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失われた20年:日本の教訓の終わり

2010.01.04(Mon) The Economist

The Economist

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(英エコノミスト誌 2010年1月2日号)

金融危機にどう対処すべきか。この問題について、日本は随分多くのことを世界に教えてきた。この先、西側諸国は独りで道を模索していかねばならない。

「東京市場では来週、新年の株高が予想される」。これは、概して持ち上げ記事の多い日本の通信社電の見出しだ。1989年12月29日、世界最大級の資産バブルがついに弾ける段階に達したまさにその日のことである。

 それから丸20年。日本人はまだそんな傲慢の代償を払い続けている。3万8916円でピークをつけた日経平均株価は今、その史上最高値の4分の1をやっと上回る程度の惨めな水準で推移している(もっとも、今回も新年の株高を予想する声は聞かれるが)。

 日本経済は2つの「失われた10年」を経て、名目ベースでほとんど成長していない。それどころか再びデフレに苦しめられている。かつて日本は米国に迫る勢いを見せたが、今では背後に中国の荒い息づかいを感じている。

 読者は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を覚えているだろうか? 最近では、日本が何で有名かと言えば、政府債務の総額がGDP(国内総生産)の200%に迫りつつある債務大国としてである。

 日本人にとって、これはすべて深刻な悩みだ。だが、この2年というもの、西側諸国が日本が1989年以来ずっと奮闘してきたような問題(資産価格の崩壊、急増する不良債権、迫り来るデフレの脅威)に直面すると、日本は潜在的な金融システム崩壊に対処するうえで、政府は何をすべきで、何をすべきでないか、という有益な教訓を与えてくれた。

 日本が作ってくれた前例のおかげで、多くの教訓がすぐに実行に移された。西側諸国の政策立案者は日本の政府当局よりずっと迅速に行動し(日本人は不運なことに試行錯誤を繰り返して学ぶしかなかった)、自国の銀行に流動性を供与して、自己資本を増強させる一方、民間部門の需要激減を穴埋めするために大幅な財政出動に踏み切った。

 そして、日銀と同じように、各国の中央銀行は金利を引き下げ、信用(クレジット)の流れが止まらないよう異例の措置を取った。こうした対策の効果のおかげで、世界経済に対する楽観論が広がってきた。

 では、この段階での日本の教訓はどんなものだろうか。多くの意味で、日本との対比はもはや役に立たなくなる。

 1つには、生徒たちが今、教師が一度も経験したことのないような窮地に立たされているからだ。ギリシャをはじめ、今最も脆弱な国は、日本が経験したことのないリスクに直面している。市場が国の信用力を疑い始めるというリスクである。日本は幾多の問題を抱えていようとも、国内貯蓄の巨大な資金プールと、お金を外国よりは国内にとどめておくことを好む投資家の恩恵を受けていた。

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