福岡県立高校の推薦入学試験で、スポーツの部活動で活躍した中学3年生や保護者に高校の部活顧問が直接声を掛けて受験を勧め、顧問から生徒名の報告を受けた校長が合否判定で配慮する“青田買い”が、複数校で常態化していることが分かった。願書受け付け前の現時点で「既に内々定をもらっている」と証言する中3の保護者もいる。入試では公平性が求められるため、県教委はこうした行為を禁止しているが、一部の事実を把握し、内部調査している。
学校関係者によると、福岡都市圏の県立高の運動部顧問の教諭は、昨夏の中体連で活躍した学区内に住む中3を選定。11月にその中学を訪問し、生徒に「うちの高校で一緒に頑張ろう」などと声を掛け、推薦入試の受験を勧誘した。
別の高校では、部活顧問が中学側と接触した上で、毎年1月に生徒5-6人の氏名を校長に報告。過去5年間に顧問の勧誘で受験した約30人のうち、不合格は2人だけだったという。
さらに部活動で活躍した中3の保護者の一人は、西日本新聞の取材に対し「高校の先生から『推薦で入れてあげるから』と、すでに内々定をもらっている」と証言する。
高校教育課は、部活顧問が勧誘した生徒名のリストを校長に報告する仕組みについて「以前から広く行われているようだ」と、「望ましくない行為」(県教委)が各地で行われている状況を認めている。さらに、来月の入試で、顧問が事前に特定の生徒に推薦入試受験を勧める禁止行為をしている事実も、複数確認しているという。
既に内々定が出ているという証言については「あり得ないと思う」と否定。ただ、誤解を招く行為がないよう指導し、実態調査をする考えを示した上で「入試要項にないやり方で選考するのは望ましくない。制度の改善を検討したい」としている。
=2010/01/05付 西日本新聞朝刊=