「Last Chance ――航空機産業の活路」

Last Chance ――航空機産業の活路

2010年1月6日(水)

「バルチック艦隊」が取り持つFXの縁

白熱する戦闘機商戦、大本命に挑む欧米2社幹部に聞く(上)

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 ―― ただ、同じくイタリアもF35の開発資金を負担し、国内での生産を準備しているのではないですか。

戦闘機エンジンもライセンス生産可能に

 レイサム それはまだ明確になっていません。イタリアは9億ドル(約810億円)も負担して、最終組み立てをやろうとしていますが、ステルス性の機体などはロッキードの人が担当することになるようです。イタリアでの雇用効果も非常に限定的になります。

 タイフーンであれば、ライセンス生産において重要な機体部品の生産などもできます。戦闘機エンジンも日本でのライセンス生産も含まれます。これは日本の防衛産業にとってもメリットが大きいでしょう。

 もちろん、機体の修理や検査なども日本側が担当できます。F35はそこのところも明確ではありません。もともと、「修理なども米国でやる」という感じですから。

BAEシステムズが日本に売り込む戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」
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 ―― タイフーンも英国、ドイツ、スペイン、イタリアという4カ国での共同開発です。それぞれが機体を分担して生産しています。日本への販売の窓口は英国のBAEシステムズですが、日本でのライセンス生産になれば、各国の足並みが乱れるとの指摘もあります。

 レイサム (競合する)ボーイングの方がそう指摘されているようですね。

 タイフーンは非常に複雑で、官僚的な組織だとか言われたりしますが、体制を見直しています。だから、我々のBAEシステムズが一本化して日本と交渉しているのです。

 すべての権限を任されています。もともと、タイフーンはコンソーシアムのプロジェクトです。ですから、日本が新たに入ってくれば、それは新しいメンバーだということですし、これまでの我々の経験も生きるのではないでしょうか。

英閣僚も鳩山首相にアタック

 ―― 英国政府も今回の売り込みでは支援しているようですね。

 レイサム 昨年10月には英国政府の閣僚クラスが2人も来日しました。ピーター・マンデルソン大臣(民間企業・規制改革担当相)は鳩山首相にも面会し、タイフーンの重要性を説明してもらいました。

 また、クウェンティン・デービス国防政務官(防衛装備・支援担当)は三菱重工業の名古屋にある工場にまで足を運んだほどです。

 最近の日英関係は非常に良好です。日立製作所の鉄道車両の採用も決まりました。これは主要幹線向けであり、70億〜80億ポンド(1兆5000億〜1兆20000億円)という大きな契約になります。

 また、タイフーンのメンバーであるドイツ、スペイン、イタリアの駐日大使館も政府への売り込みで協力してくれています。

欧州製に決めれば、日米同盟が緊密に!?

 ―― とは言え、やはり日米同盟を覆すような決断を日本ができるのかどうか。次期主力戦闘機の機種を最終的に判断するのは民主党政権になるでしょう。現在、亀裂が目立つ日米関係を考えれば、やはり欧州の戦闘機は買えないのではないでしょうか。






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このコラムについて

Last Chance ――航空機産業の活路

日本はこれまで何度も世界の航空機市場に挑みながら、挫折と屈辱を味わってきた。中国など新興国が台頭し、世界競争が一段と激化していく中で、二度と失敗は許されない。「最後のチャンス」に賭ける、日本の航空機産業の戦いを報告する。

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