に現れた。早期の解散・総選挙を戦う「選挙の顔」として期待されて政権についた首相は、実績作りにこだわってきたからだ。麻生首相は就任して2週間で願ってもない「補正予算案の成立」と「給油支援特措法の成立」という成果を得る形になった。特に給油支援法案は安倍、福田両内閣を追い詰めた「鬼門」をクリアして、「テロとの戦い」の国際公約を守り、外交上の対面を保つことになる。

 来月の米大統領選で共和、民主両党の候補が勝っても、テロとの戦いの重点がイラクからアフガンに移るのは確実。「給油活動をやめれば、『次はアフガン本土に自衛隊を派遣してくれ』とハードルが高くなる」(政府高官」との見方があった。麻生首相は就任直後の国連総会で、「日本は今後とも、テロとの戦いに積極参画してまいる」と国際社会にアピールしていた。しかし、ねじれ国会で歴代政権にとって給油継続は重い課題だった。

 ただ、給油活動の延長でも、日本政府にはさらなる貢献を求めてくる「圧力」は残りそうだ。アフガン国軍増強などのため追加の資金援助が強まると見られる。「国際社会の日本への期待が弱まることはない。米国の期待も高い」(外務省関係者)はいう。 

[コメント]また、外務省の悪口をいってしまうが、外務省は日本のさまざまな事情に関係なく、アメリカに対して日本への期待度を高めて、それを外圧として利用して日本をアメリカに貢献させることが至上の外交術と思っている。それこそが日本の最高の外交的成果だと掲げている。外務省の官僚には日本独自の外交戦略など作る能力はない。さらに日本の政治家がそのことを放置して、外務官僚にいいように振り回され(飼い殺し)ている。

 今の日本にとって最重要な問題は、与野党ともにインド洋給油支援策に代わる日本の貢献策を示されないことである。どうせ何もできないから、とりあえず給油延長であって、日本の「テロとの戦い」の積極姿勢を見せているわけではない。これを「低リスクの高リターン」とは商売人のいうことであって、国防を担う武人が口にする言葉ではない。どの国の軍人であっても、これは「高リスクで低リターン」だからやらないとは口が裂けても言ってはいけない。そのあたりの感覚が日本の政治家にはない。

 「全軍、突入せよ」と命令が下れば、砲弾や爆弾が炸裂し、銃弾が飛び交う中でも、兵士は敵陣に突入する。たとえ戦死の可能性(リスク)が高い場合でも、味方の最前線の一翼に穴を開けることは許されないからだ。その開いた穴で全軍が死滅する敗北に追いこまれるからだ。そんな兵士の心理を日本の政治家は十分に理解しているのだろうか。

 政治の駆け引きで、戦場に送られる自衛官の命が決められる。そんな前例を積み上げていく政治に腹が立ってくる。このイライラや怒りはどこに向ければいいのだろうか。

※これから東京ビッグサイトで開催中の「危機管理産業展2008」を見学してきます。昨年は空自のPAC2(横須賀・武山基地)が来ていたが、今年は中央特殊武器防護隊(さいたま市)が装備展示に来ると聞いた。いくつか質問してみたいことがある。

アフガン 副大統領会見

タリバンと

  和解交渉

オマル師に手紙

(毎日 10月8日 朝刊)

[概要]アフガンのカリム・ハリリ副大統領は7日、毎日新聞記者と単独会見し、旧支配勢力タリバンの最高指導者オマル師に対し、手紙などで和解交渉を開始したと語った。オマル師には武装解除や同国法を認めることを求め、条件をのめば政治勢力として受け入れるという。

 対テロ戦争が泥沼化するアフガンで、アフガン政府が敵対するタリバンとの具体的な和解交渉を明らかにしたのは初めて。米国や国連などもアフガン政府の対話努力を受け入れるとみられる。

 ハリリ副大統領はタリバンと外国人武装勢力のアルカイダを明確に分離して、外国人勢力に対しては交渉しない姿勢を強調した。米軍の作戦は有益との認識を示して、米軍の今後のアフガン増派を否定しなかった。オマル師は01年の米国によるアフガン侵攻後もタリバンの最高指導者として健在としている。

 オマル師には武装解除の他に、憲法やイスラム法が認める女子教育を容認することを求めている。今のところオマル師などタリバン強硬派がこれらの条件を受け入れる可能性は高くない。しかし政府はさまざまなルートを通じて、オマル師との妥協点を探るとみられる。

