道反〜みちかえし〜


<オープニング>


「吸血鬼艦隊撃退おめでとう。影の城は今、海の底だ。ただ急ぎ対処しなければいけない問題も発生している」
 そう言って山科・修理(中学生運命予報士・bn0266)は能力者たちを見回した。
「君達も知っている通り、イワン・ロゴフ級揚陸艦とシャンプレーン級戦車揚陸艦のゴースト達が、それぞれ海岸から上陸している。それぞれ市街地に向っているらしい。戦った君達ならわかるだろうが、この数のゴーストが市街地に入れば、小さな市街地の一つや二つは全滅してしまうのは間違いない。そこで疲れているところ申し訳ないが、君達に迎撃をお願いしたい」
「頼まれるまでもございませんよぉ。どちらに向えばよろしゅうございますか?」
 机の端に腰掛けたまま、隼人司・衣都(西風の娘・bn0213)が問いかけた。そんな衣都にちらりと一瞥をくれると、修理は話を続けた。
「君達に迎撃して欲しいのは、シャンプレーン級戦車揚陸艦から上陸した妖獣戦車の一団だ。現在上陸した海岸から俵ヶ浦町方面へ道路北上している。この道路上、市街地へ接近する前に殲滅してくれ。数は妖獣戦車を含めて10体……」
 そう言うと修理は自分が予報したものを思い出そうとするように目を閉じた。
「妖獣戦車は吸血鬼艦隊撃退の時も見かけているから知っているだろう。戦車の上に2本の角と獅子のような鬣を持った妖獣が融合したような姿をしている。攻撃は戦車部分からの砲撃による遠距離爆発とキャタピラによる轢き潰し。キャタピラにあたると吹き飛ばされる場合もあるから注意してくれ。それから自身を回復してガードを高める能力もあるようだ。
 残りの8体の内、5体は猫科の妖獣だ。大きさは妖獣戦車の半分くらい。体毛が長いんだがその毛を飛ばして攻撃してくる。範囲攻撃ではないようだが、追撃の効果があるようだ。牙が鮫のように二重になっているから、かまれた時のダメージも大きい。
 最後の3体は青い色をした鰐だ。攻撃手段は強い顎を使った噛み付きだが、一度咥えこむと中々放さない。咥えられている間はダメージが来ると思ってくれ」
 修理は目を開けて、能力者たちを見回した。
「疲れているのに申し訳ないとは思う。だが、たくさんの命がかかっている。必ず殲滅してくれ」
 よろしく頼む。そう言って修理は能力者たちに頭を下げた。

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参加者
神楽・透(蒼き静かな炎・b03220)
レン・ホーリー(白き勇者・b23785)
犀遠寺・限(黄泉津の楔・b26238)
リヒテンシュタイン・ヴォルケルト(鱗ある羊・b33373)
サラ・ブライト(バーニングガール・b46470)
妹尾・縁(笑顔懸命に思い出す子猫・b54041)
橡・刻遥(闇檻・b61837)
宝条・志帆(首輪と奈落の霊獣・b64301)
NPC:隼人司・衣都(西風の娘・bn0213)




<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

神楽・透(蒼き静かな炎・b03220)
【目的】
吸血鬼艦隊の討ちもらしの殲滅。
非常に強敵ですががなばって打ち倒すよ。

【方法】
夜に戦闘があると思われるのでヘッドライトを用意していきます。

【隊列】
前衛:レン、犀遠寺、サラ
中衛:神楽、リヒテンシュタイン、妹尾
後衛:橡、宝条、隼人司(敬称略)

【戦闘】
戦車の爆発の攻撃を受けないように分散します。
前衛の方々に鰐を足止めしていただいている間に、中衛の僕たちががネコ型妖獣を射撃攻撃で集中攻撃します。
射撃攻撃はアビしかないのでアビを使用して攻撃します。
フレイムキャノンは奥義を使用して次に改と初めに仕掛けていきたいと思います。
遠距離攻撃に注意をします。
前衛が危険な状態になったら一時的に前衛にでて壁役を換わります。回復したらまた換わるという感じで。
猫を倒したら次は鰐を倒しにかかります。
その後戦車という流れです。
猫のほうがおそらく命中精度は高そうなので頑張りたいと思います。鰐、戦車は当たり難そうですので援護射撃になりそうです。
もし攻撃中にフレイムキャノンが尽きてしまったら前衛に加わります。
旋剣の構えはできるだけエンチャント付ける意味で使いたいと思います。術攻あまり高くないですし。
回復しないと危険と判断(6、7割ダメージを受ける)たら回復として使います。周囲で回復していただける状態であれば攻撃のほうに集中します。

