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続・児童虐待

柳美里

こうやって、鳥籠に手を突っ込んで、バタバタバタバタ籠の中を逃げ回る鳥をつかんで……風呂の水に沈めたり、首を捻ったりして……。

長谷川 自分が飼った鳥は初めてだったんですね。

 初めてですね。

長谷川 自分の鳥を、もしかしたら自分が夢の延長で殺してしまったのかもしれない。でも、それが、鳥籠を家に置いておけない、というのに?がるのは、何故なんだろうね? たとえば、次の鳥をまたかわいがりたい、そのために鳥籠をとっておくという発想は?

 ない、ですね。もう鳥は飼えない、飼ってはいけない、そう思ったんです。雛鳥を育てるのは大変なんですよ。ヒヨコ電球で保温して三十度弱ぐらいに保たないといけないし、朝から夜まで餌をとってきて与える親鳥みたいに三時間置きに給餌しないと、死んでしまう。振動を伴う物音や足音も駄目なんです。彼と息子が眠ったあとに、忍び足で鳥の部屋に行って、あわ玉をお湯に溶いて、雛の首の下の?嚢が頭の大きさになるまで食べさせる……雛から幼鳥になって、ひとり餌への移行もうまく行って、換羽も終わって、うまく飛べるようになって、そろそろ繁殖期にはいるから、つぼ巣を用意しないとな、と思っていた矢先だったんですよ。

長谷川 何年かは生きたんですね。

 いえ、三月に飼い始めて、九月一日に死んだから、五ヵ月ぐらいですかね。

長谷川 五ヵ月……。

 あっ、五ヵ月……最初に見た夢と符合しますね。私が、五ヵ月で死ななければならないという……。

長谷川 鳥が死んだのは第一回目のカウンセリングのちょうど一ヵ月後の九月一日で、第一回目のカウンセリングの翌日(八月二日)に見た夢は、鳥が死ぬ前のことです。

つづく

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COURRiER Japon
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    柳美里柳美里
    (ゆう・みり)
    1968年生まれ、神奈川県出身。劇作家、小説家。1993年に『魚の祭』で岸田戯曲賞を、1997年には『家族シネマ』(講談社)で芥川賞をそれぞれ受賞。『ゴールドラッシュ』(新潮社)、『命』(小学館)、『柳美里不幸全記録』(新潮社)など、小説、エッセイ、戯曲の作品多数。

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