 政府がオマル師と和解交渉を模索するのは、米軍主導のタリバン掃討作戦が国民の支持を得られず失敗し、逆にタリバンが勢力を回復したことに危機感を持っているからだ。ハリリ副大統領は「支援国の中には、戦え戦えと言う国があるが、受け入れられない」と暗に米国の姿勢を批判した。

 ブッシュ政権はタリバンをアフガン社会に復帰させ、アルカイダを孤立化させることが安定化に不可欠の判断に傾いている。米政府はイラクのスンニ派武装組織を治安要員に雇用し、「反アルカイダ」に転換させて治安改善に寄与させた実績がある。同じように、アフガンでタリバンを使ってアルカイダを攻撃させる考えを持っていると思われる。しかしアフガンでは米軍の攻撃で多くの市民が巻き添えになり、外国駐留軍に反感が高まっている。イラクと同じ構想が通じるのかは難しい。

 ゲーツ米国防長官は、「米軍の増派だけでアフガンの治安安定に寄与しない」と、軍事作戦の拡大(強化)に釘を刺している。タリバンとアフガン政府の「国民的和解」が必要との認識だ。アフガンでのテロとの戦いは転換期を迎えた。

[コメント]すでにアメリカの新しいアフガン戦略では、タリバンは抹殺すべき武装集団ではなく、アルカイダとの掃討作戦に活用する勢力になった。そのための第1段階で、タリバンとアルカイダ(外国人勢力)を分離させることが必要になる。最近、アフガンと国境を接するパキスタン領の辺境自治州で、米軍の無人機によるミサイル攻撃が続いている。またパキスタン軍によるアフガン難民をアフガンに追い返す動きも始まった。これらは住民に外国人兵士(アルカイダ)と一緒にいると怖いという心理を作り、タリバンに親しみを感じる難民はアルカイダから切り離す作戦と思われる。

 これに対して、アルカイダはパキスタン国内で自爆テロを激化させるだろう。パキスタンの辺境州という温床を失いたくないからだ。だから、これからの戦争はパキスタンに拡大することは必至である。

 アフガンの農民が行っているケシの栽培は、国連などの国際機関が買い取ることによって、タリバンの資金源を断つことができる。農民はケシを栽培したいのではなく、タリバンが高く購入してくれるからケシを栽培するのである。その分のお金を農民に支払えば、タリバンの資金源(ケシの密売)を奪うことは簡単である。

 下段に書かれている1兆7300億円には、そのようなケシ対策の経費(購入費)も含まれていると考えられる。アフガン軍程度の装備で6万7000人の増強を行うのに、1兆7300億円という金額は明らかに多すぎる。こうしたアヘンを農民から買い上げるやり方は、かつてタイ北部やミャンマーなど”黄金の三角地帯”と呼ばれたケシの栽培地域で、農民にケシ畑から農作物に作物転換させたやり方なのである。お金はかかるが、ケシ畑を踏みつぶしたり焼くよりも効果がある。

 国際機関がアフガンの農民から購入したアヘンは、密かに国外に運ばれ、合法的な医薬品などに加工して活用される。タリバンからケシを遮断することに成功し、タリバンをアルカイダから切り離せば、オマル師は進んで武装解除に応じることになる。自らの安全の保証を求めて。

アフガン軍増給で

米が日本などに

1兆7300億円要

(毎日 10月8日 朝刊)

[概要]ゲーツ国防長官は今月9日、10日にブダペストで開催されるNATO国防相会議で、アフガンに戦闘部隊を派遣してない加盟国や日本に、米軍が行っているアフガン軍増強の経費約170億ドル(1兆7300億円)の要求を行う見通しだ。

 治安悪化が続くアフガンには、現在、国際治安支援部隊(ISAF)約4万8000人が展開。うち約2万2000人を米軍が占め、来年1月までに5700人の増派を決定した。フランスも800人規模の追加派遣を決めている。

 米国防省はアフガン軍を今後5年間に現在の倍の約13万4000人に増強させる予定。このアフガン増強にかかる費用が最低170億ドルかかるという。「戦闘部隊の派遣に消極的な国が貢献できる分野のひとつ」(モレル米国防総省報道官)という。

[コメント]これは先月(9月)の25日の What New! で取り上げた件である。さんざんアフガンの治安を悪化させ、タリバンに復活する失態を演じたアメリカが、その始末に、アフガンに戦闘部隊を出さないなら、アフガン軍を倍増させる経費をだせという。ちょっと変だと思わないか。

 それを日本の外務省は、日本はお金ばかり出して血を流さないという。あるいは、日本がお金を出さなければ日米関係は最悪化すると脅す。これも変だと思わないか。

 自衛隊員がアメリカの戦場に行って、血を流し、犠牲になることが、日本の国際貢献で日米関係を強固にさせることなのか。自衛隊員は日米関係の生け贄なのか。これが、私が外務省に国防や安全保障に関与して欲しくない最大の理由である。

西シベリア油田共同開発

エネルギー安保

  優先

独露合意で再接近

 グルジア問題では隔たり

(毎日 10月7日 朝刊)

[概要]グルジア紛争をめぐって激しく対立したロシアとドイツが、首脳レベルの会合で天然ガス田の共同開発に合意し、エネルギー分野の協力に再着手した。背景には、ロシアからのエネルギー輸入に依存するドイツが、関係修復に乗り出した事情がうかがわれる。

 ロシアのメドベージェフ大統領とドイツのメルケン首相が2日、サンクトペテルブルクで開催した官民合同の定期会合に出席し、西シベリアの「ユジノルスコエ」天然ガス田の開発をめぐり、ロシア政府系天然ガス会社「ガスプロム」と、ドイツ大手エネルギー会社「エーオン」などによる資本交換協定に、両首脳が立ち会って調印した。

 同ガス田の埋蔵量は8252億立方メートルを誇り、ガスプロムが来年にも本格的な生産開始を見込んでいる。両国はバルト海を通じて直結するパイプライン計画「ノルド・ストリーム」を通じ、直接ドイツに供給することを想定している。

 会合では、グルジアから独立承認を求める南オセチア、アブハジア両地域の地位問題では、意見の違いを埋めることはできなかった。しかし両首脳は、「共通利益を考慮している」(メドベージェフ大統領)、「信頼を再構築しなければいけない」(メルケン首相)と、エネルギー分野の協力促進に合意した。

[コメント]グルジアからの南オセチアの地位(独立)問題で、ロシアと米欧の対立が高まった。それを指して、新冷戦が始まったと主張する人がいる。私は、もはや世界で冷戦といった閉鎖的な環境では、国家や地域が耐えられないとして、新冷戦と呼ぶ分析法に反対している。単純に新冷戦という大ざっぱな切り方では、複雑な国際情勢をとらえられないからである。その具体例がこれである。

 対テロ戦争という不確実な世界であっても、西シベリアのガス田からドイツまで、「ノルド・ストリーム」というパイプライン(一部海上輸送)で直接供給するというエネルギー共同開発である。ロシアに敵対するテロ組織、ドイツに敵対するテロ組織、世界のグローバル化に反対する過激派にとって、シベリアの極地に建設されたパイプラインを爆破することはたやすい。それでも独露両国がエネルギー開発を共同して行うほど依存しあっているのだ。新冷戦などに構っているヒマなどない。

 新冷戦という思考では、エネルギー確保の国際競争に遅れをとる。これからは戦争によって、国家間の格差が広がると思う。すなわち戦争をする国は貧しくなり、平和であり続ける国は豊かになる。

北、真偽不明の動静報道

”長期不在”払拭

  内外に発信

金総書記、サッカー観戦

(産経 10月6日 朝刊)

[概要]北朝鮮のメディアが5日、重病説の出ていた金総書記が金日成総合大学の創立62周年を記念したサッカー試合を観戦したと報じた。金総書記の動静が報じられたのは51日ぶりだ。北朝鮮としてはこれによって、最高指導者の健康不安説を払拭した形だ。しかしサッカー観戦の日時や場所が不明で、金総書記の写真や映像も報じられず、報道が事実かどうか定かでない。

 今回、動静が途絶えた期間は、今まで最長だった03年2月〜4月の49日間とほぼ並ぶ。03年はイラク戦争開戦で金総書記が表に出ず米軍の状況分析や対米戦略を練っていたーとの説があった。今回は、「脳卒中による重病説」が日米韓で広がっていたので、北朝鮮としてはまずそれを否定する意図があったとみられる。

 韓国の聯合ニュースは5日、韓国の消息筋の話しとして「事実である可能性が高い」と判断していると報じたが、韓国の「月刊朝鮮」元編集長の●甲済氏は、「北朝鮮で最高指導者の重病説が拡散したこは必至」で、住民の動揺が広まれば体制不安につながりかねないーーとの見方だ。このため、北朝鮮当局が今回、国内に「金総書記健在」の報道を意図的に発信した可能性が浮上している。

[コメント]重病説が広がる日米韓で、写真や映像のない今回の報道をどれだけの人が信じるだろうか。同じように、北朝鮮国内でも最高指導者の重病説が広まった中で、写真や映像のない今回の報道をどれだけの者が信じるだろうか。要するに、今回の報道は金正日の重病説払拭工作にマイナス点(ダメージ)を与え、さらに北・国民の体制不安を拡大させたことになった。

 本日の読売新聞の朝刊に、”映像のない「北朝鮮の大々的な動静報道」”の関連記事として、米政府系のラジオ自由アジア(RFA)が5日、最近訪朝した中国高官の話しとして平壌の官僚らの不満を報じている。「(1990年代後半に大量の餓死者を出した)『苦難の行軍』の時期でも平壌だけは食糧配布があったが、今年はすでに長いことなく、民心離反が激しい」と語っていた。北の高官は「平壌の落ち着きがない民心が、金総書記にも負担になっていた」と述べた。−−−という。北朝鮮では食糧を求める住民の移動が活発化し、最高指導者が重病という国の最高機密も口コミで急速に伝わり、多くの住民に知れ渡っているといわれる。

 ここで気になるのは、聯合ニュースと米政府系ラジオRFAの信頼性である。聯合ニュースは韓国政府の消息筋の話しと報じているが、おそらく韓国政府の統一院長官クラスの発言と推測できる。いわば韓国の政府系であっても、北朝鮮研究の最高シンクタンクのトップが、「金総書記は重病で北・国民の不安が深刻化している」とは絶対に言えない。「症状は比較的安定」「歩けるようになった」「早い回復が期待できる」と、ウソでも楽観的な情報をメディアに流すしかない。そうしなければ意図的でなくとも朝鮮半島で大混乱が起きるからだ。

 これに対してRFAだが、実は立場上、ウソの放送が出来ないのである。RFAの資金源はCIA(米中央情報局)あたりから出ていると思うが、放送を聞いているのは北朝鮮の国民である。心理戦の原則としてウソの放送を流せば、すべての放送内容が信頼を失い、本当の重要情報もウソになってしまうからである。かつての日本の”大本営発表”の時代とは違うのである。心理戦では敵に都合の悪い情報を積極的に流しても、ウソの放送は信頼を失って自滅行為となる。これが心理戦の重大原則である。

 というような理由で、今回はRFAの信頼性が高いということになる。ところで、平壌でも食糧の配給が途絶えたという話しは別の情報としても聞いた。1990年代後半の「苦難の行軍」が起きた時は、北朝鮮の2400万人の総人口で、300万人〜400万人が餓死したといわれている。平壌市内でも高層アパートの高層階では、電気が止まり、エレベーターも止まり、水道も止まったために、厳寒期には凍死した老人などをトラックが回って死体を回収したという。私が北朝鮮の独裁体制は間もなく崩壊すると推測したのは、そのような厳しい状況からだった。(私の推測は間違った。しかし入手した情報は正しかった)

 これから北朝鮮では厳しい冬に向かう。平壌の現状(今)が「苦難の行軍」よりも厳しいのなら、今年の冬は越せないと思うのが常識的である。そんな心労から金正日は脳溢血で倒れたのだろうか。ちなみに03年2月〜4月にかけて49日間ほど金正日が姿を消したのは、イラク戦争で米軍の状況を検討していたのではなく、米軍が攻撃してくるのを避けるために、地下シェルター(避難所)を転々としていたからである。まさか逃げ回っていたとは言えないから、イラク戦争の戦況を分析したという説明が行われた。

PAC3など5種類

米、台湾に武器売却

  総額6800億円

中国が非難声明

(毎日 10月5日 朝刊)

[概要]ブッシュ米政権は3日、総額65億ドル(約6800億円)の武器を台湾に売却する計画を議会に通告した。米台間では米国の武器売却が最大の懸念となっていただけに、台湾側は歓迎している。一方、中国外務省の劉建超報道局長は「中米関係を甚だしく損なう」との非難声明を発表した。

 台湾に売却される武器は、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)、潜水艦発射対艦ミサイル「ハープーン」、戦闘ヘリ「アパッチ」など5種類。このうちPAC3は初めて配備される。

[コメント]この他の武器は、携帯式多目的ミサイル「ジャベリン」、早期警戒機「E2T」と、台湾空軍が配備しているF−16戦闘機やF−5戦闘機の部品である。ちなみに台湾の年間国防予算は約1、1兆円である。

