2009-12-31 Necromantical Screams

しっかし、大晦日にやるってのもどうなんだろうな。といっても自分は特に大晦日だからといって大掃除をするわけでもないし、もともと時間の感覚があまりない人間なので、別にかまいやしないのだが。
そんなわけで本日、ビッグサイトで開催されているコミックマーケット77に一般参加してきた。一般参加、などというと何やら大仰な響きに聞こえるが、なんてことはなく、ただ単にそこで売られている本やら何やらを買いに行っただけのことである。自分は長年オタクを名乗っているが、実はこれが初めての参加。コミケ処女の喪失、『涼宮ハルヒの消失』である。これ観に行くなら『コラライン』に行くなぁ。
朝飯やネットなどもそこそこに、準備をして出かける。ビッグサイトにはコミティアの時も行っているので、道筋は判っている。途中で東京ディズニーランドを横目に眺めることになる路線。大晦日にディズニーランドに行く人もそれなりにいるだろうと思っていたが、そうでもなかった。まだ朝が早いからかもしれない。といっても、もう10時過ぎてるのだけど。
電車内では本を読む。最近読んでいるのはエドワード・バンカーの『ドッグ・イート・ドッグ』。暴力的な犯罪小説で、始まってすぐに女子供が死んだ。あとに出てくるのは男ばかり。いい感じだ。作者のエドワード・バンカーは幼少期から犯罪に手を染め続けてきた生粋の犯罪者だが、獄中で活字の魅力に目覚め、作家へと転身する。以後、小説業はもとより映画の脚本や俳優などもこなす才人となった。タランティーノのデビュー作である『レザボア・ドッグス』でブルーという役柄を演じた人がそれである。あれは、いい映画だった。
近いうちにまた観直そうかしら。
脚本では黒沢明原案の『暴走機関車』を共同で手掛けている。自分はこの映画を中学3年生の、受験まっただ中の状態で観た。勉強で疲弊した心に、主人公の暴虐的ともいえる振る舞いはとてもすがすがしく、破滅的なラストには泣きそうになってしまった。自分は何かの作品を観て心底から「かっこいい」と思う事が非常に少ないのだが、これと『ルパン三世』の1stシーズンでルパンが刑務所から堂々と脱獄するシーン、そして平山夢明さんの小説『けだもの』は本当に「かっこいい」と思ってしまった。この三つは自分の中の三大「かっこいい」作品である。
新木場駅に到着し、乗り換える。目指す国際展示場駅へと向かう途中の車窓から見える、工場と海の風景が素晴らしい。太陽光を跳ね返す海面はより一層美しく輝いている。その逆光にシルエットとなっている武骨な工場群もいい感じだ。
そして電車内はオタクの山、山、山。如何にもな人からそうは見えない人まで詰め込まれている。国際展示場駅に到着すると、混雑していた車内が一気にスカスカになった。そして飛び込んでくる『生徒会の一存』のポスターと『涼宮ハルヒの消失』のポスター。ホームを出て改札口に向かうと、そこもアニメやらマンガやらのオタク商品の宣伝ポスターで埋め尽くされている。自動改札機にまでステッカーが貼ってある。あとで長年コミケに参加している友人に聞いたのだが、初期の頃はこんな風ではなかったらしい。恐るべし、オタクパワー。
「しばらく並ばされるのだろうな」と思っていたら、すいすいと進んでいってしまい、ちょっと拍子抜け。案外コミケも大したことないな、などと思いながら、途中でトイレを済まし、コンビニでおにぎりなどを買ってお札を崩す。
入口付近のテントでカタログを買い、いざビッグサイト、コミケ会場へ。物凄い人。人山。人だかり。先ほどまでの自分の認識を改める。自分は西館のそばから入ったので、最初の目的地である東館まで少し歩かされたのだが、それでも多くの人に早くも疲弊する。
とりあえず買うのは漫画家の濱元降輔さんが手がけたアラン・ムーアのファンブック『ムーアはご機嫌斜め』。アメコミの天才原作者、アラン・ムーアをなんと女の子化してしまったというとんでもない逸品だ。発売前からネットで話題となり、海外のニュースサイトにまで掲載。あげく、ムーアの友人である作家、ニール・ゲイマンにまでその名が知れ渡るという騒ぎになった。ムーアといえば稀代の天才作家であり、また気難し屋でも有名。自分の作品が映画化されても「気に入らない」という理由で金も受け取らずクレジットも外させたという人間である。そんな彼がこのことを知ったらと思うと、肝を冷やすファンも大勢いるのではないだろうか。
