厚生年金の被保険者台帳に、戦時中の徴用などで日本の企業で働かされていたとされる韓国人4727人の記録があることが判明し、社会保険庁が該当者名簿を外務省を通じて、韓国政府に提供したことが29日、わかった。韓国側から今秋、約4万人分を照会され、個々の加入履歴を調べていた。外務省によると、朝鮮半島出身の軍人・軍属に関する資料は韓国政府に開示したことはあるが、戦時下で動員された民間人の年金記録を提供したのは初めてという。
韓国では盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下の2004年、日本の統治時代の徴用・徴兵などの実態を調べる「日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会」が政府機関として設置された。08年からは、労働を強いられた本人に年80万ウォン(約6万2千円)の医療支援金など、遺族に2千万ウォン(約156万6千円)の慰労金が支給されている。
同委員会によると、16万人から「日本の工場や鉱山などに強制動員された」との申請があるが、約9割は裏付けの資料がないため、認定作業が滞っている。このため、10月下旬、ひとまず4万人分を日本側に照会した。
これを受け、社保庁は確認作業を開始。朝鮮名で246人、日本名で4642人の計4888人の加入履歴を確認した。重複分を除くと、実数は4727人という。
年金記録の確認により、4727人は韓国政府の支援制度を受給できる可能性が高くなった。ただし、社保庁は「各人の加入していた期間は調べていない」としており、日本政府に対して年金脱退手当金を申請できる資格があるか否かはわからない。
韓国・同委員会の鄭恵瓊(チョン・ヘギョン)・調査2課長は「年金記録は日本で働かされたことを示す確かな証拠だ。日本側と協議して、残る申請者12万人についても順次照会したい」と話している。