交感神経(赤)の一部が変化し副交感神経(緑)になったマウスの神経の束の断面(福田恵一慶応大教授提供) 弱った心臓をいたわり延命 “働かせ役”の神経が変身心臓のポンプ機能が低下し心不全状態になると、心臓を刺激して働かせる交感神経が、収縮力や心拍数を低下させる副交感神経に変化し、心臓の負担を軽減して延命させているとの研究結果を、慶応大の福田恵一教授と金沢英明助教(循環器内科)らが米医学誌電子版に5日、発表した。 交感神経と副交感神経は通常、バランスをとりながら血液循環を調節しているが、両者は全く別物で、役割が入れ替わることがあるとは一般には考えられていなかったという。福田教授は「これまでの常識を覆す結果だ」と話している。 福田教授らは心不全状態にしたラットの交感神経に、副交感神経が働く際に必要とする酵素ができていることを発見。心不全で死亡した人の心臓の神経細胞でも、同様の変化が起きていた。心臓への負荷を減らすため、弱った心筋細胞が交感神経の機能を変化させる物質を分泌していると考えられるという。 福田教授によると、心不全の患者には、心臓の収縮力を強くする薬を投与し続けるより、働きを抑える薬を使ったほうが長期的に生存率が高いことが近年、経験的に分かってきたが、それを裏付けるものだという。 【共同通信】
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