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きょうの社説 2010年1月7日
◎羽田発着枠拡大 まず小松便の増便実現を
羽田空港の発着枠拡大に伴う国内線の配分で、国土交通省が「地方枠」を設定したのは
、地方への航空ネットワーク拡充という政策的な配慮を明確にした点で歓迎できる。小松、能登空港にも増便の可能性が出てきたが、今後は地方枠をめぐり、各空港の綱引きが激しくなることが予想され、新たな航空競争時代に乗り遅れるわけにはいかない。とりわけ、小松空港の羽田便は昼の時間帯に空きがあって、不便との指摘がかねて出て おり、堅調に推移する1日11便体制の搭乗率からいっても増便の実現性は十分にある。路線開設は航空会社の判断であり、楽観は許されないが、県は各社の経営戦略をにらみながら働きかけを強めてほしい。 羽田空港に今年10月、4本目の滑走路が開設されるのを受け、羽田の発着回数は現行 の年間30・3万回から40・7万回へと大幅に増える。今回は第1弾として、2・7万回分が決まり、1日37便のうち20便は札幌、伊丹、福岡、那覇の基幹路線を除く地方路線のみに配分されることになった。この4路線は航空各社のドル箱であり、それとは別の土俵で路線誘致が競えることは他の地方空港にとっては大きなメリットである。 政権交代前の有識者懇談会の議論に沿った地方重視の決定になったとはいえ、残りの増 枠分は国際線に比重が移る見通しであり、市場原理を反映させる配分方式の導入も取りざたされている。羽田空港の国際ハブ化構想は日本の国際競争力を高める観点からも望ましい方向としても、地方路線に過大なしわ寄せが及んでも困る。羽田を拠点にして世界と地方、あるいは地方と地方がつながるよう、国際線、国内線のバランスある配分が求められよう。 小松空港は2014年度の北陸新幹線金沢開業に伴い、羽田便の利用者減は避けられな い。だが、羽田の発着枠拡大で国内路線網がさらに密になり、国際路線も充実すれば、羽田便は首都圏への足だけでなく、国内各地、海外への乗り継ぎ需要が高まってくる。能登空港の路線拡充を含め、県は羽田のハブ機能強化を好機ととらえ、その流れを地方活性化に生かす綿密な空港戦略を描く必要がある。
◎菅財務相就任へ 「財政規律重視」は困る
藤井裕久財務相の後任となる菅直人氏に求めたいのは、財政規律より景気回復を優先す
る姿勢の堅持である。日本経済は今、政府の宣言通り「緩やかなデフレ」の真っただ中にあり、政策を総動員してこれに歯止めをかける必要に迫られている。昨年末の臨時閣議で、経済成長戦略の基本方針が急きょ決まったのは、デフレ退治に全力を挙げるという決意の表れでもあろう。藤井財務相は積極財政の必要性に理解を示しながらも、元財務官僚らしく、財政再建論 者の顔が見えることがあった。菅氏は昨年10月、財政規律に関して「急いで新たな目標を立てるのは私の中では考えていない」と述べ、当面は民主党として新たな財政再建目標を設けない考えを表明したが、実際のところは、これまで何度も財政規律を重視する発言をしている。 積極財政を目指すと、長期金利が上昇すると懸念する声がある。だが、デフレ下にあっ て、インフレを必要以上に恐れるのはナンセンスだ。経済成長はインフレ下でのみ可能であり、デフレ脱却の目標とも合致する。これからしばらくは、行政の無駄を徹底的に排除する一方で、政府支出を増やし、35兆円ともいわれる需給ギャップを埋めていく覚悟が求められる。景気回復が確認されるまで財政再建の取り組みを封印すべきだ。 鳩山政権が初めて示した経済成長戦略は、まだ「画餅」に過ぎないが、評価に値する数 値目標が並んでいる。2020年度までの10年間に名目GDP(国内総生産)を473兆円から650兆円に引き上げ、環境分野で50兆円、医療・介護、健康関連で45兆円の需要創出を目指すという。満を持して意欲的な目標を掲げたのだから、十分な予算を付けてほしい。 今にも国家財政が破綻するかのような無責任な報道が、不安をあおり、個人消費は冷え 切っている。しかし、エコカー減税や家電のエコポイント制度のように魅力的で波及効果の高い施策を「国策」として多数打ち出せれば、消費マインドは一変するだろう。消費と企業生産を活発化させる知恵と大胆な財政出動が求められる。
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