現職・元職代議士に関する不正報道リスト(その3)
1.収賄・不正献金授受・買収(つづき)
●再検証・リクルート事件関与議員
発行日=1989年06月13日
朝日新聞 ソース=朝刊
面 名=特設ニュース面
データでみるリクルート事件
約1年にわたって、政、官、財界を揺るがしたリクルート事件。12日の衆院予算委員会で行われた法務省による最終報告では、「灰色」の公表など新しい事実は出なかったが、一連の事件を通して、逮捕、あるいは起訴、略式起訴された関係者は20人、辞職や離党などに追い込まれた人も40人以上に上る。政治家と金の関係、経済人の倫理、官僚のモラルなど、この事件が問いかけた問題は大きく、重い。リクルート事件をデータでまとめた。
●概要
東京地検特捜部の捜査は、「NTT」「労働省」「文部省」「政界」の4ルートをめぐる贈収賄容疑の摘発を核心として行われた。特捜部の調べや起訴状から見た事件の概要は。
〈政界ルート〉
昭和50年代後半、大学卒業者の採用をめぐる就職協定は有名無実化し、財界の一部から就職協定廃止論が唱えられるようになった。リクルートのドル箱である就職情報誌にとって就職協定は存在基盤ともいえ、リクルートは協定存続を求めて、政・官界に働きかけた。
藤波孝生代議士(56)は、リクルートが危機感を増した時の官房長官だった(58年12月−60年12月)。
前リクルート会長江副浩正被告(53)は、59年3月中旬と60年3月上旬の2回にわたり、官房長官公邸で、藤波代議士に対して「就職協定が順守されないのは、国の行政機関が公務員の採用に関して協定の趣旨を尊重しないことが一因」などと述べ、行政機関が協定の趣旨に沿った適切な対応をするよう請託を行ったとされる。
藤波代議士は、請託を受けて人事院などに働きかけた。その報酬として59年8月と同年12月、さらに60年6月、同年12月の計4回にわたり、首相官邸や永田町の自分の事務所で、1回につき額面計500万円ずつ総額2000万円の小切手を受け取った。さらに61年9月にはリクルートコスモス未公開株1万株を受け取った。
一方、野党の文教族として知られた池田克也(本名・克哉)前代議士(52)は、59年5月下旬から60年11月にかけて江副被告から「通産省などが就職協定への協力をうたった各省庁人事担当課長会議申し合わせに違反していることを国会で指摘し、国の行政機関に申し合わせ順守を徹底させてほしい」と請託を受けた。
池田代議士はリクルートの意向に沿った国会質問を5回行った。その謝礼として59年8月から61年5月までの間、額面100万円小切手2枚と、妻名義の銀行口座に計500万円の送金を受けたほか、61年9月にリクルートコスモス株5000株を譲渡された。
〈NTTルート〉
リクルートにとって、日本電信電話会社(NTT)は、企業の将来を左右する重要なパートナーだった。江副被告は、未公開株を前NTT会長真藤恒(78)、元NTT取締役式場英(55)、同長谷川寿彦(56)の各被告に譲渡することによって、NTTへいっそうの食い込みを図った。
リクルートは60年4月の電気通信事業の自由化に合わせて、同年7月から「社運をかける」意気込みで、高度情報通信サービス事業に進出、回線再販売(リセール)やコンピューターの時間貸し(RCS)事業を展開した。
だが、事業推進に不可欠の技術力がリクルートには不足していたため、江副被告はNTTの支援が必要不可欠と考え、民営化前からNTTに接近した。
一方、真藤被告は、「真藤イズム」といわれる独特の経営哲学で民営化を推進した。大きな顧客となるリクルートの事業展開についても理解を示し、60年12月の常務会で、リクルート支援を正式に決めていた。
また、式場被告は、真藤の下で企業通信システム事業部長としてリクルートを全面的に支援。一緒に顧客開発をする同行営業をしたり、回線リセールの全国ネット構築に協力したりした。さらに長谷川被告も東京総支社長、その後データ通信事業本部長として、リクルートのスーパーコンピューターの導入技術支援などに協力した。
こうした支援の下で、リクルートは回線リセール事業に300億円以上を投入、1000社を超す利用客を獲得して、圧倒的なシェアを築いた。さらに、NTT経由で購入したスーパーコンピューターは、横浜、大阪のNTT施設内に設置してもらい、時間貸し事業を幅広く展開した。
江副被告は、こうした便宜を受けた謝礼として61年9月30日、1カ月後に店頭登録(公開)が決まっていたリクルートコスモスの未公開株1万株を登録後に見込まれる価格より明らかに低い1株3000円で真藤被告に贈った。真藤被告は村田幸蔵元秘書(63)名義で受け取った。
真藤被告は2180万円の売却益を得て、このうち900万円を、村田元秘書が真藤被告の口座に振り込んでいた。長谷川被告は1万株を、式場被告は5000株を、それぞれ譲り受けた。
〈労働省ルート〉
焦点となったのは、職業安定法改正問題。労働省は58年9月ごろから、就職情報誌の規制強化を目指した職業安定法改正を検討、江副被告らは、これに危機感を持ち、59年1月、社内に法改正に反対するプロジェクトチームを設置した。とくに、法改正を担当していた労働省職業安定局業務指導課にマトを絞り、課長の鹿野茂被告(56)らに接待攻勢をかけた。
これと並行して、職業安定局長だった元労働事務次官加藤孝被告(59)には、江副被告や、元リクルート事業部長辰已雅朗被告(47)らが接触した。
結局、就職情報誌に対する法規制は見送られ、業界の自主規制にまかされることになった。加藤被告はその後、労働事務次官に就任した。
江副、辰已、前リクルート経営企画室付部長小野敏広(38)の3被告は共謀のうえ、61年9月30日ごろ、労働事務次官室で、便宜を受けた謝礼としてリクルートコスモス株3000株を1株3000円で譲り渡した。加藤被告は公開後に売却、約700万円の利益を受けた。
鹿野被告が位田専務(現社長)らから受けた接待は、時効にならなかったものだけで、泊まりがけのゴルフ旅行など59年4月から61年5月にかけて計41回にわたり、金額は計約151万円相当にのぼる。
〈文部省ルート〉
前文部事務次官高石邦男被告(59)は、就職情報誌の発行や文部省の各種委員の選任について、リクルートに便宜をはかった謝礼として61年9月、江副被告からコスモス株1万株を、1株3000円で譲り受けた。高石被告は61年6月から63年6月まで文部事務次官。
リクルートは高校生向け進学・就職情報誌「リクルート進学ブック」を生徒の自宅に配本するため、高校の教員を通して生徒にアンケート調査してもらうなどの方法で生徒の名簿を集めていたが、教育現場の教員らから「一企業のために協力するのはおかしい」などの批判が出ていた。
高石被告はこうした様々な問題があるのを知りながら黙認。同社に有利になるように取り扱った。また、江副やリクルートの役員が、教育課程審議会委員や、その他文部省所管の各種会議などの委員に選任されるに当たって便宜を図っていた。
<リクルート事件の刑事処分>
氏名 役職 容疑 逮捕日
[備考]
【政界ルート】
藤波孝生 元官房長官、代議士 受託収賄 (任意)
[起訴]
池田克也 前代議士 同 (同)
[起訴]
服部恒雄 宮沢・元蔵相の元秘書 政治資金 (同)
規正法違反
[略式起訴]
清水二三夫 安倍・自民党幹事長の元秘書 同 (同)
[略式起訴]
片山紀久郎 加藤六月・代議士の秘書 同 (同)
[略式起訴]
坂巻正芳 加藤六月・代議士を支持する 同 (同)
政治団体の会計責任者
[略式起訴]
【リクルート関係者・贈賄】
江副浩正 前リクルート会長 NTT法 2/13
違反(贈賄)
[NTT、労働省、文部省
、政界各ルートについて
、贈賄罪で起訴。保釈]
小林宏 前ファーストファイナンス 同 同
副社長 [NTT、文部省両ルート
について、贈賄罪で
起訴。保釈]
小野敏広 前リクルート経営企画室付部長 証取法違反 2/18
[労働省、政界両ルートの
贈賄罪で起訴。保釈。
証取法違反は起訴猶予]
辰已雅朗 元リクルート事業部長 贈賄 3/8
[労働省ルートで起訴。
保釈]
松原弘 前リクルートコスモス社長室長 贈賄 88/
(申し込み)10/20
[楢崎代議士に対する贈賄
申し込みで起訴。
東京地裁で、懲役
1年6月、執行猶予
4年の判決が確定]
【リクルート関係者・その他】
間宮舜二郎 リクルート常務 証取法違反 2/15
[処分保留釈放。
起訴猶予]
館岡精一 リクルートコスモス取締役 同 同
[処分保留釈放。
起訴猶予]
【NTTルート】
長谷川寿彦 元NTT取締役 NTT法 2/13
違反(収賄)
[起訴。保釈]
式場英 元NTT取締役 同 2/13
[起訴。保釈]
真藤恒 前NTT会長 同 3/6
[起訴。保釈]
村田幸蔵 元NTT会長秘書 同 同
[処分保留釈放。
起訴猶予]
【労働省ルート】
鹿野茂 元労働省職安局業務指導課長 収賄 2/17
[起訴。保釈]
加藤孝 元労働事務次官 同 3/8
[起訴。保釈]
【文部省ルート】
高石邦男 前文部事務次官 同 3/28
[起訴。保釈]
●政治家44人に資金
リクルートグループから、63年までに政界へ流れた資金は、判明しただけで、総額約13億3000万円にのぼる。リクルートコスモス株譲渡による株売却益、政治献金、パーティー券購入などの形で資金提供を受けた国会議員は、自民、社会、公明、民社の4党で計44人。当時の中曽根内閣の中枢からニューリーダー、さらにリクルートの業務と関係の深い労働族や文教族の議員にまで及んでいる。
内訳を見ると、後援会費や政治団体への献金などが約4億8000万円、パーティー券購入が約1億2000万円。このほか、59年に3人の政治家と1秘書に譲渡されたコスモス株が11万株。このうち、売却されたのは一部だが、全部公開直後に売却されたとすると利益は約4億4000万円。また、61年9月に秘書や家族らの名義を含め、13人の政治家に譲渡された13万2000株の売却益相当分は約2億9000万円で、合計すると約7億3000万円にのぼる。
リクルートグループから政界への献金やパーティー券購入が急増したのは、自民党総裁選のあった62年で、総額約2億2400万円。資金提供を受けた政治家のトップが竹下前首相周辺で、株売却益を含め2億100万円。次に安倍前幹事長周辺に約1億3700万円、宮沢元蔵相周辺の約1億2200万円、中曽根元首相周辺が約1億1000万円と続く。次期総裁候補にマトを絞って献金攻勢をかけていたことが浮かび上がってくる。
また、労働省OBの遠藤政夫参院議員の夫人に顧問料名目で11年間に4000万円を支払っていたほか、やはり労働省OBの大坪健一郎代議士にもパーティー券1000万円分を購入するなど、就職情報誌事業で関係の深い労働族に献金攻勢をかけていた。
竹下首相退陣を受けて船出したばかりの宇野内閣でも、梶山静六通産相、塩川正十郎官房長官、堀内光雄労相、野田毅建設相の4閣僚が献金を受けていたことや、党の要(かなめ)である橋本龍太郎自民党幹事長が献金やパーティー券を購入してもらっていたこともわかった。
<リクルートグループから政界へ流れた資金>
政治家名 役職 未公開株 献金など パーティー券
(肩書は現在) (株数) (万円) (万円)
藤波孝生 元官房長官 12,000 4,000以上
池田克也 前代議士 5,000 1,400
中曽根康弘 元首相 29,000 4,575
竹下登 前首相 12,000 9,500
安倍晋太郎 前自民党 17,000 約1億(パーティー券含む)
幹事長
宮沢喜一 元蔵相 10,000 約1億(パーティー券含む)
加藤六月 元農水相 12,000 600
渡辺美智雄 元自民党 5,000
政調会長
加藤紘一 元防衛庁 5,000
長官
渡辺秀央 前官房副 10,000
長官
塚本三郎 前民社党 5,000
委員長
上田卓三 前代議士 5,000
(社)
田中慶秋 代議士 5,000
(民)
森喜朗 元文相 30,000
浜田卓二郎 代議士 30,000
(自)
伊吹文明 代議士 30,000
(自)
原健三郎 前衆院議長 400 1,500
長谷川峻 元法相 576
原田憲 元経済企画 200
庁長官
山口敏夫 元労相 約300
坂本三十次 元労相 270
愛野興一郎 前経企庁 100
長官
栗原祐幸 元労相 150 数十枚
小渕恵三 前官房長官 200以上
愛知和男 代議士 760
(自)
大野明 元労相 60
遠藤政夫 参院議員 (妻顧問料 100
(自) 4,000
約600)
大坪健一郎 代議士 200 1,000
(自)
有馬元治 代議士 百数十枚
(自)
小沢一郎 前官房 200
副長官
鈴木宗男 代議士 300
(自)
尾形智矩 代議士 100
(自)
椎名素夫 代議士 248
(自)
志賀節 代議士 100
(自)
倉田寛之 参院議員 100
(自)
藤田正明 前参院議長 110
中島源太郎 元文相 200
鈴木貞敏 参院議員 18
(自)
砂田重民 元文相 220
橋本龍太郎 自民党 200 40
幹事長
堀内光雄 労相 100
塩川正十郎 官房長官 100
梶山静六 通産省 300
野田毅 建設省 24
(注1)森、浜田、伊吹3代議士への株譲渡は昭和59年12月分
(注2)政界関係者への株譲渡は、上記のほか、田中角栄元首相の秘書だった早坂茂三氏2万株
(注3)「献金など」の中には、受領後に返却したものも含む
●識者に聞く
○政治空白続き、対外的に損失 東大教授(政治学)猪口孝さん
消費税導入に対する不満が大きいままでもその実施状況が高いように、リクルート疑惑に対する不信が大きいままでも、自民党政治をあきらめの中で受容するムードが高くなってきた。政治に対する不信感と冷笑的な態度は増加した。それに、あれだけ騒がれた政治改革に向けた動きも、すっかり自民党ペースになった。また、新しい自民党・政府の陣容をみても、その倫理水準がとくに上がったわけでもない。最高の公職についている宇野首相は、有権者の半数(女性)を侮べつする行為についての報道に対して、公的な場である国会で釈明することを拒否した。橋本幹事長は新たなリクルート政治資金の発覚について、恐る恐る釈明した。いったい、リクルート疑惑は日本政治史上どのように記憶されるのだろうか。
第1に、国内政治の面では、40年にもなる自民党政治の高い状況適応力を証明した。疑惑発覚後にはひたすら低姿勢、消費税法案や予算案は強硬に死守、野党は構造的ひよわさによって影響力行使を放棄、その間、政治改革関連法案を準備、世論が自民党・政府の小手先対応でおさまりはじめるのを待って今までのやり方に復帰、しかし当分は選挙が怖いので、世論に対する恭順の意を時々思い出したように表明−−こういうことなのではないか。
第2に、国際政治の面では、世界の激動期にありながら、日本では大きな政治空白を継続させることによって、対外的な損失をもたらした。米国の対日攻勢に対して有効な手を打てず、世界的緊張緩和に対する必要以上の硬直性を露呈した。円の対ドル為替レートは下落し、日銀介入による外貨流失は巨大なものだ。
○半端な捜査で主権者の出番 ノンフィクション作家 本田靖春さん
東京地検による政界ルートの捜査は、俗にいう「ネズミ2匹」で終結し、衆院予算委で行われた法務・検察当局からの最終報告では、起訴されなかった分の個別の事実関係は公表されなかった。はっきり言って、大いに不満の残るところだが、そうした流れを早くからつかんでいたに違いない中曽根元首相は、自民党の党籍を離脱したものの、議員としては居座り続けている。
世間でいわれている通り、党籍離脱は党に対するけじめではあっても、国民に対するけじめではない。大方が求めているのは、彼を筆頭格とする灰色政治家の政界からの引退なのである。国会と永田町周辺をデモで埋めつくして、彼らに引導を渡すくらいの動きがあってしかるべきではないか。
そうであるにもかかわらず、彼らは国民がおとなしいのをよいことに、政治的、道義的責任をとろうとしない。この分でいくと、次の総選挙に厚顔にも出馬して当選を果たせば、それをもって“みそぎ”がすんだと称し、政界での生き残りを図るであろう。病に倒れるまでの田中元首相がそうであった。
今度は、そうさせてはならない。私は1日も早い衆院の解散、総選挙を望むものだが、そのあかつきには、リクルートに関与した議員のすべてに選挙民の厳正な審判が下されることを念じてやまない。捜査は中途半端に終わったが、ここからがいよいよ主権者たる私たちの出番なのである。
汚職の構造は、自民党の長期政権化と軌を一にして、拡大、強化されていった。その事実がより明白になったいま、私たちがなすべきは野党による政権交代への道を開くことである。その好機を逸してはならない、と切に思う。
●次々辞任・離党劇(氏名、役職=当時、辞めた日、辞任の事情の順)
小松秀煕 川崎市助役 88年6月20日
3万株譲渡発覚
森田康 日本経済新聞社長 7月6日
2万株譲渡発覚
江副浩正 リクルート会長 7月6日
株譲渡の責任
松原弘 リクルートコスモス社長室長 9月5日
贈賄工作の発覚
公文俊平 東大教授 9月30日
1万株譲渡発覚など
服部恒雄 蔵相秘書官 10月6日
宮沢蔵相への1万株譲渡に関連して
村田幸蔵 真藤NTT会長秘書 11月5日
真藤会長への1万株譲渡に関連して
上田卓三 社会党代議士 11月8日
5000株譲渡発覚
金子俊明 浦和市秘書課長 11月14日
1万株譲渡発覚
丸山巌 読売新聞副社長 11月28日
5000株譲渡発覚
高石邦男 生涯学習振興財団理事長 12月2日
1万株譲渡発覚
加藤孝 日本障害者雇用促進協会会長 12月6日
3000株譲渡発覚
松村千賀雄 横浜市議 12月8日
5000株譲渡発覚
宮沢喜一 蔵相 12月9日
1万株譲渡発覚
牛尾治朗 経済同友会副代表幹事 12月12日
3万株譲渡発覚
諸井虔 経済同友会副代表幹事 12月13日
5000株譲渡発覚
真藤恒 NTT会長 12月14日
株売却益の振り込み発覚
式場英 NTT取締役 12月15日
5000株譲渡発覚
飯島清 政府税調特別委員 12月16日
1万株譲渡発覚
戸張捷 リクルート常務 12月21日
1万株譲渡などに関連して
田島喜一 熊本県教育長 12月27日
県議会で高石パーティー券購入に絡みウソ答弁の責任
長谷川峻 法相 12月30日
献金発覚
鹿野茂 全国民営職業紹介事業協会専務理事 89年1月20日
接待発覚
原田憲 経企庁長官 1月24日
献金発覚
小粥義朗 労働省事務次官 2月1日
人心一新
野見山真之 同省労働基準局長 2月1日
人心一新
愛知和男 宮城県知事選出馬断念 2月22日
献金発覚
塚本三郎 民社党委員長 2月23日
5000株譲渡の責任
大沼淳 全国専修学校各種学校総連合会会長 3月3日(辞意表明)
1万株譲渡の責任
小林宏 ファーストファイナンス副社長 3月31日
贈賄容疑で逮捕の責任
長谷川寿彦 リクルート国際バン会長 3月31日
収賄容疑で逮捕の責任
斎藤諦淳 文部省生涯学習局長 4月14日
人心一新
古村澄一 文部省初等中等教育局長 4月14日
人心一新
加戸守行 文部省官房長 4月14日
人心一新
山口政志 文部省職業教育課教科調査官 4月20日
接待発覚
竹井宏 福岡県教育長 4月21日(辞表提出)
県議会で高石パーティー券購入に絡むウソ答弁の責任
竹下登 首相 4月25日(退陣表明)
5000万円の借入金発覚など
清水二三夫 安倍幹事長秘書 5月10日
安倍幹事長の株譲渡などに関連して
池田克也 公明党代議士 5000株 5月16日(離党、議員辞職願)
収賄容疑で取り調べ
矢野絢也 公明党委員長 5月17日(辞意表明)
池田代議士取り調べなどの責任
藤波孝生 自民党代議士 5月22日(離党)
収賄罪で起訴
桜井修 住友信託銀行社長 5月26日(辞意表明)
1万株譲渡の責任など
中曽根康弘 自民党代議士 5月31日(離党)
リクルート事件の政治的、道義的責任
●リクルート事件年表(肩書は当時)
<昭和63年>
6月18日 小松・川崎市助役へのコスモス未公開株譲渡報道される
30日 渡辺自民党政調会長、加藤(六)前農水相、加藤(紘)元防衛庁長官、塚本民社党委員長について、本人や家族、秘書名義によるコスモス株売買が報道される
