「Dynamite!!」(31日、さいたまSA)
総合格闘家としてデビューする北京五輪柔道男子100キロ超級金メダリストの石井慧(23)=アイダッシュ=が30日、都内で行われた計量後に会見。バルセロナ五輪柔道男子78キロ級金メダリストの吉田秀彦(40)=吉田道場=戦を前に、これまでの自由奔放な“石井節”は鳴りを潜め、珍しくピリピリとした雰囲気を漂わせた。一方、吉田は都内で行われた公開イベントで「心に期するものがある」と、決戦へ意味深なセリフを残した。
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石井は会見で「あまり自分は緊張しないんで」と現在の心境を打ち明けたものの、それに続く言葉は期待を裏切るものだった。
入場テーマ曲に「よく聴いている。曲調とか歌詞が好き」という、米ヒップホップ界の大物カニエ・ウエストの「アメイジング」を選んだと明かした。もっとも、歌詞の内容を問われると「グーグル(インターネット上の検索)で調べて下さい」と、つれない返事に切り替わった。
さらに、試合のために準備した武器、言い換えれば攻撃の技術についての質問にも「武器とか言わないでしょ。言わないのに、そういうのはムダな質問になる」と退けるなど、これまでのサービス精神旺盛な“石井慧”とは別人だった。
試合で赤いトランクスを着用すると明かしたり、応援に訪れるボクシングの亀田興毅に「気持ちで負けない試合を見せたい」と口にしたものの、会場内には終始、緊張感が漂っていた。
その後、夕刻に東京・新宿ステーションスクエアで行われた公開イベントを“欠席”した。当初、SRCの31日・有明コロシアム大会(消滅)で行われるはずだった吉田戦の契約に入っていなかったイベントのため、石井に出席する義務はないが、対戦相手で、柔道から総合に転向した大先輩の吉田が出席したため、石井の不在が際立つ形となった。
Dynamite!!を主催するFEGの谷川貞治代表は「来るように言ったけど…。参加しないのはよくない」と苦言を呈した。大みそかに向け、石井は公開練習を行わず、29日の個別会見にも現れなかったため、同代表は「チャンスだし、露出した方がいい。公式行事も出ないといけないもの。もったいない」と、プロとしての心構えを説いた。
デビュー戦を翌日に控え、独特の緊張感を漂わせた石井だが「パフォーマンス(ファイト)でどよめかせたい」と理想も明かした。「アメイジング」の歌詞には、自らをモンスター、キラーと表現するくだりがあるが、怪物的パフォーマンスで日本中をどよめかせるか。北京の金メダルから503日、「総合格闘家・石井慧」がついにベールを脱ぐ。