淡水で成長するウナギは、深い海に生息していた祖先から進化した可能性が高いことを、東京大海洋研究所などが遺伝子解析で突き止めた。海で生まれたウナギは川に上り、再び海に戻って産卵するユニークな回遊ルートをとるが、二つの異なる環境で生息する謎の解明につながりそうだ。6日付の英科学誌「バイオロジー・レターズ」(電子版)に掲載された。
ニホンウナギを含むウナギ属は19種ある。いずれも川や湖など淡水で成長した後、数千キロも移動し外洋で産卵する。同大などの最近の調査で、ニホンウナギはグアム島近くのマリアナ諸島付近が産卵場所だと特定された。
同研究所の西田睦教授(分子海洋生物学)らはウナギがどのように進化し、なぜ川と海を行き来するようになったのかを解明するため、ウナギやその近縁種計56種の遺伝子を解析、全塩基配列を明らかにした。その結果、浅い海に生息し外見はウナギとよく似ているアナゴやハモ、ウツボよりも、ウナギと名がつくもののウナギ属ではないシギウナギ、ノコバウナギなどの深海魚に配列が近かった。
研究チームは、深海に生息していたウナギの祖先が、深海よりも餌の豊富な熱帯や亜熱帯の淡水域にたどり着き、そこで成長するように進化したと推測。一方で、産卵場所にはすみ慣れた敵の少ない深海を選んだことが、回遊ルートの起源とみている。
研究チームの東京大の塚本勝巳教授(海洋生物学)は「長年の謎だった回遊行動の出発点が分かった。08年の水産庁調査でも、マリアナ諸島の深海でニホンウナギの親が見つかるなど、さまざまな野外調査の結果とも合致する」と話している。【下桐実雅子】
毎日新聞 2010年1月6日 10時29分(最終更新 1月6日 10時37分)