7月6日 中曽根前首相、安倍自民党幹事長の各秘書と宮沢蔵相のコスモス株売買が報道される▽江副リクルート会長、森田日経新聞社長辞任
7日 竹下首相の元秘書名義の株売買が報道される
9月5日 楢崎代議士が松原コスモス社長室長の贈賄工作を発表
10月11日 加藤・元労働事務次官へのコスモス株譲渡報道される
20日 東京地検が松原前社長室長を贈賄容疑で逮捕
11月1日 真藤NTT会長の秘書への株譲渡報道される
3日 高石・前文部事務次官への1万株譲渡が報道される
10日 東京地検、松原前社長室長を起訴
21日 衆院リクルート委、江副前リクルート会長らを証人喚問
12月9日 宮沢蔵相辞任
14日 真藤NTT会長辞任
30日 長谷川法相辞任
<平成元年>
1月24日 原田経企庁長官辞任
2月7日 塚本民社党委員長が辞意表明
13日 東京地検、江副前会長と小林宏・ファーストファイナンス副社長、及び式場、長谷川両元NTT取締役を逮捕
17日 東京地検、鹿野茂労働省元職業安定局業務指導課長を逮捕
22日 愛知代議士、宮城県知事選出馬断念
27日 中曽根前首相がリ疑惑で初の釈明会見
3月4日 東京地検、江副前会長ら4人を起訴
6日 東京地検、真藤NTT前会長を逮捕
8日 東京地検、加藤元労働事務次官と辰已雅朗元リクルート事業部長を逮捕
27日 東京地検、真藤NTT前会長を起訴
28日 東京地検、高石前文部事務次官を逮捕、加藤元次官を起訴
4月11日 竹下首相がリ社関連からの1億5000万円の資金提供の事実を衆院予算委で公表
18日 東京地検、高石前次官を起訴
22日 竹下首相の青木伊平元秘書名義で、江副から5000万円の借金があった事実が判明
25日 竹下首相、リクルート事件をきっかけとする政治不信の責任を取って退陣表明
26日 青木元秘書が自殺
5月6日 東京地検が池田克也代議士を参考人として事情聴取していたことが判明
6日 東京地検、藤波代議士を参考人として事情聴取
16日 池田代議士、公明党に離党届。議員辞職願を提出
17日 東京地検、藤波、池田両代議士を被疑者として取り調べ
18日 東京地検、藤波、池田両代議士の事務所、自宅などを家宅捜索
19日 自民党の政治改革委員会が、政治資金の公開基準の引き下げやパーティー券購入制限を内容とした「政治改革大綱」を答申
22日 東京地検、藤波、池田両代議士を就職協定をめぐる受託収賄罪で在宅のまま東京地裁に起訴
25日 中曽根前首相に対する証人喚問が衆院予算委員会で行われる。リクルートからの4575万円の献金明らかに
28日 中曽根前首相、自民党離党を表明
29日 東京地検、宮沢前蔵相、安倍自民党幹事長、加藤六月元農水相の秘書や会計担当者ら4人を政治資金規正法違反で略式起訴
30日 自民党がリクルートコスモス株の売却益を社会還元する、などの「けじめ策」を決定
●志賀節(岩手3区)候補者に関するリクルート事件関与報道
朝日新聞 発行日=1989年08月26日 ソース=朝刊 発行社=東京
環境庁長官に就任した志賀氏は計300万円 リクルート社献金
環境庁長官に就任した志賀節氏は25日、首相官邸で行った就任後初の記者会見で、すでに明らかになっている一昨年のリクルート社からの政治献金100万円について改めて認めた上で、それ以前にも200万円の献金があったことを明らかにした。リ社からパーティー券や中元など400万円を受け取っていた山下氏が辞任したが、官房副長官の志賀氏が昇格した結果、リ社から資金提供を受けた閣僚の数は、海部首相を含めて5人で変わりはない。
志賀氏については、62年の政治資金収支報告書で、同氏の政治団体が61年12月11日の日付で100万円の政治献金を受けていたことが明らかになっていた。
これについて志賀氏は「その時の献金分は政治資金収支報告で公表している。当時のリクルート社はだれ1人、うしろ指をさすことがなく、優良企業だった」などと話した。
また、「パーティー券や講演会の講師料は全くないが、61年以前には献金があったかもしれない」とし、金額は「200万円だった」と明らかにした。
しかし、志賀氏は環境庁での記者会見で「私自身は62年の100万円しか知らない。海部総理に『他に200万ある』と言われ、覚えがないので首をひねっている」と述べており、この200万円は、法務当局の調べで明らかになったとみられる。
●
KSD献金事件を振り返って
年明け注目される政界捜査/KSD疑惑/群がった政治家たち/陣中見舞い、歌謡ショー 森首相の名も登場
2000.12.30 日刊紙 03頁 総合 (全1853字)
東京地検特捜部が年明けへ捜査を継続する労働省所管のKSD(財団法人・ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団)をめぐる疑惑。前
理事長の古関忠男被告は、業務上横領と背任容疑で起訴されましたが、焦点は「KSDマネー」「議員連盟」の二つの柱で政治家を取りこん
だ政界工作の解明です。KSDに群がった政治家たちを検証してみると…。「マネー」/延べ100人近く 党費立て替え、陣中見舞い、お歳
暮、パーティー券、歌謡ショー…。KSDマネーの広がりはすさまじい(別表)。森首相も陣中見舞い、歌謡ショー券で名前が登場します。
陣中見舞いだけみても登場する政治家は、森喜朗首相はじめ小渕恵三元首相、藤井孝男元運輸相など六十八人(九五、九六、九八年)に
のぼります。歌謡ショーの無料招待券を受け取った政治家も甘利明元労相など七人。このほか、お歳暮(五人)、歌謡ショー券(七人)パーティ
ー券(一人)と宴会出席(七人)などKSDマネーにかかわった政治家は判明しているだけで延べ百人近くに及んでいます。議員連盟/自民幹
部ら約160人 政界工作のもう一つの柱はKSD関連の議員連盟への取り込みです。
KSD関連の議員連盟は、KSD事業を国政サイドから支援する目的で設立された中小企業経営問題議員連盟(豊明議連、九一年発足)
と、古関前理事長が会長の財団法人・国際技能振興財団が進める大学設立を支援する、国際技能工芸大学設立推進議員連盟(九六年発
足)の二つです。一つの財団法人が二つの議員連盟をつくること自体異例なこと。しかも豊明議連には中曽根康弘、竹下登の元首相、森首
相、野中広務元幹事長ら六十三人、大学設立推進議連には小渕元首相、甘利元労相など約百人――と二つの議員連盟で自民党幹部らの
べ約百六十人の国会議員が名前を連ねています。際立つ関係/「縁の深さ思い政務に」小山参院議員/村上元労相9万人の党費肩代わり
KSDとの癒着で際立つのが、元労相の村上正邦、元労働政務次官の小山孝雄の両自民党議員です。ともに二つの議員連盟の幹部。な
かでも「カネも票も」と癒着の代表格といえるのが村上氏でした。
KSDとその関連団体KSD豊明会は、九八年の参院選で村上氏の参院選支援として九万人の党員を集め、党費を肩代わりしました。この
ため九五年から九八年までの四年間で、二億二千万円もの巨額のカネが、KSD側から自民党東京都豊明支部に流れ込んでいます。
その一方、村上氏は豊明議連と大学設立推進議員連盟の会長に就任。KSDの関連団体・KSD豊明会やその政治団体である豊政連(豊
明会中小企業政治連盟)の機関紙誌にもしばしば大きく紹介されるほど“活躍”してきました。九八年には十万円の陣中見舞いを受け取った
ばかりか、九六年には古関被告や十数人の自民党参院議員、労働省幹部らとともに大学設立準備のためドイツやベルギーなど欧州へ豪華「
視察」旅行までおこないました。
KSDの全面的な支援を受けていたもう一人が村上氏の秘書だった小山孝雄参院議員。
豊政連新報(九八年十月一日付)のなかで、豊明議連事務局長でもある小山氏は、「古関理事長はじめ豊明会の皆様あげてのご支援を頂
き初当選を果たした」と選挙支援に感謝。小渕内閣で労働政務次官になったことに「(KSDの)所管官庁でもあり、その縁の深さを思いながら
政務に精励しております」とも語っています。
選挙支援を受けた「思い」からか、小山氏は参院労働委員会(九六年四月)で、古関被告が肩入れしていた工芸大学について「この職人大
学構想、大変すばらしいもの」と絶賛。その上で「労働省としてこれからどう支援するのか」「ぜひお進めをいただきたい」と、KSDの意向に沿
った形で、その早期実現を迫りました。
大学設立を予算面から支援したと報道されたのが、亀井静香自民党政調会長。
古関前理事長らから大学への補助金増額を依頼された亀井氏は、労働省幹部を政調会長室に呼び出し「大学の持つ意味は大きい。しっか
り頼むよ」と働きかけました。その結果、二十四億円もの上乗せがされたといいます(「毎日」十二月十日付)。
また、豊明議連はKSDの懸案だった外国人研修生を受け入れるための財団「アイムジャパン」設立を「強力」に「バックアップ」。「わずか二
カ月」で労働省から申請許可がおりています。
「政治の力」をことあるごとに誇示し、影響力を広げてきたKSD。『KSD30年史』にはこう書かれています。
「国政を動かすには国会議員を動かさなければならない」
しんぶん赤旗
KSD汚職/丸ごと汚染の自民党/「見返り」も総がかりで
2001.01.28 日刊紙 03頁 総合 (全2371字)
中小企業経営者の共済掛け金を、脱法献金や党費立て替え、ヤミ献金などで、自民党が吸い上げたKSD(ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団)汚職事件。同党に流れた政界工作資金は、十五億円とも二十億円ともいわれます。汚染も丸ごとなら、カネを受け取った「お返し」としてのKSD支援も、政府・自民党中枢を網羅する総がかりの支援だったことが浮かび上がっています。「党としての仕事」/補助金20億円 増額で口利き 「そのとき(九九年十一月末)に(亀井)政調会長がはっきりと、特色ある大学づくりであって学生に魅力ある大学にする必要がある…これは予算上措置すべきという党として、政調会長としての要請であるといった趣旨の話をされた」 二十五日の参院決算委で厚生労働省の酒井英幸職業能力開発局長は、日本共産党の緒方靖夫議員の質問にこう答えました。KSDがすすめていた「ものつくり大学」への補助金増額を自民党の亀井静香政調会長が“自民党の意向”として、労働省に働きかけたことを認めたのでした。
亀井氏自身が、この働きかけについて、「政調会長としての仕事をした」と語り、森首相も「当然じゃないですか。いい仕事してほしいからじゃないですか」(二十五日)とのべています。
「ものつくり大学」への今年度補助金は約七十一億円。そのうち二十億円は亀井氏が働きかけた九九年十一月を前後して増額されました。補助金増額を求めていたKSD側にしてみれば、自民党を丸ごと「買収」したことへの見返りでした。
村上正邦前参院議員会長の場合は、KSDがすすめた外国人研修生の派遣事業「中小企業国際人材育成事業団」(略称・アイム・ジャパン)での口利きです。
KSD前理事長の古関忠男被告が「村上先生は豊明議連の幹事長であり、IMM(アイム・ジャパン)の設立を3ケ月で労働省を捩(ね)じ伏せた。これは我々の力ではなく村上先生の力である」(九二年一月のKSD関連合同部長会議のメモ)とのべています。国会を舞台に/政府演説や質問、委員会を設置 KSD汚職事件は国会での政府演説や質問を舞台におこなわれたという点でも異例の事件です。
一私立大学にすぎない「ものつくり大学」に言及した昨年一月の小渕恵三首相(当時)の施政方針演説は、その象徴というべきものです。KSDから千五百万円のヤミ献金をうけとった額賀福志郎前経済財政相が、当時官房副長官として、この演説づくりに関与していました。
また、村上正邦前参院議員会長は九六年一月、党を代表しておこなう本会議質問で「職人大学の設立等をすすめ…特別の施策を早急に打ち出すべき」とKSDへの応援質問。橋本龍太郎首相(当時)も「職人大学といった構想については、興味をもって勉強させていただきます」と答弁しました。
「ものつくり大学」については、これらの質問、答弁を含め、逮捕された小山孝雄参院議員や、伊生明、岡野裕両労相経験者など九人の自民党国会議員が質問や答弁をおこなっています。
また、小山容疑者の汚職の舞台となった参院中小企業特別委員会の設置にも、KSDの要望を受けて、中曽根弘文元文相ら十三人が紹介議員となり、うち十一人がKSDの政治団体から「寄付」や「陣中見舞い」を受け取っています。議連を軸に支援/総決起大会に首相、三役勢ぞろい 議員連盟などKSDへのバックアップ体制も、自民党ぐるみでした。
KSD支援のため、「中小企業経営問題議員連盟」(豊明議連)、「国際技能工芸大学設立推進議員連盟」(KGS議連)、「中小企業政策を推進する国会議員の会」の三議連が九〇年代にあいついで設立され、衆参あわせて二百二十三人の自民党議員が加入していました。
このうち、村上氏が会長を務めた豊明議連が最初に取り組んだのが、外国人研修生問題。「研修生」という名目で、派遣労働のあっせんをおこなったのでした。KSDの『三十年史』では「外国人研修生問題のその後の成功は、この豊明議連という強力なバックの存在なしには、ありえなかった」と明記しています。
また、「ものつくり大学」推進の決起集会となったKSD主催の中小企業総決起大会(九八年二月)には、当時の橋本龍太郎首相はじめ、加藤紘一幹事長、森喜朗総務会長、山崎拓政調会長の自民党三役、伊生明労相、尾身幸次経企庁長官など、政府、自民党の中枢が勢ぞろいしています。
参院中小企業特別委員会設置の請願の紹介議員になりKSDマネーを受けた自民党議員
紹介議員 請願受理日 献金受領日
村上 正邦 94・3・23 98・7・15(寄付金)
岩崎 純三 同 95・7・7(陣中見舞い)
斎藤 十朗 同 98・6・26(同)
斎藤 文夫 94・3・24 同 (同)
石渡 清元 同 95・7・5(同)
野村 五男 同 98・6・26(同)
小野 清子 同 98・6・29(同)
井上 裕 94・3・25 98・6・25(同)
中曽根弘文 同 同 (同)
木宮 和彦 同 98・6・26(同)
竹山 裕 同 95・7・5(同)
「ものつくり大学」でKSD支援の質問・答弁をした自民党議員
村上 正邦 96年1月25日 参院本会議質問
橋本龍太郎 同上 村上質問への答弁
小山 孝雄 96年3月15日 参院中小企業特別委質問
96年4月9日 参院労働委質問
斎藤 文夫 96年12月10日 参院予算委質問
岡野 裕 同上 参院予算委質問
深谷 隆司 97年10月7日 衆院予算委質問
99年11月10日 衆院商工委答弁
伊吹 文明 97年10月7日 衆院予算委質問
小渕 恵三2000年1月28日衆院本会議施政方針演説
中曽根弘文2000年3月14日衆院科学技術委答弁
しんぶん赤旗
●額賀福志郎・衆院議員(茨城2区)をめぐるKSD資金提供疑惑
額賀福志郎氏、26日政倫審でKSD資金提供疑惑めぐり弁明
KSDからの資金提供疑惑をめぐって、自民党の額賀福志郎前経済財政担当相が二十六日の衆院政治倫理審査会で弁明する。「多大な誤解」や「真実とかけ離れた不当な批判」への反論を求め、みずから申し出たものだ。ただ、これまでの額賀氏の説明は説得力に欠けたり、ぶれたりしている。だれもが納得できる説明はできるのか。審査の焦点は――。
○ホントに返した? 前理事長勾留中で「電話」裏付けムリ
額賀氏は、KSDから秘書が一九九九年十一月に五百万円、二〇〇〇年四月に一千万円を受け取ったが、五月に事実を知って返却させたとしている。
当時、額賀氏は官房副長官だった。KSDと関係が深い「中小企業政策を推進する国会議員の会」の会長もつとめていた。この間に作成された小渕恵三首相(当時)の施政方針演説にはKSD側が設立推進をめざしていた「ものつくり大学」が盛り込まれた。
これらの事実関係から、額賀氏がKSDの意向を受けて施政方針演説に同大学が盛り込まれるように働きかけたのではないか、その「手付金」と「成功報酬」として資金提供があったのではないか――などの疑惑が浮かび上がっている。
カネのやりとりについて額賀氏は「協力したい」という古関忠男KSD理事長(当時)から私設秘書がKSD本部で受け取り、「預かり金」として議員会館の机で保管。それを知った額賀氏が、同じ秘書から全額を古関理事長に返させたと説明する。
一月二十三日の記者会見で額賀氏は、カネの返却を証明する書類などはないとし、「(返したという)秘書の言葉を信じるしかない」と繰り返した。
ところが、額賀氏はその後「思い返した」として、返却に行った秘書から「いま理事長室に返しに来ました」と電話があり、その場で古関理事長に電話を代わり「確かに預かった」と言われたというエピソードを記者団に紹介している。
額賀氏は政倫審でも、この説明を繰り返す可能性があるが、古関理事長は現在、背任などの罪で起訴され、勾留(こうりゅう)中のため、裏付けはできない。秘書の参考人招致に額賀氏が応じるかどうかもポイントだ。
また、五百万円、一千万円という金額は、政治資金規正法で一団体が一政治家に献金できる上限をゆうに超えており、特に二〇〇〇年からは政治家個人への団体献金自体が禁止になっている。
九九年十二月末現在で記載すべき九九年分の額賀氏の資金管理団体の政治資金収支報告書にはKSDからの献金は見あたらない。
額賀氏が古関理事長の意図を「応援したいという意味」と受け取っていることも併せれば、外形的には「報告できないヤミ献金」と映る。
しかし、額賀氏は「秘書が預かり、返却したということなので法的問題はない」と話している。
○首相演説関与は? 「否定」でも説明二転三転
演説への働きかけに関し額賀氏は一月十八日の記者会見で「まったく『ものつくり大学』というものがあったのか、そういうものが存在していたこと自体知らなかった」と否定した。
ところが、小渕首相の私的諮問機関の「ものづくり懇談会」に額賀氏が複数回出席し、そのなかで同大学が話題になっていたことなどが報道されると、「ものつくり大学が存在していたのか、そうでなかったのかという意味ではなくて、施政方針演説の中でものつくり大学について言及されているかどうか覚えていなかったという意味で答えた」と軌道修正。ただ、関与は一貫して否定している。
この演説で同大学に言及することを当時の労働省が求めていなかったことは、国会審議で明らかになっている。額賀氏は、事前に三回開かれた演説案の検討会議に官房副長官としてすべて出席した。三回目会合の演説案で初めて「ものつくり大」が入っており、これは、その前日に開かれたものづくり懇談会で「複数の委員から発言があったことを受けて盛り込まれたと理解している」と説明している。
小渕氏が死去したいま、この経緯を額賀氏は説得力をもって説明できるのか。場合によっては、当時の首相官邸スタッフに真相を問わねばならない事態に発展する可能性もある。
●額賀氏 「潔白証明したい」
額賀福志郎代議士が衆院政治倫理審査会に提出した審査申し出書の要旨は、次の通り。
KSD問題に関連し私について事実と著しく異なった報道がなされ、全国民に多大な誤解を与えている。さらに衆院本会議で、私がKSDから秘書を通じて多額の現金を受領し、請託を受けたかのような虚偽の発言がなされたため、国会内外で真実とかけ離れた不当な批判を受けている。多額の現金を受領した事実はなく、請託を受けた事実も、便宜を図った事実もまったくない。審査で潔白を証明したい。
<資金提供疑惑に関する額賀氏の説明>
◇ポイント
ものつくり大学が施政方針演説に盛り込まれた経緯
◆説明
演説直前の「ものづくり懇談会」で複数の委員から発言があり、盛り込まれたと理解。私が働きかけていた事実はない
◇ポイント
1500万円の趣旨への理解
◆説明
協力したいから来てくれというので(秘書が)うかがったらお金を提示されたという。応援したいという意味だと思う
◇ポイント
カネを返却した経緯
◆説明
2000年5月20日に秘書から初めて報告を受け、即座に返却を指示。23日に全額を返却したとの報告を受けた
◇ポイント
秘書からの報告が遅れた理由
◆説明
秘書は私の判断を仰ごうとしたが、当時、私は官房副長官でほとんど首相官邸で仕事をしており、議員会館にいなかった
◇ポイント
返却の証明
◆説明
(当初の説明)受領書はない。秘書の言うことを信じる。(その後の説明)秘書から電話連絡があり、代わった理事長から「確かに預かった」と言われたのを思い返した
