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2009.12.16(水)更新  伊集院光哲学

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三、DVDってなんだ?

 最近、DVD作品ならではの面白さって何だろうと考えてます。既存のはテレビ番組と同じに思われてるけど、単に番組を録画しただけじゃないだろう、と。ただ流れてくるのではなく能動的に何度でも見られて、意外と使われてないマルチアングルって機能もある。複数のカメラから見たい画面を選べる機能です。これを生かした撮り下ろし作品を作れば編集の違いも見てもらえるし、ある面では面白いものが作れるんじゃないかな。買った人しか楽しめない、買って繰り返し見てこそ価値があると思ってもらえるのは何だろうと考えたい。

 こだわりたいのは、いろんなメディアがある理由。ネットって何だ、ポッドキャストって何だ、新聞って何だと。一度それぞれの特性と役割を冷静になって考えておかないと本末転倒な「進化」をしちゃう気がする。この間、山登り用の地図がGPSに対抗するのに防水になってるのを見つけたんです。広げてちゃんと自分の位置が分かるのが地図の良さ。だから、ぬれて破れるのが一番きつい。これは正当な進化だなと思いましたね。

 DVDでは「一人テレビ局」を目指して、企画・構成・演出・主演、ロケハンから衣装まで担当してるんですけど、表現のテーマは「人間はみんな間抜けだ」。例えば、草野球チームが重殺に挑戦するゲームでメンバー内にひそかにそれを妨害するスパイを潜り込ませるとか、お互いが疑心暗鬼に陥るような設定をすると、人間の滑稽(こっけい)で人が悪くてだらしない欠点がいっぱい見える。僕はそれを全部含んだ上での笑いが好きだから、最初に落語家を選んだんだって今思う。不器用なりに丁寧に、心の真ん中に「人間は間抜けで、だから面白い」ってのを持って、その時にできる百点をちょっとずつ積み重ねて仕事できたらいい。

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■いじゅういん・ひかる
 タレント。1967年生まれ。DVD「伊集院光のでぃーぶいでぃー」シリーズ(ポニーキャニオン)を発売中。
 
(2009年12月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
 
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