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K-1谷川プロデユーサーが語る「あらためて考えよう!K-1とは何か!?」


谷川貞治が“K-1プロデューサー”になるまで


OG 今回は、人生を見事に成り上がられている超敏腕プロデューサーの谷川さ んに人生を楽しく生きながら、知らない間に成功を手にする秘訣を伺いにまいり ました!
谷川 「は〜い。よろしくお願いします」
OG 谷川さんという人をよく知らない人も多いと思うので、今日はひじょうに基本的なところからお伺いしていきたいと思うんですが、よろしいですか?
谷川 「はいはい。どうぞどうぞ」
OG では、なぜK-1のプロデューサーをやってらっしゃるのか、というところからお伺いして宜しいでしょうか。
谷川 「いきなりちょっと話しづらいところなんですけど(笑)。えー、ボクはもともとベースボール・マガジン社というところに務めていまして。そこで『格闘技通信』という格闘技の雑誌を創刊させたと。それはもう20年くらい前になんですけどね」
OG そんなに昔になりますか。
谷川 「なりますね。ボクが『格闘技通信』の創刊に携わったのが1987年ですから、もう約20年前ですよね。その頃は、格闘技っていう言葉も一般的じゃないし、プロの格闘家というのもいなかった状態だったんですよね。プロレスが全盛の時代で、格闘技というものがなかった。その時代背景をうけて、いつかプロの格闘技というものができればいいなと考えていた頃でしたね」
OG 格闘技ブームの今からしたら考えられないですけど、そんな時代があったんですよねぇ。
谷川 「えぇ。そのころ正道会館の石井館長(※当時)という人と……当時は全くの無名だったんですけど、一緒に『いつかはプロの格闘技ができればいいですね』って話をしていましたね。その後できたのが1993年のK-1です。その時、ボクは雑誌の編集者っていうポジションも持っていたんで、あくまでもブレーン的な役割だったんですよね。それが2002年以降、本格的にプロデューサーをやってくれないかと石井館長から頼まれまして。いまは見る側から主催する側に回ってしまったと言う感じですね」
谷川貞治
OG なるほど。あらためて聞くと勉強になりますね(笑)。これもまた基本的な質問になるんですが、谷川さんはベースボール・マガジン社に入る前から、プロレスや格闘技に興味がおありだったんですか?
谷川 「子どものころから大好きでしたね。でも、自分で格闘技はやったことないんですよ」
谷川貞治
OG あ、そうなんですか。
谷川 「ボクらの世代はゴールデンタイムでプロレスが25%くらいの視聴率をとっていたり、キックボクシングで沢村忠選手の中継がこれまた30%くらいとってたり、マンガの『空手バカ一代』とか『タイガーマスク』が大ヒットしたり、あとブルース・リーの映画がリアルタイムでやってたりっていう時代で、それが中学、高校時代なんですよね」
OG それは影響受けますよね。
谷川 「そうです、そうです。その頃に格闘技が好きになって。その中で、特にボクが憧れたのは梶原一騎さんだったんですよ」
OG えっ? 特定の選手ではなくて『空手バカ一代』原作者の梶原一騎さんのほうだったんですか。
谷川 「そうそう。ボクと同世代だと、極真会館の松井館長だったり、あと高田総統も同じ世代かな?」
OG え〜、高田総統ではなく、よく似た別人の高田延彦PRIDE統括本部長のほうですかね(笑)。
谷川 「あぁ(笑)。『空手バカ一代』を読んで松井館長は極真空手をはじめたし、アントニオ猪木さんを見て高田さんは新日本プロレスに入ったし。ボクは梶原一騎さんに憧れたんですよ。『空手バカ』とか『巨人の星』とか『タイガーマスク』の世界を描く人は、なんてすてきなんだろうって。それに梶原さんは興行もやってたんですよ」
OG おやりになってましたね。
谷川 「猪木vsウィリー戦とかね。マンガを主体としてドラマを盛り上げていって、その上で興行まで盛り上げていって大成功させるっていうような、今のメディアミックスの先駆けのようなことをやってたのが梶原一騎さんなんですよね」
OG 今思えばまさにそうでしたね。いま松井館長と高田さんの例をひいていただいたのはすごく分かりやすいですね。大山総裁に憧れて松井館長は空手を志して、猪木さんに憧れた高田さんはプロレスラーになって、そして梶原先生に憧れた谷川さんは現在のように、選手や大会を盛り上げる側になったというわけですね。

雑誌の編集者からK-1プロデューサーへ。その2つに違いはない?