状況判断は宝条さんにしていただきます。

撤退は4人重傷状態になったら残念ながら引きます。

レン・ホーリー(白き勇者・b23785)
■心情
白き勇者の二つ名に掛けて
人々に禍なす者は赦さないよ!
正義の光は
いつだって闇を照らすんだ!

■準備
ヘッドランプ

■隊列
前衛:レン、限、サラ
中衛:透、リヒテンシュタイン、縁
後衛:刻遥、志帆、衣都、サポ

戦車の爆発範囲攻撃を警戒し
各自の間隔を適度に開ける

■攻撃優先度
猫>鰐>行動不能状態の猫又は鰐>戦車>行動不能状態の戦車

■作戦
仲間と共に現地に急行

現地に近づいたら全員の照明を絞って隠密行動
遠距離攻撃が届く距離まで静かに近づき奇襲
全員の一斉攻撃で鰐1体を集中攻撃

近づいてくる敵を
陣形を整えて待ち伏せ
※その間に各自強化

前衛と範囲BS攻撃で
近づいて来た鰐を足止め

中〜後衛が中心となり
猫を集中攻撃で各個撃破

声掛けにより
仲間同士の意思疎通を図り
集中攻撃の対象を合わせたり
フリーとなった敵が後衛を狙った場合
近くの者が足止めに行ったり
また攻撃を当てやすくするため
仲間と連携した
同時攻撃や時間差攻撃を行う

■戦闘
奇襲時は『ダークハンド改』

戦闘時は
敵が近接する間に『白燐奏甲』
「光よッ!」

鰐の足止めをしつつ
可能なら『ダークハンド改』で猫を攻撃
無理なら『黒影剣改』で負傷中の鰐を攻撃

負傷の回復は仲間に一任し
敵の早期撃破を狙う
ただし
負傷が大きい場合や
回復手が忙しい場合は
『旋剣の構え』で回復

非常に大きいダメージを受け危険な場合は
中衛と一時交代することも視野にいれる

■撤退条件
戦闘不能者半数以上で
残存戦力による敵の殲滅が困難な場合

犀遠寺・限(黄泉津の楔・b26238)
心境
チッ(舌打ち)
よくも物騒な物を送ってくれた…
だが…(白燐光を放ち戦場を照らし)…俺達を甘く見るな。

【戦陣】前中後衛の3層構成。俺は前衛。
【戦略】猫→ワニ→戦車A→戦車Bの順での撃破を目標に
【戦術】刻遥の棘でワニ+猫か戦車を足止め。
前衛はワニがBS中は猫を攻撃、BS不発時は中後衛にワニを通さないよう足止めしつつ猫を攻撃。
中後衛は猫へ攻撃。
猫撃破後はワニ、次に戦車へと向かう。
注)齟齬がある場合は全体の方針に訂正。

【俺の行動】
俺は遠距離系の技は持っていない。
だから前衛で「奏甲と檻で回復とマヒとブレイク」を行う。
まずは奏甲を自分に、その次は前衛へ。
「援護する、粘れよ」
前衛に回復が必要な奴が出なかった場合は土蜘蛛の檻を仕掛ける。反動のBSは気にしない、隼人と宝条がいる。
「―逃がすものか。」
前衛の上に回復やBSを使うから目をつけられたらダメージは一番来るだろう…
だがそれも覚悟の上だ。
多少の傷は無言、凌駕したら血を拭って「―誰が通すか」と啖呵を切ってやる。

【撤退条件】
ギリギリまで粘りたい、だから「4人戦闘不能」になったら撤退を。敵が一、二体だけならもう少しだけ粘りたい。
そんな事になったら…拳を壁か地面に叩きつけるだろうな。
歯を食い縛り、無言で。