◇ポイント
政治資金収支報告書への記載がない理由
◆説明
秘書が預かったとの認識で保管していたので、我々に報告がなかった
◇ポイント
古関・KSD前理事長との関係
◆説明
面識はあるが、法案や労働行政の依頼や働きかけを受けたことはない
朝日新聞
発行日=2000年12月31日
朝日新聞 ソース=朝刊
発行社=東京
KSDが額賀福志郎氏側に1500万円 官房副長官時
省庁再編後に経済財政担当相となる額賀福志郎・経済企画庁長官(五六)=自民党、茨城二区=側が昨年十一月と今年四月の二回にわたり、前理事長が背任罪などで起訴されている財団法人「ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団」(KSD)から計千五百万円の資金提供を受けていたことが分かった。額賀氏は当時、内閣官房副長官だった。額賀氏は三十日、事務所を通じてコメントを出し、資金提供の事実関係を認めたうえで、「今年五月に全額返却した」と説明している。(4・31面に関係記事)
額賀氏によると、KSD前理事長の古関忠男被告(七九)=業務上横領と背任の罪で起訴=から昨年十一月に五百万円、今年四月には一千万円を額賀氏の秘書が受け取り、保管。額賀氏は今年五月二十日に秘書から報告を受け、すぐに返却するように指示し、同月二十三日に全額返却したという。
コメントの中で額賀氏は「古関前理事長との面識はありますが、法案や労働行政のことで依頼や働きかけを受けたことは一切ありません」としている。
額賀氏が秘書から報告を受けたのは、週刊誌がKSDの疑惑について取り上げてまもなくだった。
額賀氏は、資金の趣旨について説明していないが、政治活動に対する寄付だった場合は、政治資金規正法に定められた限度額を超える可能性もある。
KSD関係者によると、古関前理事長は一九九八年、KSDの事業推進のために自民党商工族の議員らに接近を図る狙いで「中小企業政策を推進する国会議員の会」の設立を働きかけたとされる。この会は額賀氏が会長を務め、会員に名を連ねた議員は商工族を中心に百人前後いたという。
額賀氏は自民党橋本派で商工族議員として知られる。八三年に初当選。昨年十月に発足した第二次小渕内閣、今年四月に発足した第一次森内閣で官房副長官を務めた。
以上 朝日新聞 発行日=2001年02月24日 朝日新聞 ソース=朝刊 発行社=東京
●鹿野道彦・衆院議員秘書給与不正事件
発行日=2002年08月12日
朝日新聞 ソース=夕刊
発行社=東京
業際研の秘書給与負担、他にも 鹿野代議士、説明せず
民主党を離党した鹿野道彦代議士(山形1区)の秘書らの給与を、コンサルタント会社「業際都市開発研究所」(業際研)が負担していた問題で、公設秘書を務めたことがある地元事務所相談役も、給与の支払いを受けていたことが分かった。鹿野事務所と相談役は事実関係を認めている。鹿野氏は4月の衆院予算委員会の参考人質疑で、業際研の給与負担分を説明したが、相談役分は明らかにしていなかった。
鹿野事務所などによると、相談役は業際研が設立された94年から約2年間、社会保険料なども含めて、額面で月額約50万円の支払いを受けていた。当時は鹿野氏の私設秘書だった。業際研では社員として扱われていたが、社長の尾崎光郎被告(56)=贈賄罪などで公判中=に年に数回あいさつをする程度で、勤務実態はなかったという。
相談役は尾崎被告の紹介を受け86年4月から鹿野事務所で私設秘書として働き始めた。公設秘書も務めたが、時期は「業際研の給与の支払いが終わってから」という。その後は地元事務所代表を務め、今年1月から相談役。
鹿野氏は参考人質疑の答弁などで、業際研の秘書給与負担分は、元事務所職員に対し95年1月から98年7月まで1604万円、秘書に対し97年8月から01年3月まで2125万円と説明。相談役分は触れていない。相談役は「業際研の負担が明らかになった際、これ以上騒ぎを大きくしたくないと考え、代議士にも伝えなかった」と話している。鹿野事務所は「事務所を通さず、直接本人に金が渡っていたため分からなかった」としている。
発行日=2002年06月18日
朝日新聞 ソース=朝刊
発行社=東京
民主党県支部、資金収支修正申告 鹿野代議士の秘書給与問題/山形
民主党を離党した鹿野道彦代議士(山形1区)の秘書らの給与を、公共工事の口利き汚職事件で元秘書の役員らが逮捕、起訴された経営コンサルタント会社「業際都市開発研究所」(東京都)が負担していた問題で、民主党県第1区総支部(木村昌夫代表)は17日、県選管に政治資金収支報告書の修正申告をした。新たに寄付として追加された金額は98年1月から00年12月まで年641万1560円ずつ、総額1923万4680円に上った。
同支部の修正申告は、政治資金収支報告書に記載漏れがあったのが理由。寄付者は業際研とされ、支出の内訳は人件費として記載された。木村代表は「業際研分の資料が捜査当局に押収されていたため、修正申告が遅れた」と説明している。
今回の修正では、県選管へ同支部の設立届けが出された98年2月以前に寄付を受けたとの記載もあった。県選管は「つじつまが合わない」と同支部に通知したという。
同支部は、鹿野代議士が三重県内の親族会社に秘書給与を負担させていた問題でも、4月に修正申告をしている。
今回の修正申告についても寄付当時、山形市内の鹿野事務所と同支部の事務所が同じ場所にあり、秘書らは業務を兼務していたといい、同支部が鹿野事務所の職員らの人件費を負担していた格好で処理をしたという。
鹿野氏は参考人質疑の答弁や記者会見などで、元職員らに対し95年1月から98年7月まで1604万円、元秘書に対し97年8月から昨年3月までに2125万円分を、業際研から給与負担してもらっていたとしていた。
発行日=2002年04月09日
朝日新聞 ソース=朝刊
発行社=東京
加藤氏・鹿野氏、参考人質疑 焦点採録 予算委員会・衆院8日
衆院予算委員会で8日行われた加藤紘一・元自民党幹事長、鹿野道彦・元民主党副代表(いずれも離党して無所属)に対する参考人質疑の主なやりとりは次の通り。
■加藤氏 佐藤氏脱税、報告なかった
森岡正宏氏(自民) 佐藤三郎被告との関係は。
加藤氏 秘書ではない。私の事務所全体を管理する人。私の政治資金団体の会計責任者。何度か給料をとるように言ったが、当人が実業家で、「ボランティアでいい。ただ、活動費は認めてほしい」というので、一定の範囲でいろいろ使う自由はあった。
森岡氏 今回の事件について、全く知らなかったのか。
加藤氏 佐藤被告が容疑をかけられた事件については、私には全く報告はなかった。事件があって初めて知った。
森岡氏 佐藤被告の口利きの動きは耳に入らなかったのか。
加藤氏 公共事業で、佐藤被告が直接役所に声を掛けたケースは、ほとんどないと思う。問題は、業者間で積み上げられた長い歴史的な調整の中で、そのバランスを崩すかどうかの発言力があるかないか。もっと耳を澄まして聞かなかったことを深く反省する。
森岡氏 妻名義の口座にも4年で1300万円の振り込みがあったとの報道があるが。
加藤氏 歳費から、友好議連の活動費や議員会館の電話代など、政治活動費として、20万〜30万円が天引きされている。それをバックしているのが、4年で1400万円ぐらいになる。
森岡氏 資金管理団体から個人口座に9千万円の振り込みを受け、マンションの家賃や生活費に充てていたのは、公私を峻別(しゅんべつ)する意識に欠けていたのでは。
加藤氏 公的な政治活動の一環として、マンションを借りてもよいと思った。当時、自治省に聞いたが、良いとも悪いとも言えないという見解だった。明確な答えがないまま、毎日激しい生活だったから……。場所が場所だから、一般の庶民感覚からいえば、何を説明しても、理解していただけないと思う。一種の社宅的な観念で使わせてもらったが、判断が甘かった。ただ、ひとつも仕事に使われていないということはない。私宅部分でも、半分以上は、原稿を書いたり、(報道)各社からの電話に答えるなど、かなりの部分が、日常の仕事の場だった。
森岡氏 政治資金規正法違反、所得税法違反ではないか。
加藤氏 国税、検察当局、総務省の判断に従う。修正申告をするか、それ以上のことがあるのか、判断に従う。
森岡氏 政治への国民の信頼が揺らいでいる。
加藤氏 すべての社会的、政治的、道義的責任をとって、私は衆院議員の職を辞したい。
漆原良夫氏(公明) 政治活動費として適法に処理していると確認したのか。
加藤氏 だいたいの構図として、150万円が入り、住居費110万円、田舎における活動費35万円が出ているということは聞いていた。
西川太一郎氏(保守) 責任は法律上の責任か、道義的責任か。
加藤氏 佐藤被告の起こした不祥事に、私は重大な監督責任がある。私に対する信頼がない限り、私のメッセージは人々の耳に入っていかない。ここで身を引くことが一番大事だと思った。政治的、道義的、社会的責任で、法律的な責任ではない。
西川氏 マンション賃料のほか、損害保険料やクレジットカードも引き落とされていたという報道があるが。
加藤氏 保険料は事実で、海外旅行の時の保険が主だったが、ありえていい話だ。クレジットは、使途がプライベートか公かという問題で、私自身のものもあるし、ほとんどは仕事のものだ。記載の仕方は完全に佐藤被告に任せていた。
西川氏 脱税で逮捕されるような人に、すべてを任せていたのか。
加藤氏 政治とカネの問題に我々自身も悩んできた。特に私の場合は、いろんな人からいろんな目で見られており、口幅ったいが、責任はさらに大きい。
○議員辞職、出直す決断
平野博文氏(民主) 99年10月の同じ日に、同じホテルで、二つのパーティーを開いている。規正法の量的制限の網の目をくぐった便法ではないか。
加藤氏 合法だが、あまり望ましい形ではない。
平野氏 規正法の改正で、(政治家個人への)企業・団体献金が禁止された後も、431万円余の企業献金を受けた記載があるが。
加藤氏 事実なら違法だ。そういう時は、今は(政党の)選挙区支部への献金として処理している。過渡期だったので、処理ミスをしたのではないか。
平野氏 佐藤被告が代表になって以来、政治資金がうなぎ登りに増えた。「なぜか」と聞いたことはないのか。
加藤氏 ある。私がちょっとした行動をとって、規正法上危ないとか、業界との関係が変になるという時は、口を酸っぱくして、「危ないものに近寄ってはいけない」と厳しく指示してくれた。信じて、完全に任せていた。
平野氏 97年の5千万円など、政治団体から加藤氏個人への貸し付けが散見されるが。
加藤氏 我々は選挙活動の時にお金を融資する。個人の名前で貸さないと、返してもらう義務感が生じない。政治家の貸借関係は今、個人名になっている。政治団体との貸借を私が結んでおかないといけないが、ちゃんと届けていなかったり、いろいろ齟齬(そご)がある。書かなければいけないことを、何千万円も書いていなくて、私の資産、個人的な債権が増えているように見えるのは本意ではない。我々の個人資産は、7年間でほぼ増減ゼロだ。
中塚一宏氏(自由) 加藤氏の顧問弁護士の永野義一氏は、元東京地検特捜部副部長で、加藤氏へのヤミ献金疑惑が指摘された共和汚職事件の主任検事ではなかったか。
加藤氏 永野氏は私の兄の同期の弁護士だ。古い友人でありながら(共和事件で)私をアタックする側になった。検事と議員として、公正な関係だった。
木島日出夫氏(共産) 佐藤氏が勝手な資金集めや流用をできない仕組みをつくらなかったのか。
加藤氏 総合的に資金の集め方には注意をしてほしいと(言った)。父の代から、選挙区で、公共事業でお金をとらないように、ずっと伝統でやってきた。今でも自信がある。
木島氏 野中広務・自民党元幹事長が「佐藤被告を切るべきだ」と言っていたそうだが。
加藤氏 よくわからない。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との疑惑について、1回言われたことがあるように思うが、その程度で、それ以外は覚えていない。
横光克彦氏(社民) 首相が提言した、公共事業受注企業の献金禁止を、どう思うか。
加藤氏 口利きの定義をもっとはっきりしないといけない。役所に口を利いて、お金をもらっている議員は、今はほとんどいない。
横光氏 議員辞職の真意は。
加藤氏 議員を続けたい気持ちはある。人様より(物事を)考えてきたという生意気な自負もある。しかし、人々に耳を傾けてもらえなかったら、議員を続ける意味はない。出直そうというのが今回の決断だ。
■鹿野氏 業際研への関与はない
七条明氏(自民) 民主党を離党した理由は。
鹿野氏 民主党は政治改革を原点に結党された。私がとどまることは党に大変迷惑をかける。私自身の政治的、道義的なけじめもつけないといけない。
七条氏 業際都市開発研究所(業際研)の尾崎光郎被告がどういう仕事をしていたのか、知らなかったのか。
鹿野氏 尾崎被告の業務に関与したことは一切ない。報道で、そのようなことをやっていたのかとの認識を持った。
七条氏 尾崎被告に最後に会った時期を、「覚えていないくらい前」と言っていたが、一昨年11月のつくば市長選の直前、議員会館で面会していないか。
鹿野氏 記憶をたどったら、市長選の候補者に同行してきたことを思い起こした。
七条氏 業際研事務所と鹿野氏の後援会事務所が同じビルにあった。
鹿野氏 私の事務所が閉鎖された後、業際研が設立された。一緒に機能していたことはない。
七条氏 業際研をつくる際に相談を受けたか。
鹿野氏 一切ない。
七条氏 鹿野氏が新党みらいを立ち上げた時、尾崎被告から資金等の支援はなかったか。
鹿野氏 支援を受けた事実はない。新党みらいの結党と業際研の設立は関係ない。
七条氏 業際研からの秘書給与負担は。
鹿野氏 元事務職員に1604万円、現秘書に2125万円の計3729万円だ。
七条氏 政治資金としての届け出は。
鹿野氏 監督不行き届きで、届け出はなかった。申し訳ない。
七条氏 三重県の親族会社の社員として、厚生年金の保険料を負担してもらっていたが。
鹿野氏 事実だ。非常勤の役員として、業務に関与してきた。月に1、2度、経営に関してアドバイスし、役割を果たしてきた。不正受給との思いはなかった。
七条氏 加藤氏は議員辞職するが。
鹿野氏 私自身が政治的、道義的なけじめをつけなければということで、離党した。本当に心から反省している。
細川律夫氏(民主) 三重県の親族企業による秘書給与の負担は。
鹿野氏 私の事務所から要請した。3人分、計3390万円だ。
細川氏 肩代わりについて相談があったか。
鹿野氏 私自身は政務一筋で。任せっきりだった。反省している。
細川氏 業際研の事件で、捜査当局から事情を聴かれたことはあるか。
鹿野氏 ない。
横光克彦氏(社民) 給与肩代わりは、政治資金収支報告書に記載されているか。
鹿野氏 そのような手続きはなかった。
横光氏 尾崎被告が元秘書という肩書を使ったのは事実で、政治的、道義的責任は免れない。
鹿野氏 政権交代をしたいという気持ちで、政治改革に取り組んできた。無我夢中でやってきたことで、世の中が見えなかった。反省しながら、これからも取り組んでいく。
発行日=2002年03月04日
朝日新聞 ソース=朝刊
発行社=東京
鹿野氏団体、寄付の収支報告せず(揺れる山形 利権の底流)/山形
鹿野道彦代議士の事務所が、「業際都市開発研究所」に秘書ら2人の給与を肩代わりさせていた問題で、鹿野氏の資金管理団体と鹿野氏が代表を務める民主党県第1区総支部が、この給与について、それぞれの政治資金収支報告書に寄付として記載していなかったことがわかった。鹿野事務所は、「業際研側の資料が東京地検に押収され、修正したいが、できない状況」としている。
県選管と総務省によると、秘書や職員の給与肩代わりは寄付とみなし、政治資金収支報告書に記載しなければならない。政治資金規正法では、業際研のような資本金が10億円未満の企業からの寄付は年750万円以内に限ったうえで、「故意」や「重大な過失」で記載しなかった場合は、5年以下の禁固か100万円以下の罰金を科すとしている。
県選管によると、業際研の給与負担問題が発覚した先月上旬、鹿野氏の事務所から「収支報告書を修正したい」という相談があり、修正の仕方を説明したという。同事務所は先月末、県選管に連絡し、「業際研が秘書に給与を支払った日付が必要だが、東京地検に資料を押収されて入手できない」と説明したという。
給与を記載しなかった理由について、鹿野氏の資金管理団体と民主党県第1区総支部の経理担当者は「業際研から給与を負担してもらっていたとは知らなかった。政治資金収支報告書に負担分を記載することも知らなかった」と話している。
発行日=2002年02月02日
朝日新聞 ソース=朝刊
発行社=東京
鹿野氏へ資金提供、秘書2人分の給与も 親族企業、明細は業際研に
民主党副代表の鹿野道彦代議士(山形1区)に対する三重県桑名市の親族企業からの資金提供の中には、秘書2人分の給与も含まれていたことがわかった。同社によると給与負担は92年から00年にわたり、総額は数千万円にのぼったという。その明細は、鹿野代議士の元秘書=贈賄容疑で逮捕=が事実上経営していた「業際都市開発研究所」に送られていたという。(1面参照)
鹿野代議士の事務所は資金提供の事実を認めたうえで、「経緯は現時点で不明」と述べた。代議士本人は「私自身は承知していなかった」と話している。
給与の支払いを受けていたのは、既に退職した元私設秘書と現在の公設第1秘書の2人。
親族企業によると、92年ごろ鹿野代議士の事務所から「秘書の給与を負担してほしい」と依頼があった。元私設秘書には92年1月から97年4月まで毎月約23万円を、公設第1秘書には私設秘書時代の97年5月から00年9月まで毎月約26万円を、それぞれ支払った。
2人とも正社員扱いだが、実際の社員よりやや少なめの額を支給した。ボーナスも年に2回、会社の業績に応じて給与の1〜2カ月分を払っていたという。
今年に入り、20年近く鹿野代議士の秘書を務めた業際研取締役・尾崎光郎容疑者(56)が、茨城県石岡市長への贈賄などの疑いで東京地検特捜部に逮捕された。関係者によると、2人の秘書の給与明細は、毎月、親族企業からこの業際研の事務所あてに送られていたという。
尾崎容疑者との関係について鹿野代議士は、「秘書を8年前に辞めており、どういう仕事をしておったか一切関係していない」と説明していた。今回明らかになった給与明細の送付については「経緯は分からない」と話している。
○年金・健保、問題なら修正 鹿野代議士一問一答
鹿野道彦代議士との一問一答は以下の通り。
――親族企業の負担で厚生年金と政府管掌健康保険に加入しているか。
その通りです。
――そうすると、国民年金と国民健康保険は加入していないのか。
そうなります。
――厚生年金や政府管掌健康保険の加入資格はないのではないか。
その会社の顧問をしているので受給資格があると思った。不正とかそういう気持ちはなかった。まったく不覚だ。この問題にタッチしていなかったので、当局に照会して問題があれば修正手続きをとりたい。
――代議士が、親族会社に給与や社会保険料の負担を依頼したのか。
全然そういうことはなく、会社の方でやってくれた。
――秘書の給与の負担を親族企業に依頼したのは、代議士本人か。
私自身は承知していなかった。
――秘書の給与明細の送付先が業際研になっているようだが、その理由に心当たりは。
全くありません。
●「会社の功労者、少ないくらい」 給与など負担の社長
鹿野道彦代議士の義弟で、給与や社会保険料を負担していた三重県桑名市の土木建設会社社長(52)との主な一問一答は以下の通り。
――鹿野代議士への給与は、どういう趣旨か。
代議士は当選前にわが社の常務を務めており、会社の功労者。月30万円では少ないくらいだ。
――会社のために働いている実態はあるのか。
社員だが、会社に来るのは年に1、2回で、全く来ない年もある。個人的には、いろんな相談に乗ってもらっている。
――実際に働いていないのなら、厚生年金や政府管掌健康保険の加入資格がないのではないか。
資格がないとは思っていなかった。早急に脱退手続きをとる。
――汚職で摘発された「業際都市開発研究所」取締役の尾崎光郎容疑者と、会社との関係は?
