[掲載]2009年4月12日
■社会と経済を変えた決定を活写
かつて90年代の「失われた10年」を悔やむ論調がさかんであった。それ以降は、様々な改革によって、ゆるやかな回復が続いた。と思っていたら、今回の世界的な危機に襲われた。
しかし実は、バブルがはじけてから今日までの日本は、再生がうまくいかなかった20年ではなかったか、と本書は言う。雇用の規制緩和、金融ビッグバン、持ち株会社の解禁、グローバル化やネット社会化への対応など、たくさんの改革や変化があった。戦後の経済成長の限界を超えて、新しい豊かさへ向かうはずであった。
ところが、今では、行き過ぎた市場重視、ワーキングプアを生んだ派遣の自由化、年金をはじめとするセーフティーネットの不備と「社会保障難民」の増加など、日本社会は激しく痛んでいる。内需拡大に失敗し、外需依存の繁栄も終わった。何よりも、将来を担うべき若年層が痛んでいることが憂慮される。
10年後に「失われた30年」を嘆かないためにも、一読をお勧めしたい。日本の社会と経済を変化させた多くの決定を活写しており、評者のような経済の門外漢にも読みやすい。
出版社:岩波書店 価格:¥ 1,995