【勝利】
鬼面を外し、空を仰いで激闘が終わった事に安堵を。
静かに一息吐き緊張を解く。
…他の所も成功していろよ。

俺の装備や姿は最新のIGCを参考に。

リヒテンシュタイン・ヴォルケルト(鱗ある羊・b33373)
◇心情
俺ら勝ったんでしょ?あのおばさんどっか行ったんだし
だったらなんで負けたってのにまだ来るかね……めんどくっさ
厄介だけどまあ頑張るとしますか…これ以上先行かれちゃ困るのよ

サラと衣都とは二度目だな、知れてる分心強い

◇戦闘
俺は中衛で猫を
厄介な猫にはさっさと黙ってもらいたいところだな

戦車の爆発攻撃に巻き込まれないよう味方間である程度距離をとりつつ、
志帆の指示に常に気を払い同じ中衛の透と縁と声をかけ合って猫を暴走黒燐弾で攻撃
序盤はなるべく多くの敵を爆発に巻き込めるよう標的を定め、
ある程度体力が削れてからは巻き込む数より数減らしを優先
「…喰らい尽くしてやれ」

黒燐弾が尽きたら紅蓮撃に切り替え前衛に回る

前衛が突破されそう、もしくは突破された場合は、
前に出て態勢を立て直すまで壁の補強、または標的を鰐に変え援護射撃を行う

猫撃破後は前衛と共に鰐を攻撃
黒燐弾が尽きていない状態で複数を巻き込める位置にあれば黒燐弾を用い、
尽きたか尽きていなくても単体しか爆発範囲内にいなければ近寄って紅蓮撃を使用

鰐撃破後は戦車Aの撃破
戦車Bの足止め役二人のうちどちらかでも戦闘不能状態にあればBの足止めに回る

誰かが戦車の吹き飛ばしをくらった場合は届くようであれば受け止めを試みる
…女子ならまだしも野郎はなかなかきつそうだが

◇戦闘後
やっと終わったか…随分と長かった、な
とりあえずまあ気は済んだ

…二度とこの地を踏ませまいよ

サラ・ブライト(バーニングガール・b46470)
ここで食い止めないと戦った意味がないわ!
さっさと片付けて佐世保バーガー食べに行くのよ!

隊列
前衛:レン、カギリ、サラ
中衛:トオル、リヒテンシュタイン、ユカリ
後衛:コクヨウ、シホ、イト
撤退条件:4名以上の戦闘不能
撃破順:ネコ→ワニ→戦車A→戦車B
イトちゃんには後衛から回復と開戦時&撤退時の導眠符
の支援をお願い

戦闘前に簡単にすり合せ

あたしは前衛ね。盾役として突破を防ぐのよ
後ろみんなに任せたのよ!

立ち回り
初手で前に出ながら虎紋覚醒
進みすぎで敵から先制攻撃されないよう、あくまで迎え撃つ姿勢
後衛の回復範囲から出ないように位置を取る

ネコ→ワニ撃破まではワニのうち一匹を受け持ち、足止め
左右に気を配り、抜かれないように
他の前衛二人とも声を掛け合い、敵の突破をブロックする
周辺の敵の動きにも注意し、集中攻撃されそうなら防御優先

ネコ、ワニ撃破後
動けたら戦車Bの足止めに回る
吹き飛ばされる可能性に留意し、ペアと連携して絶対に敵をフリーにしないように

いずれの場合も足止めを最優先

攻撃他
足止め時は通常攻撃で牽制し、左右に気をつけ突破されないように
敵がこちらを無視しそうなら至近からフレイムキャノンで攻撃し、脅威と認識してもらう
目前の敵が状態異常で動けないなら、フレイムキャノンで集中攻撃対象への攻撃に加わる
体力が5割以下、集中攻撃の恐れがあれば8割以下で虎紋覚醒
虎紋覚醒後
可能な体力と状況であればアビリティを使用して攻撃

妹尾・縁(笑顔懸命に思い出す子猫・b54041)
「では、始めましょうか。」首に巻いた赤いマフラーにそっと手をやり「大丈夫…。」

戦闘メインの依頼なので戦術を中心にプレイングします。

戦闘時の位置・行動>中衛で主にいます。移動は常に行い、アビリティを使う場合のみ一時停止して攻撃します<使用アビ『呪いの魔眼改』
前衛に空きがあれば前に出て攻撃をします。アビは主に『紅蓮撃』を使用します。とはいえ接敵攻撃では最初にアビを使って一度下がり移動しながらまた前衛に戻る行動になりますね。
「戦闘は拙速を尊ぶ」といいますから、早めの行動を心がけます。「無謀な行為はしません。」