代議士の元秘書だからよく知っている。業際研にも、つき合いで毎月10万円ずつ払っていた。
● 坂井隆憲代議士の秘書給与流用事件(起訴で公判中)
佐賀新聞
坂井議員の告発状を提出
掲載日2003年04月05日
<共>
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〈坂井議員の告発状を提出〉
衆院議員坂井隆憲被告(55)=政治資金規正法違反の罪で起訴=が、破たんした抵当証券会社「大和都市管財」(大阪)側に負担させた約百万円の秘書給与は、大蔵省近畿財務局(当時)に不正な働き掛けをする見返りだったとして、大和都市管財被害者弁護団は四日までに、あっせん収賄の疑いで東京地検特捜部に告発状を提出した。
特捜部は近く受理するかどうかを決める。
坂井議員を起訴
掲載日2003年03月29日
<共>写有図有
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〈坂井議員を起訴〉
総額約一億六千八百万円に上る後援企業からの献金を政治資金収支報告書に記載せず隠したとして、東京地検特捜部は二十八日、政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で衆院議員坂井隆憲容疑者(55)=佐賀1区、自民党除名=を起訴した。
逮捕容疑のヤミ献金は約一億二千万円で、その後の捜査で裏付けられた約四千八百万円を上積みした。規正法違反だけで国会議員が公判請求されたのは初めて。(5、27面に関連記事)
坂井被告の共犯として、既に起訴した政策秘書塩野谷晶被告(38)についても、訴因(起訴事実)を変更した。今後は法廷で、坂井被告と後援企業の関係などの解明が進むことになる。
関係者によると、坂井被告は起訴事実を否認。二十五日に衆院で議員辞職勧告が決議されたが、「辞めるつもりはない」と話しているという。
起訴状によると、坂井被告は塩野谷被告と共謀。一九九七―二〇〇一年に人材派遣会社の旧「キャリアスタッフ」(東京)など小野憲元社長(71)が経営していた五社や、複数の後援企業から受けた計約一億六千八百万円の献金を資金管理団体「隆盛会」の収支報告書に記載しなかった。献金は政治活動費に充てられていたが、献金額が法定限度を超えていたことなどから、記載しなかったとみられる。
逮捕容疑に上積みされた約四千八百万円の内訳は、地元・佐賀市のゼネコン「松尾建設」や旧経営陣が詐欺罪に問われた抵当証券会社「大和都市管財」(大阪)の関連会社などによる秘書給与の肩代わり計約三千八百万円と、キ社から現金で提供された約一千万円。
キ社謝礼金、坂井議員側1300万円受領
掲載日2003年03月09日
<共><自>
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〈キ社謝礼金、坂井議員側1300万円受領〉
衆院議員坂井隆憲容疑者(55)=政治資金規正法違反容疑で逮捕=への「謝礼」として、人材派遣会社の旧「キャリアスタッフ」(東京)の元社長が約五年前に仲介者に託したとされる現金千六百万円のうち、千三百万円を坂井容疑者側が受け取っていたことが八日、関係者の話で分かった。
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共犯として逮捕された元公設第二秘書中山求容疑者(51)も、東京地検特捜部の調べに同様の供述をしているもようだ。
千三百万円は、逮捕容疑で坂井容疑者らが政治資金収支報告書に記載しなかったとされるキ社などからの献金計約一億二千万円には含まれておらず、特捜部は趣旨などについて捜査を進めるとみられる。
関係者によると、千三百万円の授受があったのは一九九七年九月上旬。キ社の小野憲元社長(71)から現金を託された経営コンサルタント忠村吉朗被告(70)=所得税法違反の罪で起訴=が坂井容疑者の地元佐賀市に行き、宿泊先のホテルで坂井容疑者側に渡した。
忠村被告はキ社の「政界担当」とされ、坂井容疑者とも親しかった。忠村被告の交通費などはキ社が負担した
現金授受の数日前にキ社から二回に分けて、七百万円と九百万円の「仮払金」が支出されており、この現金が忠村被告に託されたという。
小野元社長は特捜部の事情聴取に「当時の役員に指示して千六百万円を忠村被告に届けさせ『坂井議員にお礼として渡してほしい』と託した」とし「全額が坂井議員に渡ったとは思っていない」と供述していた。
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〈「県民に深くおわび」〉
自民党県連の陣内孝雄会長は八日、衆院議員坂井隆憲容疑者の逮捕を受け、佐賀市で記者会見し、「政治に対する不信を起こさせる結果になり、県民、有権者に深くおわびしたい」と陳謝した。
陣内会長は、坂井容疑者の進退について「これだけの不信を国民に与えている。それを重く受け止め、政治家としての見識ある判断をしてほしい」と述べ、議員辞職すべきとの考えを示唆した。
「政治とカネ」の問題については「多額の政治資金がかからない選挙が必要」として、プロジェクトチームの編成などを検討していく考えを示した。
坂井容疑者の党除名処分に伴って、1区支部長が空席となるため、十五日に代表役員会を開き、後任問題を協議する。陣内会長は「年度末の事務処理のため仮の支部長が必要」としており、衆院選の候補者となる支部長は「その後に選びたい」とした。
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〈民主の原口議員くら替えを示唆〉
民主党の原口一博衆院議員(比例九州ブロック)は八日、坂井隆憲容疑者が辞職した場合の衆院佐賀1区補選への対応に絡んで、「小選挙区で欠員が出た場合は、そこで戦った比例の代議士が挑戦するのが党の原則」と述べ、自身のくら替え出馬の可能性を示唆した。
佐賀市で開いた同党県連常任幹事会後の記者会見で語った。原口氏は前回二〇〇〇年の衆院選佐賀1区で坂井容疑者に敗れ、比例で復活当選した。
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=暴かれた癒着〜坂井隆憲議員逮捕〜(上)=
〈カネへの執着〉
「政治家にはリスクがつきものだ。企業にはいろいろあるし、これからは注意しなければなあ」―。今年一月、東京・永田町の衆院議員会館。坂井隆憲容疑者(55)は思い出話でもするように、軽い口調で語った。
詐欺容疑で社長らが逮捕された抵当証券会社「大和都市管財」関連会社から、秘書給与の一部計約百万円の肩代わり疑惑が発覚したのは、その約一年前。この時は「政策秘書による収支報告書への記載ミス」として刑事追及をかわした。
企業献金疑惑をまるで他人事のように語っていた坂井容疑者。その時すでに、自身のヤミ献金疑惑の内偵が東京地検によって進められていた。
大蔵省出身で財政、金融問題に明るく「政策通」という地元の評価。一方で「カネへの執着」という、もう一つの評判が永田町では上がっていた。
佐賀市内の男性が子どもの就職相談で坂井事務所を訪れた際、職員に「うまくいったら百万円お礼してほしい」と言われた。男性は「そんなカネは出せない」と憤慨。「いきなりカネをふっかけられた。もう頼まない」と後日、知人に打ち明けた。
「事務所の運営はいつもかつかつ状態だった」と元秘書は証言する。「(選挙区に)強力なライバルがいるため、秘書らスタッフ(地元十一人、東京三人)が多すぎた」。
こんな背景から資金集めパーティーは年一回、必ず東京で開催し、昨秋には佐賀市でも開いた。この際、鳥栖市など衆院佐賀1区の自民各支部にパーティー券(二万円)の販売を割り当てた。それだけでなく、選挙区外の保育園にも割り当てが舞い込んだ。
「県連パーティーならともかく、個人のそれにノルマを課す代議士は今どきいない」。「東京とは違って地元は逆に代議士が票をお願いする立場。景気も悪く、不満の声が相次いでいた」。自民党関係者は語る。
さらに別の、人となりも浮かび上がる。中選挙区最後の選挙(九三年)の直前。坂井容疑者が霞が関のある官庁幹部の部屋に怒鳴り込んできた。「お前のところは(県選出の)ほかの代議士を応援している。バカにするな」。三十分間、いすには座らず、なだめる幹部の周囲を歩き回りながら、ば声を浴びせ続けた。
「とにかく驚いた。興奮状態で目が三角だった。理性的な人と思っていたが…」と幹部。坂井容疑者当選一期目のことだった。
◇ ◇
県政史上初めて現職国会議員が逮捕された。衆院議員坂井隆憲容疑者の政治資金規正法違反事件。明らかになる容疑事実からは、「政業癒着」の構造的体質も浮かび上がってくる。坂井容疑者の政治手法≠ニ事件が与える影響を追う。
坂井議員逮捕、裏切り、県民あきれ顔
掲載日2003年03月08日
<自<共>写有表有
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〈坂井議員逮捕、裏切り、県民あきれ顔〉
衆院全会一致の許諾、そして令状執行。衆院議員坂井隆憲容疑者(55)の逮捕に七日、県民や支持者からは驚き、失望とともに、辞任を求める声が上がった。二〇〇〇年総選挙では「国民のために」を強調し、七万人の負託を受けた坂井容疑者。日本の将来、地域の発展を託し送り出した有権者の願いは「ヤミ献金」という形で裏切られた。(1面参照)
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「やっぱり本人も関与していましたか…」。農業の五十代男性=神埼郡=は逮捕の一報に肩を落とした。初当選の九〇年、運動員だった男性は公選法違反で逮捕された。それでも支援を続けてきた。「今でもわれわれが代議士に推し上げたという自負がある。こうなったら潔く辞めてほしい」と、力なくつぶやいた。
坂井容疑者が顧問をする県難病団体連絡会の四十代メンバーは「国への要望書提出などでは熱心に仲介してくれた」。後ろ盾をなくしたショックは隠せない様子だが、「うちと関係ができたのは昨年秋から。区割りも変わり選挙できつそうなので、支持拡大も狙っていたのだろうか」とも。
「労働族」として坂井容疑者が建設を後押ししたと自己PRしていた神埼郡神埼町の雇用促進住宅。入居者の主婦(31)は「まったく知らなかった。いい気持ちはしないですね」といい、「信頼してきた地元への裏切り」と語気を強めた。
佐賀市川原町の自宅は家宅捜索以来、カーテンが閉まり人影はない。坂井容疑者の妻が書類に火を付け証拠隠滅を図ったことに、近所の男性は「(奥さんも)追い込まれていたんでしょう。ふだんは温和で、そんなことをする人じゃない」と同情。ただ自転車で通りかかった中年男性は、自宅前の看板に目をやり「早く外してしまえ。でかいことばかりいいやがって」と吐き捨てた。
佐賀新聞社が県内二十カ所に張り出した号外には人の輪ができた。JR佐賀駅で会社員(20)は「(大和都市管財問題など)疑惑が続く人。県民として恥ずかしい」とあきれ顔だった。
坂井容疑者は衆院のデジタルアーカイブ小委員会委員長を務め、有田焼など文化遺産をデジタル情報化する協議会の発足にもかかわった。佐賀市での総会で顔を合わせたばかりという会員は「国会議員が中心だったため商用化を目指す上で会への信頼度は高かった。支援を期待していただけにショックだ」と話した。
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〈汚点≠ツきまとう〉
衆院選初出馬から十七年。坂井隆憲容疑者(55)は、過去にも同様の「違法献金疑惑」や支援者の公職選挙法違反(買収)など、カネにまつわる不祥事を繰り返した。その都度、自身に対する追及はかわしてきたが、今回は司直の手をすり抜けることはできなかった。
「私は知らなかった」「秘書が適正に処理していると思っていた」―二〇〇一年十一月、巨額の詐欺被害を出した抵当証券会社「大和都市管財」(大阪市)から、元秘書名義の銀行口座に約百万円が振り込まれた違法献金疑惑。坂井容疑者は今回と同じ言動で、自らの関与を否定した。
献金が政治資金収支報告書から漏れていたと説明し、送金の事実は認めながら事務手続きミスを強調。その経緯は「詳しいことは秘書に聞いてほしい」を繰り返し、責任回避に懸命となった。
一方、国政初挑戦で落選した一九八六年衆院選では、公選法違反(買収)で支持者ら二十五人が逮捕、十九人が書類送検されている。
法改正で連座制が強化された九四年以降であれば、当然、本人まで捜査の手が及ぶケースだった。続く九〇年の総選挙で初当選を果たした際にも、買収による公選法違反で逮捕者を出した。
坂井容疑者は二〇〇〇年総選挙に臨み、八六年当時の選挙違反を「自らを律する原点になっている」と振り返っている。しかし、有権者の一人は数々の汚点≠思い起こしながら、「ダーティーさがいつもつきまとっていた」と語った。
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〈「心外だ、要求した覚えない」〉
「否認を続けます」「辞職する状況にない」。冷たい雨が降る都心の路上。衆院議員坂井隆憲容疑者(55)は七日午後二時前、人目を忍ぶように東京地検の車に乗り込んだ。毎月百万円、高級車と総額一億二千万円ものヤミ献金…。だが坂井議員が周辺に漏らした徹底抗戦の言葉は、自信それとも虚勢なのか。わずか三日前の秘書逮捕から公式釈明もしないまま拘置所へ姿を消した。
衆議院が逮捕許諾を議決した午後一時すぎ。間髪おかずに、特捜検事が「出頭をお願いしたい」と、坂井議員の弁護士に電話で告げた。
弁護士によると坂井議員は六日夜から都心の宿泊施設に滞在していた。
携帯電話で出頭要請を伝えると、「分かりました。しかし自分は関与していない。朝刊に自分からお金の要求をしていたとあったが心外だ、とんでもないこと。催促や要求をした覚えはない」と淡々と語った。
車に乗り込む場所は東京地検に近いホテル周辺の路上と決め、直前まで秘書が付き添った。
これまで、地検は献金隠しに加え、証拠隠滅を秘書にメールで指示したり、事務所での書類焼却など露骨な工作の一端を明らかにした。それにも「(証拠隠滅は)心当たりがない。佐賀の家で妻が燃やしたのは、夫婦のプライベートの書類」と否定したという。
「自ら辞職すべき状況ではない」。六日、逮捕許諾が衆院に請求された段階でも、議員辞職を選ぶ考えはないことを弁護士に話した。
坂井議員は四日午後、秘書が逮捕された時、「知らない、聞いてない」とだけ語り、国会を猛ダッシュで後に。自宅や議員宿舎に姿を見せなかった。ホームページ上につづっていた政治理念、政策提言などのコーナーは七日には閲覧不能に切りかわっていた。
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〈県政界に新たな衝撃〉
巨額のヤミ献金発覚からわずか四日。事件は急展開で坂井隆憲容疑者(55)本人の逮捕に至り、県政界にあらためて衝撃を与えた。「政治とカネ」に国民の厳しい視線が注がれる中、県選出の現職国会議員が逮捕されるという前例のない事態に、同僚の議員らからも厳しい批判の声が上がった。(1面参照)
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「積極的に金を要求していたと報道されているが、事実なら大変遺憾だ」。今村雅弘衆院議員(自民)は同僚の政治手法≠批判しながら沈痛な表情。「特定の企業から多額の寄付をもらうと対価を求められる。広く薄くカンパしてもらわないと」と述べた。
「大蔵省出身なので(金銭には)固い気持ちをもっている人と思っていたが」。保利耕輔衆院議員(自民)は明らかになる同僚の裏の側面に、やり切れない表情。与党の政治倫理確立協議会会長を務めていただけに「法律の中で活動していくのは当たり前の話。佐賀県の名誉を傷つけた」と厳しい口調で語った。
岩永浩美参院議員(自民)は「法を守るのが当然だ」と述べた上で「激戦の選挙区なので無理をしたのでは」とヤミ献金の背景を分析。陣内孝雄参院議員(自民)は「非常に残念だ。(逮捕まで)あまりに早くて驚いている」と語った。
前回衆院選で佐賀市後援会長だった西村正俊・前佐賀市長は「最初は秘書が起こしたことで、少しは弁護してやらないとと思ったが、裏切られ、逆に責めたい気持ち。投票してもらった方に申し訳ない」。
元後援会支部幹部の最所義雄・元北茂安町長は「容疑が事実であれば政界復帰は無理だろう。残念」と述べた。
井本知事は「(坂井容疑者は)政治家として将来を嘱望され、期待も大きかったので言葉もない。この種の事件が政治不信を招き、日本の将来を築く上でも支障が生じるのでは」と政治不信を危ぐした。
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〈坂井議員逮捕で決議など協議〉
衆院議員坂井隆憲容疑者の逮捕を受け、県議会は七日、急きょ議会運営委員会理事会を開き、「(坂井容疑者の)出身県の県議会として事態を黙認できない。何らかの形で議会としての姿勢を示す必要がある」との認識で各会派が一致。議員辞職勧告決議や政治倫理の確立を求める意見書などの案が出され、各会派で持ち帰り、十日に再度、理事会を開いて協議することになった。
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〈金権・腐敗と決別を〉
論説委員会副委員長・富吉賢太郎
政界スキャンダルの主役に県選出の現職国会議員がなろうとは思いもしなかった。国民への説明もなく、所属する自民党からも除名された坂井隆憲衆院議員の身柄は司直の手に渡った。政治資金規正法違反容疑による検察の家宅捜索に抵抗し、証拠隠滅という醜態をさらしての逮捕は、情けない限りである。
金権・腐敗の政治を批判し、大蔵官僚から政界に転身。労働政務次官、衆院厚生労働委員長などを歴任し、有力な「労働族」議員として地位を築いていた。しかし、その実態は権力とバッジ≠ちらつかせ、後援企業に巨額の裏献金を要求する金権政治家そのものだったようだ。
