石炭で栄え衰微した福岡県大任(おおとう)町が地域振興のため、PFI方式(民間の資金や手法の活用)による刑務所誘致を計画している。企業誘致がうまくいかないなかでの苦肉の策で、雇用や地産地消など経済効果が期待できる刑務所に方針を大胆に転換する。既に候補地を絞り、法務省へ働き掛けを始めているという。実現すればPFI方式の刑務所は九州初となる。
誘致を目指すのは、山口県美祢市など全国に4カ所ある「社会復帰促進センター」。2007~08年に開設され千~2千人の収容規模がある。給食や清掃、警備などの業務を民間が担う。
既存施設の実績に基づく大任町の試算では、2千人規模のセンターで300人以上の雇用が見込める。1日6千食以上の食材を調達するため地元生産者の販路拡大にもなる。さらに、数百人規模の刑務官の家族が定住することで人口が増え、町民税や普通交付税の増収も期待できるという。
大任町は近代化を支えた筑豊炭田にあり、人口約5700人。1967年の炭鉱閉山後は農業が主産業だが、歳入は典型的な交付税依存型。石炭六法失効後の激変緩和措置も07年に終了し国への依存体質の脱却が迫られるものの、景気低迷で企業誘致も成果が上がらず、08年度の法人町民税は約1200万円と歳入の0・22%にすぎない。
町は、予定地として福岡ヤフードームの9倍にあたる約65万平方メートルの民有地に着目、関係者に意向を伝えているという。
法務省矯正局によると全国の受刑者は約6万5千人で、刑務所の総定員約7万1千人を下回る。矯正局は「現時点で刑務所新設の予定はないが、将来必要となることを見据えて関心を示す自治体はある」という。
刑務所の誘致には町民の賛同を得られるかなど課題もあるが、大任町の永原譲二町長は「国が必要と言ってからでは遅い。それまでに住民の理解を得て誘致の条件を整えたい」と話している。