事件・事故・裁判

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

8月衆院選:格差2倍で「違憲」 選挙は有効 大阪高裁

衆院選の選挙無効を求めた訴訟の判決が行われた法廷=大阪市北区の大阪高裁で2009年12月28日午前11時28分、代表撮影
衆院選の選挙無効を求めた訴訟の判決が行われた法廷=大阪市北区の大阪高裁で2009年12月28日午前11時28分、代表撮影

 8月の衆院選小選挙区間の「1票の格差」が、大阪9区と有権者数全国最少の高知3区で2.05倍になったのは法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、大阪府箕面市の有権者が府選管に選挙無効確認を求めた訴訟の判決が28日、大阪高裁であった。成田喜達裁判長(異動のため菊池徹裁判長代読)は「2倍に達する格差は違憲の評価を免れない」と指摘した上で、選挙無効とした場合、かえって公共の福祉に反するとする事情判決の法理を適用して選挙自体は有効と判断し、請求を棄却した。

 96年10月の衆院選から導入された小選挙区比例代表並立制の1票の格差を巡る違憲判断は初めて。

 8月衆院選で最大の1票の格差は千葉4区と高知3区の2.30倍で、東京の弁護士グループらが全国8高裁・支部に提訴した。

 衆院選挙区画定審議会設置法(94年施行)によると、小選挙区の区割りは、定数300のうち47を各都道府県に割り当て、残りを人口比で振り分ける「1人別枠方式」を採用。最大選挙区の人口を最少区の2倍未満に抑えることが基本とされる。02年8月の定数是正で2倍以上の選挙区は95から9に減ったが、今回は45に増えた。

 成田裁判長は判決で「1人別枠方式は従来の著しい格差を改善させる方式として、過渡期の改善策としてそれなりの合理性があったが、現時点では憲法の趣旨に反する。いつまでも格差が2倍を超える状態を放置することは、違憲の評価を免れない」と指摘した。

 原告側は「都道府県は行政区画に過ぎず、住所による差別は許されない」と主張。府選管(国)側は「都道府県は無視できない要素。格差は憲法の平等に反するまでに至らない」と主張していた。

 公職選挙法により、国政選挙の無効確認訴訟の1審は高裁で行われる。最高裁判例は、衆院選で格差が3倍を超えた場合、違憲か違憲状態と指摘。最大2.17倍だった05年衆院選について最高裁は07年6月、「合憲」と判断した。【日野行介】

 ◇判断の骨子

一 有権者数の最大格差は、投票当日現在、2.304倍だった。

二 1人別枠方式は、合理性と実効性があったが、現時点では憲法の趣旨に反する。

三 2倍に達する格差は、客観的にも著しい不平等と評価される。

四 選挙は違法との評価を免れない。ただし、無効とした場合、公の利益に著しい障害が生じることは明らかで、原告の請求を棄却する。

 【ことば】▽1票の格差▽ 有権者の1票の価値を選挙区間で比べた際の差。選挙区の人口(有権者数)を議席数で割り、議員1人当たりの人口が最も少ない選挙区を基準に倍率で表す。

毎日新聞 2009年12月28日 11時59分(最終更新 12月28日 17時49分)

PR情報

事件・事故・裁判 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド