「秘境駅」として鉄道ファンに人気の三好市池田町西山のJR土讃線・坪尻駅から、訪れたファンが旅の感想などを寄せ書きしたノート九冊がなくなっていることが分かった。何者かが持ち去ったとみられ、ファンの間で「ノートを楽しみに遠路はるばるやって来る人も多い。心ない行為だ」と憤りの声が上がっている。
坪尻駅を管理する阿波池田駅によると、寄せ書きは「坪尻駅ノート」と呼ばれ、訪れた鉄道ファンが旅の感想やホームの風景画などを思い思いに書き連ねてきた。中には、鉄道漫画「鉄子の旅」の作者菊池直恵さんのイラストやコメントもあり、ファンの間では広く知られていた。
なくなった九冊は、約五年前から書き継がれたもので、ひもでとじて駅舎内の箱に入れられていた。四月一日、男性ファンから「ノートがなくなっている」と阿波池田駅に電話があり、駅員が確認したところ、ちぎれた表紙二枚だけが残っていた。
傍らには、新しいノートがあり、冒頭に三月二十九日付で「ノートがなくなっていたので、新しいものを置いておきます」という趣旨の書き込みがあった。古いノートは三月下旬になくなったとみられる。
阿波池田駅では、坪尻駅舎内に張り紙をして「ノートを大切に使ってほしい」と呼び掛けている。
坪尻駅は周囲を山に囲まれ、車道に接していない無人駅で、四国に二つしかないスイッチバックという折り返し用の線路がある。テレビ番組などでたびたび紹介され、全国各地から鉄道ファンが大勢訪れている。
鉄道ファンの全国組織「鉄道友の会」四国支部の井上武副支部長は「ノートがなくなったと聞いて驚いている。心ないマニアがコレクションのために持ち帰ったのだろう」と話した。【写真説明】【上】何者かに持ち去られたとみられる坪尻駅の寄せ書きノート=2008年4月13日撮影【下】秘境駅として鉄道ファンに人気の坪尻駅。5年前から書き継がれてきた寄せ書きノートがなくなった=三好市池田町西山