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知的障害生徒向け「分教室」広がる 12年度には倍増

2009年12月31日

 知的障害者向けの特別支援学校高等部の分教室や分校などを同じ敷地内に設置する公立高校が、2012年度までに少なくとも18府県の55校に増える見通しであることが、朝日新聞の調査でわかった。09年度の10府県28校からほぼ倍増する。少子化の影響で急増する高校の空き教室を活用して特別支援学校の生徒を受け入れる。障害のある子とない子がともに学ぶ「ノーマライゼーション」に近づこうとする狙いだ。

 朝日新聞が全国47都道府県の教育委員会に、当面の設置計画を取材した。09年度、公立高校内に特別支援学校の分教室、分校を設置しているのは9府県。滋賀県は高校と同じ敷地内に特別支援学校そのものを開設している。これらの中には12年度までに設置数を増やす府県があるほか、新潟、三重、京都、徳島、沖縄の5府県が10年度、高知県が11年度、兵庫、福岡の両県が12年度に初めて設置する予定だ。

 特別支援学校は、07年の改正学校教育法で盲・ろう・養護学校が統合されてできた。公立高校内に設置されている分教室などは、知的障害者を対象としている。

 設置が最も早かったのは静岡県。02年、東伊豆地域の県立高校に、養護学校高等部の分校を開設した。設置数が最も多いのは神奈川県。今年度までに11の県立高校に分教室を設け、12年度までにさらに9校で開設する。同県では04年、県立高校2校に初めて分教室を開設。当初は5年間の暫定措置の予定だったが、「高校の生徒が障害のある子をいたわる心を身につけられる」として方針を変え、設置校数を増やしている。

 このような分教室、分校が増えている背景には、特別支援学校の高等部に通う生徒の急増がある。文部科学省によると、02年度は4万1206人だったが、09年度には5万3093人に達した。大阪府では、児童・生徒数150〜200人程度の規模が妥当とされる知的障害児向けの特別支援学校で、児童・生徒数が300人を超える「マンモス校」が5校に上っている。文科省の担当者は「特別支援教育に対する保護者の理解が深まり、高等部進学への希望が高まっている」と話す。

 その一方で、全国の高校生の数は少子化に伴って89年度の564万4千人をピークに減り続け、09年度は334万7千人にまで落ち込んだ。この結果生じた空き教室を、特別支援学校高等部の生徒の過密化解消に利用する狙いだ。

 分校などが設けられても、両校の生徒の授業は基本的に分けられているが、体育祭や文化祭などの学校行事や部活動は一緒に取り組む場合が多い。双方が「日常的な交流を通して相互理解を深められる」としている。

 知的障害のある子は地元の小中学校の特別支援学級に通っていても、高校入試の壁に阻まれ、遠方の特別支援学校高等部に進学したり、作業所に通所するようになったりして、地域の友達から離れるケースが多かった。(左古将規)

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