<?追跡>梅田にない「のっぽビル」――伊丹の航路で高さ制限

 
              
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<?追跡>梅田にない「のっぽビル」――伊丹の航路で高さ制限

2010/01/06配信

伊丹空港への着陸態勢に入る旅客機。奥は大阪・梅田のビル群
伊丹空港への着陸態勢に入る旅客機。奥は大阪・梅田のビル群

オフィスビルや百貨店、ホテルなどが超高層ビル群をなす大阪・梅田。現在も新たなビルの建設工事があちこちで進んでいるが、高さが200メートルを超えるビルは実は1棟もない。大阪市阿倍野区では高さ日本一となる約300メートルのビルが9日着工する。こうした「のっぽビル」が梅田に見当たらないのはなぜだろうか。

 「東京に比べるとビルの存在感がやや控えめですね」。東京都庁(約243メートル)を筆頭に二百数十メートルのビルが林立する東京・西新宿の風景を見慣れた千葉市の男性会社員(43)は梅田の空を眺め、こうつぶやいた。空中庭園展望台で有名な「梅田スカイビル」の高さは173メートル、2010年完成予定の「梅田阪急ビル」は187メートル。周辺で一番高いのは「ハービスOSAKA」の190メートルだ。

 大阪市内を見渡せば、府庁舎移転問題で注目された「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(住之江区、256メートル)をはじめ、港区弁天町や中央区北浜に高さ200メートル以上の高層マンションがある。14年には近鉄の「阿部野橋ターミナルビル」建て替えで、高さ日本一の超高層ビルが誕生する予定だ。

 梅田のビル群が“頭打ち”になっている謎を解くカギは、北東に約10キロ離れた大阪国際(伊丹)空港にある。航空機の安全のため、航空法が航路やその周辺の建物の高さを制限しているのだ。

 高さ制限は滑走路を中心にほぼ同心円状に広がり、半径4キロ以内は滑走路の標高から45メートル以下。半径4キロから16.5キロまでは滑走路から50メートル離れるごとに1メートルの割合で高くなり、梅田のJR大阪駅の北側は170〜180メートル程度、南側は180〜190メートル程度になる。


 阿部野橋ターミナルビルは「当初計画では270メートル前後の高さだった」(近鉄秘書広報部)。当時は高さ295メートルの制限区域にかかっていたためで、07年2月の規制区域の見直しで「幸いにも対象から外れて、日本一の高さにできた」(同)という。

 伊丹空港がもたらす規制は意外なものにも及ぶ。打ち上げ花火やアドバルーンなども、航空法上は「飛行に影響を及ぼす恐れのある行為」で規制対象。正月の伝統的な遊びであるたこ揚げにも、滑走路から半径3キロ以内で20〜60メートルといった高さ制限があり、空港事務所が周辺の教育委員会などに自粛を求めている。

 上空1800メートルまで揚がった実績のある「バイオカイト」を開発した森久エンジニアリング(神戸市)。毎年11月に開催しているたこ揚げ大会の会場を、創業地の兵庫県伊丹市から今年は神戸市内に移す。会場が空港の近くだったため、たこは200メートル程度しか揚げることができなかったが、移転により「子供たちが好きなだけ飛ばせるようになる」(森一生社長、51)。

 こうした規制を取っ払う可能性があるのは、大阪府の橋下徹知事が関西国際空港の活性化策として唱える伊丹空港「廃港論」。もし本当に伊丹が廃止されれば、梅田に300メートル級のビルが登場する日が来るのか――。梅田の不動産事情に詳しい大阪府不動産鑑定士協会の松永明副会長(54)に聞いてみた。

 松永さんは「梅田のオフィスの供給過剰は深刻。たとえ一等地でも高いビルを建てて採算がとれるかは疑問だ」と指摘。「東京では摩天楼にステータスを求めるかもしれないが、大阪人はそんなことをありがたがらないのでは」と分析してくれた。
(大阪社会部 茂木祐輔)
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