菅財務相が就任記者会見:識者はこうみる

2010年 01月 7日 18:35 JST
 

●日本経済の現状踏まえた意思表明

<三菱東京UFJ銀行 チーフアナリスト 高島修氏>

 日本経済の現状を考えれば、菅財務相がもう少し円安方向に進めばいいとの意思表明をしたことは評価できる。ただ、為替介入については、国際関係を考えれば実施しにくい環境にあることも事実だ。

 現在は、米雇用統計や1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)をにらんでドル高/円安に振れやすい局面。この地合いに沿った発言だったことでインパクトを持った。今の流れのなかでは、ドル/円は94─95円程度まで円安に振れてもおかしくない。

●ソブリン・リスク意識して円売り

<草野グローバルフロンティア代表取締役 草野豊己氏>

 菅財務相の発言で円が売られた背景は「緊縮財政にしていいとは一度も思ったことはない」とのコメントだ。ヘッジファンド業界の今年のテーマはソブリン・リスク。海外投資家の間でも、ブラックロック(BLK.N: 株価, 企業情報, レポート)やベアリング・アセット・マネジメントなど、政府債務の増大や中央銀行の政策が景気回復をとん挫させかねないとの見方から、米国債や英国債の保有を減らす動きが出てきている。

 そうしたなか、政府債務が主要国の中でも突出している日本の財務相が財政拡張政策を意識させる発言をすれば、本格的な日本国債売り・円売りを誘発しかねない。海外勢は、自民党から民主党への政権交代を受けて日本の改革への期待を高めていたが、これもはく落しつつある。

 「もう少し円安方向に進めばいい」などの発言で為替介入が頭をよぎった向きもあろうが、今の水準で介入はあり得ない。

 
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「もう少し円安がいい」

菅経済財政担当相は就任会見で、財政再建は需要拡大策が基本と語った。為替については「もう少し円安方向に進めばいい」と発言。  記事の全文 | 関連記事 

 
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とりあえず市場は菅財務相の人事に合格点を与えたと言ってもいいだろう。だが、行く手には2つの大きな課題がある  ブログ