攻撃順位>猫→鰐→戦車です。
猫・鰐・戦車とも私自身アビ『呪いの魔眼改』でアビが切れるまで攻撃を行うつもりです。
猫と鰐にはとことんアビを撃っていくつもりですが、戦車は通常攻撃でいきます。
「戦車が足が弱いことは知ってますから。」

態度>常に冷静な感じでいきます。笑顔できなかった少し前のように無機質な行動を心がけながら、仲間のサポートは欠かさずにやります。
「手に赤手、顔に鬼面ですから感情のコントロールはできうると思いますね。」

終了時>勝利ならつい笑顔を見せてしまいますね。
「…まだまだ私は未熟ですね。笑顔をお見せするなんて。」

撤退時>4名の方が重傷すれば。その際私が重傷でなければ、重傷者を搬送します。
「本当は殿でもいいんですがすぐにつぶされる可能性が多いので…とにかく助けられる方を助けます」

橡・刻遥(闇檻・b61837)
◆心情
さて、これ以上被害を振りまかれる前に止めさせてもらおうか
まったく厄介なみやげ物を残してくれたものだ
遠慮なく、返品させてもらおう

◆配置
後衛
後衛同士は爆発範囲に入らないように分散

◆撤退条件
戦闘不能者4名以上で撤退
撤退の際は茨の領域を敵前衛に放って行動妨害
怪我人をかついで速やかに離脱

◆戦闘(序盤〜猫撃破まで)
「数が多いな…ならば、暗き深淵の檻に捕らわれて、大人しくしててくれ」
まず犀遠寺、隼人司(最初だけ)と協力して、バッドステータスで敵を足止めする
足止めはまずは鰐から

両方範囲に捕らえる得ることを狙いって茨の領域を使

ただ、猫→鰐を倒す間に戦車に自由に動かれるのも辛いので、
・戦車の砲撃の攻撃力が大きい場合や、集中攻撃されたりして危ない場合
・戦車が前に出てきた場合
・鰐が既に行動不能になってる場合
は、戦車の方に茨の領域を使用するよ

◆戦闘(猫撃破後)
猫撃破後は戦車の足止め
茨の領域を使用して戦車の足止めを狙い続ける
優先は倒さないほうの戦車

◆指示
後衛で敵の動きをよく見て、戦車の砲撃や敵の動きについて仲間に知らせ、仲間が動きやすいようにする

◆自己強化
隙(バッドステータス、回復が必要ないとき)を見て魔弾の射手で自己強化して回復量を増やす

◆回復使用タイミング
自分/味方のHPが半分になれば使用
回復役同士で声掛けして、回復する時の無駄を減らす
基本回復より足止めを優先、回復は足りない際に使用する

宝条・志帆(首輪と奈落の霊獣・b64301)
○心情
年末、年の瀬、大掃除のお時間です
ほんと大掃除も良い所です
ゴミはちゃんと持ち帰ろうって習わなかったですかね!
次にあったらクレーマー並みに文句言うですよ!もぅ

○作戦
他の方に準拠です

○配置
後衛で回復担当です
間隔は範囲攻撃に巻き込まないような距離を保つです

○戦闘
回復は任せてがんがん行くですよ
基本は対象を声に出し祖霊で
舞は皆が軽傷を負っている時と
BSを受けてる人が居て且つ他にHPが危険域になってる人が居ない時に使用です
回復が行き渡り手が空いた時のみ破魔矢で集中砲火に参加です
基本的に攻撃より回復が私の役割ですし
被害を皆無とは言わないですけど最小限に抑えたいですから

戦場全体の流れを常に把握して
誰がBSになった、倒れそう、倒れた
何がBSにかかった、脱した
何処が突破されそう、された等々
状況を事細かに声を出して皆に伝えるですね
倒れた時の代行者は後衛>中衛でLV順にしとくです