「政治とカネ」にまつわる不祥事が後を絶たない。カネの呪縛(じゅばく)をなかなか断ち切れない。思えば、自民党の一党支配が崩れて今年で満十年になる。戦後政治最大の激震とされ、非自民による細川内閣が誕生したのが一九九三年六月。この時、現在の小選挙区比例代表並立制が政党助成金制度とともに成立した。
「政治を変えよう」という制度改革だったのだが、この十年、カネに絡んでどれだけの国会議員が逮捕され国政のステージを去っていったか。選挙制度は変わっても、腐敗の土壌は何も変わっていないということだ。
選挙と金のことで興味深いものがあった。国政選挙とは規模もスタイルも違うが、先ごろ当選した木下敏之佐賀市長が、あるタウン誌のインタビューに答えて「前回の選挙は二千万円以上かかったが、今回はボランティア中心の選挙で五百万円ぐらいで収まった」「この金額でも選挙のプロからはすごく安く上がったね≠ニいわれた」と語っている。本人の弁だから本当だろう。
県都の市長選の費用五百万円が妥当かどうか評価は難しいが、個人献金による理想選挙に近いものだろう。しかし、これを「安上がり」だと言う選挙のプロといわれる人たちの旧態依然とした意識こそが問題である。そして、市民の中にも「選挙に金がかかるのは当たり前」といった思考のまひがありはしないか。
金権・腐敗の土壌と決別できないのは政党、政治家だけでなく有権者の側もそうである。こういった意識が、自民党長崎県連の違法献金問題で明るみに出たように、「知事選に金がいる」といって献金を求める集金システムを許していくのである。
坂井議員逮捕は県民にとっても痛恨の不祥事、しっかり教訓としなければならない。
献金不正秘書逮捕、坂井氏硬直釈明なし
掲載日2003年03月05日
<共><自>写有
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〈献金不正秘書逮捕、坂井氏硬直釈明なし〉
政府予算案の衆院通過を見計らうように、東京地検特捜部が動いた。政治資金規正法違反容疑による坂井隆憲衆院議員(自民・佐賀1区)の公設秘書と元秘書の逮捕。またも発覚した政治とカネにまつわる疑惑。特捜部は年明けから内偵捜査を進め、四日、一気に強制捜査に踏み切った。(1面参照)
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衆院本会議場。午後二時五十分、予算案通過と同時に出てきた坂井議員は三十人を超える報道陣に取り囲まれた。「(献金した)人材派遣会社との関係は」―。問いかけに「(強制捜査は)知らない。聞いていない」「驚いている」と繰り返すだけ。
うつむき、硬直した表情の坂井議員は秘書にかばわれながら、車寄せまで五百bほど小走りに。本人の関与に関する疑惑≠ノはほとんど答えないまま車に乗り込み、報道陣を振り切った。
その数時間前、「一月から事情聴取を受けていた」と元秘書の一人。佐賀新聞社の取材にこう答え特捜部の捜査が少なくとも二カ月以上前から始まっていたことを認めた。
関係者の話を総合すると、大手人材派遣会社などから秘書給与、車、事務所の経費などを丸抱え≠オてもらっている疑惑を追及されていた。三人以上の元秘書らが連日、特捜部に呼ばれ、事情聴取を受けていたという。
「国会の混乱を避けるため、予算通過は絶好のタイミングだったのでは」と自民党国会議員の秘書は語る。
坂井議員が立ち去った直後の午後三時前。衆院第一議員会館内にある坂井議員事務所に特捜部の捜査員十人が足を踏み入れた。
「何がなんだか分かりません」。早朝からマスコミの対応に追われていた秘書の一人は表情をこわばらせながら一言、話しただけだった。
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〈中山容疑者献金企業に勤務も〉
逮捕された元公設第二秘書中山求容疑者(51)は、坂井隆憲議員が衆院選に初挑戦した一九八六年から九六年ごろまで地元秘書を務め、その後、献金側の人材派遣会社「アデコキャリアスタッフ」の前身会社で支社長をしていたことが分かった。
坂井議員の支持者は、秘書を辞めた後も「(中山容疑者を)地元事務所でたびたび見かけた」といい、「坂井氏との縁は切れていなかったようだ」と証言。坂井議員とア社を結ぶ立場にあったとみられる。
中山容疑者は佐賀市出身で大学卒業後、県農業共済組合連合会勤務を経て、坂井氏が衆院選に初めて立候補、落選した八六年ごろから秘書となった。十数年後、秘書を辞任し、当時国内最大手の人材派遣会社「キャリアスタッフ」に入社、久留米支社長として事務所開設に携わっている。
同社は九九年、外資系の「アデコグループ」の日本法人「旧アデコジャパン」に吸収され、「アデコキャリアスタッフ」となった。中山容疑者は統合後、ア社のフランチャイズ「アデコキャリアスタッフ九州」に転籍、二〇〇一年七月に辞職している。
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〈「謝礼」1600万円仲介者に託す〉
人材派遣会社「旧キャリアスタッフ」(一九九九年合併でアデコキャリアスタッフ)の元役員が東京地検特捜部の事情聴取に対し「坂井隆憲衆院議員に渡す謝礼として、現金千六百万円を仲介者に託した」と供述していることが四日、関係者の話で分かった。
仲介者は、特捜部が所得税法違反容疑で逮捕、起訴した経営コンサルタント忠村吉朗被告(70)。関係者によると、キ社の元役員は「九八年に当時の別の役員に指示して、坂井議員にお礼として渡してもらうため、忠村被告に現金千六百万円を託した」と供述。指示を受けた当時の役員も「現金は忠村被告に渡した」と授受を認めたとされる。
忠村被告は約三カ月後の九八年九月の休日、知人と二人で佐賀市を訪れ、市内のホテルに宿泊。交通費などはキ社が負担したという。特捜部は現金が最終的に坂井議員側に渡ったかどうかや趣旨について慎重に捜査を進めているもようだ。
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〈「証拠残ることしない」塩野谷容疑者〉
政治資金規正法違反容疑で四日、逮捕された自民党の坂井隆憲衆院議員の政策秘書塩野谷晶容疑者(38)は、秘書を続けながら二度の国政選挙に出馬。大阪府警が摘発した巨額詐欺事件をきっかけに献金疑惑が発覚した当時は「証拠が残るようなことはしない」と疑惑を否定、議員を守る立場を通していた。
献金疑惑は二〇〇一年十一月に発覚。二〇〇〇年十一月から〇一年三月にかけ、坂井議員の東京の事務所にいた元秘書の口座に、詐欺容疑で元社長らが逮捕された抵当証券会社「大和都市管財」関連会社から、計約百万円が振り込まれていた。政治資金として届けはなく、発覚後に訂正した。
塩野谷容疑者は、坂井議員が金の振り込みを認めた直後の取材に、元秘書の口座を使ったことを挙げて「よこしまな思いがあればこんな下手な手を打つと思いますか」と釈明。「深い考えはなかった」と繰り返した。
また、「一生懸命に増やそうと思ってもなかなか新たな(後援)会員は集まらない」と献金集めの苦労を口にしながら、問題の口座については「献金自体忘れてほったらかしにしていた」と話していた。
終始冷静な口ぶりだったが「ほかに献金に職員の口座を使ったことは」との問いには「それはない」と語気を強めた。
塩野谷容疑者は大学卒業後すぐに相沢英之元経企庁長官の秘書となり、その後坂井議員の秘書に。一九九五年の参院選と九六年の衆院選に出馬。「女性が働きながら子どもをうめる社会」「女性に愛される農業、農村づくり」を公約にしたが落選。その後も坂井議員の秘書を続け、次の衆院選でも千葉県小選挙区から立候補する意向だった。
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〈県政界に衝撃走る〉
衆院議員坂井隆憲氏事務所の政治献金不正処理疑惑が秘書逮捕に発展した四日、県内政界に衝撃が走った。開会中の県議会では突然のニュースに、与野党問わず議員が一様に驚きの表情。有権者からは「坂井氏本人の政治姿勢の問題」と責任を問う声が上がった。
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県議会自民党控室では議員が地元事務所への強制捜査を報じるテレビに見入り「どういうことか」。詳しい情報がない中、互いに尋ね合った。
富崎一巳・同党県連幹事長は「こういうニュースが多すぎる。それがわが党の佐賀選出議員から出るとは」とショックを隠せない様子。坂井氏の進退については「内容が分からないのでコメントできない」としながらも「監督責任はあり、『秘書が』では済まない」と話した。
民主、社民両党の議員は「情報がなく、まだ何とも言えない」と戸惑い気味。ただ「秘書逮捕まで行ったとなると、坂井氏本人も釈明で済むのか」。今後の捜査の行方に関心を寄せた。
市民オンブズマン連絡会議・佐賀の味志陽子事務局長は今回と同様、秘書による政治資金の不正処理が指摘された「大和都市管財」問題を挙げ、「カネにまつわる問題が多いのは本人の政治姿勢の問題」とバッサリ。「司法には厳しく対応してほしいが、根本的には疑惑が何度も出てくる政治家が繰り返し当選することが問題。有権者も考えないといけないと思う」と話した。
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〈深夜まで捜索続く〉
政策秘書ら二人が政治資金規正法違反容疑で逮捕された自民党の坂井隆憲衆院議員の佐賀事務所と自宅には四日午後、東京地検の捜査員が家宅捜索に入り、深夜まで捜査は続いた。
佐賀市大財の佐賀事務所には午後零時四十分ごろ、地検の捜査員ら数人が足早に二階建て事務所に入り、ブラインドを閉め捜索を始めた。
事務所は住宅地にあり、通りがかった無職男性(70)は「びっくりしている。議員本人は関係ないのだろうか」と語った。
一方、佐賀市川原町の坂井氏自宅には午後一時ごろ捜査員が到着。中に人の気配はあったが、捜索に応じないため捜査員が坂井氏の知人と見られる女性を介し説得したが、応答がなかった。このため午後七時すぎに裏口から入り、捜索を開始した。
事務所からは段ボール四十六箱の書類などを押収した。延岡彬事務局長は捜索前、「(東京事務所に)問い合わせたときは、事実無根と言っていた」と話した。
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〈噴出する政界不祥事〉
「政治とカネ」をめぐり、坂井隆憲衆院議員の政策秘書が四日、東京地検特捜部に逮捕された。口利きビジネス、秘書給与の流用・肩代わり、政治資金隠し…。政治家や秘書絡みの政界スキャンダルは後を絶たない。
最近では大島理森農相の元秘書が二〇〇〇年六月の衆院選時に地元のビルオーナーから、スーパーの撤退問題に絡み現金六百万円を受け取って流用していたことが発覚。農相は国会で「元秘書から報告はなかった」と、秘書の独断を強調した。
地方政界では、昨年二月の長崎県知事選をめぐり、ゼネコンに違法な献金を要求したとして公選法違反などの罪で自民党長崎県連前幹事長らが今年、逮捕・起訴。政治資金パーティー収入の簿外処理も露呈した。
昨年摘発された衆院議員鈴木宗男被告の事件では、秘書二人が関与。あっせん収賄の共犯とされた政策秘書は東京での献金を一手に引き受け、国後島「友好の家」入札妨害事件の公設第一秘書は地元での資金集めを取り仕切っていた。
加藤紘一元自民党幹事長の元秘書の脱税事件では、政治力を背景に業者との癒着を深め、政治家以上に公共工事への影響力を持つ口利きビジネスが浮き彫りになった。
前千葉県鎌ケ谷市長の汚職では井上裕前参院議長の元秘書が昨年五月、公共工事の口利きに絡む裏金の授受で逮捕された。
辻元清美元衆院議員、田中真紀子前外相はそれぞれ政策秘書の給与流用などの疑惑が表面化、議員辞職に追い込まれた。
坂井議員秘書逮捕
掲載日2003年03月05日
<自>写有
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〈政治とカネ疑惑遺憾だ〉
佐賀一区選出の自民党坂井隆憲衆院議員の秘書に政治資金規正法違反容疑が浮上、東京地検特捜部が政策秘書ら二人を逮捕するという事件に発展した。本県選出の国会議員に関して「政治とカネ」の疑惑が生じたことは極めて遺憾だ。
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逮捕された坂井議員の政策秘書らは、年間一千二百万円に上る人材派遣会社からの献金や秘書給与の肩代わりなどを政治資金収支報告書に記載しなかった疑いが持たれている。
人材派遣会社は六、七年前から一昨年ぐらいまで月額約百万円、年間約一千二百万円を坂井議員側に献金。元役員らが現金で坂井議員側に渡していたとされる。
■報告書に記載せず
政策秘書らが政治資金収支報告書に記載しなかった寄付は、五年間で総額約一億二千万円に上ることが分かった。
東京地検特捜部は、きのう、容疑を裏付けるため衆院議員会館の坂井議員事務所、政策秘書の東京の自宅のほか佐賀市の地元事務所を家宅捜索した。
言うまでもなく、容疑段階であり、資金の流れ、目的など事実関係の解明は捜査の進展を冷静に待ちたい。だが政治への信頼をいかに取り戻すかが、わが国の喫緊のテーマとなっている中で政治資金問題で不正の疑いを持たれ、秘書逮捕という事態に至ったことは残念でならない。
坂井議員をめぐっては抵当証券会社「大和都市管財」の巨額詐欺事件でも、関連会社から元秘書の口座に約百万円が振り込まれていたことが発覚している。
坂井議員は二〇〇一年十一月、発覚後の会見で、振り込まれた金が政治資金報告書に記載がなかったことを認めている。その上で「秘書が依頼した」と自らの関与を否定した。この時、詳しい事実関係は「秘書に聞いて」と繰り返したが、責任ある政治家が取るべき態度ではなく、納得できない。
■県民に自ら説明を
今回の事件に県民は衝撃を受けている。坂井議員の佐賀事務所は「政治資金は基本的にはきちんと資金管理団体を通して処理している」と秘書逮捕に、戸惑っているという。そうであるのなら、捜査とは別に、今回の事件について県民へ自らきちんと説明するべきだ。代議士と秘書との関係で「秘書がやったこと」という政治家特有の言い方はもはや、通用しない。
坂井議員は旧大蔵省出身で、国会議員秘書を経て一九九〇年に当時の佐賀全県区から初当選、森派に所属し現在四期目。内閣府副大臣などを歴任し、昨年十月からは衆院厚生労働委員長を務めている。今年にも行われる可能性が強い次期衆院選挙にも立候補が確実視されている。坂井議員は、この日秘書逮捕を受けて厚生労働委員長を辞任する意向を中川秀直国対委員長に伝えたが、次期選挙に影響を及ぼすのは必至だ。
大和都市管財秘書口座入金、「坂井さんが中心」
掲載日2001年11月19日
<共>写有
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〈大和都市管財秘書口座入金、「坂井さんが中心」〉
大和都市管財から元秘書の銀行口座に半年以上にわたり入金が続いていた事実が浮上した坂井隆憲衆議院議員(53)。同社の元社長***容疑者(65)とは「まったく面識がない」としているが、周辺から漏れ出る話は、その回答を覆す内容ばかりだ。(1面参照)
同社グループの元幹部によると、二人は一九九八年ごろ、政界関係者の紹介で知り合ったという。**容疑者は逮捕前、共同通信社の取材に対し、複数の政治家と親しいことを強調した上で「坂井さんが中心です。表面的に出ていただいている。(抵当証券業の登録更新に伴う近畿財務局の立ち入り検査で)何が問題になっているのか、それとなく聞いてもらった」などと話していた。
九八年の参院選の際、大阪を訪れた坂井議員を**容疑者が食事に誘い、「自分も含めて計五人でホテルで食事をした」と元幹部は証言。
検査が続き、抵当証券業の登録更新が保留された二○○○年十二月は、元秘書に給料の振り込みが続いていた時期。別の関係者によると、保留が決まる前、**容疑者は複数回にわたって坂井議員と面会。**容疑者が「検査状況を知りたい」と依頼すると、坂井議員は「後輩にきいてみる」と、その場で同財務局に電話し、検査内容などについて尋ねたという。
保留決定後も「今後、大和(都市管財)をどうするのか」などと電話は続いたという。
福田康夫官房長官は「また秘書にまつわる事件で極めて遺憾に思っている」と述べた。今回の事件は捜査の展開、その内容次第によっては本人の進退問題にもかかわることだと考える。永田町の感覚とは違うだろうが、坂井議員は厳しく受け止めなければならない。(上杉芳久)
大和管財問題、坂井氏「秘書が」一点張り
掲載日2001年11月21日
<共><自>写有
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〈大和管財問題、坂井氏「秘書が」一点張り〉
「詳しいことは秘書から聞いてほしい」―。巨額の詐欺被害を出した大和都市管財とのかかわりを一切否定してきた坂井隆憲衆院議員が二十日の記者会見で一転、認めた。しかし、現金が事務所職員の口座に振り込まれた経緯になると、「秘書に」の一点張り。違法献金≠ナありながら、時折笑みを漏らし、表情からは事態の深刻さが感じられなかった。(1面参照)
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記者会見は佐賀市内のホテルで急きょ開かれ、約二十人の記者が詰めかけた。坂井氏は「各社から問い合わせもあり、いろいろ話したいと思っていた」と切り出し、用意した紙を読み上げた。
焦点の一つは元女性職員の口座への入金問題。改正政治資金規正法で二〇〇〇年一月から、政治家個人への企業・団体献金は全面禁止されている。会見では坂井氏自身も「本来なら党で受けなければいけなかった」と、坂井事務所として受け取れない違法献金だったことを認めた。
坂井氏が振り込みを知ったのは今年の四月。現在まで政治資金収支報告書への記載をしていない点を記者団から突かれると、「どうしようか、思案していた」「収支報告の仕方を検討するように指示していた」などと、返答に窮する場面も。
