藤井裕久財務相の辞任原因は表向き、体調不良とされたものの、民主党の小沢一郎幹事長との関係悪化や、旧自由党時代の「政治とカネ」の問題も指摘されており、心労が重なったとの見方もある。
93年に自民党を離党して以来、政治行動をともにしてきた藤井、小沢両氏だが、近年は疎遠な関係が目立っていた。政府・与党内で小沢氏の存在感が高まるにつれ、藤井氏への風当たりは強くなっていた。
鳩山由紀夫首相は6日夜、首相官邸で記者団に対し、藤井氏の辞任と小沢氏との関係について「全くそういう話ではない。(藤井氏)ご本人もすべて体調の問題だから、勘弁してほしいとのことだった」と否定した。ただ、与党内にも「なぜ予算審議が始まる前に辞めなければならないのか」(社民党の重野安正幹事長)と真意をいぶかる声が消えない。
藤井、小沢両氏の関係悪化は、昨年4月の西松建設献金事件を巡り、藤井氏が小沢氏の代表辞任を促したことがきっかけとされる。昨年10月に行われた小沢氏の記者会見では、藤井氏の財務相就任について「引退宣言した方がまた現役に連なり、しかも一番大事な国務大臣を担うことになっちゃった」との皮肉も飛び出した。
藤井氏はいったん昨年8月の衆院選に出馬しない意向を示したことがあり、小沢氏の発言は藤井氏の財務相起用を批判したものと受け止められた。小沢氏は昨年12月16日に10年度予算案への重点要望を申し入れるため、首相官邸を訪れた際、「本当に政治主導だったか疑問がある」と政府側を批判。ある党幹部は「あれは首相に言ったのではない。藤井さんに怒っていた」と解説する。
次期通常国会をにらみ、自民党は藤井氏追及の準備を進めていた。同党は独自調査で、藤井氏が旧自由党の幹事長時代、政党助成金から「組織活動費」名目で億単位の資金支出を受けたことを確認。大島理森幹事長は「(財務相を)辞めたとしても、国会で話をうかがわなければならない」と述べ、藤井氏の参考人招致を求める考えを示唆した。【鈴木直、木下訓明】
毎日新聞 2010年1月7日 東京朝刊