自己回復は一番ダメの大きい攻撃で回復しないと倒れる時に祖霊を使用です

状況把握とか反動・BS回復の為に連携はしないです

○使役
コペルは前・中衛の回復フォローをするですよ
ワニと相対するのは怖いかもだけど道を塞ぐように動いて攻撃を
戦車の時は後回しにしている方の前衛が吹き飛ばないように
ぎりぎり範囲攻撃に入らない位置で待機するですよ

○戦闘後
色々無事とは言い難いですが
取り敢えず片付いて何よりとするですかね
あのまま新年迎えるよりは幾分マシかとは思うですよ

隼人司・衣都(西風の娘・bn0213)(NPC)
 このキャラクターはNPC(マスターのキャラクター)です。プレイングはありません。




<リプレイ>


 その音が聞こえたら、何も知らない一般人の耳にはどんな音に聞こえるのだろうか。風が吹き付ける海岸沿いの道を、10体の妖獣の群れが駆けている。その群れから生まれる断末魔のうめきにも似たうなり声を、冬の海からくる風が運んでいた。
「よくも物騒なものを送ってくれた……」
 舌打ちをしながら犀遠寺・限(黄泉津の楔・b26238)は前方から迫ってくる妖獣戦車の一団を見据えた。上陸を許してしまったシャンプレーン戦車揚陸艦から上陸した妖獣戦車の群れの一つ。討ちもらせばその先にあるのは、妖獣たちによる死の宴だ。
「俺ら勝ったんでしょ? あのおばさんどっか行ったんだし。だったらなんで負けたってのにまだ来るかね……めんどくっさ」
「あれらが上陸した時には、まだオーさんと戦ってございましたからねぇ」
「……それ、誰?」
「ほら原初の吸血鬼の……オー……? オク……?」
「あのおばさんのこと?」
「はいはい、そのお人でございますよぉ」
 『赤と黒の淑女』と呼ばれるオクタンスをおばさん呼ばわりするリヒテンシュタイン・ヴォルケルト(鱗ある羊・b33373)と、名前を正確に覚えていない隼人司・衣都(西風の娘・bn0213)のどちらが失礼かと言う問題はさておき、とりあえず2人とも妖獣たちを前に臆していないことは確かのようだ。
「いない敵のことは考えないとして、ここで食い止めないと戦った意味がないわ!」
 どことなくのん気に見えないでもない衣都の隣で、サラ・ブライト(バーニングガール・b46470)はきっぱりと言った。その目は限と同じように真っ直ぐに前方を見据えている。近くなってきたうめき声と波打つような長い毛並みがぐんぐん大きくなってくる。
「もうすぐ、来るですよ」
 宝条・志帆(首輪と奈落の霊獣・b64301)の言葉を合図にレン・ホーリー(白き勇者・b23785)、限、サラの3人が能力者たちの1番前にでた。白い蟲たちがレンの2本の長剣に、そして限の鬼面と2本の宝剣に集まり淡く白い光を放ち始めた。サラの褐色の肌に虎紋が浮かび、一本に結わえられた長い黒髪が風に空き上げられたように揺らめき始めている。
「非常に強敵ですが、がんばって打ち倒しますよ」
 神楽・透(蒼き静かな炎・b03220)の言葉を背中に聞きながら、レンは頷いた。
「この二つ名に懸けて、人々に禍なす者は赦さないよ!」
 張り詰めた空気の中で、妹尾・縁(笑顔懸命に思い出す子猫・b54041)は静かに目を閉じて大切な人から貰った赤いマフラーにそっと触れた。
(「大丈夫……」)
 柔らかい感触が、高ぶっていた縁の心を鎮めていく。大丈夫。きっと、負けない。
「では、始めましょうか」
 その言葉の直後、露払いのように先陣を切っていた猫科の妖獣と3人の前衛が接敵した。


