史上初！箱根ランナーがＫ―１挑戦…大東大・清野篤

卒業後のＫ－１転向を表明した大東大の清野篤

　２日の箱根駅伝往路で１区を走った大東大の清野篤（２１）＝４年＝が５日、Ｋ―１挑戦をぶち上げた。過去に柔道、大相撲、プロ野球などからの格闘家転向は例があるが、箱根ランナーの転向は史上初となる。高校時代はサッカーで全国大会に出場し、大学入学後に始めた陸上でもわずか２年で箱根出場を果たした運動神経の塊。Ｋ―１の谷川貞治イベントプロデューサー（ＥＰ、４８）は「強くなるための環境は僕が考えます」とＫ―１デビューへのバックアップを明言した。

　箱根を目指して４年間走り続けてきた道で、清野は５日から“ロードワーク”を開始した。「これまで正月の箱根が目標だったが、これからは大みそかのリングが目標」。目指すは、立ち技格闘技の最高峰Ｋ―１の舞台だ。格闘技との出合いは、テレビで見た００年５月の桜庭和志ＶＳホイス・グレイシー。以降、あらゆる格闘技を見るようになり、自身もなりたいと夢を描いた。

２日、箱根駅伝の１区を走る大東大・清野（中）

　非凡な運動神経が、清野の野心を後押ししている。上尾東中時代はサッカー部に所属しながら、硬式テニスでも県大会出場。埼玉・西武台高では、ＦＷとして活躍。２年時（０４年）は高校総体で、３年時は高円宮杯全日本ユースでピッチに立つなど実力は全国レベルだった。ところが「大学で目立つなら箱根駅伝かラグビーだ」と箱根を目指し大東大に入学。入寮もできない「準部員」として陸上を始めると、２年時には「正部員」に昇格して箱根（１区）に出場。昨年はエースとして「花の２区」も任された。今年は再び１区を走り、１６位だった。

　清野のＫ―１挑戦に、谷川ＥＰはこれ以上ないエールを送った。「箱根は楽しみに見ていたスポーツ。その選手がＫ―１に興味を持ってくれるなんてこの上なくうれしい」とした上で、「身長が１６８センチなら『Ｋ―１ワールドＭＡＸ』（ミドル級＝７０キロ契約）ですね。魔裟斗選手も引退したし、新しいスター選手が出てきて欲しい」と期待を寄せた。さらには「強くなるための環境は僕の方で考えます。こちらでジムを紹介してもいい」。Ｋ―１デビューへの育成プランを含めたバックアップまで提案した。

　卒業後は、埼玉県内で消防士として働くことが決まっている。つい先日、陸上部のコーチから「格闘家なんて無理だ」と言われたが、「ますます燃えてきた」と清野は笑う。大学入学時に「箱根を目指す」と宣言した時も、やはり周囲から「無理だ」と言われた。だからこそ、挑戦する意味がある。

　「経歴同様、常識とは違うファイターになりたい。その方が自分の中で充実する。下から上がっていくことが好きなんで」。すでに格闘家の風格すら漂う強面（こわもて）の箱根ランナーは、格闘界で“成り上がり”を目指す。

　◆清野　篤（きよの・あつし）１９８８年１月１９日、埼玉・上尾市生まれ。２１歳。西武台高ではサッカー部のＦＷとして高校総体、高円宮杯に出場。大東大入学後から本格的に陸上を始める。箱根駅伝には３度出場し、０８年１区１３位、０９年２区１９位、１０年１区１６位。家族は両親と姉。１６８センチ、５４キロ。