OG いまのお話を聞くと、谷川さんは夢をかなえた人なんだとしみじみ思いますねぇ(笑)。
谷川 「あ、そうですよ。ボク、ものすごくしあわせな人生ですよ(笑)。中学、高校の時の友達なんかに会うと『あのころ言ってた好きなことをホントにやってるからうらやましい』って言われますよ。『いいだろう』と思いますけど」
OG どうだ! と(笑)。
谷川 「そう。でも当時は格闘技のプロデューサーなんて仕事はなかったですからね。格闘技雑誌もなかったし。でもボク、梶原一騎さんとか見てて、絶対受けるビジネスだと思ってましたよ。そういう隙間産業を狙ってたんですよね」
OG 隙間産業(笑)。梶原さんを見て「これは商売になる」と思ってたんですね。
谷川 「だって、自分はこんなに面白いと思ってるんだから、世の中にはもっとたくさんこれを求めてる人がいるだろうって思いましたよね。それが最初は雑誌で、イベントになったりTVになったりもしてますけど、気持ちは変わらないんですよね」
OG 雑誌の編集というところから、大会プロデュースに携わるということに対し戸惑いとかはなかったんですか?
谷川 「いや、そのあたりは基本的にまったく変わらないですね。実現のための作業として、書くか、実際に交渉して試合をさせるかっていう作業は違いますけど、基本は一緒です。苦労もなんか、似てますよ。たとえば雑誌でも一生懸命、気合いれてぎりぎり〆切の印刷所またせて『持って行け!』っていうほうがいいものができるんだけど、イベントも、ぎりぎりまでぐちゃぐちゃやって、ああでもないこうでもない、やっぱりこいつ変えてくれとかやってるほうがいいイベントになる。そういうところがなんか似てますね」
谷川貞治
OG へぇ〜。むしろ余裕もってやってるときのほうが、あまりいいものにならなかったりとか。
谷川 「そうですね。なんか思っていたほど盛り上がらなかったりします」
OG やっている面白さや、手応えとかも同じですか?
谷川 「そこも変わらないですね。やっぱりいい意味でも悪い意味でも反響があるっていうのが、嬉しいですね。イベントだと、感想だけじゃなくて、あとはチケットとか視聴率の数字もあるし。チケット完売って聞いたら、やっぱり『やったな』ってなるし。紅白歌合戦の視聴率を曙vsボブ・サップで抜いたっていうのは、ものすごい世の中の風向きを感じましたよ。ああ手応えあるなあっていうか、世の中動いたなっていうのを感じましたね。そういう感動とか手応えは一緒ですよね。雑誌も、思い切った表紙や特集にしたらその日に全部売れちゃったとかいうのと、似てますよね」

成功の条件は、耳がいいことと直感を信じること!?


OG じっさいにK-1プロデューサーになられてから、壁を感じた瞬間ってありましたか?
谷川 「壁というか、ボクがプロデューサーになったそのときの状況が、K-1にとって一番苦しいときだったんですよ。マニアックな話になっちゃいますけど、(ジェロム・レ・)バンナが腕を折っちゃったりとか、当時K-1にいたミルコ(・クロコップ)が他団体に行っちゃったりとか、ボブ・サップが眼窩底骨折しちゃうとかして、選手が誰もいなかったんですよ」
OG あ〜、ありましたね。確かアーネスト・ホースト選手も欠場になりましたよね。
谷川 「そうそう。選手もいないし、スポンサーがおりるっていってるし、テレビ局もおりるとか言ってるし、逆境ですよね。さらにその頃って、格闘技界の人間関係もすごく揺れていたんで、誰が敵で誰が味方なのかもわからない状態だったんですよ」
OG 確かにそうでしたねぇ。
谷川 「例えば、今のK-1の状態で来年バトンタッチされてたら、壁ってものを感じ取ったかもしれないけど、ボクがバトンをうけとったときはK-1が危機的状態だったから、それどころじゃなかったなぁ」
OG では、そのときは壁というより、ひとつひとつのトラブルを解決するのが先決だったような感じですか?
谷川 「そうですね。『K-1解散』って新聞の一面になりましたからね。どうしようって。でも、そういう一番苦しいときこそ、いちばん派手なことをやらなきゃダメなんですよね。苦しいからってこじんまりやってたら、もうそこで終わってしまうんで」
OG むしろそういうときに思い切ったことをやらなきゃダメだと。
谷川 「2003年ってビジネス的にも反響の面もいい年になったんですけど、大きかったのは夏にマイク・タイソンが出てきてサップと喧嘩したことと、魔裟斗選手が優勝したことと、冬に曙選手がリングにあがったことですね。内情としてはすごく苦しかったんだけど、毎日のように一面とれてましたからね」
OG 話題として、やっぱり曙選手の参戦決定は本当に驚かされましたね。
谷川 「そうですね。曙選手は自分の中でも大きい出来事のひとつですね。だってあのときなんて、大晦日に3局で格闘技やるって噂にはなったけど、いち早く『猪木ボンバイエ』の話題が出て、それが分裂して日本テレビとフジテレビが決定して、K-1だけ出遅れてる状況だったんですよ。これはまずいなって。高みの見物のほうがいいのかなって思ったんだけど、ここで出遅れたら、K-1そのものがPRIDEとか新興勢力に負けちゃうって思ってたんだけど、曙vsサップの1カードでTBSが決まりましたからね。本当に起死回生でしたよ」


OG 曙選手の相手として、サップっていうのを考えるきっかけはなんだったんですか?
谷川 「いや、あれは単純に曙選手が『ボブ・サップだったら勝てる』とかなんとか、普段ちょっと親しい記者に言ってたらしいって小耳にはさんだ、その一点ですよ」
OG そ、そんな小さな一点から突き崩して決めたんですか……。
谷川 「そう。あの〜、成功するひとつの秘訣として、耳がいいってことは重要ですね」
OG ほう!
谷川 「たわいのないことを聞き逃さないことは重要です。なにげなく言っていたことがネタになるというか、それが時代を変える鍵になったりするんで。ボクは曙選手のその発言を聞いていたから、やるんじゃないなぁって思ったんですよ。選手なんかでも、耳をよくして、とにかく情報を獲ろうと思うと、いい選手の情報がなんか入ってくるんですよね。『韓国でいい選手いないかな〜』って思ったら、チェ・ホンマンって複数から聞きましたもん。写真みたら『いいキャラクターしてるなぁ』って」
OG 谷川さんは、チェ・ホンマン選手の練習を見ずに契約したと聞きましたけど。
谷川 「うん、全然見てないですよ(アッサリ)。ボク、練習あんまり見ないほうなんですけど、でもその印象はずれることないですね。所くんも見てないし、レミギウス(・モリカビュチス)も見てないですね」
OG 写真を見たときの印象とかで即決しちゃうんですか?
谷川 「そうです。写真とかビデオみたときの印象です。キッドくん(※山本KID徳郁)もそうですね」
OG そのあたりはさすがですねぇ。耳がいいことと、感じた第一印象を大事にすること。
谷川 「あと、試合でどっちが勝つかとかも、詳しい人より素人のほうがあてますよね。技術的なことはわかんなくても、入場するときのオーラとか、たたずまいとかで当てちゃったりする。詳しい人は、考えすぎて外したりしますね。そっちのほうが大切だったりする。それに近いんじゃないかなぁ」
OG なるほど。戦績とかも大切ですけど、何もしらない人がぱっと入れる世界をどこか残しておくというか。
谷川 「そうそう。最初にその人を見たときだったり、選手全体から感じるイメージの強烈さって大事ですよ」
ジェロム・レ・バンナ、アーネスト・ホースト、ピーター・アーツというK-1の一時代を築いた三人を撫で斬り、K-1 WORLD GP 2006を制し、史上4人目グランプリ連覇を達成した巨神兵、セーム・シュルト。もちろん、ゲーム内でも恐ろしい強さを誇っている

OG 格闘技だけじゃなくてゲームの世界も、ビジュアルやストーリー含めてに中身が高度になってるんですけど、作り手のこだわりが高くなりすぎている傾向があるかなと思うんですよ。
谷川 「はいはい」
OG クオリティとしては高くなってるけど、入り口の敷居が高くなっているという、そのあたりはどこか格闘技の世界と近いのかなと思うんですね。
谷川 「ゲームって、簡単にできそうで難しいやつがいいですよね。奥が深いやつが一番はまると思う。簡単そうで実際簡単だったらすぐ飽きちゃいますよね。でも、簡単そうでやってみたら難しいとか、そういうゲームが一番はまると思う。簡単そうに見えて或る程度難しい奴がいちばんいいと思いますね。やってるうちに奥が深くなっていくようなのが、いいと思いますけどね」
OG なるほど。一見さんへの入り口は低いんだけれど、中に入ってみるとそれなりに広さがあるというか。
谷川 「そうそう。最初から難しい世界観みたいなのを創り上げちゃうっていうのは、ボクはちょっと違うと思いますね」

OG このあと実際に「K-1 WORLD GP」をプレイしていただくんですけど、普段、谷川さんはゲームをおやりになったりはしますか?
谷川 「嫌いじゃないですけど、最近は全然やらないですね。時間的にも難しいですし。一番やったのは、それこそインベーダーのころですね。ギャラクシーとかパックマンがはやったころですね。ファミコンとかも何種類かやってましたよ」

驚愕の事実発覚!? 「じつはおもちゃ会社を受けたことがあるんですよ」


OG プロデューサー的な視点を常にお持ちの谷川さんですから、ゲームを作ってみたいというような気持ちになられたことはこれまでなかったんですか?
谷川 「あ、ボクここだけの話ですけど、おもちゃ会社を受けましたね」
OG えぇっ!
谷川 「出版社に行きたいっていう希望はあったんですけど、ボクはベースボール・マガジン社しか受けてないんですよ。でも募集が遅かったんで、どこかひとつくらい受けておかなきゃなって思って受けたのがおもちゃ会社でした。そこでもボク、ゲームをプロデュースして持って行きましたよ」
OG 「面接試験にですか!?」
谷川 「たしかボードゲームの企画書を書いて持って行きましたよ。そしたら受かりましたね」
谷川貞治
OG 入社試験でそこまでやる人いないですもんね。それは採用されるでしょうねぇ。
谷川 「だって瞬間的な面接とか筆記とかじゃわからないと思って。こういうゲームはどうでしょうって。いくつか考えていきました。ボクね、いまはやりたい職業っていっぱいあるんですよ。いまは社会にでたから、どういう仕事かって分かるから。でも大学のとき、職業なんてわからないじゃないですか。先生とか、梶原一騎とか(笑)。そんなのしかわからなかったですからねぇ。おもちゃは分かると思ったんですよ。どうせ営業とかやるにしても、おもちゃだったらわかるし、自分の好きなものだからいいかなと思って。トラック運転するにしても、材木が乗ってるよりおもちゃが乗っているほうが楽しく運べるじゃないですか」
OG まぁ、そうですよね(笑)。運んでいても楽しいかもしれないですからね。
谷川 「ボクらの時代は、まだ終身雇用制の意識が強い時代でしたから。一生やるのに、なんだか分からない会社でわからない仕事するよりは、だったらまだ分かるおもちゃの会社のほうがいいかなって思ってたんですよ」
OG では、就職活動をされていた当時も、コンピューターゲームの出現に対して、なんらかの可能性みたいなものは感じてらっしゃったんですかね。
谷川 「ものすごく感じてましたね。これはいったいどうなるんだろう、どれだけ発展していくんだろうって。そんなかでやっぱり、ボクが一番よくやったのは格闘ゲームでしたよ。だから単純な話ですけど、ゲームの中で新日本プロレスvs全日本プロレスをやりたいと思いましたよね」
OG あぁ、理想のマッチメイクを(笑)。当時、やりこんだゲームって覚えてますか?
谷川 「こういう対戦ものとか、バーチャファイターみたいなのとか、ストリートファイターとかやりましたね」
OG RPGとか、ストーリー展開があるようなゲームはおやりにならなかったんですか。
谷川 「あれはボク、ぜんぜんやったことないです。すっごい時間かかりそうなんで。単純にうったり殴ったり蹴ったり、それからパズルゲームで組み合わせて消していったりとか、そういうのが好きですね。RPGとか、やるまでに時間がかかりそうだなって思って、最初から敬遠しちゃいますね」
OG いま谷川さんがプロデュースするとしたら、どんなゲームを作りたいですか?
谷川 「やっぱり単純に面白いものがいいですよね。複雑なんじゃなくて、なんか『あぁ、こういうことやりたかったんだな』みたいな“かくし味”があるようなゲームだったら、面白いかなと思うんですけど」
OG “かくし味”ですか。
谷川 「たとえばK-1ゲームで言えば、対戦ゲームができるという王道のほかにプロデューサーになれるサブルールがあって、さらに上のほうの画面にいくと野球のユニフォームをきた『清原』っていうファイターが待っているとか」
OG はいはい(笑)。まさにかくし味ですね。世界をせまく見て奥深さを追求していくんじゃなくて、ひろく見て本体部分を大切にしつつ、かくし味を入れ込んでいくという感じですかね。
谷川 「そうそう。『清原がいるよ』って、そのクスっと笑えるところがすごく流行ると思う。たとえば『K-1 WORLD GP2006』というタイトルで出たときに、観客がラウンドが終わると青いハンカチを出すとか」
OG 時期モノとして(笑)。
谷川 「そうそう(笑)。そうするとクスっと笑えるのと、口込みで伝わると思うんですよ。『今年のK-1、観客が青いハンカチ出すぞ』とかって伝わって、知らない人もやってみようかなって思ったり、あとは何年かしてやり返してみても『あぁ、いたなぁハンカチ王子』なんて面白く思い返せるし」

「K-1 WORLD GP 2006」に見る“かくし味”とキャラクター


OG いまおっしゃられた“かくし味”的な要素は、現在絶賛発売中の 「K-1 WORLD GP 2006」に、かなり盛り込まれている感じがありますね。
谷川 「そうなんですか? 青いハンカチは出る?」
OG 残念ながらそこまでは(笑)。でも谷川さんの解説も入っていますし、インターバルではちゃんと、各コーナーのレポートも入るし。選手育成モードでも、いい選手を育てると谷川さんが出てきてスカウトしにきてくれる。
谷川 「へぇ〜。そうなんですか」
OG そうなんですよ(笑)。この前に発売された『K-1 MAX』のゲームも大ヒットになったそうですね。ちなみに私は昨日、武田幸三選手でプレイして、コンピューターの小次郎選手にボコボコにされて負けました。
谷川 「そういう話を聞くと面白いなぁ(笑)。トニー・バレントとかにボコボコにされたら、ショックですもんね」
OG 今後はゲームから、競技としてのK-1を知る人というのも出てくる可能性がありますよね。
谷川貞治
谷川 「それは考えられますね。ボク、格闘ゲームで一番面白いのはやっぱり打撃だと思いますよ」
OG あぁ〜、それはおっしゃるとおりかもしれませんね。たしかに寝技はコントロール操作が難しいかもしれませんしね。
谷川 「難しいですよね。僕は寝技も好きだし、総合格闘技大好きですけど、やっぱり打撃のわかりやすさは大きいですよ。立ち技っていうだけでアドバンテージありますもん。寝技だと途端にコアな世界に入っちゃいますからね。ゲームだと、ボクシングとかに比べて蹴りをつかうだけで稼働範囲が広いし」
OG ゲームとして、連打連打連打でパンチや蹴りがバンバンバンって当たるっていう、その表現がわかりやすいですよね。
谷川 「相手が当たって倒れてっていうのも分かりやすいし。寝技のダメージの大きさとかを、ゲームで表現できたら大発明だと思いますね」
OG K-1はこうしてゲームになったことから考えても、選手ひとりひとりのキャラクターが際だっていますよね。
谷川 「そうですね。キャラが立ってますし、立てるようにも考えていますね」
OG 選手のキャラクターというか、個人のパーソナリティにスポットをあてるようなことを意識されていますか?
谷川 「してますし、そこを見てますよね、一番。ボクなんかは全体を見てどういう選手が足りないなって思って、そこを補うように選手を探したりしますね」
OG たとえば陰と陽っていう要素があって、陰の選手が足りないなって思ったりとか。
谷川 「そうそう。だから武田幸三選手は絶対に要るんですよ(笑)。魔裟斗選手だけじゃダメなんですよ」
OG はいはいはい(笑)。魔裟斗、須藤元気、山本キッドといった選手だけじゃなくて、やっぱり武田幸三的な選手が必要だと。
谷川 そうそう。そこは絶対に考えますよね。ボクはいろんな国から、いろんなキャラクターがある選手に集まってきて欲しいし、強さはもちろん大切ですけど、強いだけの人っていうのは、あまり求めてないですね」