「数が多いな……ならば、暗き深淵の檻に捕らわれて、大人しくしいてくれ」
 橡・刻遥(闇檻・b61837)の言葉と共に5体の猫科の妖獣の後ろにいた妖獣戦車の1体、それと2体の青い鰐を巻き込んで爆発が起きた。その爆発の直後に現われた茨が3体の妖獣たちを覆っていく。その茨が現われるのとほぼ同じタイミングで、蜘蛛の糸が白燐蟲の光を白く反射させながら、戦場全体の敵に纏わりつき縛り上げていく。
「隼人司さん、動ける鰐を眠らせて下さい!」
「はいな!」
 志帆の指示で衣都が動ける青い鰐に導眠符を投げつける。この戦いでは修理の呼びかけで集められた能力者の数より、妖獣の数の方が多い。レンのサポートで来たアリアンを入れて数の上ではやっと五分。妖獣が能力者の動きを阻害する攻撃を仕掛けてくる以上、こちらも妖獣たちの動きを止めることができるならそれにこしたことはないのだ。能力者たちのアビリティの効果が破られるかどうかの刹那の時間に、志帆と刻遥の2人の瞳をこらしている。

「1番後ろの青鰐が一匹、それから左側の妖獣戦車が動けます!」
 叫ぶような志帆の指示を聞きながら、サラは動ける青鰐に向って地を蹴った。そのサラを狙って、猫科の妖獣の針のような長毛が飛ぶ。すんでの所で追撃の効果を持つ攻撃を避けると、サラは動ける青鰐に獣爪を振るった。衣都の導眠符の効果を打ち破った青鰐は、サラの攻撃をまともに喰らったが、あまりダメージを受けていないようだ。そして拳を受けたことで、サラを敵と認識すると、大きな口を開けてサラに襲い掛かってくる。

「……喰らい尽くしやがれ!」
 リヒテンシュタインの言葉と共に撃ち込まれた黒い弾丸が弾けた。飛び散った黒燐蟲たちは、4体の鮫歯の大猫に群がり、貪っていく。4体の妖獣たちはあるものはすぐ近くにいる、レンや限、そしてサラを噛み付き、あるものは長い毛を中衛、そして後衛に飛ばしてくる。幸いなことに、最初に茨に覆われた青鰐2体が、刻遥の茨の領域の効果から脱せないでいる。ついていないことがあるとすれば、妖獣戦車の一体が刻遥の、そしてアリアンの茨の領域の効果からやすやすと脱してしまっていることだ。結果としてサラが妖獣戦車と対峙するような形になってしまっていた。そのサラの周囲で、志帆の真ケルベロスベビーのコペルがサラを回復させている。
「時間はかけられねーな」
 小さな声で呟くと、リヒテンシュタインは再び黒燐蟲の弾丸を妖獣の群れに叩き込んだ。


「犀遠寺さん、後ろの妖獣戦車が動きそうです!」
 志帆の叫びに、限は自分が土蜘蛛の檻に閉じ込めた妖獣戦車に向き直った。運良く檻に閉じ込めた猫科の妖獣は、見えない蜘蛛の糸がまだ縛り上げているらしく、動くことはできない。だが妖獣戦車の方はじりじりと腕を動かし始めている。その向こうでレンがサラをはさみ討ちにしている鰐を攻撃しているのが見える。
「……逃がすものか!」
 前衛にいる限から生まれた蜘蛛の糸が、20メートルの範囲内にいる全ての敵に巻きつけ締め上げていく。僅かなきらめきを見せて蜘蛛の糸が消えた後、敵の何体かが動きを止めた。だが妖獣戦車の動きを止めるに至らない。後ろに、行かせるわけにはいかない。志帆の赦しの舞が封術を解くと限は妖獣戦車の進路上に立ち、もう一度土蜘蛛の檻を放った。

「動けなければ、ただの的ですね」
 そう言いながら透はフレイムキャノンを放つ。早く倒すために、透は精度の高いフレイムキャノンから先に使用していっていた。土蜘蛛の檻と茨の領域。2つのアビリティが敵の動きを止める。土蜘蛛の檻のマヒは茨の領域の締め付けに比べると解除されやすいが、戦場全体のゴーストに効果を及ぼすことが可能だ。問題があるとすれば、妖獣戦車が先ほどから何度も動きを取り戻していることだが、戦車の攻撃に対しては、仲間同士が距離を取り被害を最小限に食い止めている。
「さあ、さっさと燃え尽きて下さい!」
 何度目かのフレイムキャノンが命中すると、猫科の妖獣の一体がその姿を消した。

