長谷川 どんな雰囲気でした?
柳 黒っぽい服を着て……顔とか全体的な雰囲気は灰色な感じで……怒っているというよりは、悲しんで見下ろしている感じですかね……。
長谷川 何を悲しんでいるんでしょう?
柳 う〜ん、ちょっとわかりませんね……。
長谷川 じゃあ、何故悲しんでいるんでしょうか?
柳 何故?
長谷川 あと五ヵ月ということと関係ある?
柳 う〜ん、五ヵ月って数字が何故出てきたのかは解らないんですが、「五ヵ月で死ぬ」というのは、動かしようのない事実なんですよ、そのときは……。
長谷川 そのひとは怖かったですか?
柳 いや、怖くはなかったです。
長谷川 今まで、そのひとの雰囲気に近いひとに会ったことがありますか?
柳 強いていえば、父なんですかね? 子どものとき、布団を蹴って足が出てたりするじゃないですか。夜中にパチンコ屋から帰ってきた父が、布団を掛け直してくれるんです。
普通、親って、お腹が出てるかどうかを気にしますよね。でも、父は足なんです。足が出ていると毛布で足先をくるむんです。父が帰宅する時間は、午前一時とか二時で、子どもが起きてる時間じゃなかったんですが、私はいつも起きてましたね、寝たふりをして……その寝たふりの状態と、金縛りの状態が似てるかな……あと、ベッドの足のほうに立ってましたから、布団を直そうとする父の立ち位置と近いかもしれない、うちは布団だったけど……。
長谷川 じゃあ、その男のひとは、どんな感情を持っていますか?
柳 う〜ん、顔は見えないので、表情は判らないんですが……う〜ん、悲しんでいる……沈んだ感じですかね……。