 第1試合『バダ・ハリ(谷川P) VS ジェロム・レ・バンナ(CPU)』

OG では実際に、谷川さんに『K-1 WORLD GP2006』をプレイしていただきたいと思います! まずは選手を選んでください。
谷川 「誰にしようかな〜。バダ・ハリにしましょうか。相手は……番長にしましょうか」
OG ジェロム・レ・バンナですね。実際に観たい組み合わせだなぁ。会場も選べますよ。
谷川 「会場は……じゃあ名古屋かな。(スタート)」
ゲームの中のアナウンサー 「青コーナーより、バダハリ選手の入場です!」
谷川 「へぇ〜。会場はリアルですねぇ。でも、K-1ってこうやってみると豪華ですね」
OG いや、今気づくことじゃないと思いますけど豪華ですよ(笑)。
谷川 「なるほどなるほど。あ、岡林さん似てるなぁ」(スタート)
ゲームの中の谷川さん 「良い試合になるの間違いないと思いますよ〜」
OG 解説はいりましたね(笑)。
谷川 「あ、やばいやばい。(バックスピンキック)……なんでこんな技ができたんだろう……」
ゲームの中の谷川さん 「いいですね。このままいけばいい試合になりますよ〜」
谷川 「倒れろ、倒れろ〜。あ、やばいやばい。あーやばい。やばい。うーん……いい試合だなぁ(笑)」
OG 確かに(笑)。この組み合わせといいこの試合展開といい、これは視聴率取れますねぇ。
谷川 あー、やばい、やばい。やばい。あーっ。(3R終了にダウン。試合終了)
ゲームの中のアナウンサー 「ジャッジ29-28.5、ドロー。30-27.5。」
谷川 「あ、今のは正しい判定だな(笑)。最初のはちょっと……どうなんだろう」
ゲームの中のアナウンサー 「ジャッジ28.5-29、ドロー。延長となります!」
谷川 「この展開で延長かぁ。これは、いい試合ですよ(笑)」
OG 1、2Rは獲ったという感じなんですかね。見たいなぁこの試合。会場は大歓声ですね。観客が立ち上がってる(笑)。
ゲームの中の谷川さん 「すごい試合になってきましたよ」
谷川 「(スピンキックをあびせるもラッシュ)あー、やばい。……ほんとに良い試合だなぁ」
OG これは勝てたんじゃないですかね。おっ、判定3-0でバダ・ハリ勝利です!
谷川 「(ガッツポーズ)なかなか名勝負を作るでしょう! いい判定勝ちだなぁ。あぁ、でもキャラが本当に似てますねぇ」