 強い意志を宿した瞳が、妖獣を見据えるとその体に無数の傷が浮かび上がる。縁は動きを封じ切れなかった妖獣たちを中心に呪いの魔眼を使用していた。妖獣の動きを阻害する2つのアビリティが、能力者たちをずっと有利な方向に導いている。それに加えて志帆が妖獣の動きを明確に伝えてくる。動ける妖獣から中衛と後衛にいる能力者たちの集中砲火を浴びて姿を消していっている。結果、思ったよりも早く鮫歯の大猫と青鰐の妖獣を殲滅できそうなのだ。
「妖獣戦車にアビリティがつかえるなら、この優位は突き崩せません」
 微かな笑みが、縁の顔に浮かんでいた。


「大掃除の完了は近そうです」
 戦場全体を見回しながら、志帆は呟いた。今、残っている敵は青鰐が1体と2体の妖獣戦車のみ。
「茨の領域はあとどれくらい残ってますか?」
「いや、後少し残ってはいるが……必要ないだろう」
 志帆の問いかけに答える刻遥の視線の先で、レンの攻撃を受けた青鰐が姿を消す。残っているのは妖獣戦車が2体。
「これなら私も攻撃に回れそうです」
 志帆は持っていた薙刀の柄でとんっと地を叩き、意識を集中した。生み出された破魔矢は吸い込まれるように妖獣戦車に向っていく。

「きゃぁぁっ!」
「サラさんっ!」
 サラの悲鳴と衣都の叫び声に、リヒテンシュタインは考えるより先に反応していた。妖獣戦車に吹き飛ばされたサラをすんでの所で受け止める。
「セーフ……女の子で良かった……」
 飛ばされたのが男子だったら支えるのはきつい。そのサラに衣都の治癒符が飛ぶ。
「リヒテン、ありがと」
 お礼を言って立ち上がるとサラは自分を吹き飛ばした妖獣戦車を睨みつけた。
「さっさと片付けて佐世保バーガー食べに行くのよ!」
 そう言い放つと同時に放たれたフレイムキャノンが命中すると、妖獣戦車を魔炎が包み込んだ。、だが妖獣戦車が咆哮をあげると、魔炎は瞬時に消えていく。
「もうっ! 腹が立つの!」

「他はともかく、妖獣戦車は一筋縄ではいかないか」
 妖獣戦車のキャタピラの攻撃を紙一重で避けながら、レンは呟いた。だがバッドステータスはともかく、ダメージは確実に入っている。それなら……。
「この剣、受けてみろ!」
 黒い軌跡を残しながら、レンは2本の長剣を妖獣戦車に振り下ろす。
「戦車の足が弱いことは知ってますから」
 レンが攻撃している妖獣戦車を、縁は側面から紅蓮撃で攻撃していた。始めは通常の攻撃を行っていたのだが、他のメンバーに比べて経験の浅い縁の攻撃は、当たりはするがダメージを与えるには至らない。倒すためには、アビリティを使用する他なかった。

「バッドステータスがかかりにくいのは、想像してましたけどね」
 苦笑いしながら、透はフレイムキャノンをリヒテンシュタインが攻撃している妖獣戦車に放った。それに志帆の破魔矢が重なる。魔炎に包まれた妖獣戦車が咆哮をあげた。だがその咆哮が終わる前に、再びリヒテンシュタインが暗がりの災禍と名づけられた鬼棍棒を叩きつけた。
「燃えつきやがれ、この外道!」
 強い衝撃と共に、土蜘蛛の妖気から生まれた炎が妖獣戦車を包み込む。鬼棍棒の力で吹き飛ばされた妖獣戦車の咆哮が断末魔の叫びへと変わる。そしてその姿が消えた。
 残った妖獣戦車が咆哮をあげる。だが固められた守りを打ち砕くように、レンの黒影剣が大きなダメージを与えていく。そして妖獣戦車の体が不意に揺れたと思うと、茨が覆い始めた。刻遥が最後の茨の領域を使ったのだ。茨に覆われていく妖獣戦車に、黒い軌跡を描くレンの長剣が振り下ろされる。
「正義の光は、いつだって闇を照らすんだ!」
 断末魔のうめきのようなうなり声が途切れ、妖獣戦車の姿が揺らめいた。そしてかき消すように、見えなくなった。
「厄介なみやげ物、返品終了」
 刻遥の声が、海沿いの道の静けさの中に消えていった。


マスター:さゆわらし 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知 的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/01/05
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