とにかく話題の一冊であるから早めに入手しておかないと。そう思って濱元さんのサークルが出展している東館へと急ぐ。
人!人!人!東館は入り口付近からは想像もつかないほどに人があふれていた。通勤時の新宿駅以上だ。とにかく中に入るも、前から圧され、後ろから突き上げられるさまは、まさに満員電車。自分は人ゴミが大の苦手で、満員電車で気分が悪くなったことが数回ある。頭がくらくらして、めまいがしてきた。自分の目の前にいるコスプレ・ガールの後ろ頭がこの不快を癒す唯一の手段だ。しかしこんな状態では痴漢なども発生するのではないだろうか。卑劣だ。目の前の女の子は、自分が守ってやらないと。しかし妙だな。髪の毛がバサバサだぞ。コスプレイヤーは、私見だが、身なりに気を使う人だと思う。こんな風に傷んだ髪を放っておくことなど、あり得るだろうか。
後ろから押され、思わず彼女の前に回り込んでしまう。そして自分は、彼女の横顔をちらりと見る。オッサンだった。今すぐ死んで地獄の炎で焼かれればいい。この野郎。
その後も、通路のど真ん中でノートパソコンを広げて立ち止まっているダースベイダーに悪態をつきながら人ゴミを突き進む。カタログからちぎった配置図を片手に、濱元さんの出展先を目指す。押し出されるようにして到着。ムーア本はまだあった。やった!喜んで購入。そのあと、後藤康有紀さんが主宰するサークル『ドリヤス工場』の出展先へ。同じ東館なので、人ゴミが酷い。そして暑い。被ってきたニットキャップを脱ぎ、上着の前をはだけて突き進む。到着。新刊を購入。少し喋りたかったが、そんな暇なし。「頑張ってください」とファン丸出しの言葉だけ伝える。コミティアなら出展者と多少はなす余裕があるのだが、ここではそうはいかない。ここは、戦場なのだ。
戦場を突き抜けて、漫画家のすがわらくにゆきさんの主宰するサークル『光速船』の出店場所へ。『快速!FREE NOTE BooK!! 3』を購入する。この本はすがわらさんがコミックガムで連載していたものをまとめたもの。「3」とあるのは1巻と2巻がすでに商業で出版されているためだ。諸々の事情により出版されなかった分をこうしてまとめている、というわけである。
よし。とりあえずどうしても手に入れておきたい東館での買い物は済ませた。自分は人ゴミをかいくぐり、西館を目指す。そこでは『唐沢俊一検証blog』を主宰するid:kensyouhanさんのサークル『西理研』の本を買うのだ。
『唐沢俊一検証blog』は文字通り、ライターの唐沢俊一さんが行っているガセやパクリを検証しているサイト。主宰するkensyouhanさんの検証ぶりやすさまじく、どこからともなく文献を見つけてきては、唐沢さんの嘘をユーモアあふれる文章で白日のもとに晒す。彼のおかげで、最近の唐沢さんはかなり仕事が減っているらしい。だからと云ってガセやパクリが減っていないのも凄い話だと思うが。
聞くところによるとkensyouhanさんはイケメンだそうだ。今回はそのことも確認したい。自分もかなりのイケメンなので、イケメン戦争が勃発する、というわけだ。
西館到着。寒い!こちらは人が少ないせいか、熱気もさほどない。そのため、薄着でいた自分は思わず体を震わせてしまった。思わず上着の前を閉め、ニットキャップを被り直す。
『西理研』到着。kensyouhanさんの妹さんという女性が対応してくれたが、男の人の姿はなし。ありゃ、行き違いになってしまったか。仕方なく本を少し見ていると、そこにびしっとネクタイを締めたオールバックの男性登場。確認すると、はたして彼はkensyouhanさんであった。なるほど、イタリア系のイケメン顔である。しかし、俺のほうがイケメンだな。この勝負、俺の勝ち。
聞くところによると、どうやらkensyouhanさんはSF作家の山本弘さんに本を手渡しに行っていたらしい。山本弘さんは唐沢さんが参加している『と学会』の主催者で、云ってみれば唐沢擁護の人間であるが、なぜそんな人のところにkensyouhanさんが本を手渡しに行ったかはこちらを参照。
