長谷川 前回、父親の頭を斧でかち割って脳味噌が飛び出る夢の話をされていましたね。その夢の中や、その夢を見たあとは、いっさい感情がない、気持ちがない。
柳 はい。でも、今回は、気持ち悪かったんです。
長谷川 確かに気持ち悪いですよね。その気持ち悪さを、探ることができますか? もしそのアメーバ状のものに捕まってしまったら、どうなってしまうんでしょうか?
柳 う〜ん……触れられたくない……押し寄せてくるのに、動けない……逃げられない……気持ち悪い……。
鳥に執着していた父と
鳥を殺していた自分
長谷川 父親を夢の中で殺したことに対して、罪悪感はあったんですか?
柳 ないです。
長谷川 でも、鳥にはあるんですね?
柳 はい。
長谷川 何故、文鳥の籠を家に置いておくことができなかったのかについては、まだ十分な説明を伺っていないような気がします。
柳 犬、猫、亀、魚はたくさん飼っているんですが、鳥を飼ったのは初めてだったんですよ。父も、動物をたくさん飼っていました。植物も、他人の家の植木鉢を盗んでくるくらいの勢いで集めてたんですが、動物の中ではいちばん、鳥に執着してましたね。家の軒下に鳥籠が二十ほど吊り下がってて……鳥の世話をしていたのは、私でした。飲み水や、水浴びの水を新しくしてやったり、糞で汚れた新聞紙を替えてやったり、あわやひえの殻を吹いてやったり、雛が生まれれば、あわ玉をお湯で溶いてスポイトで差し餌をしてやったり……でも、鳥を殺したのも、私だったんです。