由布市湯布院町で昨年3月17日、7人が死傷した野焼き事故現場
由布市湯布院町塚原で昨年3月、野焼き作業中の男女4人が炎に巻かれて死亡した事故で、県警捜査1課と大分南署は6日、過失致死の疑いで、野焼きを実施した団体「塚原財産管理委員会」の当時の委員長(70)ら役員10人を大分地検に書類送検した。同署によると、事故現場での野焼きは初めての参加者がいたのに、事前に安全対策や作業手順を十分に伝えるのを怠ったことなどが過失に当たると判断した。
同署によると、書類送検されたのは湯布院町内の36~80歳の男10人。このうち1人は事故で死亡した。
送検容疑は、昨年3月17日午後、危険防止の具体的な対策を講じずに野焼きを実施し、作業に当たっていた70、80代の男性3人と女性1人を焼死させた疑い。このうち3人は、同所で作業するのは初めてだった。
事故ではこのほかに3人がけがをした。作業には地区住民ら約70人が参加していた。当時の市条例では火入れが禁じられていた乾燥注意報が出ていた。
野焼きは牧野を守るために集落で続く春の伝統行事だが、事故を受けて「野焼きの時季は乾燥注意報が出ている日が多く、(従来の)市条例では野焼き自体ができなくなる」と懸念の声が上がっていた。
由布市は昨年12月、条例を改正し、注意報の発令に関係なく、火入れ責任者の判断で実施できるようにした。また、事前演習を行い、参加者同士で作業手順や避難経路などを確認することを義務付けた。
県警は当初、業務上過失致死傷の疑いもあるとみて捜査を始めたが、最終的には過失致死容疑で塚原財産管理委員会の役員全員を書類送検した。「業務性」は薄いと判断したためだが、背景には、集落の春の風物詩として長年続いてきた野焼きの“特性”があった。
捜査関係者によると、同委員会は、地区住民が野焼きの時にだけに集まり、役員は輪番制で務める団体で、それぞれの責任が明確でない。さらに、野焼きの作業は日常的に反復、継続するものではなく、「業務」としての性格は薄いと結論付けた。
野焼きの作業手順は長年の経験則に基づいて行われ、明確化されたものはないという。ただ、今回は人出不足などに伴い、事故が起きた現場でこれまで作業をしたことがない住民も参加させるなど、例年とは異なる部分があったのに、事前に安全策を話し合わないなど、安全への配慮を欠いたことが事故につながったと判断した。
過失致死罪は50万円以下の罰金で、業務上過失致死傷罪(5年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金)よりも法定刑が軽い。
※無断転載を禁じます。 当ホームページに掲載の記事、写真等の著作権は大分合同新聞社または、情報提供した各新聞社に帰属します。
Copyright (c) 2008 OITA GODO SHIMBUNSHA