「どうでしたか?」と自分が問うとkensyouhanさんは「ちゃんと受け取ってくれましたよ!」と返事。横にいる妹さんは「殴られているんじゃないかと思っていた」と云っていた。ただ、受け取ってはくれたが終始目は合わせてくれなかったらしい。うつむいて手だけを伸ばしたのだとか。しっかりしてくれよ、山本弘。結構好きなんだよ、この人の小説。
しばらく会話をし、「それでは、頑張ってください」とここでもファン丸出しの発言をしてその場を去った。さて、「必ず手に入れたいもの」はもう手に入れた。再び戦場、東館へと向かう。友人が出展しているので、その挨拶に。
人の塊をかいくぐり、友人の出展先へとたどり着いたが、彼はおらず、後輩が店番をしていた。後輩と会うのも久しぶりなのでしばらく話し、とりあえず本を買い、一旦その場を離れる。とりあえず、他にチェックしていた本をいろいろ見て回る。いろいろ購入する。エロ方面である。ここに来たらエロいの買わないとね!
数十分後、再び友人の出展先へ。今度はちゃんといた。しばらく話しこむ。カメラの話や、写真の話など。楽しい。人と話すのは気分がまぎれる。
その後、友人と離れ、別のところにいる一般参加の後輩や友人と合流。ここでもしばらく話しこむ。全然知らなかったのだけど、コミケの設営はスタッフの他に、有志のボランティアも参加して行うのだそうだ。後輩も参加したとのこと。なんか、いい話だ。
疲れた。チェックしておいた本はすべて購入できたし、ここからはそれ以外のモノを!といきたいところだけど、とてもじゃないがまたあの人ごみに入り込む気力はない。帰ろう。
「帰るんだったら、コスプレ会場とかも見て回ったらどうですか?」と後輩に云われた。そうか、そういうのもあるんだな。ちょっと興味がわいたので、それを見てから帰ることにした。
通路をたどり、外に出てコスプレ会場へ。いろんな姿をした人がポーズを取っていたり話しこんでいたり、カメラに収める人がいたり。盛況だった。自分もこの場の雰囲気を写真に収めようかと思ったが、断らずに勝手に写真を撮ったらなんだか怒られそうなのでやめた。ふと空を見上げるとなんだか雲がえらく広がっていたので、それを写真に収めた。
そしてビッグサイトをあとにする。帰る途中、コスプレ会場が上から見えるところがあったので、「ここからならいいだろう」と思ってケータイを構えると「上からの写真撮影はおやめくださぁい」と、怒られてしまった。うむぅ。そんなつもりはなかったのになぁ。
よし、俺のコミケ終了。そして今年もこれで終了。皆様、良いお年を。
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http://www.tondemo.info/reviewbook01.html
http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20090129#c1233484744
唐沢俊一にひけをとらないパクリ&ガセそして首をかしげる倫理観の宝庫です。
どうも、はじめまして。
僕自身、小説なんかを読んでいて「書かれていることが事実に反するかどうか」というのはあまり気にしないたちなので、
その中のガセは別にどうでもいいのです。
「あんまり調べなかったのだなぁ」と思うだけで。
パクリにしても、山本さんのそれと唐沢さんのそれとは質が違うように思えますし。
唐沢さんのは他人の文章をコピペしていじくっていて悪質だけど、
山本さんのは同種のネタを叩き台にして物語を広げる、という感じだと思います。
そちらに記載されているURLのkensyouhanさんのところで指摘されている『仄暗い水の底から』と『屋上にいるもの』も、
良くあるネタと云ってしまえばそれまでだし、
『屋上にいるもの』のオチもありがち、と云える類のモノだと思います。
『屋上にいるもの』はホラー小説として書かれたものですが、
それならば、事実やネタのオリジナリティはどうであれ、怖ければ充分だと思います。
そして『屋上にいるもの』はあんまり怖くなかったです。
山本さんはあまりホラーに向いていないんじゃ?と、思ってしまいました。
一応云っておきますが、自分がそういうスタンスなのは「物語」であるから、という話で
唐沢さんのように嘘の情報をさも事実であるかのように語るのはまた話が違いますよ。
