事件・事故・裁判

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

千葉・市川の英女性殺害:市橋容疑者の逃亡生活、孤独浮き彫り

 ◇肉体労働で稼ぎ整形繰り返し

 千葉県市川市で07年3月に英国人女性のリンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)が他殺体で見つかった事件で、死体遺棄容疑で指名手配されていた市橋達也容疑者(30)の逮捕から17日で1週間がたつ。拘置先で食事を取らず、容疑について黙秘を続ける市橋容疑者。2年7カ月にわたる逃亡中は「支援者がいるのでは」との憶測も呼んだが、肉体労働で稼ぎを得ては整形を繰り返す孤独な生活ぶりが次第に明らかになってきた。

 ■井上康介

 リンゼイさんの遺体発見から約11カ月後の08年2月28日、市橋容疑者とみられる男は現場から400キロ以上離れた神戸市北区の土木会社で働き始めた。

 同社によると、男は同年6月26日までの4カ月間、会社の寮にある3畳半の部屋に住み込んだ。「井上康介」と名乗り、当初は所持金がなかったようで給料を前借りしたが、無駄遣いは見られなかった。解体現場で砕かれたコンクリートからくぎなどを仕分ける仕事を黙々とこなし、休みの日はあまり外出せず、寮の食事の時もほとんど1人。顔は今月5日に千葉県警が公開した写真より「多少ぽっちゃりしていた。まゆ毛もあれほど下がっていなかった」(同社)という。

 4カ月間で手取り約60万円を得たが、同年6月27日に突然姿を消した。リンゼイさん事件は犯人逮捕につながる情報提供者に懸賞金を出す対象事件に指定されており、警察庁はこの日、指定を1年間延長。このニュースがメディアで流れたため、警戒して逃亡した可能性がある。

 ■素顔を隠す

 約2カ月後の昨年8月19日、市橋容疑者は大阪市西成区で土木会社(大阪府茨木市)が作業員を募集しているところに1人で現れ、採用された。

 関係者によると、当時の顔つきは既に公開写真に似ていた。神戸で稼いだ金で整形したとみられる。ここでも「井上康介」と名乗り、寮に住み込んで太陽光発電パネルを設置する仕事などに従事。常に黒縁眼鏡と野球帽を身につけ、口とあごにひげを生やしていた。カメラを向けられると顔をそむけ、風呂にも1人で入った。約1年2カ月たった先月11日、姿を消した。現金で100万円程度を蓄えていたとみられる。後日、寮から市橋容疑者の指紋が採取された。

 ■体は健康

 大阪の寮から姿を消した数日後の先月中旬、市橋容疑者は福岡市内の医療機関を訪問。整形手術を受けようとしたが予約していなかったため断られ、同24日に名古屋市内のクリニックで数十万円を支払い鼻を整形した。捜査関係者によると、福岡では「イイジマタケシ」、名古屋では「フジイカズオ」などと名乗ったという。

 今月5日に名古屋での整形時の写真が公開されると、同10日に大阪・南港から沖縄行きフェリーに乗ろうとしたが、待合室で眠っていたところを身柄確保された。現金約30万円を所持していた。

 現在、千葉県警行徳署に拘置中だが、出された食事を一度も口にせず、捜査幹部も意図を測りかねている。ただ水やお茶は口にしており、13日に医師の診察を受けた際は異常はなかったという。

 ◇裁判「親に頼らぬ」 接見した弁護士に

 市橋容疑者が今後の裁判などについて「親に頼る考えはない。連絡してほしくない」と話していることが分かった。16日に千葉市内で会見した菅野泰弁護士らが明らかにした。

 菅野弁護士らによると、千葉県弁護士会から派遣された弁護士2人が市橋容疑者の選任を受け、6人で弁護団を結成。逮捕翌日の11日から毎日接見している。当初、市橋容疑者は「弁護士を頼む経済力はない」と心配し、弁護士が「大丈夫」と答えると「よろしくお願いします」と言って親に連絡しないよう求めた。死体遺棄容疑の認否は弁護団にも明らかにしていないという。

 健康状態は問題なさそうで、弁護団から取り調べの様子を記録する「被疑者ノート」を差し入れると、メモをつけ始め、市橋容疑者は司法制度に関する質問もしたという。

 弁護団は13日、県警と千葉地検に取り調べの全面可視化を申し入れた。菅野弁護士は「取り調べが1日8時間に及ぶなど通常事件より長い。死体遺棄容疑での拘置中に殺人事件の取り調べ、自白強要が行われる可能性があるため」などと語った。【中川聡子、神足俊輔】

毎日新聞 2009年11月17日 東京朝刊

PR情報

事件・事故・裁判 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド