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【国際】

がれきも売買続く苦境 ガザ空爆から1年 

2009年12月27日 朝刊

23日、ガザでは、爆撃で破壊された建物のがれきの中から鉄筋を取り出す人の姿も

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 パレスチナ自治区ガザは二十七日で約千四百人が死亡したイスラエル軍の攻撃開始から一年を迎える。エジプト境界の密輸トンネルの多くは再建されたが、イスラエルによる経済封鎖で物不足が続く。がれきを売って食料費を稼ぐなど苦しい生活を強いられ、寒さをしのぐため土製の家まで現れた。(ガザで内田康、写真も)

 「全部売って二千米ドル(約十八万円)。一家の食費で二カ月で消えるよ」

 無職ハダルさん(45)は自宅の残骸(ざんがい)の再生作業を見つめた。

 石と鉄筋に分け、建設資材として売る。ガザを支配するイスラム原理主義組織ハマスの軍備に使われる恐れがあるとして、建設資材の搬入が禁じられた当地では貴重な品だ。目先の生活費確保にと、数カ月前からガザ一帯で盛んに。放置されていたがれきは、ようやく片付き始めた。

 テント暮らしの人々のため、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は土ブロック製の家百二十軒の建設を始めた。土の家に両親を住まわせたアサムナーさん(38)は「寒さはしのげるけど、大昔に戻った気分だな」と力なく笑う。

 一年前と比べ小麦は四割、オリーブ油は七割価格が上昇した。エジプト境界の街南部ラファを訪れると、爆撃で破壊された密輸用地下道の掘削が公然と行われているが、モノ不足やインフレ解消には至っていない。失業率も八割を超す。

 自治政府のアッバス議長の任期は来年一月に切れるはずだったが、同議長率いる穏健派ファタハとハマスの対立で、住民が将来を託す自治政府議長選実施の見通しさえ立たない。

 ガザで「心の相談」を続ける非政府組織(NGO)のゼヤーダ氏(46)によると、住民には「無気力」がまん延。家庭内暴力の相談も増えた。ガザ攻撃による心的外傷後ストレス障害(PTSD)を住民の一割が抱えると推定されている。集中力を欠く子は目立ち、学力も低下傾向。「環境が変わらなければ、精神的ストレスは募るばかりだ」と嘆いた。

 

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