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【格闘技】魔裟斗最強のまま引退 サワーにリベンジ2010年1月1日 紙面から
◇Dynamite!!▽31日▽さいたまスーパーアリーナ▽18試合(リザーブファイト含む)▽観衆4万5606人 カリスマが最強を証明してグローブを置いた。K−1中量級の日本人エースとして戦い続けた魔裟斗=シルバーウルフ=が、宿敵のアンディ・サワー=オランダ=とこれまでのベストバウトと呼べる殴り合いを展開。05、07年のワールドMAX覇者で過去0勝2敗だった“世界王者”に、3−0の判定勝ちを収めた。「一番強い時にやめたい」という言葉通り、現役の誰よりも熱いファイトを見せた魔裟斗は、伝説を残してリングを去った。 最後まで、攻めて、攻めて、攻め抜いた。カリスマの派手な“どつき合い”に、会場に詰め掛けた4万5000人以上のファンが酔いしれた。誰もが認める完全勝利。もう聞くことはない、最後の勝利者コール。リングアナの「勝者…。魔裟斗!」の判定コールが響くと、魔裟斗は左拳を突き上げた。 初めて魔裟斗がK−1に足を踏み入れたのが2000年11月。当時、最強と言われた世界屈指の強豪ムラッド・サリにKO勝ちして衝撃を与えた時、魔裟斗はリングで「これからはオレの時代」と宣言した。好敵手・小比類巻太信としのぎを削って日本王者に。そして世界王者に上り詰めた。 挫折も味わった。2度目の世界制覇を目指したが、タイのブアカーオやサワーに主役を奪われた。限界説が頭をよぎる。何度も引退を考えた。だが、負けたまま引き下がるわけにはいかなかった。 タレントの矢沢心さんと結婚。心の励みになる人生のパートナーを得た。「まだ強くなれる」。体を鍛え直した。以前、魔裟斗はこう色紙に書いた。「人生一回」。たった一度の人生。魔裟斗は常にそう思いながら全力で戦ってきたという。それだけに一切の妥協も許さなかった。 自らの肉体をいじめ抜いて、08年に世界王座返り咲きに成功した。やり残したことはたった一つ。過去2度負けているサワーへの雪辱。形式的な引退試合をやる気は毛頭なかった。「あの時のオレとは違う」と言わんばかりの猛攻撃。ついに、難攻不落の宿敵を倒した。 戦いは終わった。「今日でファイターとして引退するけど、オレは30。まだ(人生は)50年もあるので、新しいことに挑戦していく」。97年のプロデビューから12年。もう、悔いはない。常に最強であることへのプレッシャーから解放され、完全燃焼した“反逆のカリスマ”。その表情は晴れやかだった。 (石川晴信)
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