2010年01月06日
陸上新名言:「1区から4区はもういらないよ。5区だけでいい」(瀬古利彦)
山の神だけじゃダメなら、ほかの神も出しましょう!
お正月の大きなお楽しみといえば箱根駅伝。今年は東洋大学が、5区山登りで柏原竜二クンが2年連続の区間新記録となる快走を見せるなどして、見事に総合優勝。柏原クンも「山の絶対神」「箱根山の天狗」「登山家」など多くの二つ名をもらうほど、世間に大きなインパクトを与えました。「山を制する者が箱根を制する」とはよく言いますが、5区の出来が往路優勝・総合優勝の趨勢を握るほど、5区が重要になってきています。歯に衣着せぬ発言でおなじみの瀬古利彦氏などは「1区から4区はもういらない。5区だけでいい」とやけぱっちで言い放つほど。
「世界に通じる選手を育成する」という名目で5区の距離延長が行われた2006年以降、5区で勝負が決する傾向が強いのは確か。とはいえ、2006・2007年は距離延長以前の2005年時点に当時の区間記録&11人抜きを達成した今井正人さん(順大)がおり、2009・2010年は柏原クンがいたということで、たまたま歴史に残る山の神2人が連続で出ただけとも考えられます。山登りの特殊区間で大きな差がつくのはゲームバランスとして極端なのかもしれませんが、それが箱根です。毎年山登りがあるのはわかっているのですから、どうしても箱根で勝ちたいなら、そういう対策を考えればいいと思うのです。
それに、箱根駅伝から世界に通じる長距離選手を輩出する必要もありません。箱根に関してはよく「20キロなんて中途半端な距離を走らせるからトラックにもマラソンにも勝てない中途半端な選手が育つ」なんてことで、日本長距離界の不振の原因と言われたりします。今度は「山登りが上手い選手なんか育てても五輪では勝てない」などと言われるのでしょうか。仮にそうだったとして何の問題があるでしょう。五輪で金を取ることがすべてではありません。テレビ視聴率で言えば、箱根駅伝も五輪のマラソンに匹敵する大舞台。4年に1回の五輪マラソンより、毎年やる箱根の方が注目度は上かもしれません。五輪につながらない競技に打ち込むのは無駄なのか。軟式テニスはプロになれないから、軟式野球はプロになれないから、クリケットは五輪にないから無駄なのか。そもそも、長距離を走ること自体が無駄の塊。車の方が断然速いですし。やる側が面白く、見る側が面白い舞台があるなら、それが「五輪につながらない無駄な競技」だったとしても、いいじゃありませんか。
むしろ僕は、平地で10000メートルの力を競い合う駅伝より、山アリ谷アリ、海風が吹きつけたり、雪の坂道を駆け下りたり、何だったら砂浜を走ったり、舗装ナシの山道を走ったりする、「特殊区間」で争う駅伝にこそ面白さがあると思います。色々な得手不得手を持った選手が、自分の個性を活かし、持ちタイムでは計算できない勝負を演じる漫画のような展開。そういう意味で現在の5区は非常に面白い区間。どうしても変更をしたいなら、山の神以外の「神」が登場できるような特殊区間を、ほかにも設けてもらいたいところ。花の2区を40キロ区間にしてしまえば、山の神1人の頑張りでは勝てなくなるかもしれませんし。
ということで、「箱根は箱根、五輪は五輪」と思いつつ、今年の山の神の圧倒的な力について、区間タイムなどからその圧倒ぶりをチェックしていきましょう。
◆柏原クンを金で引き抜いたら、半分くらいのチームが優勝争いだなww
山の神は、一体どれほどの力を持っているのか。本当に5区だけで勝負が決まっているのか。「また早稲田擁護か」「負け惜しみ乙であります」「土でも食ってろ」とは思いつつ、日本陸上界の重鎮・瀬古さんの発言を確認もせず唾棄するわけにもいきません。まずは各区間タイムやら、5区での差のつき具合などを確認し、そのうえで「早稲田涙目www」とやることにしましょう。
