トヨタ自動車は21日、系列部品メーカーに対し、部品価格を3割以上、引き下げるよう要請した。トヨタが一気に3割もの価格引き下げを求めるのは10年ぶり。成長が著しい新興国向けに低価格車づくりに取り組んでいるが、部品が高すぎてライバルメーカーに後れをとっているため踏み切る。急激な価格引き下げについていけない下請け・孫請けメーカーは、廃業に追い込まれる可能性がある。
来年3月までに部品ごとに製造コストの削減目標を決め、2012年から13年にかけて発売する新車から価格を抑えていく計画。一部の部品は4割の引き下げを求める。
トヨタはこれまで、低価格帯の車にも高級車と同様、高品質の部品を採用しており、高コスト体質となっていた。今後は先進国向けのレクサスブランドの車や「クラウン」などの高級車、「カローラ」などの世界販売車、「ヴィッツ」など新興国を中心に売る低価格車に分類。価格帯に応じた品質で十分とし、小型車を中心に製造コストを下げていく。
そのため、トヨタは「RRCI」(良品廉価、コスト、イノベーションの略)を展開、部品メーカーと協力して設計段階から部品の製造コストを洗い直し、引き下げる。
トヨタの危機感の背景には円高と、新興メーカーの台頭がある。輸出に不利な円高は長引く見通し。韓国の現代自動車はウォン安を追い風に世界的に販売シェアを伸ばしており、車の販売価格の大幅な引き下げが不可欠だと判断した。
トヨタは00年にも、3割のコスト削減を打ち出したが、このときは、部品価格は下がったのに、車の価格は下がらなかった。トヨタ側が高級車路線に移り、コスト削減の取り組みが不十分だったためとみられる。(中川仁樹)