第3回
カウンセリング第一日 長谷川博一氏(臨床心理士)との対話(1)
「二つの夢と息子」
長谷川 今回から本格的なカウンセリングを開始します。直前の最終確認をします。これはストップしたほうがいいなと判断したときは、私のほうから中断を提案させていただきますが、よろしいですか?
柳 はい。
長谷川 はじめる前に、二つの約束をしていただきたい。一つは、自分の命は消さないということ。もう一つは、他の人の命を消さないということ。絶対に命を消さない。この約束は、何が何でも守っていただきたい。約束できますか?
柳 約束します。
長谷川 前回、二時間ほどお話ししたあと、何か体験されましたか?
柳 夢を見ました。自分が死ぬ夢を見たんです。カウンセリングの翌日です。眠れそうにないので、やめていた睡眠薬を久しぶりに飲みました。強い睡眠薬なので、飲むと十秒数えないうちに眠って、目覚めるまで夢を見ないんですが、飲んでしばらく経つと金縛りみたいな感じになって、ベッドの傍らに男性が立っていたんですよ。で、泣きながら、「私は、ほんとうに、あと五ヵ月で死ぬんですか? 助かる方法はないんですか? 五ヵ月しかないんじゃ書こうと思ってた小説も書けないし、息子に五ヵ月で死ぬということを、どう説明すればいいんですか?」と問いかけるんですが、ベッドに仰向けのまま顔も目も動かせないから、その男性の顔が見えないんですよ……。
長谷川 そのひとは男性なんですか?
柳 男性です。
長谷川 若い男性? 年取った男性?
柳 年を取っています。