振り込みの細部にわたる質問には「その辺のことは秘書に聞いてほしい」「全部、秘書が管理していたから」との返答に終始した。
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■一問一答
坂井氏の会見要旨は次の通り。
―大和都市管財とのかかわりを否定してきたが、どうしてなのか。
三塚博先生(当時は蔵相)を通じ紹介されたため、言いにくかった。三塚先生は海外に出掛けられており、九日に了解を得たので会見することにした。紹介されたのは九七年ごろ。悪い会社とは思っていなかった。
―三塚氏からの依頼の内容は。
(近畿財務局の調査が)どういう状況か聞いてくれということだったと思う。詳しく覚えていないが、それを受け電話はしたと思う。
―元女性職員の口座に資金が振り込まれていたことをいつ知ったのか。
今年の四月、大和都市管財が破たんした時、東京事務所の公設秘書から聞いた。振り込みは昨年十一月から今年三月までの五カ月間で、合計九十七万七千六百八円。大和都市管財の関連会社「ナイスミドルスポーツ」からだった。昨年秋に秘書が、同管財の東京支社長に依頼したことがきっかけのようだ。(同管財からは)政治献金として振り込むからといわれ、秘書が元職員の口座を教えた。
―(近畿財務局に対する)口利きの謝礼の意味で、振り込まれたのか。
そういうことはない。私は知らなかったし、秘書は資金集めに熱心だったので、東京支社長にも支援を依頼したようだ。
―政治献金なのに、なぜ、元職員名義の口座に振り込まれたのか。
細かい経緯は分からない。本来なら党で受けるべきだったし、(二〇〇〇年の)政治資金収支報告も記載ミスになっている。早急に訂正したいと思う。
―振り込みを知ったのは四月だが、その時に政治資金収支報告は変更できたのではないか。
驚いて、どうしようかと、思案していた。収支報告の仕方を検討するように指示している。
―九七年以降の**容疑者との付き合いは。
何度か(東京事務所に)来ていた。会食もあるだろうが覚えていない。
―「検査の状況を探ってほしい」と依頼されたことはあったのか。
あった。ただ(近畿財務局は)聞いても教えてくれないことは分かっていた。また細かく聞くものでもない。
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〈紹介の事実ない、三塚氏事務所〉
三塚博・元蔵相の事務所は二十日、自民党の坂井隆憲衆院議員が詐欺容疑で大阪府警に摘発された抵当証券会社「大和都市管財」の***・元社長を三塚氏から紹介されたと述べたことについて「大和都市管財および**元社長と面識はない。三塚本人もしくは三塚事務所として坂井隆憲氏に依頼した事実もない」とのコメントを出した。
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〈公設秘書「報告書記載忘れた」〉
坂井隆憲氏の元女性職員の銀行口座を管理していた女性公設秘書は「政治献金として受け取っていた」と語り、元職員の口座を大和都市管財側に指定したことについては「深くは考えず、とりあえず教えておこうと思った」と話した。
政治資金規正法では、企業から政党以外への献金は禁止されている上、昨年分の坂井氏の政治資金収支報告書にも十一月と十二月分を合わせた三十八万五千円の記載はなかった。
公設秘書は「後日、自民党佐賀県1区支部に計上すればいいと思っていたし、収支報告書への記載は担当者へ報告するのを忘れていた」と釈明。
通帳は公設秘書が日ごろから保管。四月に会社実態が分かり、「気が動転して破棄した」としている。振り込まれた現金は今も事務所にあり、元職員の給与は口座とは関係なく現金で手渡していたという。
大和管財問題、坂井氏「元社長と面識」
掲載日2001年11月21日
<自>写有
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〈大和管財問題、坂井氏「元社長と面識」〉
詐欺容疑で元社長らが逮捕された抵当証券会社「大和都市管財」(大阪市)をめぐる問題で、坂井隆憲衆院議員(自民、佐賀1区)は二十日、佐賀市内のホテルで記者会見し、同社元社長豊永浩容疑者(65)との面識を初めて認めるとともに、元女性職員の口座に約百万円の現金が振り込まれていた事実も明らかにした。坂井議員はこれまで「まったく身に覚えがない」と、一切のかかわりを否定してきた。(25面に関連記事)
坂井氏の説明によると、入金額は指摘されている百八十万円ではなく、計九十八万円で、同社の関連会社が昨年十一月から今年三月にかけ、元女性職員の口座に振り込んだという。
豊永容疑者と知り合った経緯は「九七年ごろ、当時の三塚博蔵相から『話を聞いてやってくれ』と紹介され面識ができ、会食もあった」と述べた。
近畿財務局に検査状況を問い合わせたとされる点については、豊永容疑者から依頼され、九七年から今年の三月まで数回、同局幹部に「まだ調査しているらしいが、何か(問題が)あったのか」などと電話したことも明らかにした。
元女性職員の銀行口座への入金は昨年秋ごろ、政治資金として、東京事務所の公設秘書が同社東京支社長に依頼したが、同議員に報告されたのは今年四月だった、とした。
議員個人への企業献金は昨年一月から禁止されている。坂井氏は「本来、党で受けるべきだった」として、政治資金収支報告書に記載していないことも認め、「訂正しないといけない」と語った。関係を否定してきたのは「三塚氏の了解をとる必要があったため」と釈明した。
(横尾)
大和都市管財、坂井議員元秘書に180万円
掲載日2001年11月19日
<共>
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〈大和都市管財、坂井議員元秘書に180万円〉
詐欺容疑で元社長らが大阪府警に逮捕された抵当証券会社「大和都市管財」(大阪市)から、旧大蔵省OBで自民党の坂井隆憲衆議院議員(53)=佐賀1区=の元秘書の女性名義の銀行口座に、給料名目で昨年夏から今年春にかけて毎月約二十万円、計約百八十万円が振り込まれていたことが十八日、関係者の話などで分かった。(23面に関連記事)
近畿財務局が同社を立ち入り検査していた昨年から今年にかけ、坂井議員が同財務局幹部に検査状況などを電話で問い合わせていたことが既に分かっているが、同社と議員周辺との金銭的なつながりが明らかになったのは初めて。
同財務局の検査開始は昨年七月。同十二月に抵当証券業の登録更新は保留とされ、同社は四月に破たんした。元秘書に給料の振り込みが続いた時期はこれと重なっており、同社グループと政治家との関係が事件の大きな焦点として浮かび上がってきた。
大阪府警捜査本部と整理管理人団などは、数十億円に上る大和都市管財グループの不透明な金の流れを調べている。
坂井議員は秘書を通じ、同社の元社長豊永浩容疑者(65)とのかかわりや、給料振り込みの事実について「知らない」と回答。直接取材の要請には「知らないので会う必要がない」と応じていない。元秘書は「大和都市管財とはかかわり合いたくない。話すことは何もない」としている。
関係者によると、元秘書は坂井議員と同じ佐賀県出身の女性。昨年夏から今年春にかけ、元秘書の口座に、実際は働いていないのに同社が社員として、毎月給料を振り込んでいた。
大和都市管財に勤務していた社員は、元秘書の口座に毎月給料を振り込むよう指示されたとし「顔も見たことがない人で、おかしいと感じていた」と関係者に話したという。坂井議員は一九九○年二月に衆議院で初当選し、大蔵委員会筆頭理事、地方行政委員会委員長、内閣府副大臣など歴任した。現在四期目。
坂井議員、財務局に電話、大和管財の検査尋ねる?
掲載日2001年11月07日
<共>写有
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〈坂井議員、財務局に電話、大和管財の検査尋ねる?〉
抵当証券会社「大和都市管財」グループの詐欺事件で、近畿財務局が同社の検査をしていた昨年秋から今年二月、旧大蔵省OBで自民党の坂井隆憲衆院議員(佐賀1区)が近畿財務局幹部に電話し、大和都市管財の検査状況などを問い合わせていたことが六日、関係者の話で分かった。抵当証券業の登録更新時期だった昨年十二月ごろ、最も頻繁に電話があったという。(1面参照)
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大和都市管財の元社長***容疑者(65)は逮捕前、「検査が長引いたので、坂井先生に何が問題か聞いてもらった」と話していた。坂井議員の秘書は「先生も私も(**容疑者と)面識がない。名刺の交換ぐらいはあったかもしれないが、言われる事実はない」としている。
関係者によると、坂井議員は、同財務局のトップクラスの幹部に電話し、検査状況を質問。同財務局が昨年十二月、登録更新を保留した後も「何で保留になったのか」などと問い合わせた。電話を受けた幹部は担当者らに「気にしないでいい」と話したという。
**容疑者は、坂井議員を「三、四年前からの知り合い。人間的に魅力がある人」などと話していた。大和都市管財をめぐっては、別の現職の自民党議員らも近畿財務局に電話し、状況を尋ねたという。
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〈7幹部、容疑認める〉
破たんした抵当証券会社「大和都市管財」(大阪市)グループの詐欺事件で、大阪府警捜査本部が詐欺容疑で六日逮捕した幹部十九人のうち約半数が、調べに対し「集めた資金で客に配当できる運用はしていない」などと供述、七人がほぼ全面的に容疑を認めていることが分かった。
容疑は否認しながらも「悪化した経営は知っていた」と供述する幹部もいた。元社長の***容疑者(65)は「客をだましたことはない」と容疑を全面的に否認しているが、捜査本部は同容疑者らが事実上の破たんを十分認識しながら金融商品を販売、自転車操業を続けたとみて、グループの営業実態をさらに追及する。
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〈大和管財グループ、破たん状態で316億円分〉
破たんした抵当証券会社「大和都市管財」(大阪市)グループの詐欺事件で、同グループが既に破たん状態だった昨年一年間に、前年実績を上回る計約三百十六億円分の金融商品売り上げを計上していたことが六日、大阪府警捜査本部の調べなどで分かった。
近畿財務局が昨年十二月、財務内容に疑問点があるとして、抵当証券業の登録更新を保留した後の今年一―三月の売り上げも計約七十二億円あった。捜査本部は、グループの延命を図るため、逮捕された元社長***容疑者(65)らが指示し、配当などのめどもないのに「安全性が高い商品」と勧誘する詐欺商法を推進したとみて、**容疑者らを追及している。
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=一問一答=
〈「全く身に覚えない」坂井氏は全面否定〉
「元社長と会った記憶はなく、全く身に覚えがない」―。大和都市管財グループの元社長***容疑者(65)の依頼を受け近畿財務局に電話をしたとされる問題で、自民党衆院議員坂井隆憲氏(佐賀1区)は六日、佐賀新聞社の取材に対し同容疑者との関係や依頼を全面否定した。坂井氏との一問一答は次の通り。
―**容疑者や同社の幹部を知っているか。
坂井氏 元社長や幹部らとは会った記憶もないし、全く関係がない。もちろん何かを依頼された覚えもない。
―**容疑者は、抵当証券業の登録更新の可否を判断する近畿財務局の検査状況を知ろうと、働き掛けを依頼したとされている。なぜ(坂井氏の)名前が出てきたのか。
坂井氏 大和都市管財の抵当証券業の許可の期限切れが昨年十二月だったらしいが、これが今年四月ごろに延びた。このため、だれか政治家が圧力をかけたとみられたようだ。しかし、これは実際の検査に時間がかかったためで、延びたのではないと後で聞いた。実際、同社は四月に破たんしているし、政治家の力で金融検査がゆがめられるものではない。同社とは一切関係なく、私の名前が出た理由も分からない。ただ、私の秘書がパーティー会場で同社の元東京支社長と名刺交換をした記憶はあるようだ。
―近畿財務局に電話をかけたことがあるか。
坂井氏 旧大蔵省時代の後輩が近畿財務局の前の局長をしていたので、当時、個人的な要件で電話した記憶はある。だが、最近は電話した記憶はない。
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〈老後の蓄え紙切れに〉
「売りつけた人は家を売ってでも金を返して」―。全国で約千百億円を集めて破たんした大和都市管財グループの詐欺事件で、老後の蓄えなどを失った被害者の声は深刻だ。幹部らは逮捕されたが、投資した金の回収は厳しく、被害者たちの眠れぬ夜は今も続く。
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「だまされた。恥ずかしくて息子たちにも言えない」と兵庫県に住む七十代の夫妻。購入した抵当証券などの総額は二億二千万円を超える。
最初に購入したのは一九九五年。友人の勧めもあり計約八千万円を出した。「絶対大丈夫」と畳み掛ける営業マンを「信じ切った」という。
利息が入り、安心して購入額を増やした。ことし二月には「ゼネラルファイナンスパートナー(GFP)」の金融商品「シュアーファンド」を約六百万円分購入。数年前に土地を売り「息子たちと住む家を買うため取っておいた金」をすべてつぎ込んでいた。一カ月後、大阪府警から問い合わせが。「怪しい」と思い始めた矢先の破たん。すべて紙切れになった。
妻は体調を崩し、三カ月間入院した。「営業マンも罪を償ってほしい。放置した国にも責任がある」と訴える夫妻の声は悲痛だ。
被害者の会に参加しているのは全国で約二千人。被害者弁護団によると「二、三割は、明日からの生活にも困る状態」という。弁護団は整理管理人と交渉。回収作業を進めているが「見通しは厳しい」と話している。
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=識者談話=
〈社会評論家・室伏哲郎氏〉
ゼロ金利で、何とか「とらの子」を増やさないと暮らしていけない老人らの悲そうな叫びが聞こえてくるつらい事件だ。悪徳業者は笑顔で近づいてくる。逮捕されてからでは仕方がない。本当は行政が市民を守るべきだが、この不景気でうまい話があるはずがないことを肝に銘じて、警戒を強めるべきだ。怪しい会社を放置してきた監督官庁には「今まで何をしていたんだ」と言いたい。「官僚の不作為」が問われる。
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〈悪徳商法被害者対策委員会会長・堺次夫氏〉
庶民相手の利殖話では、預けた額の多い人ほど、悪徳業者の信者になっており、当局に被害を届けることもなく事件発覚が遅れてしまう。超低金利時代で、高金利をうたう話に乗りやすい状況はずっと続いており、似たような話は全国各地である。そうした悪徳業者がはびこりやすい今こそ、財務省や警察などの関係機関が協力して、悪徳業者を一斉に洗い出し、取り締まりを強化すべきではないか。
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■過去の大型詐欺事件■
1985年6月 警視庁が約7800人から総額約584億円を集めた投資ジャーナルの会長らを逮捕
87・3 大阪地検と大阪府警が「純金ファミリー契約」を中心としたペーパー商法で、全国の約3万人から2000億円を集めた豊田商事の社長らを逮捕
92・6 警視庁が、会員権を乱売して約5万2000人から約1200億円を集めた茨城カントリークラブの前社長らを逮捕
97・1 警視庁などが高利を売り物にした商品で2650人から計約93億円を集めたオレンジ共済の実質的主宰者の参院議員(当時)らを逮捕
2 警視庁が高率の配当を売り物に約1万 2000人から約363億円を集めた「経済革命倶楽部」(KKC)の会長らを逮捕
坂井議員「ヤミ献金」事件冒頭陳述要旨
掲載日2003年06月27日
<共>
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〈坂井議員「ヤミ献金」事件冒頭陳述要旨〉 (1面参照)
東京地裁で二十六日開かれた衆院議員坂井隆憲(55)、政策秘書塩野谷晶(38)両被告の初公判での検察側冒頭陳述要旨は次の通り。
【政治資金規正法違反】
人材派遣会社の旧「キャリアスタッフ」元社長は一九九六年六月、知人の経営コンサルタント業者から、経営危機にある主力銀行を変えるよう助言され、紹介された坂井被告に都市銀行などの紹介を依頼した。坂井被告は了承。同年十二月ごろまでに別の銀行が主力となることを引き受けた。
元社長は業者から勧められ、今後も便宜を図ってもらうため坂井被告の政治活動に寄付する必要があると考え、毎月現金百万円を寄付し、事務所賃料を負担することとした。坂井被告も了承したが、政治資金規正法の量的制限に違反すると認識していたため、資金管理団体「隆盛会」の収支報告書に記載しないこととし、塩野谷被告に説明。塩野谷被告も領収書を発行しないこととした。
元社長は九九年十二月、同法改正で企業献金が禁止されるため寄付中止を申し入れたが、坂井被告から継続を求められ、渋々続けた。
元社長は九七年一月から都内のビルの賃料や備品のリース料を負担する形で坂井被告への寄付を開始。元社長側は九七年五月、坂井被告の働き掛けで二千八百万円の株売却益を得たため、現金二千万円を寄付した。
九七年五月ごろ、同社に健康保険料等の未納が二億―三億円あることが判明。追加納付の減額を働き掛けてもらうよう坂井被告に依頼。最終的に六千八百万円となったため、同年九月、現金一千万円を渡した。
同社関連の職業訓練会社「日本マンパワー」が秘書給与の肩代わりをしていたが、業績悪化を理由に寄付を減少させたため、坂井被告は二〇〇一年九月ごろ、日本マンパワー側に不満を漏らし「あなたの所の仕事をできなくすることもできるんだ」と増額を求めた。
