タイムマシンは誰でも乗れる!?~『ポケットの中の宇宙』
- 『ポケットの中の宇宙 (中公新書ラクレ)』
- アニリール セルカン
- 中央公論新社
- 798円(税込)
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仕事で失敗をした時、人生の選択肢を用意された時などに「タイムマシンがあったら」なんて考えたことありませんか? もしも過去に戻れたら、もしも未来を見ることができたらと。誰もが万馬券が出る度にこんなことを考えることでしょう。「数時間前に戻れたら、大金持ちになれるのに」。
そんな時、二言目に口をついて出るのが「タイムマシンなんてあるわけないから無理か」という諦め。しかし、トルコ人初の宇宙飛行士候補で、現在東京大学で建築学を研究しているアニリール・セルカンさんは実際にタイムマシンを作り、しかも成功したというのです。
それはセルカンさんが15歳の時。テレビ番組でタイムマシンに乗って時代を守る警察官を見て、「僕にも作れるかも」と立ち上がり、ミッションスクール時代の悪友と共に近所の物理学者やらを巻き込んで重量150キロのタイムマシンを完成させました。彼らが作ったタイムマシンは高さ48メートルのタワーとその下で回っているカプセルのような乗り物で構成されたもの。アインシュタインの相対性理論、量子力学を取り入れた本格的なものだったそうです。お披露目会は地元のサッカースタジアムで行われ、噂を聞きつけた観衆やマスコミも大勢訪れました。
実験台はセルカンさんの弟。カプセルがいよいよ回り出し急激に速度を上げると、爆発音とともに閃光を放ちました。しかし実験は失敗。弟が怪訝な顔でマシンから出てくると、仲間の父親がこう言ったそうです。「タイムマシンは成功したんだ」と。「このタイムマシンを作り始めた時、『過去』に戻って勉強してきたことを思い出し、『今』という時間に精一杯準備してきた。そして『未来』に向けて何をしなければならないか気づいた。君たちは大人が出来ない旅をしてきたんだ」。
セルカンさんはこの経験を機に科学者へ、科学者を機に宇宙飛行士候補に、そして今は建築家になりました。また仲間との友情を更に深めたそうです。不況の現代では、大幅カットされたボーナスを眺め「今」を生きるのに私たちは精一杯。「過去」を振り返る余裕もなければ、想像する「未来」にはなかなか希望がもてません。しかし、それではいけないとセルカンさんは言います。皆さんは最近、タイムマシンに乗っていますか?