きょうの社説 2009年12月30日

◎子ども手当 少子化打開の制度設計を
 鳩山政権の看板政策として来年度予算案に盛り込まれた子ども手当は、景気刺激の一定 の効果に加え、家計への直接支援で子育ての負担を軽減するという、国の少子化対策を転換させる大きな試みとなる。これを機に国、地方が足並みをそろえ、歯止めがかからぬ少子化の打開へ向けて政策を強化するときである。年明けから本格化する石川、富山県の来年度予算編成でも、それが大きなテーマの一つになろう。

 当初は想定されていなかった地方負担が決まったため、自治体からは反発の声が相次い でいるが、せっかく思い切った手立てを講じながら、国と地方が対立の構図を引きずっていては政策効果を最大限に引き出すことは難しい。負担の在り方や支給事務の簡素化など制度設計を急ぎ、国と地方が内需拡大や少子化対策で力を合わせられる環境を整える必要がある。

 子ども手当は中学生までを対象に、来年度は1人当たり月額1万3千円、2011年度 からは満額の月額2万6千円が支給される。来年度の総額約2兆3千億円の財源に関しては、児童手当で自治体と企業が負担していた分はそのまま残し、残りを国が負担するという複雑な暫定措置が導入された。

 国と地方が負担を分け合うのは一つの考え方としても、民主党の政権公約は全額国費が 前提であり、十分な説明もないまま一方的に負担を押しつけられては自治体が反発するのも無理はないだろう。だが、他県の首長のように負担をボイコットしたり、支給事務の拒否も辞さない強硬姿勢を示すのは、政策に負のイメージを与え、決して好ましいことではない。政府は「国と地方の協議の場」などで制度の方向性を早急に示し、自治体側の不信感を取り除く努力を続けてほしい。

 子ども手当は所得制限が見送られたことで、親の収入にかかわらず、「子ども一人ひと りの育ちを社会全体で応援する」という趣旨が明確になった。大事なのは直接給付による経済支援とそれ以外の少子化対策をうまく組み合わせ、相乗効果を引き出すことである。県や各自治体は全国一律の政策とは別に、地域の実情に即した独自策を積極的に打ち出してほしい。

◎「置き傘」が始動 「金沢ふう」のもてなしで
 金沢市のまちなかで傘を無料で貸し出す「置き傘プロジェクト」が、先ごろ始動した。 この季節は「弁当忘れても傘忘れるな」と言われるほど雪や雨が多いだけに、観光客らに早速、重宝されているようだ。北陸新幹線の開業に向け、寒い冬でも温かさを感じさせる「金沢ふう」のもてなしとして、定着させていきたい取り組みである。

 先月末に開設された金沢まちなか観光交流サロンや、金沢駅の県金沢観光情報センター 、「まちバス」の車内、観光スポット周辺などに「置き傘」を用意し、観光客らに自由に利用してもらい、使用後は自分で所定の場所に返却してもらう仕組みである。駅に降り立った人がぬれないよう、そっと傘を差し出す優しさを形にした「もてなしドーム」の発想にも通じる取り組みであり、軌道に乗れば金沢のイメージアップにもつながるに違いない。

 市が、廃棄された傘の中からまだ使えるものを選び出して「置き傘」として提供するア イデアの具体化を目指していたところへ、今秋に「傘」というシングルを発売した歌手の竹仲絵里さんから同様の提案と協力の申し出があり、両者が共同でこのプロジェクトを実施することになった。竹仲さんはスタートに当たってビニール傘1500本を寄贈し、PRにも協力している。

 ライブで頻繁に訪れる金沢に恩返しをしたいという竹仲さんの思いは、利益だけを追わ ず、地域貢献も心掛ける「企業市民」の理念にも通じよう。その心意気に応えるためにも、「置き傘」の貸し出し、返却場所を必要に応じて増やすなどして、もっと使い勝手をよくしていきたい。

 ただ、傘が返ってこないケースがあまりにも多ければ、この仕組みはスムーズに回って いかないだろう。それだけならまだしも、使い終わった傘が放置され、散乱するといった事態にでもなれば、せっかくのまちの風情を損ない、イメージの向上どころか悪化を招きかねない。市は、そうしたトラブルを防ぐための目配りも欠かさないでもらいたい。