「Last Chance ――航空機産業の活路」

Last Chance ――航空機産業の活路

2010年1月6日(水)

「バルチック艦隊」が取り持つFXの縁

白熱する戦闘機商戦、大本命に挑む欧米2社幹部に聞く(上)

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 レイサム そうとも言い切れないのではないでしょうか。日本が米国以外の戦闘機を買うことで日米同盟を脅かすような感じにはならないと思います。

 米国が反発するとか言われていますが、日米関係がより緊密になるのではないでしょうか。高性能のタイフーンを購入すれば、日本の防衛力が高まるわけです。そうなれば、米国は日本に振り向けている防衛力の資源をほかに振り向けることができます。

 米国の負担が軽減されるのですから、歓迎すべきことでしょう。

 英国にしても、自分の国で戦闘機を開発しながら、米国製も買っています。それでも関係はより強固になっている。サウジアラビアにしても、欧州だけでなく、米国からもフランスからも購入しています。

 そもそも、日米同盟なのですから、日本は米国にベストな戦闘機を要求して、買えるのではなかったのではないですか。米国はF22の輸出を拒否しているわけですよね。だったら、それは米国製を購入しない明確な理由になりますよね。

バルチック艦隊破った「三笠」以来の友好関係

 ―― ただ、米国側が推しているF35も最新鋭の戦闘機ですし、ステルス性などが高く評価されています。結局は日本の産業界でも、F35になるとの見方が多いですが。

 レイサム 重要なのはまだ、F35は開発中であることです。それも、4000時間するはずのテストフライトもまだ、200時間ぐらいしか終わっていないのです。まだまだ時間がかかるでしょう。

 できていない戦闘機を購入するという決断ができるのかどうか。タイフーンがベストなバリューだと断言できますよ。

 ―― BAEシステムズは「日本との長い友好関係がある」とアピールしていますね。

ロシアのバルチック艦隊を撃破した旧日本海軍の旗艦は、現在のBAEシステムズの造船所で建造された
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 レイサム 日本のNHKでもドラマ(坂の上の雲)の放送が始まりました。ロシアのバルチック艦隊を打ち破った日本海軍の旗艦である「三笠」は我が社のバロー造船所で建造されました。その後に司令長官の東郷平八郎さんが造船所を訪れています。その時、東郷さんから贈られた刀も残っています。

 強調したいのは100年前から、日本と英国は非常に友好な関係にあることです。そして、日本が戦闘機の技術を維持していくためにはタイフーンが最良の選択になると思っています。

 本コラムに関連した連載記事が、日経ビジネス2010年1月4日号(p100〜103)から始まりました。
 Last Chance ―― 航空機産業の活路
 日の丸戦闘機は飛ばず/ボーイング、逆転の切り札投入/「最強機」に固執した防衛省/「普天間」と並ぶ政治決断/ほか。
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このコラムについて

Last Chance ――航空機産業の活路

日本はこれまで何度も世界の航空機市場に挑みながら、挫折と屈辱を味わってきた。中国など新興国が台頭し、世界競争が一段と激化していく中で、二度と失敗は許されない。「最後のチャンス」に賭ける、日本の航空機産業の戦いを報告する。

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