▽犯行状況
九八年二月、九七年分の収支報告書の作成に当たり、両被告はキャリアスタッフなどからの寄付を会計責任者に明らかにしなかったり、記載しないよう指示した。
会計責任者から収支対照表等を提示された塩野谷被告はキャリアスタッフなどからの寄付が九七年分の収入から除外されていることを確認。坂井被告は、会計責任者に収支対照表等の内容に沿って収支報告書を作成、提出するよう指示した。
このように両被告は九八年三月、隆盛会の寄付収入から約六千三百十六万円を除外させ、収入総額が約四千六百二十六万円と虚偽の記入をさせ、収支報告書を自治大臣に提出させた。
前年同様に両被告は九九年三月、九八年分から約三千二百九万円の収入を除外、収入総額が約四千三百九十九万円であると虚偽の記入をさせた。
両被告は二〇〇〇年三月、九九年分から約三千六百二十四万円の収入を除外させ、収入総額が約五千四百九十九万円と虚偽の記入をさせた。
両被告は〇一年三月、〇〇年分から約二千六百十三万円の収入を除外させ、収入総額が約四千二百二万円と虚偽の記入をさせた。
両被告は〇二年三月、〇一年分から計約千三百七十万円の寄付やパーティー券収入を除外、収入総額が約三千二百五十一万円と虚偽の記入をさせた。
塩野谷被告は〇三年一月、経営コンサルタント業者が所得税法違反により逮捕された報道に接し、政治資金規正法違反事件の捜査が及ぶことを恐れ、秘書に「まずいものは処分しましょう。代議士も了解していることだから」と指示し、〇二年以前の支出簿、収支対照表などをシュレッダーで廃棄した。
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【詐欺】
坂井被告は一九九五年六月ごろ、当時の政策担当秘書が退職したため、秘書給与の一部を充てていた事務所経費が不足すると考え、政策担当秘書の資格がある公認会計士を九五年十月から名目上の秘書に採用した。
この秘書の名義貸しは九六年三月までの約束だったため、塩野谷被告は面識のあった別の公認会計士の男性に三月下旬ごろ「決して損はさせない」などと名義貸しを依頼し、男性は承諾。六月二十日ごろ、議員会館の事務所で坂井被告も直接依頼した。
男性は六月に秘書資格の認定を受け、塩野谷被告は七月下旬ごろ、衆院から支給される給与の45%相当額を名義借り料として支払い、残額を坂井被告が取得することで男性の承諾を得た。六月下旬ごろ、秘書採用届を衆院議員課に提出、七月から十月まで四回にわたり、給与などとして計約百六十万円を男性の口座に振り込ませ、詐取した。その間、男性は公認会計士の業務を続け、秘書としては一切働いていない。
九六年十月の総選挙で坂井被告は再選された。坂井被告らは男性に引き続き名義貸しを依頼し、同様に十一月から九九年十一月まで四十九回にわたり、給与などとして男性の口座に振り込まれた計約二千百七十五万円を詐取した。九八年十二月には中島洋次郎衆院議員の秘書給与詐欺事件があり、男性は名義貸しをやめたいと申し出たが、坂井被告らは「今やめたらかえって不自然。逆にいろいろ取りざたされるので困るんだよね」などと継続を承諾させた。
さらに男性が名義貸しをやめたいと申し出てきたことから、両被告は解職手続きを取らざるを得ないと考え、塩野谷被告が後任に就くことにした。両被告は九九年九月中旬ごろ、名義借りを同月三十日で打ち切り、衆議院から議員秘書退職手当を詐取することとし、議員秘書解職届を提出して共謀が成立した。
塩野谷被告は同月下旬ごろ、内容虚偽の解職届を作成し、同月二十八日ごろ、坂井被告が男性を政策担当秘書として採用していて解職したように装い、解職届を提出。退職手当支給に必要な手続きや決裁を行わせ、十一月四日と三十日、退職手当などとして計約九十三万円を名義貸しの男性の預金口座に送金させ、だまし取った。
両被告は秘書給与等の45%を名義借り料として、名義貸しの男性が指定した預金口座に計約千百四十八万円を送金。残額の約千二百八十一万円は、塩野谷被告が管理し、坂井被告の事務所経費などとして使ったほか、同被告の個人的な借入金の返済などに充てた。名義貸しの男性は今年四月九日、受け取った金を衆議院事務局に返納。両被告は返納していない。
ヤミ献金疑惑新たに4000万円
掲載日2003年03月28日
<共>
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〈ヤミ献金疑惑新たに4000万円〉
衆院議員坂井隆憲容疑者(55)のヤミ献金事件で、逮捕容疑となった約一億二千万円のほかに坂井容疑者側が複数の後援企業から受け取っていた資金のうち、約四千万円がヤミ献金に当たる疑いが強いことが二十七日、関係者の話で分かった。
東京地検特捜部も把握しているもようで、拘置期限の二十八日、これを加えて坂井容疑者を政治資金規正法違反の罪で起訴するとみられる。既に起訴した政策秘書塩野谷晶被告(38)の訴因(起訴事実)も変更する。
坂井容疑者は、一九九七―二〇〇一年に人材派遣会社の旧「キャリアスタッフ」(東京)など五社から受けた計約一億二千万円の献金を資金管理団体「隆盛会」の収支報告書に記載しなかったとして、逮捕された。
政策秘書を起訴
掲載日2003年03月25日
<共>
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〈政策秘書を起訴〉
衆院議員坂井隆憲容疑者(55)のヤミ献金事件で、東京地検特捜部は二十四日、人材派遣会社などからの計約一億二千万円の献金を政治資金収支報告書に記載しなかったとして政治資金規正法違反の罪で、政策秘書塩野谷晶容疑者(38)を起訴した。
特捜部はさらに、起訴事実以外に数千万円の献金を隠し収支報告書に記載していなかったとみて捜査。坂井容疑者については拘置期限の二十八日、この数千万円を加えて起訴する方針で、塩野谷被告の訴因(起訴事実)も変更する。
塩野谷被告と一緒に逮捕された中山求・元公設第二秘書(51)は「関与の程度が低い」として処分保留で釈放した。近く起訴猶予とする見通し。
起訴状によると、塩野谷被告は坂井容疑者の指示を受け、一九九七―二〇〇一年に人材派遣会社・旧「キャリアスタッフ」(東京)など五社から受けた計約一億二千万円の献金を資金管理団体「隆盛会」の収支報告書に記載しなかった。
献金の内訳は、毎月の百万円提供など現金が約七千八百万円で、事務所経費の肩代わり約三千百万円、秘書給与の肩代わりや乗用車提供の約千百万円。関係者によると、塩野谷被告はこれらの献金の不記載を了承していたことを認める供述をしているという。
起訴事実のほかに、特捜部が収支報告書に記載されていないとみている献金は、坂井容疑者が九七年にキ社側から受け取ったとされる千三百万円や、複数の後援企業による計一千万円以上の秘書給与肩代わりなど。
坂井議員ヤミ献金事件、政策秘書が関与供述
掲載日2003年03月19日
<共>
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〈坂井議員ヤミ献金事件、政策秘書が関与供述〉
衆議院議員坂井隆憲容疑者(55)のヤミ献金事件で、政策秘書塩野谷晶容疑者(38)が東京地検特捜部の調べに対し、人材派遣会社側からの献金について、政治資金収支報告書に記載しない方針を了承していたことを認める供述を始めたことが十八日、関係者の話で分かった。
塩野谷容疑者はこれまで「自分は会計責任者ではないので知らない」と関与を否認していた。
関係者によると、人材派遣会社・旧「キャリアスタッフ」側から毎月百万円の献金が始まった一九九七年ごろ、資金管理団体「隆盛会」の会計責任者だった女性秘書が「キ社側が『表に出せない金』と言うので、収支報告書に載せなくていいですね」と塩野谷容疑者に確認。
同容疑者は「そうですね」と了承していたことを認めているという。
人材派遣会社へ献金要求書、坂井議員事務所が作成
掲載日2003年03月15日
<共><自>
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〈人材派遣会社へ献金要求書、坂井議員事務所が作成〉
衆院議員坂井隆憲容疑者(55)の政治資金規正法違反事件で、人材派遣会社に対する献金要求について、政策秘書塩野谷晶容疑者(38)が東京地検の調べに、坂井容疑者の事務所が「献金要求書」を作成していたことを示唆する供述をしていることが十四日、分かった。
接見した弁護士が明らかにした。それによると、塩野谷容疑者は「自分が作ったかもしれないし、事務所の職員が作ったかもしれない」とし、坂井容疑者は知らないと供述しているという。
要求書は二〇〇〇年に人材派遣会社の旧「キャリアスタッフ」側が献金の中止を申し出た際、坂井容疑者側が秘書給与肩代わりなどの要求を具体的に記載し、キ社側に送っていたとされる。
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〈辞職勧告決議案、武雄市でも可決〉
武雄市議会(藤山馨議長)は十四日、政治資金規正法違反容疑で逮捕された衆院議員坂井隆憲容疑者の議員辞職を求める決議を全会一致で可決した。
決議は、事件について「選挙民である県民に対する背信行為であり、国民の政治への信頼を失墜させるもの。政治的、道義的責任は極めて重大」とし、責任の明確化と議員辞職を求めている。
坂井議員、派遣法改正で癒着
掲載日2003年03月07日
<共><自>写有
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〈坂井議員、派遣法改正で癒着〉
資金管理団体のヤミ献金事件で六日、逮捕へと追いつめられた坂井隆憲衆院議員(55)=自民、佐賀1区=。献金側の人材派遣会社との癒着は、労働政務次官の肩書きを手にした時期と重なる。その後、一兆円産業へと成長していく業界。口利きの見返りを受けながら、厚生労働委員長へとステップアップしていく議員。絵に描いたようなもたれ合いの構図解明に向け、捜査は核心に迫る。(1面参照)
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大蔵省出身の坂井議員は一九九〇年の衆院選に初当選し政界に転身。社会労働委員会委員などを経て昨年十月には厚生労働委員長に就任した。
「自民党労働族の大物とされる甘利明元労相らと比べ、どの程度の影響力があったのか…。目立った実績は見当たらない」と同僚議員。
一方、衆院の厚生労働委員長として理事懇談会を招集する際には「様子を見てから」と日程調整を求めた委員に対し「すぐやってくれ。職権でもやる」と強引な面も。
労働政務次官だった九六年、リストラや人件費削減で正社員に替わる労働力確保に向け派遣法が改正された。人材派遣業者が対象となる職種が広がり、業界は一兆円以上の市場規模に発展した。
旧労働省幹部は「政務次官就任時には改正法案が固まっており、坂井議員は制度がよく分からない状態で影響力の使いようがなかったのではないか」と振り返る。
しかし、当時を知る族議員は「多くの業者が陳情攻勢をかけ、役人への口利きを求めてきた。雇用対策などの補助金問題では、坂井議員が旧大蔵省にも働き掛けたといわれ、この件で何もなかったはずはない」と証言。
事件発覚後「金集めには強引で、坂井議員ならやりかねない」と漏らす同僚議員もいる。
厚生労働委員長に就任し「福祉をやりたい」と新たな分野への意欲を示した坂井議員。しかし、厚労省幹部は「政策提言より、支持者から頼まれたことを役所に仲介してくることが多かった」と口利きが仕事の中心だった実態を明かした。
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〈ヤミ献金、銀行への口利き原点〉
「そんな買い取り額じゃだめだ」。坂井隆憲議員(55)に怒鳴られ、ある都市銀行の役員は震え上がった。旧北海道拓殖銀行が経営破たんの危機に陥っていた一九九六年。人材派遣会社の旧「キャリアスタッフ」がメーンバンクを拓銀から、この都銀に替えるため、保有する拓銀株を売却する交渉を進めていた。
都銀言い値の買い取り額に満足できず、増額を主張するキ社。そこへ突然、乗り出してきたのが大蔵省出身で当時労働政務次官の坂井議員だった。どう喝が効いたのか、都銀はより高い値段で株買い取りに同意した。
「この時の『口利き』が、今回のヤミ献金事件の原点」。坂井議員の知人はそう振り返る。
キ社の当時の小野憲社長(71)は「成功報酬」として坂井議員に一千万円を提供。坂井議員から「今後もお付き合いを」と言われて「これからも便宜を図ってもらえる」と期待し、以後、キ社は毎月二十五日前後に百万円を献金するようになったという。
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〈大口献金、代議士が窓口〉
坂井隆憲衆院議員の東京事務所の元秘書が六日、佐賀新聞社の取材に応じ、坂井議員自らが献金側のトップと接触していた可能性が大きいと証言し、不正献金の背景には労働者派遣法改正などをめぐる働きかけがあったことを示唆した。
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―不正献金で主導的な役割を果たしていたのはだれか。
(政策秘書の)塩野谷晶容疑者は政治資金を総括し、代議士とは常に二人三脚で活動していた。ただ、大口の献金者に対しては代議士自らが窓口になっており、人材派遣会社など献金側のトップと直接、会っていたようだ。
―これらの会社とはいつから接触があったのか。
献金が始まった九七年ごろからと思う。当時、労働者派遣に関する法律など条件が整備されておらず、大蔵省出身で、労働政務次官を務めた代議士は使い勝手がよかったのではないか。
―坂井議員が法改正などで人材派遣会社などに有利になるよう官庁に働きかけていたのか。
今思うといくらか思い当たることもあるが、捜査中なので話せない。
―議員の逮捕許諾請求が出されたが、どう思うか。
金権体質ではあったが、功績も残した人。功績を汚さないよう自ら進退を決めてほしい。ただ、この事件に関しては佐賀の事務所は一切、知らなかったことを強調したい。
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=3・6ドキュメント=
8時30分ごろ 足取りがつかめない坂井隆憲衆院議員に接触するため、佐賀空港や佐賀市の後援会事務所、自宅に報道陣が詰めかけたが、坂井議員は姿を見せなかった
8・50ごろ 井本知事が知事室で「市民の政治離れにつながりかねない。(坂井議員)ご本人に直接、説明していただきたい」とコメント
9・25 東京地検特捜部が政治資金規正法違反の疑いで坂井議員の逮捕状請求
10・50ごろ 東京地裁が逮捕相当と認め、係官が逮捕許諾要求書を首相官邸に提出
11・00ごろ 参院予算委で小泉純一郎首相が「法に違反すれば逮捕は当然のことで、どなたも異議がないと思う」と発言
11・10 東京地検の笠間治雄次席検事が記者会見。「法が要請する政治資金の開示に真っ向から反している」
12・10ごろ 森喜朗前首相が自民党森派総会で「大変残念。秘書の行動は第一に政治家に責任がある」とあいさつ
12・35ごろ 持ち回り閣議での決定を受け、内閣が綿貫民輔衆院議長に逮捕許諾を請求
14時ごろ 厚生労働省の沢田陽太郎事務次官が定例会見で「(坂井議員の)政務次官の在任と労働者派遣法との直接的な関係が、事件の視野に入っているのかどうか分からない」
15・35 坂井議員が自民党執行部に「一身上の都合により離党します。よろしく取り扱い願います」との離党届を提出
18・30 衆院議院運営委員会が秘密会を開会。坂井議員は出席せず
19・55 議会運営委員会理事会終了
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〈日本マンパワーHPに釈明文書〉
職業訓練会社「日本マンパワー」(東京)は六日までに、インターネットのホームページに「政治資金提供に関するおわびと事情説明」とする文書を掲載した。
文書で、同社は「一九九六年秋、当時社長だった小野憲会長が政治家に相談を持ち掛けたことをきっかけに坂井議員を支援することになった」と説明。
「会長の議員に対する個人的な支援で、資金は会長が個人で所有する別の二社が支出した」と指摘し「日本マンパワーから議員に対し口利きに類する依頼はなかった」としている。
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〈統一選へ逆風懸念、自民県連〉
「イメージダウンだ」―坂井隆憲衆院議員の逮捕許諾請求の手続きが進められた六日、自民党県連の幹部や自民の公認を受けている県議からは、四月に迫った統一地方選での「逆風」を懸念する声が相次いだ。
自民県連は県議選で三十八人を公認、推薦している。この日午後、記者会見した富崎一巳幹事長は「残念だ。統一選への影響は覚悟しておかないといけない」と沈痛な面持ち。自宅には同日午前、坂井氏本人から「大変ご迷惑をかけた。今日中に離党届を出したい」と電話があったことを明かしながら「離党で一件落着とはならないだろう」と述べた。
県議選で公認を受けている県議の一人は「自民イコール坂井氏ではない。個人の政治姿勢の問題」としながらも、長崎県知事選をめぐる献金事件に続いて起きた事件に「迷惑千万。これから自民から出て選挙を戦う者には痛手だ」と厳しい口調。さらに「われわれの選挙だけではない。坂井氏と同じ派閥の小泉さんだって、国会を乗り切れるのか」と今後の政局への影響も口にした。
一方、二十七日告示される知事選で自民は異例の四人支持としているが、支持を受けた立候補予定者の中には、坂井氏からの激励文を外す事務所も。ある事務責任者は「身近な県内のことなので、影響がなければいいが…」と語った。
事件の影響を心配する声は、他の政党にも広がっている。
社民党県連の緒方克陽代表は「自民の金権体質は有権者も当然分かっているはず。ただそれが政治や政党全体への不信につながるのが心配で残念」と懸念する。