 また台湾側が強く求めていたディーゼル潜水艦と、F−16戦闘機の改良型、多用途ヘリUH−60「ブッラクホーク」の売却は今回の武器リストに含まれなかった。

 今回の米台武器売却には2点の特徴がある。その一つは、残りわずかになったブッシュ政権にとって、台湾との武器ビジネスを成立させ、米台関係の改善するとともに、米国の軍需産業に貢献したことである。それに最も重要な2点目は、台湾に向けられた1000基にのぼる中国軍の短・中距離弾道ミサイルを、中国東北部などに移動させないためである。台湾の馬英九政権の誕生で中台が緊張緩和したことによって、台湾向けの弾道ミサイルが中国東北部に移動すれば、朝鮮半島や日本が高い脅威にさらされることになる。これを防ぐために、アメリカは台湾に対弾道迎撃ミサイルのPAC3を売却することによって、中台間のミリタリーバランスを均衡させ、中国の弾道ミサイルの国内移動を封じる戦略に出たと指摘できる。

 すなわち新しく台湾にPAC3を売却した理由は、中台が緊張緩和することで、中国軍の戦略配備変更を防ぐためという珍しい理由で新兵器が配備された。このような武器売却(供与)の事情は非常に珍しいことと思う。

 ちなみに売却されるPAC3は330発、攻撃ヘリAH64D「アパッチ」は30機、携帯式多弾頭ミサイル「ジェベリン」182発、潜水艦発射対艦ミサイル「ハープーン」は32発、早期警戒機E2Tは?機と、数量の面では大規模な武器売買と騒ぐほどではない。むしろPAC3を売却の軍事・政治的な意味合いで突出した一面を見せている。うがった見方をすれば、PAC3以外の兵器は、配備されたPAC3を中国軍の奇襲から守るために売却されたという説明ができるほどだ。

スーダンPKO 閣議決定

部隊派遣論

  再燃も

司令部で兵站と情報幕僚

(朝日 10月4日 朝刊)

[概要]政府は3日、スーダン南部での国連平和維持活動(PKO)の司令部に自衛官2人派遣することを決めた。福田政権では部隊派遣も一時検討したが、治安情勢への不安から見送った。2人は国連スーダン派遣団(UNMIS)がある首都ハルツームで、60カ国以上から1万人が参加するPKOの要員として、補給を担当する「兵站幕僚」と、データベースを管理する「情報幕僚」の任務を担う。

 中曽根外相は2日の記者会見で、「2国間関係をさらに良くするのはもちろん、地域の平和と安定のために大きく資する」と強調した。今回は部隊派遣は見送られたが、インド洋での海自による補給支援が暗礁に乗り上げれば、政府内でスーダン支援増強論が再燃する可能性がある。新しい法律をつくる必要がないPKOへの参加に焦点があたる可能性が残っているからだ。

 自衛隊がアフリカのPKOに参加するのは93年〜95年のモザンビーク以来。日本から派遣している軍事・文民警察要員は40人近くになるが、それでも主要8カ国(G8)では最も少なく、世界では80位程度にとどまる。

[コメント]自衛隊のスーダンPKO派遣は、福田政権下で外務省が自衛隊の部隊派遣を求めたが、防衛省が現地の治安情勢が悪いとして難色を示し、今回の司令部要員派遣で妥協した経緯がある。しかしこの2名は司令部でも、兵站と情報を担当する参謀である。将来の自衛隊部隊派遣(補給支援・兵站)を探る任務を帯びていることはことはまちがいない。

 すなわち空自が間もなくイラクでの空輸支援活動から撤退する。インド洋で海自の給油活動中断は確実で、総選挙後に再開する目処はたっていない。となれば、自衛隊を部隊で派遣できる国際貢献活動はスーダンPKOしかない。スーダンPKOなら現在のPKO法のままで派遣が可能で、新しく時限立法の特措法を作る必要がない。

 私はこの自衛隊スーダンPKO派遣に賛成する。まさにこれこそが自衛隊の国際貢献の原型と思うからである。小泉政権がブッシュ政権のご機嫌取りで始めたインド洋の給油支援と、イラク戦争における自衛隊派遣は反対だった。憲法が禁じた武力行使(あるいはほう助)に該当するからだ。

 しかしスーダン南部であれば、紛争地当事者同士が和平に合意し、国連PKOの派遣を求めているという事情がある。自衛隊が現地に派遣されると、いろいろ困難な状況に陥るだろうが、自衛隊員は難題を克服してPKO活動をやり遂げると信じている。

