日本航空の資金繰り支援問題で、菅直人副総理、前原誠司国土交通相、峰崎直樹財務副大臣は3日、首相官邸で会談し、日本政策投資銀行の日航に対する融資枠を、これまでの「最大1千億円」から「最大2千億円」に拡大することを決めた。会談後3人は声明を発表。今月に予定される企業再生支援機構の支援決定まで、政府として日航の資金繰りを下支えすることを改めて明確にした。株式市場や日航の取引先に、こうしたメッセージを伝えた形だ。
会談では、先月31日に政投銀と合意した融資枠の拡大について協議し、具体的な金額を決めた。増額幅の根拠については、前原氏が会談後「(この額ならば)資金面での問題はまずないだろうと思う」と述べるにとどまった。
声明では機構に対し「早期の支援決定を期待する」としたほか、「日航への融資を信用補完する予算・法的措置を検討する」とした昨年11月10日の5閣僚合意は今も有効であると確認した。これに基づき前原国交相は、今月始まる通常国会に、日航の資金繰りを支える金融機関の融資に、政府保証をつけられる法案を提出する方向だ。
日航に対しては、政投銀が昨年11月24日に最大1千億円の融資枠を設定。これまでに550億円の融資が実施されている。関係者によると、この1千億円は2月中旬ごろまでの資金繰り支援を想定。1月中旬〜下旬とみられる機構の支援決定までは十分な水準とされていた。
しかし先月30日、機構が法的整理による再建を目指すとの観測が広がると、倒産をイメージした株主心理から株価は急落。一時はストップ安寸前の60円まで値を下げた。(終値は前日比21円安の67円)。信用不安が拡大すれば、燃油などの信用取引に支障が出て、多額の現金決済が必要になる懸念も指摘されていた。政府は、株式市場が再開する4日の前に支援姿勢を明確にする必要があると判断。年末から年始にかけて関係者との調整を急いだ。
当面の資金繰りの下支えができたことで、今後日航は、企業年金の給付削減を可能にする「退職者の3分の2以上の賛同」を得ることに力を注ぐ。12日の締め切りまでに賛同が得られなければ、国交省は年金の強制減額を可能にする特別立法を目指す方針だ。
その後、機構が支援の是非を決定。私的整理案もあるが、メガバンクなど大口債権者と債権放棄などで事前合意し、会社更生法の申請と同時に機構が支援を表明する「事前調整型倒産」の手法が有力案として浮上している。
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■日本航空を巡る声明骨子
・企業再生支援機構に早期の支援決定を期待
・政投銀が従来の1千億円の融資枠にさらに1千億円を追加
・昨年11月10日の5閣僚申し合わせは有効であることを確認
・日航の安全・安定的な運航の継続と、国民目線に立った再建のために連携することを確認