第2試合
『チェ・ホンマン(谷川P) VS
アーネスト・ホースト(CPU)』


OG チェ・ホンマンは実物より、少しかっこよくなってるように見えますね。
谷川 「うん、かっこよくなってるよね(笑)。ホーストはちょっとゲイリー(・グッドリッジ)っぽいかなぁ」
ゲームの中のアナウンサー 「さあ、試合開始のゴングです!」
谷川 「(操作しながら)こうやって前に出られると、ホーストは弱いんですよ」
OG さすがですね(笑)。あっ、ダウン奪った。これは2Rで倒せるんじゃないですか。
ゲームの中の谷川さん 「おたがい良かったですよねー。よくせめてましたよ。でも、決め手を欠いたって感じですよね。相手は見えてる感じですから、次のラウンドに期待しましょう」
谷川 「……ちょっと今の解説はピントがずれてたなぁ」
OG アハハハハ、自分にダメ出し(笑)。確かに少しおかしかったですね(笑)。
谷川 「(一方的な展開でダウンするホースト)よし! 勝ったー! かわいそうなホースト(笑)。あ、チェ・ホンマンはちゃんとダンスもやるんだ。憎たらしいねぇ(笑)」
OG いま2試合、実際にプレイしてみて、いかがでしたか?
谷川 「いやぁ、燃えました(笑)。興奮した。とくにバダ・ハリとジェロムの試合は、K-1の一番いい試合のようなパターンが出せたんで。普段は、僕の仕事は選手をリングにあげるまでなんですけど、今日は試合まで創り出してしまったという感じですね。満足です。あとはやっぱ選手が似てますよね。選手の動きと、特徴がよくでてるから。会場とか、入場までも凝った演出してるから、のめりこめますよね。時間があったらトーナメントやりたいですねぇ」
OG 各選手の動きにしろ技にしろ、かなり凝っていますよね。
谷川 「こだわりみたいなのは感じますね。なにげなく手を振ったりとかそういうところも、すごく似てますよね。なるほど。これはいいな。ただちょっと、ボクの解説はピントがはずれてましたね(笑)。反省します」

 第3試合 メーンイベント『曙(谷川P) VS セームシュルト(CPU)』

OG これも夢の組み合わせというか……イジメみたいなマッチメイクですね。
谷川 「この試合は実現させたいなぁ……。パンチの打ち方とか、そっくりだなぁ。(パンチを受ける曙)あぁっ! シュルトは強いなぁ〜。(次の打ち合わせの人が登場)すいません! すぐKOしますんで!」
OG 『すぐKOしますんで』(笑)。あっ、打たれた! この、曙選手のローを受けたときの動きとか、見事ですよね(笑)。
次打ち合わせの人 「何、遊んでるんですか?(笑)」
谷川 「いや取材中で、K-1のゲームなんですよ! 一番弱い選手で一番強い奴を倒すんです。がんばれ曙!」
ゲームの中の谷川さん 「ちょっと一方的な展開ですねー」
谷川 「え〜、そんなの、この組み合わせなんだから当たり前だよ! 3Rまで倒れてないんだから頑張ってるほうだよ!」
OG いや、自分の解説に突っ込みを入れないでください(笑)。
谷川 「このくらい曙選手も動いてくれたらいいんだけどなぁ……。あ〜っ、延長になっちゃった!」
OG 曙VSセームシュルトが延長突入って、すごい展開ですよ(笑)。
次打ち合わせの人 「谷川さん、次つかえてるんだから延長いかないでよ(笑)」
谷川 「すいません、なんか思ったより熱戦になってしまいました(笑)。もう少しで終わりますんで! これは視聴率が取れる展開だなぁ……」
OG 判定はどうなるか……あぁ〜、シュルトの勝ちでしたねぇ……。
谷川 「あー! 残念。だけど燃えたなぁ。あぁ、名勝負を作ってしまった……」
OG ゲーム上でも名プロデューサーということで(笑)。谷川さん、お忙しい中、今日はどうもありがとうございました〜!

※このインタビューは2006年12月に収録されたものです※

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