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●5区をのぞいた場合の順位とタイム差
5区だけで勝負が決まっているというなら、まずは5区をカットしてみましょう。ここで大きく順位変動があるようなら、再検討の余地があるかもしれません。
●各区間での1位と2位以下の差のつき具合
5区とそれ以外で、どれほど差のつき具合は変わるのかを見れば、全体に対してどれほど影響の大きい区間かわかるはず。ということで、各区間の1位タイムと2位以下の差をまとめてみます。
ただし、これは山登りという特殊区間に適応したスペシャリストがいるかいないかというチームの総合力の差でもあります。インカレで10000メートルの上位に入賞するほどの力量がある柏原クンに、山登りの類希なる才能があり、それを5区に起用できる東洋が強かったのだと認めるしかないのでは。箱根の山登りは昨日今日始まったことではありません。距離短縮なんて女々しいことを言わずに、柏原クンに対抗できるスペシャリストを発掘してもらいたいものです。
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●柏原クンが他の選手とトレードされた場合
これだけ5区で差がついているなら、柏原クン級の山の神がいれば、ほかのチームにもチャンスがあるかもしれません。柏原クンが東洋大学に入ったのもほとんどたまたまなのですから、全大学にチャンスはあります。仮に5区のほかの選手と柏原クンが入れ替わった場合、どのような変動があるかを見てみました。
各チームの5区の選手と柏原クンを入れ替えた場合、7位の早稲田まではそれだけで総合優勝へと順位をあげ、8位以降のチームに柏原クンがトレードされて、ようやく駒沢が総合優勝に繰り上がるという結果に。シード権争いでも、総合18位〜20位の大東大・法政大・亜細亜大の3校を除いて、柏原クンさえ強奪できればシード圏内に突入できるという結果に。柏原クンの凄さとともに、大東大・法政大・亜細亜大はどうにもならなかったのだと確認でき、ある意味でスッキリしました。
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それはそれとして、もう少しエキサイティングな駅伝が見たいという気持ちもあるのは事実。駅伝ではたすきをつなぐことを優先するあまり、前半は慎重に入る選手がほとんどで、展開に面白味を欠くきらいがあります。また、往路の特殊区間で大きな差をつけ先頭に立った場合、復路はマイペースで走れるようになり、抜きつ抜かれつなどない、単調なレースとなる傾向も。特に、ある程度タイム差がついてしまったあと、各区間の順位争いがほとんど無意味になるのは残念なところ。貯金を使いながらマイペースで走る姿よりも、自分の限界まで攻め、ひとつでも上の順位を狙う走りの方が、見ていても面白いと思うのですが。
例えば、各区間の順位を「順位点」のような形で換算し、その合計によって優勝を決めるような方式ならどうでしょう。これならどこか1区間で大ブレーキがあっても挽回がききますし、集団での競り合いなどもしびれる場面になるかもしれません。9区・10区あたりが非常に盛り上がりそうな気がします。
●順位点で、順位を決めた場合
各区間での順位を合計し、数値の小さいものを上位として、今大会の結果を再ソートしてみます。柏原クンのアドバンテージが消えて、東洋が一気に下位に沈むかもと期待したのですが…
まぁ、とにもかくにも今回の箱根駅伝は、山登りだけではなく総合的に見ても、東洋が一番強かったことに変わりはないと言えそうです。他大学のみなさんは「距離延長」だの「山登り偏重」だのと愚痴を言うのはやめた方がよさそうですね。
瀬古さんも愚痴るのはやめて、黙って土でも食べててくださいね!