※私は11月18日〜30日の間、ポレポレ座(東京・東中野)で写真仲間と共同で写真展「写真眼2008」を開催することにした。私が提出する展示写真は、自衛隊のカンボジアPKOのさり気ない風景である。その写真のタイトルは「憲法9条の現場」としている。自衛隊のカンボジアPKO活動こそ平和的な国際貢献の原点だと思っているからだ。スーダンPKO派遣は自衛隊の国際貢献が原点に戻ってきたように感じている。

中国潜水艦事故報道

 「防衛秘密漏えいの疑い」

空自1佐を

  懲戒免職

処分詳細理由 説明せず

(読売 10月3日 朝刊)

[概要]読売新聞は05年5月31日の朝刊で、南シナ海で中国の潜水艦が潜航中に火災とみられる事故を起こし、航行不能になったと報じた。この記事に対して防衛省は、防衛省情報本部電波課長(当時)の北住1空佐(50)が、日米の防衛当局が収集した情報を漏えいした自衛隊法違反(秘密漏えい)として、今年3月に陸幕警務隊が東京地検に書類送検をしていた。

 北住1佐は当初、内部調査に「情報は防衛秘密にはあたらないはずだ」と主張していたが、最近になって「防衛秘密と承知したうえで部外者に漏らした」と認めていたという。自衛官が報道に関して免職されるのは初めて。取材した記者については捜査対象になっていない。

 防衛省の増田事務次官は2日の記者会見で、今回の漏えいが、なぜ免職にあたるほど重大なのかなど、処分の詳しい理由をほとんど説明しなかった。識者からは、「これでは、すべてが秘密扱いになり、必要な情報を国民が得られなくなる」として、国による情報管理が進むことを危惧する声が上がっている。

 増田次官は記者会見で、「処分と報道の自由についてどう考えるか」と問われ、「報道の自由との関連で問題になるとは認識していない」「軍事分野には当然、秘密として保全しなくてはならない分野がある」と強調したが、どこが防衛秘密になるかという質問には、「差し控えたい」という回答を連発。指定された防衛秘密を漏らしたため、免職にしたという形式論を繰り返した。

 今回の刑事手続きを受けて、地検では北住1佐を「(懲戒免職で)制裁を受けた」として不起訴(起訴猶予)とする公算が大きい。防衛省としてはこれで”一件落着”としたいところだ。これに対し、ある自衛隊幹部は「米軍に対する気遣いが尋常ではない」と語る。日米同盟への配慮がすべての行動原理だったとの指摘だ。防衛秘密の指定基準は明らかにされておらず、防衛次官は秘密指定の時期についても言及を避けた。

 適正な取材と、記者の最高倫理である取材源の秘匿を、強制権力によって否定した今回の防衛省の行為は、取材を受ける公務員を疑心暗鬼に陥らせ、情報提供の範囲を狭めさせる可能性があり、結果として国民の知る権利は制約される。(懲戒免職は)二度とあってはならないことだ。

[コメント]この北住1佐の懲戒免職(秘密情報漏えい)の処分を受けて、読売新聞がどのような記事を書くか興味があった。公務員はよほどの理由がないかぎり、刑事手続きの”送検”段階で懲戒免職にはならない。一般的には、起訴されても本人が在職を希望すれば、有罪の判決が出るまで休職扱いになる。(外務省の佐藤優氏の実例)。

 読売新聞が”二度とあってはいけない”という主張には、”防衛省が日米同盟を異常に配慮するために、正常な国民の知る権利さえも強権で奪う行為だ”という論調を感じる。しかし今回の1度目は例外として黙認するという意味なのか。

 これだと読売新聞は北住1佐を1度目の例外として見捨てることになるのか。大いに気になるとところだ。アメリカなどの大手メディアは退役軍人(元高官)を軍事専門アドバイザーとして契約している。読売新聞も北住1佐を自社の軍事専門アドバイザーとして契約してみてはどうか。自衛官の守秘義務は職務上知り得た秘密情報の漏えいが対象である。その職務を離れた上で、新しく知り得た情報を漏えいしても罪にはならないし、今までの経験や知識で解説することは違法ではない。今後、安全保障でいろいろな事件や事故が起き、北住1佐が軍事専門的なアドバイスを行うことは問題ない。それどころか読売新聞の軍事記事のレベルアップに貢献できる。(日テレのニュース「リアルタイム」の田宮元警視庁捜査1課長の実例)

 という、読売新聞と北住1佐の話しは以上だが、この「潜水艦事故の記事」のどの部分が防衛秘密にあたるかを説明する。(以前にも、読売新聞がこの記事を記載した時に同じ説明をした)

