きょうの社説 2010年1月6日

◎ルーブルと合同展 創造都市金沢の成長の糧に
 金沢市の金沢21世紀美術館で4月末から、パリのルーブル美術館との合同企画展が開 催されることになった。フランスを代表する世界有数の美術館との合同企画展は金沢21世紀美術館に箔を付け、国際的知名度を高めると期待される。それだけにとどまらず、金沢というまちを、創造都市と呼ぶにふさわしい「寛容性」と「進取の気風」に富んだ都市に一段と成長させる糧としたい。

 寛容性は技術などとともに経済を成長させる重要な一要素とされる。有能な人材をその 地域に多く集められるかどうか、つまり、開放的で包容力のある地域であるかどうかが経済の発展を大きく左右するからで、それは都市そのものの成長要素でもある。

 金沢市は昨年、ユネスコの創造都市(クリエイティブ・シティーズ)ネットワークに、 クラフト分野で登録された。その真価が問われるのはこれからであり、文字通りクリエイティブな活動で人々を引きつけられるかどうかが一つの鍵といえる。金沢21世紀美術館とルーブル美術館との連携活動は、金沢をそのような都市に高めていく契機、推進力になろう。

 今回の合同展は、ルーブル美術館の名作を集めた従来型の巡回展と違い、ルーブルの学 芸員が企画段階から参画するという。美術館同士の人的交流の道を広げる取り組みであり、評価できる。

 計画では、欧州と日本を代表する2人の現代彫刻家の作品を中心に、ルーブル美術館や ベルギー・アントワープ王立美術館の宗教画や肖像画なども出品されることになっている。伝統・古典と現代、西洋と東洋の対比、調和を浮かび上がらせ、創造力を刺激する展覧会になりそうである。日本とフランスの交流は日仏修好通商条約の締結から150年以上の歴史を持つが、これから、金沢ならではの新しい芸術文化交流のページを開き、積み重ねていってほしい。

 また、ユネスコの創造都市登録の眼目は、グローバルな都市ネットワークを生かして文 化産業を発展させることにもある。ルーブル美術館との交流を機に、ビジネスにつながる国際的な都市連携に弾みを付けたい。

◎「陸山会」の土地購入 小沢氏から説明聞きたい
 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる問題の焦点は、購 入資金の出所や取り引きの流れが不透明で、分かりにくいところにある。東京地検特捜部が小沢氏に対し、任意聴取に応じるよう要請する方針を固めたのも当然だろう。小沢氏側は当初、土地代金について「金融機関から借りた4億円を充てた」と説明していたが、実際には融資を受ける前に支払いは終わっていた。小沢氏は巨額資金をどこから調達したのか、なぜ土地購入を理由に金融機関から金を借りる必要があったのか、小沢氏自身の口から説明を聞きたい。

 特捜部は、当時の事務担当者や公設第1秘書らを任意聴取する一方、小沢氏の地元岩手 県で建設中の胆沢ダムの工事に参入しているゼネコン各社の関係者らについて任意で聴取を始めた。土地代に充てられた小沢氏の個人資金は、小沢氏の複数の政治団体から、陸山会の複数の口座に数千万円単位に分散して入金されていた。特捜部は、これらの資金の原資が業者側から小沢氏側への「裏献金」ではないかと疑っている。

 小沢氏の秘書を務めた民主党の石川知裕衆院議員は、任意聴取に対し、「小沢氏の個人 資金約4億円を土地代金に充てた」と説明した。しかし、これらは政治資金収支報告書に記載されておらず、出所が分からない。小沢氏の個人資金で実際に土地が購入され、小沢氏名義で金融機関から融資を受けてもいるのに、小沢氏が事情を知らないとは考えにくい。

 石川議員は、既に4億円以上の不記載があったことを認めた。特捜部は政治資金規正法 違反罪での在宅起訴を検討しているというが、問題の核心は、形式上の不記載にあるのではなく、不可解な資金の流れの解明にある。

 小沢氏は西松建設の違法献金事件でも「黙して語らず」の姿勢が目立った。今回も積極 的に説明責任を果たそうとする意欲が見られないのは残念だ。これでは与党の責任者として、また政治家として失格と言わざるを得ない。民主党内から小沢氏に対し、説明を求める声が出ないのも情けない。