きょうのコラム「時鐘」 2010年1月3日

 年をまたいで、まだ年賀状を書いている。悪い癖は一向に改まらない

賀状は正月に書くもの、と広言して実行する知人がいる。正論にして愚論。その悪影響もある。上には上があり、賀状は2年に1度、と勝手に決め込んでいるのもいる。77歳の喜寿を迎えたのでこれを最後にする、と書かれた賀状をもらったことがある

そんな習わしは初耳だったので、後日尋ねた。喜寿は口実で、「大病をして覚悟が変わったから」という。病と付き合う暮らしは、新しい年を迎える以上に、新しい1日や1月の始まりを厳粛に迎える。年が改まるよりも、日を重ね、月が改まる喜びの方を強く実感するという

だから、年に1度ではなく、毎日や毎月でも、賀状を出したい心境なのだ、と欠礼の理由を教えてくれた。97歳の長寿を生きた人からも、同じような日々の覚悟を教わった。やはり、90歳を機に賀状をやめたそうである

工夫をこらした賀状を見ながら、届かぬ賀状の差出人のことも思う。便りのないのが無事の便り。新春を1日の計、1月の計の始まりとして、日々をしっかり生き抜く。うらやましい人である。