そして、たとえ物語であっても構成からキャラクターから文章から恐ろしいほどに似通っていては、それもまた話が違います。
それは非難されるべきでしょう。
あと、作家の性格云々もあまり気にしないたちなのですが(実際に付き合う、という事になればまた話は別でしょうが)、好きな作家さんであるだけに、もう少し堂々として欲しかったなぁ、というのが今回のコミケでの件の感想です。
小説(フィクション)だからガセでも良いんだ、間違ってても良いんだ、という擁護意見は掲示板などでもよく見かけます。
しかしながら「神は沈黙せず」の税金や「アイの物語」の人工知能などは、根本的な間違いや理解不足により文字通り「お話にならない」状態を引き起こしています。
これでは、お話だから良いんだでは済まないように思えます。
そして著者御本人は、他者の作ったフィクション(映画・マンガ・小説など)に対し「ここが間違っている。このキャラクター描写はおかしい。バカだバカだ!」とののしっておりますので、当然御自身の作品も除外されないと思われます。まして他人のダブルスタンダードを厳しく非難している人です。
また、その内容が数多くの借り物で構成され、独自部分はと言えば、ファンの擁護意見ですら「裸がオリジナリティだ」と言われてしまう有り様はいかがなものかと思われます。
文章丸写しの盗作と異なり、アイデアの盗用は法には触れませんが、「僕は同じ文章を生業とする者として、それが許せないと言ってるんです。違法かどうかじゃなく。」http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20090809/1249826670 とまでタンカを切っているお人の振る舞いとしてはちょっといただけないものがあります。
さらにその上で「著作権侵害して何が悪い!」とまで明言するのはさすがにどうかと思わされてしまいます。
もちろん、小説に専念し、他人を罵倒嘲笑する発言や文筆活動をしていない人ならば、この限りではありません。
どうも。
えーっと、どこから話しましょうか。
自分は『神は沈黙せず』で山本弘さんに出会ったのですよ。それまでも『と学会』で活躍なさっていることは知っていましたけど、小説家としての側面はこれが初で。
もう、本当にむちゃくちゃ面白くて、「うわ―!うわー!」と思いながら三日で読んじゃいました。普段から小説を読み慣れている人なら普通の速度かもしれませんが、自分は読むのに非常に時間のかかるたちなので、これはちょっと異例だったんですね。
で、まぁその熱も冷めたあたりで件の税金に関する間違いの記述を読んだのですよ。文庫版では直されているらしいですが、自分が読んだのはハードカバーでしたので、当然直っていないほうを読んだのです。
で。そこで「だまされた!」と思ったかというと、そうでもない。その間違いを知ってもとくに怒りは感じなかったし、「あーあー、やっちゃったね」くらいにしか思わなかったんです。
なぜか。あの小説の面白さはそこにはないと思っているからです。
あの小説の面白さは、次から次へと巻き起こる異様な現象に主人公が巻き込まれていき、それにひたすら翻弄されていく人たちの描き方の、強烈ともいえるドライブ感にあるわけで。さらに云えばそれらの現象を強引ともいえる理論、それこそ超理論で覆い尽くすことの圧倒的スケール感にあると思うのですよ。税金の描き方が間違っていたり、南京大虐殺の描写がいい加減だったり(なんですよね?)したところで、それらが完膚なきまでに損なわれているとは自分には思えないわけです。
確かに、瑕疵だと思います。しかしそれは、例えば新品のCDを買ったらケースが割れてたとかそういうくらいのことで(よくあるんですよ…呪われてる?)、CD自体は問題なく聴ける、そう云ったモノだと思います。気分は悪いですが、自分は「ま、いいか」と思ってCDを聴くタイプ。はじめましてさんは店に文句を云って取り代えてもらうタイプなんだろうな、と思います。ちなみに『アイの物語』は読んでいないので判りません。
で、山本弘さんが他人の作品に対して猛烈な批判を繰り返しているのだから、自身の作品についても批判されるのは当然だ、という意見ですが、少なくとも商売として作品を描いて発表している以上、たとえ他人の作品を揶揄していなくても批判を受けるのは当然ともいえるでしょう。「他人の作品を叩いていないから、この人の作品を叩いてはいけない」という論理もおかしいように思えます。