 中国の潜水艦が南シナ海に浮上しているのを、P3C哨戒機がたまたま発見しても、そのことが秘密情報に指定されるわけではない。どうして自衛隊(海自)がこの潜水艦を探知して、中国の潜水艦として識別したかが秘密指定なのである。(しかし秘密程度のレベルは低い)

 具体的に説明する。まず中国の潜水艦は南シナ海を潜航中に火災(原因は機関の故障や放火が推測)を発生させた。潜水艦の火災は燃焼で艦内の酸素を急速に奪うので、一般的には潜水艦の浸水事故とともに急浮上で対処する重大事故である。

 海面に浮上した潜水艦は、無線を使って母港(中国)の司令部に救援を依頼する。この無線を喜界島(鹿児島県)の無線傍受施設(情報本部電波部の出先機関)が受信した。ただちに位置を割り出して海自のP3C哨戒機が電波を発信した海域に向かう。そこで潜水艦が浮上しているのを初めて発見する。

 P3Cは上空から赤外線探査を行って、潜水艦の一部が高温であることから火災事故と判断する。さらに写真撮影を行って、潜水艦の艦影や艦番号から、国籍、形式(タイプ)、艦名を照合するのである。米軍の情報機関が関与したと考えられるのは、最後の艦籍の照合段階と推測される。

 海自(自衛隊)だけで、潜水艦の発見から、事故原因、写真撮影まで行っている。国籍不明潜水艦の探知・確認作業の8〜9割は海自(自衛隊)のお手柄である。この情報漏えいで、米軍が目くじらを立てて怒る理由や、防衛省が米軍に尋常ではない配慮をする必要はない。(アメリカが怒っているというのは外務省が騙す時によく使う手である)

 それよりも、最近の海自の一連の不祥事を受けて、防衛省が海自に改革を厳しく求めるために、この情報漏えい事件に防衛省が厳しく対応している姿を見せるためではないかと思う。昔、オウム事件で取材した警察の公安関係者は、新聞記事を集めて分類・整理した私の情報カードを見せると、その内容に驚き「うち(警察)のエラさんはそこまで新聞記者に話しているのか。俺達には何も話すなとうるさく言うのに」と話したことを思いだした。公安警察官(現場)は警察庁や警視庁の幹部(高官)が新聞記者にリークしている内容に驚いたのだ。

 すなわち北住1佐が漏らした情報は、防衛省幹部が新聞記者にリークするランクの高い防衛情報だった。しかし、たかが空自の1佐の分際で、全国紙の1面トップに来るような情報を、新聞記者に語ったのが防衛省幹部(例えば守屋前事務次官のような)の怒りをかったのだ。

 しかし海自の一連の不祥事で、この問題で防衛省が北住1佐を1発ぶん殴っただけでは済まなくなった。自分たちも日常茶飯事に同じことを行っていたからだ。それが防衛省の懲戒処分という前例のない厳しい処分になったと思う。これで新聞記者が防衛省幹部を夜討ち・朝駆けで取材することが難しくなった。政府(防衛省)筋の話しとして「南シナ海で中国海軍の潜水艦が火災で航行不能」という記事が載れば、情報漏えいで警務隊が動き、防衛省の誰かが懲戒免職の処分を受けるからだ。

韓国通信社報道

北、核実験場

  復旧の兆し

複数地点から煙り

(読売 10月2日 朝刊)

[概要]韓国の聯合ニュースは1日、韓国政府筋の話しとして、北朝鮮が06年10月に核実験を行った北東部、豊渓里(ブンゲリ)の核実験場周辺で、最近、複数の地点から煙が上がったことが確認され、情報当局が実験場復旧の兆候とみて分析中だと報じた。

 聯合電によると、同筋はこの煙について、「復旧に使われた作業服や装備などを焼却する過程で発生したと推測される」と指摘した。寧辺の核施設再稼働の動きとの関連も分析していると述べた。

[コメント]これが本当に核実験再復旧に向けた作業かわからないが、北朝鮮がアメリカや韓国に揺さぶりをかけているのは間違いない。北朝鮮としては、金正日が脳卒中で倒れたことで、アメリカや韓国が北進(侵攻)してこないか疑心暗鬼になっている。そこで寧辺の核施設を再稼働させようとしているか、それを行っているように偽装している。今回の核実験場の煙も同じ目的からである。

 しかし、アメリカや韓国は北朝鮮の核開発再稼働に怯えているのではない。北朝鮮が保有し配備している生物・化学兵器が暴走(誤発射)するのを警戒しているのだ。何しろ、ソウル市街や在韓米軍の頭上に降りかかる危険を秘めているからである。

 今、アメリカや韓国の最も危険なタイミングは、金正日が死亡したことが確認された場合、38度線に沿って北朝鮮軍の地下陣地に配備されている生物・化学兵器の攻撃(暴走)である。

 これから、本日の「メールにお返事」にも書くが、それを防ぐためには、アメリカは緊急避難的に北朝鮮に”テロ支援国指定解除”を行う可能性がある。ここで気をつけることは、アメリカが北朝鮮にテロ支援国指定解除を行っても、それは核開発再開を恐れているのではなく、北朝鮮から生物・化学兵器の攻撃を恐れているからである。そのために北朝鮮の疑心暗鬼を落ち着かせるための配慮である。

 まさに緊急避難的な措置なのである。朝鮮半島の軍事問題を考える上で、北朝鮮軍の大量破壊兵器(生物・化学兵器)が話題になることは少ないが、このことが朝鮮半島では決定的な軍事問題なのである。あまりにも大きな問題故に、韓国、北朝鮮、アメリカがあえて話題にしないだけである。

 韓国の国防白書が指摘するように、北朝鮮軍が貯蔵する4000トンの化学兵器、1トンの生物兵器、または生物・化学兵器の研究所や実験施設など、北朝鮮が崩壊すれば真っ先に無力化させる最優先の軍事テーマである。

ロシアー北朝鮮ー韓国

鉄道連結構想

  始動

改修 一部着手

 経済重視 安保は脇役

(朝日 10月1日 朝刊)

[概要]ロシアと北朝鮮を結ぶ鉄道の改修工事が3日から始まる。韓国企業も投資し、「いずれは釜山とモスクワを結ぶ大陸横断鉄道」との期待が膨らむ。韓国の李明博大統領は28日からの訪ロで新たな3カ国協力関係を模索するが、経済協力で一致しても思惑はぶつかり合う。かつて重視された安全保障はすっかり脇役だ。

 朝ロ国境の豆満江から羅津までの計52qの鉄道を改修し、羅津港を近代化する。早ければ来春春には第一期工事が完成。20フィートコンテナで年間10万個相当の物資が、シベリア鉄道を経由して極東と欧州を行き来するという。

 この事業には韓国鉄道公社なども加わり、ロシアが投資する1億4千万ユーロ(約220億円)の四割を韓国が負担する。投資リスクを減らしたいロシアと、韓国に鉄道が伸びた場合の先行投資と両国の思惑が一致した。鳥取県や新潟県など日本海側の自治体は、羅津港への定期便航路開設を模索してきた。関係者の鼻息は荒くなる一方だが、前途は多難だ。

 老朽化が進む北朝鮮の旅客列車は平均時速は20〜40キロに過ぎない。ロシアは01年、朝ロ国境から南北軍事境界線付近までの区間を調査したが、近代化に約25億ドル(約2600億円)が必要と算出した。韓国の専門家は「1億4千万ユーロでも大変なのに、25億ドルを誰が出すのか」と口をそろえる。離津から先、どこにつながるか全くの白紙だ。

[コメント]シベリア鉄道の輸送力や輸送管理能力に問題がなく、北朝鮮が鉄路の連結に前向きな姿勢を見せるなら、近代化に必要な25億ドルを日本が投資することは可能である。羅津港や釜山港に日本向け貨物受け入れ港を整備し、日本の日本海側の港から運び込まれた貨物(コンテナ)を鉄道で欧州に移送する事業である。

 しかしシベリア鉄道は大雨で冠水する場所があると聞いた。また賄賂によって優先して送られる貨物が変更され、コンテナによっては数ヶ月間放置されているものもあるという。そんな管理状況ではシベリア鉄道を利用することはできない。また北朝鮮が身勝手な理由で輸送の中断や通過料金の値上げを要求するようでは、この鉄道の致命的な欠陥となる。

 というわけで、北朝鮮の金正日体制が終焉すれば、この鉄路連結は朝鮮半島の希望の星になる事業と思う。朝鮮半島の南北を結び、中国やロシアと結ばれた最重要輸送路になるからだ。さらには開発が遅れた中国東北部(旧満州)の開発に動脈ほどの役割を示すだろう。

 この事業が始まる時に備えて、すなわち金正日体制の崩壊と南北統一に備えて、日本や韓国は準備と調査を怠るべきでないと思う。  

 



※これ以前のデータはJ−rcomFilesにあります。