記者会見する習近平国家副主席=12日午後、北京・人民大会堂、代表撮影
【北京=市川速水】中国の習近平(シー・チンピン)・国家副主席(56)が12日、北京で朝日新聞など日韓の一部報道機関と会見した。14日からの訪日について「戦略的互恵関係をさらに発展させるため各界と幅広く接触したい」とし、日中間の懸案として「食品の安全と東シナ海(共同開発)問題」に言及、実務レベルの協力を通じた解決の必要性を強調した。北朝鮮の核問題をめぐる6者協議については「中国は建設的な役割を発揮する」と、早期再開に自信を示した。
胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席の後継に最有力視されている習氏が外国メディアの取材に応じるのは2008年3月の国家副主席就任後、初めて。
日中間の問題として習氏が食品安全に言及したのは、昨年の中国製毒入りギョーザ事件が日本の対中感情悪化に結びついているとの認識を示したものだ。「(食品の安全性を保つ)協力枠組みをすでに構築しており、協議を進めることが食品貿易の発展に寄与する」と述べた。
東シナ海のガス田の問題では「両国は昨年、合意と共通認識を得た。地域の情勢安定に寄与するものだ。中国は基本合意を維持しており、問題を適切に処理したい」と語り、共同開発で歩調を合わせることを約束した。
習氏は、鳩山由紀夫首相が提唱する東アジア共同体構想を「東アジア地域協力を重視した姿勢と理解する。アジア一体化への大きな流れだ」と評価する一方、「現実に立脚して長い目で合意を形成していくべきだ」と、慎重な構えも見せた。
習氏の訪日にあたっては、天皇陛下との会見の日程調整をめぐる日本政府内での意見対立が表面化したが、習氏は「(訪問国の)政府、各界の方々の周到な手はずに心より厚く感謝する」と、日本側の準備に謝意を示した。同席した中国政府幹部は「(天皇との会見が)日本で話題になっていることは報道で知った。基本的には日本国内の問題だ」と話した。