で。オリジナリティについてですが、
>その内容が数多くの借り物で構成され
う〜ん。こう云ってはなんですけど、そもそも創作というのはそういうものだと思います。自分は「オリジナリティ」というものをあまり信用していません。
たとえ自分のオリジナルなアイディアだと思っているモノでも、それはもしかしたら昔に鑑賞した本や映画、見知った事件などを知らず知らずのうちに模倣していることなんてあるでしょうし、むしろ「この作品を下敷きにしよう」と思って描いてしまう人もいると思います。自分がそうですけど。
また例え話で恐縮ですけど、隣の席に座っている子が猫の絵を描いていた。それを見た山本さんが「僕も猫の絵を描く!」と思って猫の絵を描き始めた。しかし当然、別の人が描いているのだから、山本さんが描いた猫の絵と最初の人が描いた猫の絵は違っているのですよ。それこそがいわゆる「オリジナリティ」であるわけで。「まねしやがったぁ〜」とか云われても仕方ないとは思いますが、作品としては成り立っている。
で。唐沢さんのそれは、隣の席の子が描いた猫の絵を盗んで、コピーして、そのコピーしたものに自分で線を2,3本書きくわえて「僕の作品です!」と発表しているようなもの。「いやお前それはないんじゃないの?」と云われて先生に報告されて、職員室で3時間くらい説教を食らっても仕方ないレベルだと思います。
質が違う、という事がお判りですよね?
山本弘さんの発言である
>「僕は同じ文章を生業とする者として、それが許せないと言ってるんです。違法かどうかじゃなく。」
という言葉は、そういった(他人の猫の絵をコピーしたこと)に対する怒りの表れだと思います。
どうでしょう? はじめましてさんから見るとこの発言は、やはり「お前が云うな」という風に見えてしまうのでしょうか。
自分にはそうは見えない。それは、もしかしたら自分が「オリジナリティ」というものを良く理解していないせいかもしれません。
よろしければ、ご教授いただければ、幸いです。
3回目のコメントにして、まだ「はじめまして」を名乗るのもなにか妙ですが、一応そのままで記入させていただきました。
まず、「あの小説の面白さはそこにはないと思っているからです。」についてですが、まさに当の著者本人が他者の作品を罵倒する際のやり方が、その物語以外の部分を取り出してあげつらうというやり方なのです。
「そんなことは物語の面白さに関係ない」との反論には耳を貸したことが無いと記憶しております。
ゆえに、御本人の作品にもそれはブーメランのごとく返らざるをえないかと思われます。
また、山本作品のそうした細部の描写をもって賞賛するレビューを見た覚えもありますので、少なからぬ読者にとっては、そうした細部こそが重要視されているようです。
なお、「面白さ」そのものに関しては受け取る側の主観により大きく左右されますので触れるのは妥当ではないと思うのですが、あえて申し上げるならば、その面白さが他人様からの借り物の力であるならば著者の力量では無いのではないでしょうか。
面白さといえば、山本弘御本人は、他人が純粋に楽しんでいる作品に対し「お前らは間違っている。俺はそれをクズとして楽しんでいる。だから俺は正しい。」といった意味の発言をしばしばしております。これもまたいかがなものかと思わざるを得ません。
(この辺りの心理は伊藤剛氏がわかりやすく言及して下さっています。
http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20091118/1258516962#c1258629338
>「これはクズである。クズであるがゆえに、私たちはこれを愛するのだ」
>この態度でバインドされているというわけです。)
次に、「店に文句を云って取り代えてもらうタイプなんだろうな、と思います。」についてですが、そのように判断されてしまったことを、悲しく思います。
山本弘御本人のやり方を指摘したのに対し、そのように感じられたのでしたら、それは山本弘自身のタイプ、ひいては「と学会」の姿勢なのではないでしょうか。
