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2009.12.2(水)更新  伊集院光哲学

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一、ラジオの可能性

 哲学というほどのものがあるか自分にもわかりませんが……伊集院光です。

 テレビやラジオで仕事をさせてもらってますが、両者は全く異質。前者は団体戦で後者は個人戦というか。14年目になる僕のラジオ番組「深夜の馬鹿力」は不思議な空間。他にもたくさん選択肢がある時代の、深夜1時から3時。リスナーとは固い絆(きずな)があってやっている感じがする。その上レベルの高いネタを無料で提供してくれて。いま投稿はメールが主流ですが、すべて僕が読んでどれを使うか選んでいます。1週間に2、3日、3〜4時間かけます。生放送にもこだわっていますね。何度か録音でやったこともあるけど、だめ。途中でやり直したくなっちゃう。もっとよく出来るだろう、って。諦(あきら)めが悪いんです。生には断崖(だんがい)絶壁で必死になって絞り出す計算外の表現や言葉、引き出しが開くだいご味がある。2時間という制約も心地いい。

 この数年、これまで以上にちゃんと、丁寧に番組を作りたいと思っています。ラジオはテレビの副読本じゃない。リスナーが書いてくれたネタにきっちり応えて、自分が日常で経験した面白いことを伝えたい。そのために、休みの日は旅に出たり、普通の人がしないことをしたりします。ちなみにこの間は究極のあんみつを作るべく、小豆を煮たんですけど。そういう一つひとつが収録につながる。

 ラジオはしゃべるだけが故に奥が深い。底なしの気がします。最初志した落語に近い、言葉の世界の面白さがある。その代わり、ちょっと表現がずれると一切伝わらないですけど。「漁師町のゴミ置き場みたいなにおい」と言えば、言葉から連想する嫌〜なにおいも共有できるし、セットがないから舞台やテレビですら出来ないような場面転換だってできる。それを究極のところまでやれたら、夢みたいだと思いますね。

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■いじゅういん・ひかる
 タレント。67年生まれ。TBSラジオ「JUNK 伊集院光 深夜の馬鹿力」は毎週月曜25時からオンエア。
 
(2009年12月2日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
 
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