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〈15日までに辞職なら補選は来月27日〉
坂井隆憲氏が逮捕され、議員を辞職した場合は、衆院佐賀1区の補欠選挙が行われる。辞職が十五日までなら、補選は統一地方選の市町村長・議員選挙が行われる四月二十七日になる。
公職選挙法によると、国会議員の辞職や死亡による補選は、四月と十月に実施。欠員が三月十五日までに生じた場合には四月の第四日曜日、三月十六日以降なら十月の第四日曜に行われる。
このため、坂井氏が十五日までに辞職した場合の補選は四月十五日告示、同二十七日投票の日程で、区割り変更前の選挙区で行われる。
この場合、同十三日投票の知事選に立候補した人は、統一地方選特例法の重複立候補禁止規定にかかるため、補選には立候補できない。
辞職しなかった場合、坂井氏は衆院が解散するか、来年六月二十四日の任期満了を迎えた時点で自動的に失職する。
●前閣僚への献金・公選法違反疑惑
発行日=2003年01月01日
朝日新聞 ソース=朝刊
発行社=東京
選挙「だから献金」 業者「軍資金頼まれた」 4閣僚側に献金
国の公共工事の受注業者が、一部の閣僚の選挙で献金していた疑いが、朝日新聞の調査で浮かび上がった。公選法(特定寄付禁止)違反の疑いもあるこうした献金は、国政選挙のどこまで広がっているのだろうか。「土建国家ニッポン」は、政治献金の規制強化や情報公開など様々な浄化の波に洗われながらも、いまだに生き残っているのか。(1面参照)
■大島農水相
「私が選挙事務所に持っていって、向こうの責任者に渡した。選挙戦だから出した」
総選挙公示3日後の00年6月16日に大島農水相の自民党支部に200万円を寄付した青森県八戸市の建設会社社長は振り返る。
過去5年間で同社が大島氏側に献金したのはこのとき1回だけ。「ほかの年は選挙がないんだもの」
同じ日に300万円を寄付した建設会社の社長は「大島さんは青森県で一番クリーンな政治家だと思っている。いわゆる、お金を持ってない人。そういうことで、頑張ってもらわなければダメだという気持ちで、選挙のときに献金した記憶がある」と語った。
衆院解散5日後の6月7日に500万円を寄付した建設会社の専務は、公選法の特定寄付禁止規定について聞いて「その法律は昔からあったんですか」と絶句した。「我々よりゼネコンさんのほうがもっと激しいはず。全国を調べてほしい」
同社は以前から、ほぼ隔月で8万円ずつ年間48万円を大島氏側に寄付してきた。その中で、500万円の寄付は突出して額が大きい。
専務は「選挙時に金を出すのはまずいのではないか」との質問に「ふだん出せるものじゃないから。何もないときに『がんばってください』はないでしょ。それこそ変に取られる」と話した。
献金を受けた自民党支部の所在地は大島氏の八戸事務所。総選挙当時の担当者はすでに亡くなっていた。大島氏の地元秘書は当初、「その年はたしか選挙なんかもあったし」「選挙の年にある程度多くなるのは当然。選挙活動費としての献金があるから」と語ったが、その後「選挙に関する献金ではない」と見解を変えた。
■鈴木環境相
鈴木環境相は、当初は「選挙の前だったので、選挙で応援してくださるということでいろいろな団体が応援してくださった。その一環で建設会社からも寄付をいただいた」と説明していたが、その後「あくまで政党活動に対する献金だった」とした。
100万円を寄付した建設会社会長は「地元後援会から『軍資金が足りなくて困っている』と頼まれ、陣中見舞いのつもりで献金した」と、献金が選挙支援であることを認める。前々回96年の総選挙でも同じ趣旨で同額を寄付したという。
岩手県内780社が加盟する県建設業協会役員も務める会長は「代議士に頼んで仕事をもらっているわけではない」という。
解散2日前に50万円を寄付した三陸地方の業者は「鈴木さんにぜひ当選してもらいたいという趣旨の献金だ」。120万円を寄付した業者は「業界団体からの要請で出したと思う。村八分になると困るから。カネが選挙に使われたかどうかは知らない」と話した。
■片山総務相
片山総務相の自民党支部に寄付した岡山県内の8社は、1社をのぞき、95年から00年まで支部や資金管理団体の収支報告書に寄付の記載がない。
その1社、同県津山市の土木会社も、前回の寄付は参院選のあった95年の50万円だ。同社役員は「95年も01年も選挙に合わせた寄付だろう」と話した。01年の寄付については「自民党関係者に参院選への協力を要請され、片山先生の政治理念に賛同して寄付した」と説明。公選法の規定については「まったく知らなかった。今後は注意したい」と釈明した。
「地元出身の大臣だから寄付した。何に使われたかは知らないが、選挙前ならそういうことで寄付したのかもしれない」(倉敷市の建設会社社長)、「選挙の支援というつもりはまったくなかった。地元の自民党関係者に『金がない』と頼まれ、同業者にも声をかけて寄付を集めた」(津山市の建設会社社長)という声もあった。
●地方では「政」が要求も 立件へ捜査進む 長崎県知事選、自民県連事件
公選法の特定寄付禁止規定をめぐっては、長崎地検が昨年12月、同年2月の長崎県知事選にからむ容疑で自民党県連などを家宅捜索し、立件に向けた捜査を進めている。4閣僚のケースとは異なるが、地方政治を舞台に「政」が「業」に選挙資金を求める様子が、徐々に明らかになってきている。
調べなどによると、自民党長崎県連から01年11月、「知事選で金がかかる。支部として5千万円をとりまとめてほしい」と県建設業協会長崎中央支部に寄付の依頼があった。支部は断ったが、「(負担割合は)受注実績に応じるのも一つの基準」と県連側と申し合わせたとされる。
県連の浅田五郎幹事長(当時、先月29日に辞任)らは翌12月上旬と下旬の2回、福岡市にあるゼネコンの支店など37〜38社を訪ね、知事選を引き合いに寄付を要請した疑いが持たれている。
支部は、過去4年間に県工事を受注した社と、その実績をまとめたメモを県連に提供した、と認めている。また、浅田前幹事長らが支店などを回った際に、建設業者から「訪問日程表」が提供された疑惑も浮上した。
政治資金収支報告などによると、同月〜翌1月に、大手・中堅ゼネコンの7社などから、少なくとも6500万円の企業・団体献金が一気に県連に集まった。
「業界ぐるみの県連との癒着」と地検は疑いを強め、昨年12月上旬から中旬にかけて7社の本社を捜索、同月26日には県連事務所なども捜索した。浅田前幹事長は30日に容疑を認めたという。
◇「御利益政治」増加を裏付け
新藤宗幸・千葉大学教授(政治学)の話 これは氷山の一角で、「御利益政治」が全国で以前にも増して行われている表れでしょう。不況が長引いて民間需要が落ちている中、なおさら公共投資の取り合いになっている。地方では公共事業は「地場産業」。建設業者にとっては、いかに官からカネを取るか、いかに地元議員やその秘書に動いてもらうかがますます大事になりつつある。
以前から言われてきた「土建国家ニッポン」が、より地域の末端まで構造化されてきているのではないか。
◇動機一部でも公選法に抵触
元最高検検事の土本武司・筑波大名誉教授(刑事法)の話 選挙に関して特定の者から寄付を受けると、当選後に特別な扱いをする恐れや、行政や政治がその寄付者の影響を受ける恐れが出てくる。公選法の特定寄付禁止の規定は、こうした事態を防ぐため、選挙の実態だけでなく「見た目」でも公正さを保つよう求めたものといえる。
条文中の「選挙に関して」については、ほかの目的が併存していても、一部でも動機として選挙があれば該当すると解釈されている。
●仲村正治・衆院議員政策秘書の選挙違反・逮捕事件
発行日=2003年02月21日
朝日新聞 ソース=朝刊
発行社=西部
仲村代議士の秘書逮捕 宜野湾市長選の特定寄付事件 【西部】
沖縄県宜野湾市長選をめぐる違法献金事件で同県警の捜査本部は20日、県選管に提出する政治資金収支報告書にうその内容を書いたなどとして、衆院沖縄2区選出の仲村正治代議士(自民)の政策秘書で、同氏が支部長を務める党2区支部の会計責任者、金城暁容疑者(49)=那覇市牧志3丁目=を政治資金規正法違反(虚偽記載など)の疑いで逮捕し、那覇市古波蔵の同支部事務所などを家宅捜索した。
調べによると、金城容疑者は同市長選で当選した比嘉盛光氏の後援会幹部と共謀。告示前の01年6月中旬から7月初旬にかけて、実際は県内の建設業者など約90社から約2200万円の献金が後援会に寄せられたのに、後援会の政治資金収支報告書には記載せず、かわりに仲村代議士が支部長を務める自民党沖縄2区支部や仲村正治後援会が献金を受け入れたように、それぞれの報告書に虚偽の記載をした疑い。
政治資金規正法は、政党の本部・支部以外の政治団体が企業献金を受け取ることを禁じており、比嘉市長の後援会は企業献金を受け取れない。金城容疑者は党2区支部の領収書を業者に発行し、献金が正当に処理されたように見せていた。
金城容疑者は「間違いありません」と容疑を認め、「比嘉後援会側に頼まれた」という趣旨の供述をしているという。
同市長選では、献金業者の一部が市の公共事業を受注していたことが判明。比嘉後援会会長の諸喜田哲夫容疑者(75)ら後援会幹部3人と建設会社社長が4日、公選法違反(特定寄付の禁止)の疑いで逮捕されている。
捜査本部は、比嘉後援会が受け取った約2200万円のうち、4社400万円分については悪質として、諸喜田容疑者らを政治資金規正法違反(政党以外の企業献金の受け取り禁止)の疑いで近く追送検する。
県選管に提出された政治資金収支報告書によると、01年6月1日から市長選の投開票日だった7月15日にかけて、党2区支部には県内の建設業者などから約1945万円の献金が報告されている。6月25日には、同支部から仲村後援会に1000万円が寄付され、仲村後援会から比嘉後援会に250万円が渡ったように記載されていた。
○「捜査見守る」 自民沖縄県連
仲村正治代議士が会長を務める自民党沖縄県連は20日夜、緊急の役員会を開いて対応を協議した。幹事長の比嘉勝秀県議は「党支部の関係者が逮捕される由々しき事態に至ったことは誠に遺憾だ」と、言葉少なだった。
比嘉幹事長は「逮捕容疑については、捜査の行方と法律の専門家の判断を見守りたい」と話した。
◇連座制拡大を
元最高検検事の土本武司・筑波大名誉教授(刑事法)の話 本当は自民党支部に入っていない資金を入ったと見せかけるやり方は、手が込んでいて珍しい。市長後援会と相互に十分連絡を取りあい、複数の政治資金報告書の整合性を取らないと成り立たない。違法な献金を隠すための犯行だとしたら、悪質だ。再発防止のため、綿密な捜査で事実関係を浮かび上がらせる必要がある。事件の発端になった公選法の特定寄付の禁止違反は、いたるところで起きている。連座制適用の違反事実を拡大し、特定寄付の禁止も加えるべきだ。
発行日=2003年02月22日
朝日新聞 ソース=夕刊
発行社=西部
仲村代議士、関与を否定 秘書逮捕で会見 【西部】
沖縄県宜野湾市長選を巡る違法献金事件で、政策秘書が政治資金規正法違反の疑いで県警に逮捕された衆院沖縄2区選出の仲村正治代議士(自民)は22日、那覇市の事務所で会見し、「私自身、市長選にはかかわっていないし、違法なことはしていない。秘書がかかわっていたことも知らなかった」と述べ、事件への関与を否定した。
仲村代議士は「秘書は比嘉後援会から公選法などに基づく寄付の集め方について説明して欲しいと頼まれただけだと聞いている」と話した。
仲村衆院議員の政策秘書を逮捕*宜野湾市長選*資金規正法違反で
2003.02.21 北海道新聞朝刊全道 35頁 サ社 (全338字)
二〇〇一年七月の沖縄県宜野湾市長選に絡む違法献金事件を捜査している同県警は二十日、仲村正治衆院議員(自民)の政策秘書金城暁容疑者(49)=那覇市牧志=を政治資金規正法違反の疑いで逮捕した。また自民党沖縄2区支部(支部長・仲村議員)や後援会事務所などを家宅捜索した。
金城容疑者は同支部と仲村後援会の会計責任者。この事件をめぐっては先に現職の比嘉盛光市長の後援会幹部ら四人が公選法(特定寄付の禁止)違反の疑いで逮捕されている。
調べによると、後援会幹部らは同年六月中旬、市内の選挙事務所に市発注工事の受注業者など数十社を集めて寄付を要求。選挙直前の六月中旬から七月上旬にかけ、約九十社から約二千二百万円を受け取ったとされ、このうち三百万円が公選法違反に当たるとして逮捕された。
北海道新聞社
仲村議員秘書を逮捕 規正法違反容疑
2003.02.21 朝刊 1頁 1面 (全469字)
二〇〇一年七月の沖縄県宜野湾市長選をめぐる公職選挙法違反事件で、沖縄県警特別捜査本部は二十日、政治資金規正法違反(虚偽記載、政党・政治資金団体以外への企業献金)の疑いで、自民党沖縄県第2区支部の会計責任者で仲村正治衆院議員(同党沖縄県連会長)の政策秘書、金城暁容疑者(49)=那覇市牧志三=を逮捕した。捜査本部は同日、仲村後援会事務所など数カ所を家宅捜索した。
公共工事の受注企業から選挙に関する献金を禁じた公選法に違反したとして、再選された比嘉盛光市長の後援会長、諸喜田哲夫容疑者(75)ら四人が逮捕されたが、金城容疑者は、違法献金が政党支部などを経由したように見せ掛ける経理上の処理をしていたとされる。
金城容疑者は「間違いありません」と容疑を認めており「(比嘉市長の)後援会から頼まれた」と供述しているという。
調べでは、金城容疑者は同年六月中旬から七月上旬にかけ、諸喜田容疑者らと共謀、建設業者四社から計四百万円の寄付を受け取り、昨年二月中旬、比嘉後援会の政治資金収支報告書に第2区支部などを通したように見せ掛ける虚偽の記入をした疑い。
中日新聞社
●小野寺五典氏(衆院選立候補者)の公選法違反事件
宮城6区支部長に小野寺五典氏決定/自民県連
自民党県連(三塚博会長)は28日の総務会で、次期衆院選の6区公認候補となる6区支部長に、元衆院議員で専門学校理事長の小野寺五典氏(43)を充てることを決めた。
小野寺氏は「責任の重さを痛感している。公選法違反で議員を辞職した事実を深くかみしめ、有権者の信頼を築けるよう努力したい」と語った。
小野寺氏は1997年の6区補欠選挙で初当選。6区内の有権者に線香セットを配った公選法違反(寄付行為の禁止)の責任を取り、2000年1月に議員辞職。翌2月に罰金40万円、公民権停止3年の略式命令が確定、今年2月に公民権を回復した。
総務会では、矢本町長選(6月10日告示、15日投票)に立候補する予定の前職の大森栄治郎氏(64)を推薦することも決めた。大森氏の任期は今月4日に満了したが、町長選は公選法の特例措置で町議選と同時に行う。
河北新報社
衆院宮城6区・自民公認候補/小野寺五典元議員が意欲
公職選挙法違反(寄付行為の禁止)事件の責任を取り、2000年1月に議員辞職した、元自民党衆院議員(宮城6区)で、専門学校理事長の小野寺五典氏(43)は22日、同党県連に次期衆院選に宮城6区から党公認候補として立候補したいとの意向を示した。
小野寺氏は「自らの政治倫理の問題を自問自答してきたが、初心に帰り、政治の場で地域に償うしかないと決心した。(選挙で)有権者の判断を厳粛に受け止めたい」と述べ、立候補に強い意欲を見せた。
小野寺氏は、菊池福治郎元自民党衆院議員の公設秘書による公選法違反(買収)事件に伴う1997年12月の6区補選で初当選。しかし、任期中に選挙区内の有権者に線香セットを配った公選法違反事件に問われ、議員辞職した。2000年2月には罰金40万円、公民権停止3年の略式命令が確定し、今年2月に公民権を回復した。
小野寺氏の辞職に伴う2000年2月の6区補選では、前回補選で小野寺氏に敗れた、民主党公認の元衆院議員大石正光氏(58)が当選。その後、6月の衆院選では、大石氏が自民、共産、社民、無所属の4候補を破り、5選を果たした。
河北新報社
自民、宮城衆院6区候補 選考本格化/元議員・小野寺五典氏が有力
公選法違反で辞職/2月に公民権回復/党県連は「白紙」、月末にも決定へ
復帰に拒否反応も/「選択肢ほかにない」
統一地方選を終え、自民党県連(三塚博会長)は連休明けから、次期衆院選宮城6区の公認候補となる、県6区支部長の選考を本格化させる。6区は県内で唯一、自民党の公認候補が決まっていない選挙区。「人選は一から始める」(党県連)というが、公選法違反(寄付行為の禁止)で停止された公民権を2月に回復した元衆院議員小野寺五典氏(42)が有力視される。県連は6月8日の定期大会で公認候補をお披露目したい考えで、今月末が実質的なタイムリミットだ。
衆院解散の時期をめぐっては、「9月の自民党総裁選前」という見方は少なくなったが、各党とも「年内解散」を前提に態勢固めを進めている。県連幹部は「仮に秋口に解散しても対応できるよう、早急に衆院選への態勢を整える必要がある」(村井嘉浩幹事長)との認識で一致している。
統一選が終了し、県議会の会派構成も固まったことを受け、6区内の党所属県議は8日、迫町で会合を開き、公認候補の選考作業に着手する。県6区支部長代行の高橋長偉県議は「候補者をどういう過程で決めるのか、全くの白紙状態で始める。5月中に結論を出したい」と述べ、現時点では具体的な候補者が念頭にないことを強調する。
政治家や秘書のカネをめぐる不祥事が後を絶たず、政治倫理が問われている中、小野寺氏の政界復帰には拒否反応があるのも確かだが、それでも「有力候補」といわれる理由がある。
自民党県議の1人は「小野寺氏は有権者の受けも良く、6区で最も勝てる候補。党県連は白紙と言うが、現実には彼以外に選択肢はない」と解説する。
小野寺氏は1997年12月の衆院6区補選で初当選したが、選挙区内の有権者に線香セットを配った公選法違反の責任を取り、2000年1月に辞職。翌2月には罰金40万円、公民権停止3年の略式命令が確定した。
今年2月に公民権を回復してからは、支持者へのおわび行脚や統一選での応援など、政治活動を実質的に再開している。
次期衆院選6区には、前回(2000年6月)、当選した民主党現職の大石正光氏(58)、比例・東北で復活当選した社民党の菅野哲雄氏(54)の立候補が確実視されており、県内屈指の激戦区となる見通しだ。
河北新報社