私自身は、そんな「と学会タイプ」では無いと申し上げたいと思います。
続いて、「他人の作品を叩いていないから、この人の作品を叩いてはいけない」についてですが、そのような事は一切申し上げておりません。自分の文章力の無さが悔やまれます。
そしてオリジナリティについてですが、少なくとも、タイトルから設定から展開からオチに至るまで借り物で、歌詞を無断使用し、「著作権侵害して何が悪い」と胸を張る人には、さすがにどうしたものかと困ってしまいます。
>まず、「あの小説の面白さはそこにはないと思っているからです。」についてですが、まさに当の著者本人が他者の作品を罵倒する際のやり方が、その物語以外の部分を取り出してあげつらうというやり方なのです。
すいません、そんなの僕には関係ないんですよ。「僕には」ね。あなたにはどうか知りません。著者がどのような悪辣な性格をしてようが、彼が書いた作品を自分は面白いと思った。だから面白いという。それだけなんです。
確かに悪辣な性格は非難されるべきでしょう。しかし、だからと云って作品も嫌いになれというのはどうか。作品の面白さと作者の性格は分けて考えられるべきです。
>なお、「面白さ」そのものに関しては受け取る側の主観により大きく左右されますので触れるのは妥当ではないと思うのですが、あえて申し上げるならば、その面白さが他人様からの借り物の力であるならば著者の力量では無いのではないでしょうか。
確かに、ぼくが大好きな『神は沈黙せず』も著者によるならば、ジョン・A・キールの『モスマンの黙示』を意識したという事です。僕は『モスマンの黙示』も読みましたが、両者が全く同じ作品かというとやっぱり全然違うんですよ。文体からキャラクターから展開からオチまで。当たり前ですよね。違う人が書いてるんだから。そしたら作品としては成立しているんじゃないんですか?違うんですか?その理論で云うならば、水木しげるの傑作『地底の足音』もラブクラフトの『ダンウィッチの怪』を下敷きにしているがために、駄作となるのでしょうか?
>そしてオリジナリティについてですが、少なくとも、タイトルから設定から展開からオチに至るまで借り物で、歌詞を無断使用し、「著作権侵害して何が悪い」と胸を張る人には、さすがにどうしたものかと困ってしまいます。
この山本弘さんの「著作権侵害して何が悪い」というのは、著者が好きなMADや、すでにテレビで放送されたアニメ作品が動画投稿サイトにアップされた際に削除されてしまうことを懸念して発された言葉ですよね。確かに行き過ぎた発言だとは思いますが、あなたのような引用の仕方だと、著者は自身の作品が他社の作品に似ていると指摘された際に「著作権侵害して何が悪い」と逆切れしたみたいに見えますよ。引用の仕方には充分に注意してください。
いいですね。僕もはっきり云って疲弊しています。「逃げたと思われるンもケッタクソ悪い」と思ってコメントなんか返信しなければ良かったと思っています。もう、返信しませんよ。どこまで行っても平行線ですからね。
>だからと云って作品も嫌いになれというのはどうか。
そのようなことは全く申し上げてはおりません。申し上げていないことについて御不満を抱かれ、平行線だと切って捨てられましても、こちらはおろおろするばかりです。
同様に、
>彼が書いた作品を自分は面白いと思った。だから面白いという。それだけなんです。
>駄作となるのでしょうか?
という点につきましても、全く触れてはおりません。それについて申し上げる言葉を私は持ちません。
そのように受け止められてしまう拙い文章力をお詫びいたします。
また、他の創作者の換骨奪胎を挙げておられますが、他人が何をやっているかということと、山本弘自身が何を言い何をやっているかということは無関係ではないでしょうか。まさに「分けて考えられるべきです。」と思いましたが、いかがでしょうか。
それから、こちらのページ http://www.tondemo.info/tondemo01.html に「ハンバーガー作品論」と題して山本弘御本人の発言が再録されておりますが、それによりますと「神は沈黙せず」は物語の方ではなくウンチクの方こそが重要だと明言されております。
物語に重きを置くような読者は、当の著者からお叱りを受けてしまうことになりそうです。