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お正月の大きなお楽しみといえば箱根駅伝。今年は東洋大学が、5区山登りで柏原竜二クンが2年連続の区間新記録となる快走を見せるなどして、見事に総合優勝。柏原クンも「山の絶対神」「箱根山の天狗」「登山家」など多くの二つ名をもらうほど、世間に大きなインパクトを与えました。「山を制する者が箱根を制する」とはよく言いますが、5区の出来が往路優勝・総合優勝の趨勢を握るほど、5区が重要になってきています。歯に衣着せぬ発言でおなじみの瀬古利彦氏などは「1区から4区はもういらない。5区だけでいい」とやけぱっちで言い放つほど。
「世界に通じる選手を育成する」という名目で5区の距離延長が行われた2006年以降、5区で勝負が決する傾向が強いのは確か。とはいえ、2006・2007年は距離延長以前の2005年時点に当時の区間記録&11人抜きを達成した今井正人さん(順大)がおり、2009・2010年は柏原クンがいたということで、たまたま歴史に残る山の神2人が連続で出ただけとも考えられます。山登りの特殊区間で大きな差がつくのはゲームバランスとして極端なのかもしれませんが、それが箱根です。毎年山登りがあるのはわかっているのですから、どうしても箱根で勝ちたいなら、そういう対策を考えればいいと思うのです。
それに、箱根駅伝から世界に通じる長距離選手を輩出する必要もありません。箱根に関してはよく「20キロなんて中途半端な距離を走らせるからトラックにもマラソンにも勝てない中途半端な選手が育つ」なんてことで、日本長距離界の不振の原因と言われたりします。今度は「山登りが上手い選手なんか育てても五輪では勝てない」などと言われるのでしょうか。仮にそうだったとして何の問題があるでしょう。五輪で金を取ることがすべてではありません。テレビ視聴率で言えば、箱根駅伝も五輪のマラソンに匹敵する大舞台。4年に1回の五輪マラソンより、毎年やる箱根の方が注目度は上かもしれません。五輪につながらない競技に打ち込むのは無駄なのか。軟式テニスはプロになれないから、軟式野球はプロになれないから、クリケットは五輪にないから無駄なのか。そもそも、長距離を走ること自体が無駄の塊。車の方が断然速いですし。やる側が面白く、見る側が面白い舞台があるなら、それが「五輪につながらない無駄な競技」だったとしても、いいじゃありませんか。
むしろ僕は、平地で10000メートルの力を競い合う駅伝より、山アリ谷アリ、海風が吹きつけたり、雪の坂道を駆け下りたり、何だったら砂浜を走ったり、舗装ナシの山道を走ったりする、「特殊区間」で争う駅伝にこそ面白さがあると思います。色々な得手不得手を持った選手が、自分の個性を活かし、持ちタイムでは計算できない勝負を演じる漫画のような展開。そういう意味で現在の5区は非常に面白い区間。どうしても変更をしたいなら、山の神以外の「神」が登場できるような特殊区間を、ほかにも設けてもらいたいところ。花の2区を40キロ区間にしてしまえば、山の神1人の頑張りでは勝てなくなるかもしれませんし。
ということで、「箱根は箱根、五輪は五輪」と思いつつ、今年の山の神の圧倒的な力について、区間タイムなどからその圧倒ぶりをチェックしていきましょう。
◆柏原クンを金で引き抜いたら、半分くらいのチームが優勝争いだなww
山の神は、一体どれほどの力を持っているのか。本当に5区だけで勝負が決まっているのか。「また早稲田擁護か」「負け惜しみ乙であります」「土でも食ってろ」とは思いつつ、日本陸上界の重鎮・瀬古さんの発言を確認もせず唾棄するわけにもいきません。まずは各区間タイムやら、5区での差のつき具合などを確認し、そのうえで「早稲田涙目www」とやることにしましょう。
つ瀬古さんのタメ息、中山クンのハナ息(楽天市場)
●5区をのぞいた場合の順位とタイム差
5区だけで勝負が決まっているというなら、まずは5区をカットしてみましょう。ここで大きく順位変動があるようなら、再検討の余地があるかもしれません。
<5区を除いた場合の順位>駒沢が首位に躍り出るも、1位から5位までの顔ぶれは変わらず。ちなみにシード権争いについても、順位の変動こそあるものの10位までの顔ぶれは変わりませんでした。5区で勝負が決するという言い方は可能かもしれませんが、ほかの区間で弱ければどうにもならないことに変わりはありません。
1位:駒沢大(2位)9:52:12
2位:東洋大(1位)9:53:05
3位:東京農大(5位)9:53:39
4位:山梨学大(3位)9:54:30
5位:中央大(4位)9:54:30
●各区間での1位と2位以下の差のつき具合
5区とそれ以外で、どれほど差のつき具合は変わるのかを見れば、全体に対してどれほど影響の大きい区間かわかるはず。ということで、各区間の1位タイムと2位以下の差をまとめてみます。
