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きょうの社説 2009年12月31日
◎トキの資料収集 環境教育の大きな目玉に
1月8日からのいしかわ動物園(能美市)でのトキの分散飼育に合わせ、石川県はトキ
に関する資料収集を進めている。中核となるのはNPO法人日本中国朱鷺(とき)保護協会の村本義雄名誉会長が半世紀にわたって集めた多くの貴重な収蔵品で、近く県に寄贈される予定である。佐渡トキ保護センター(新潟県佐渡市)からはトキのつがい2組が移送され、春の繁殖 シーズンを迎える。石川の地からトキが姿を消して40年ぶりの「里帰り」と新たな命の誕生に期待が高まり、新年は石川県にとって平成の「トキ元年」といえる節目の年となろう。 飼育されるトキの姿はモニター映像を通して見ることになるが、トキへの関心がこれま で以上に高まるのは間違いない。トキを通じて郷土の自然と環境を考える格好の機会であり、収蔵品の数々は子どもたちの環境教育の大きな目玉となる教材といえる。 新たな収蔵先や展示方法などは今後詰められるが、いしかわ動物園でも順次公開するな ど、より多くの人の目に触れ、トキや自然環境などについて理解を深めるように活用してもらいたい。佐渡市の場合は「トキ効果」によって、保護センターのある佐渡島を訪れる人も多い。今回のこれだけまとまった資料は、県外から訪れる人にとっても見応えがある。 寄贈される収蔵品の数々は村本さんが長年のトキ保護活動を通して収集してきたもので 、昭和天皇が観覧されたトキの羽根や、テープレコーダーで収録された鳴き声など、研究資料として貴重なものが多い。収められた能登最後のトキ「能里(のり)」の鳴き声と「能里」のはく製を組み合わせれば、かつて能登の空を舞っていたトキの変遷をより印象深く考える契機となろう。 また、日本中国朱鷺保護協会の会員が、いしかわ動物園で解説員を務めることも、来場 者に分かりやすくトキの生態や飼育の意義などを伝えるうえで、大いに歓迎したい。すでに同園では親子連れらを対象にしたトキに関するスクールも開催されている。収集資料を生かしながら、石川の空に再びトキが羽ばたく夢の実現に向けて、新たな一歩を踏み出したい。
◎ロシア自動車関税 早期解除を期待するが
ロシアのフリステンコ産業貿易相が、輸入自動車の関税引き上げ措置の解除を検討する
考えを岡田克也外相に表明した。今年1月に実施された関税引き上げで、伏木富山港や金沢港などからの日本製中古車の対ロ輸出は激減している。当初9カ月の暫定措置とされながら、さらに延長されているのは残念だ。世界的な金融・経済危機で脆弱さが露呈したロシア国内の産業保護のためというが、主要国首脳会議(G8)の仲間入りを果たし、世界貿易機関(WTO)の加盟をめざす国にはそぐわない措置であり、早期の解除が望まれる。ただ、フリステンコ氏は解除時期について言及しておらず、ロシア国内の経済情勢から 保護主義が早期に改善されるかどうか不透明であり、楽観はできない。 米国発の金融・経済危機を背景にしたロシアの関税引き上げで、ウラジオストクなどで の日本製中古車価格は30〜60%も上昇した。このため、国内拠点港である伏木富山港からのロシア向け中古車輸出は9割減の大打撃を受け、港湾の成長戦略の見直しを迫られるほどだ。現地の中古車販売業者にとっても死活問題であり、関税引き上げに対する批判が強い。 一方、関税引き上げで保護されるはずのロシア国内の自動車生産も振るわず、今年1〜 8月の乗用車生産台数は前年同期より6割以上も減り、関税引き下げ要求に応えられる状況にない。 ロシアの保護政策でさらに気掛かりなのは、日本車を狙い撃ちにした右ハンドル車の輸 入規制を検討していることだ。右ハンドル車は右側通行のロシアでは危険というわけだが、合理的な根拠に乏しい。WTOに加盟しておれば、提訴されても不思議ではない不当な規制といえ、認めがたい。 ロシアは15年以上も前からWTO加盟を申請している。が、国内産業保護のためWT Oルールに基づく通商に抵抗感も根強く、最近は関税同盟を結ぶベラルーシなどとの共同加盟の方針を出すなど、自ら承認のハードルを上げる動きも見られる。ロシアのWTO加盟の本気度が問われてもいる。
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