きょうの社説 2010年1月8日

◎加賀友禅ファンクラブ 「着物が似合う街」伝えたい
 金沢市の加賀友禅技術振興研究所は、加賀友禅の「ファンクラブ」を新年度にも結成し 、全国から募集する会員には制作体験などの特典付与や会報誌発行を予定している。新たな需要の掘り起こしとともに、「着物が似合う街」金沢のよさを伝えて、県内外の着物愛好家を呼び込んでもらいたい。

 昨年10月に初めて行われた「金澤きもの小町」では約1100人が着物姿で華やかに 市街地をそぞろ歩き、金沢の街並みに着物がよく似合うことが再認識された。多くの参加者からは、和装に対する潜在的な需要も十分感じられた。魅力的な商品開発はもとより、着物に関するイベントの発信や施設の優遇制度の拡充を図るなど、着物姿の人々を受け入れる素地をより整えることが、金沢らしいにぎわい創出にもつながるだろう。

 需要の低迷に悩む加賀友禅だが、品質の高さは折り紙付きである。「ファンクラブ」の 企画案によると、工房見学や制作体験を行うとあるが、会員らに加賀友禅を生み出す職人の技術、苦心の数々を伝える内容にしてもらいたい。伝統工芸の良さを強く印象づけ、加賀友禅への理解を深めることが、新たな需要開拓の一歩になるはずである。

 また、観光客の「着付け体験会」の充実も考えられており、まちなか散策や工房見学な どと合わせると金沢の「体験型観光」のモデルにもなろう。金沢ならではの魅力的なプログラムを探ってほしい。

 美しい加賀友禅を着た人々が歩く姿は、それ自体が金沢の観光資産ともいえる。会報誌 などで着物姿で参加できる各種イベントを広く紹介するとともに、受け入れ体制の充実も求められる。これまでにも金沢市観光協会と市が期間限定で「きものパスポート」を発行して施設の割引などを行っていたが、協賛する施設などを募って、着物姿の特典を増やしていくのも誘客策の一つとなるだろう。

 金沢には茶道や能、生け花、舞踊など着物とつながりが深い伝統文化が息づいている。 その土壌を背景にして、加賀友禅ファンのすそ野を広げて、金沢の和装文化の一層の振興につなげたい。

◎調査捕鯨船への襲撃 「テロ行為」は許されぬ
 米環境保護団体「シー・シェパード」の小型高速船が南極海で日本の調査捕鯨船団の監 視船に衝突した事故は、反捕鯨の活動家らが計算ずくで仕掛けた自作自演の「テロ行為」であるのは明らかだ。ニュース映像が世界に流れ、注目を集めさえすれば、たとえ船が沈んでも元は取れると考えているのだろう。

 活動家らは、日本の調査捕鯨団の母船に対しても、異臭のする薬品が入ったボールのよ うなものを発射したり、目に当たると失明の恐れがあるレーザー光線を照射するなどの妨害を繰り返している。鯨を守るためなら、暴力を行使しても構わないという思想は、常軌を逸している。

 日本の捕鯨調査は、国際捕鯨取締条約に基づいて実施されている。国際的に認められた 正当な調査への妨害は許されない。政府はあらゆる手を使って、「テロ集団」の異常さを告発してほしい。

 国連海洋法条約では、公海上における海賊行為の取り締まりが認められている。麻生前 政権下で、シー・シェパードを取り締まる法案の骨子が作成されたが、政権交代で宙に浮いた格好になっている。鳩山政権でも、法案成立に努力すべきではないか。

 水産庁によると、小型高速船は、日本の調査船団に付きまとい、監視船「第2昭南丸」 の進路を横切る際に急減速し、船首部分がぶつかった。大型船は機敏な操舵が難しく、高速で走り回る小型船を意図的に沈めるのは不可能といっていい。同庁が撮影したビデオでも小型高速船の危険極まりない行動が確認できる。

 シー・シェパード側は一方的な加害者でありながら、「救助してしてくれなかった」な どと日本側を非難している。ビデオで見る限り、小型高速船がすぐに沈む兆候はなく、救助信号も出していないのに、平然と事実を隠し、被害者づらをしている。彼らにとって「環境保護」は口実で、反捕鯨は金集めの手段なのだろう。

 国際世論を味方に付けるためなら何でもする連中だからこそ、日本側も声を大にして暴 力行為を批判していく必要がある。