<各区間での区間1位と2位のタイム差>柏原クンが5区でほかのチームにつけた差は圧倒的。最少で区間1位と2位の差が1秒という区間(8区)もあるなかで、実に4分8秒もの差を叩き出しました。これはほかの区間であれば区間1位と最下位の差に匹敵するものであり、1区・8区にかぎっては、柏原クンが2位につけた差よりも全体の差が小さいという状況。ちなみに、5区について言えば、区間2位の山梨学院と最下位の日本大との差が486秒ありますので、柏原クンの存在を除いても、もっとも差がつきやすい区間となっています。総合タイムで決着をつける以上、5区の存在感はかなり大きいもの。
1区:+13秒
2区:+31秒
3区:+18秒
4区:+48秒
5区:+248秒
6区:+4秒
7区:+31秒
8区:+1秒
9区:+48秒
10区:+50秒
<各区間での区間1位と最下位のタイム差>
1区:+211秒
2区:+294秒
3区:+301秒
4区:+280秒
5区:+734秒
6区:+279秒
7区:+358秒
8区:+177秒
9区:+300秒
10区:+278秒
ただし、これは山登りという特殊区間に適応したスペシャリストがいるかいないかというチームの総合力の差でもあります。インカレで10000メートルの上位に入賞するほどの力量がある柏原クンに、山登りの類希なる才能があり、それを5区に起用できる東洋が強かったのだと認めるしかないのでは。箱根の山登りは昨日今日始まったことではありません。距離短縮なんて女々しいことを言わずに、柏原クンに対抗できるスペシャリストを発掘してもらいたいものです。
つ山の神(楽天市場)
●柏原クンが他の選手とトレードされた場合
これだけ5区で差がついているなら、柏原クン級の山の神がいれば、ほかのチームにもチャンスがあるかもしれません。柏原クンが東洋大学に入ったのもほとんどたまたまなのですから、全大学にチャンスはあります。仮に5区のほかの選手と柏原クンが入れ替わった場合、どのような変動があるかを見てみました。
各チームの5区の選手と柏原クンを入れ替えた場合、7位の早稲田まではそれだけで総合優勝へと順位をあげ、8位以降のチームに柏原クンがトレードされて、ようやく駒沢が総合優勝に繰り上がるという結果に。シード権争いでも、総合18位〜20位の大東大・法政大・亜細亜大の3校を除いて、柏原クンさえ強奪できればシード圏内に突入できるという結果に。柏原クンの凄さとともに、大東大・法政大・亜細亜大はどうにもならなかったのだと確認でき、ある意味でスッキリしました。
つ欲しいのは、あなただけ。(楽天市場)
それはそれとして、もう少しエキサイティングな駅伝が見たいという気持ちもあるのは事実。駅伝ではたすきをつなぐことを優先するあまり、前半は慎重に入る選手がほとんどで、展開に面白味を欠くきらいがあります。また、往路の特殊区間で大きな差をつけ先頭に立った場合、復路はマイペースで走れるようになり、抜きつ抜かれつなどない、単調なレースとなる傾向も。特に、ある程度タイム差がついてしまったあと、各区間の順位争いがほとんど無意味になるのは残念なところ。貯金を使いながらマイペースで走る姿よりも、自分の限界まで攻め、ひとつでも上の順位を狙う走りの方が、見ていても面白いと思うのですが。
例えば、各区間の順位を「順位点」のような形で換算し、その合計によって優勝を決めるような方式ならどうでしょう。これならどこか1区間で大ブレーキがあっても挽回がききますし、集団での競り合いなどもしびれる場面になるかもしれません。9区・10区あたりが非常に盛り上がりそうな気がします。
●順位点で、順位を決めた場合
各区間での順位を合計し、数値の小さいものを上位として、今大会の結果を再ソートしてみます。柏原クンのアドバンテージが消えて、東洋が一気に下位に沈むかもと期待したのですが…
<1位を1点、20位を20点とし、合計が少ない順に並べた場合>うーん、こまかい変動はあるものの、総合優勝もシード校の顔ぶれも変わらず。何か、いろいろこねくり回したわりに「一番強かったのは東洋大」「山登りがなくても大して変わらん」「山を制する者が箱根を制する」という結論を得て、大東大・法政大・亜細亜大はどうにもならなかったのだと確認しただけの結果に。うーん、時間の無駄だったかもしれません…。
1位:東洋大60
2位:駒沢大62
3位:山梨学大72
3位:城西大72
5位:東京農大73
6位:中央大77
7位:早稲田大88
8位:青学大91
9位:明治大96
10位:日体大98
11位:東海大109
12位:帝京大116
12位:日本大116
14位:中央学大121
15位:関東学連127
16位:上武大131
17位:専修大133
18位:大東大138
19位:法政大145
20位:亜細亜大175
まぁ、とにもかくにも今回の箱根駅伝は、山登りだけではなく総合的に見ても、東洋が一番強かったことに変わりはないと言えそうです。他大学のみなさんは「距離延長」だの「山登り偏重」だのと愚痴を言うのはやめた方がよさそうですね。
瀬古さんも愚痴るのはやめて、黙って土でも食べててくださいね!