沙帆里さんが描いた二人の似顔絵を持つ浅尾。28日に婚姻届を提出した=名古屋市内で(布藤哲矢撮影)
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中日・浅尾拓也投手(25)が結婚した。28日、会社員の沙帆里(さほり)さん(25)=旧姓古川、常滑市在住の公務員の長女=と婚姻届を提出した。高校の同級生で、紆余(うよ)曲折を経て10年越しの愛を実らせた。ドラゴンズ新世代の柱となる快速右腕が、私生活でもしっかりと身を固めた。
出会ってから10年が過ぎた。身に染みて分かった。「オレには彼女しかいない」。浅尾が決心した。結婚のお相手は沙帆里さん。愛知県立常滑北高(統合により現在は常滑高)の同級生だ。
高校1年で同じクラスになった浅尾と沙帆里さん。ここから10年間、告白、別れ、再会を繰り返すことになる。はじまりは高1のときだった。浅尾が告白して付き合い始めたものの、長く続かず、最初の別れは数カ月で訪れた。
高2のときはクラスが別々だった。3年生になり、再び同じクラスになった。「高3の途中からずっと好きで、片思いしてました。3回、告白しました。2回ふられて、3回目でやっと付き合ってくれました」。再び振り向いてくれたのは卒業式が終わった後、3月のことだった。
日本福祉大に入学した浅尾は野球にのめり込んだ。高校時代は捕手だった。甲子園は夢のまた夢。それほど熱くなれなかった。大学では投手になり、仲間と真剣に取り組むようになった。そのころ、沙帆里さんは美術を学ぶ大学進学を目指して浪人していた。2人の距離が広がり、2度目の破局となった。
再接近は浅尾のプロ1年目のシーズン途中だった。当時、沙帆里さんは東京で大学生活を送っていた。別れても連絡は取り合っており、今度は沙帆里さんから話を切り出した。3度目の交際が始まった。初めて1年以上続いた交際も、プロ2年目だった昨年9月末、3度目の破局を迎えた。
4度目のスタートは今年の5月ごろ。浅尾は自分の胸の内を静かに見つめていた。やっぱり沙帆里さんがいる。ほかの女性は考えられない。最後の告白。そしてついにゴールインを迎えた。
出会ったのは15歳のときだった。浅尾は知多の少年から「ドラゴンズのリリーフエース」へと成長していった。若く、揺れ動く感情に翻弄(ほんろう)されながらも、帰り着くのはいつも沙帆里さんのところだった。
10年間、一途(いちず)に思い続けたのは沙帆里さんだった。浅尾は語る。
「いつも自分だけを見てくれていました。そしてすごく気遣いができるんです。目上の方にもきちんとあいさつができる。目立ちたがり屋じゃないし、やさしいし、かわいいし…。それとすごくご両親を大事にしているんです。尊敬しています、人として」
べたぼれだ。今、沙帆里さんはアスリートの栄養補給を考えた料理の勉強を始めたところ。細身で、体重が落ちやすい浅尾を食事でもサポートするためだ。
幼なじみのような2人。来年から「夫婦」として一緒に生活を始める。挙式は来オフに行う予定。「やって、と言ったことは全部やってくれる。遅いですけどね。手際は悪いですけど、一生懸命にやってくれるんです」。手料理も、少々時間がかかったって構わない。10年待った。思いは貫いた。 (生駒泰大)
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