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自前の図書館、PCの中 作家・吉岡忍さん

[掲載]2009年1月1日朝刊

写真パソコンで読書する吉岡忍さん。寝そべったり、パソコンを持ち上げたり自由自在に読む=鬼室黎撮影

〈新年の読書特集〉私の「読む」スタイル

 「本は捨てられない」と話す作家の吉岡忍さんは典型的な活字世代だが、読書にパソコンを活用するという。

 「もとはと言えば自宅と2カ所の書庫が本で埋まったことにあります。仕方ないから、ファイル形式のPDFが普及し出した5年ほど前から本をパソコンに保存しています」

 吉岡さんの蔵書は約2万冊。パソコンに取り込む作業は自己流という。「まずスキャナーで表紙を取り込み、次に専用カッターで背表紙側を裁断して扉から奥付までカード状にする。厚さ1センチずつ両面スキャンができる高速のドキュメントスキャナーにかけると約1分半、3センチの本でも5分以内です」

 「例えば」と開いた外出用ノートパソコンの画面には、そうした様々な本がずらり。

 「仕事で使う本、当面使わない本、読んだ本、読んでいない贈呈本などが外付けのハードディスクに約50ギガ分、1500冊ほど入っています」

 試しに海外取材で使う「地球の歩き方」シリーズの一冊をクリック。画面左側に中身が一覧表示され、読みたいページをクリックするとそこが開く。地図や写真は拡大表示できる。「目が悪いので仕事場では27インチの画面で本や雑誌を読みます。昔の小さな活字の文庫や漫画も拡大して読めるからとても便利」

 検索方法も工夫した。「翻訳本は片仮名、日本の本は平仮名で“あいうえお”順に分類し、著者名・書名・版元名・発行年度でアクセスが可能です。仕事などで本を探す場合も、書棚で探すより格段に早い」

 まさに自前のIT図書館だが、デメリットはないのか。

 「画集などA4サイズを超える大型本は取り込めないし、カード化した本は処分せざるを得ない。でも面白いことに、前より本をたくさん読むようになりました。その意味では本が生きたといえる。本は記憶の手がかり。本自体がなくなることはないでしょう」

 (依田彰)

   *

 1948年生まれ。ノンフィクション作家。87年「墜落の夏」で講談社ノンフィクション賞。近著に「ニッポンの心意気」(ちくまプリマー新書)。

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