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2009.12.9(水)更新  伊集院光哲学

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二、本へのあこがれ

 2年前、初めての本「のはなし」を出しました。もとは携帯電話会社のメルマガに週3本、5年間書いていたエッセーです。本を出したいとはずっとどこかで思っていました。実家には図書館かってくらい本があったし、ラジオが極端に流れていってしまうものだから「残る」という形にあこがれがあって。でもいざ本を出せるとなったら、気負いすぎて「残る」事が今度は恐怖に……。声なら抑揚や強弱で伝わるニュアンスを活字でやるのは難しかったですね。文章を足したり引いたり、オチのあるなしを気にしたり、まとめ過ぎるとかき回してみたくなったり。行き詰まって、途中でくじけそうになった事もあります。そんな時に有り難かったのが、かみさんの存在。分からなければ「よくわかんない」って普通に言える、僕がふさぎ込んでいると「仏頂面してんじゃない」って後ろから頭をはたける唯一の人。

 エッセーには、街でタラバガニをもらった話とか、ゴミ収集車内に薄汚れたぬいぐるみを見つけた話なんかが出てきます。こういう事は毎日毎秒起きていて、何球も見逃してるんだと思うんですよ。自分のアンテナが研ぎ澄まされている時しか拾えない。調子のいい日に何かが起こるんじゃなくて、起こっているのを調子がいいから見つけられるんだろうって思う。変だった子どもの頃の話を書いたのは、全く同じ事はなくてもこれって僕だけじゃないよね、あるならお互い肯定したいよね、と思ったからです。

 テレビやラジオと違って、本は皆さんに直接お金を出してもらうもの。僕の本を買っている人を目撃した時は、もう感無量でした。隠れましたけど。ゆくゆく本屋さんに「伊集院光コーナー」が出来たらうれしいだろうな。今後どれほどオファーがあるか分からないし、一つ一つでへとへとなんですけどね。

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■いじゅういん・ひかる
 タレント。1967年生まれ。「のはなし」(宝島社)が好評で、今年10月に続編「のはなしに」を出版した。
 
(2009年12月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
 
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