神戸市須磨区の女性が受け取った「ねんきん定期便」。国民年金保険料について「未納」の記載が並ぶ=森井英二郎撮影
阪神大震災で元勤務先や自宅が被害を受けて証拠書類を失い、「消えた年金記録」の回復が認められないケースが少なくとも41件あることが朝日新聞の調べでわかった。記録回復の申し立ては続いており、震災が救済の「壁」になる事例は今後も増える可能性が高い。
総務省が設置した年金記録確認地方第三者委員会(都府県に一つずつ、北海道に四つ)は、記録回復の申し立て内容と可否判断の理由をホームページに掲載しており、2009年12月末までに公開された約8万件を調べた。申し立て内容が記憶違いなどではなく事実とすれば、阪神大震災の影響で記録回復されなかった事例は兵庫第三者委で38件、滋賀第三者委で2件、愛知第三者委で1件あった。
兵庫県在住の70代男性は1956年5月〜57年3月の厚生年金記録の回復を兵庫第三者委に申し立てたが、この間に勤めていた神戸市内の会社の社屋が震災で全壊し、人事記録がなくなっていた。当時の事務担当者や同僚はすでに死亡。勤務実態を確認できず、記録回復は認められなかった。
各地の第三者委によると、阪神大震災の影響があったとしても公開資料に必ずしも明記するわけではないといい、こうした事例は表面化した以上に存在するとみられる。(石前浩之)