H : |
守る側っていうのは難しいんだよね…。
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K : |
しかしかつては…象徴的な方がいたじゃないですか?党的にはどうなのかは分からないですけど、キャラクターが強い人がいたじゃないですか。そういう人が、今欲しいですよね。
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H : |
まぁそうだね。それは確かにそうだ。…小泉さんを最後にしていなくはなった。
我々もちゃんと訴えかける事をしなくちゃいけない。今の民主党だけでは駄目だ、発展性がないと。
実際、科学技術予算だって「削ったって大した影響はないだろう」ってバンバン削ったらね、地道に研究してる人は路頭に迷うからね。そのお金がなかったら研究できないんだから。そういう事を平気でやっているって事は、誰も今のところ分かっていない。
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K : |
例えばその切られた技術者であったり、そっちの方から声が上がれば、…良いか悪いかは分からないですけど、今「八ッ場ダム」の件が話題になってますよね。地元から反対の声が起きてる、そういった声をあげている人達が今の民主党のやり方に対して、どれだけ「NO」を突きつけるのかなっていうのが今後の注目ですね。そこが見えてくるのが楽しみでもあり、もしこれで…機能するのなら民主党でいいのかな?という気もしますし。
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H : |
まぁそうですね、それは国民の判断で。
ただ農業だってね、個別農家コスト補償しますって言ってるでしょ?これは大変な事でね。コストを補償するっていうのは、製品が幾らで売れたか全部チェックして、そのコストは機械代だ、肥料代だ、飼料代だ、労賃が幾らかかったかって全部計算して、その差額は赤字だから補償するっていう事になるでしょ。
売値の高い良いものを作った人もいれば、大規模にして能率が良くなったけどデカい機械を買わなきゃいけないという人もいる。農家だって全部違うわけですよ。それを「コスト補償します」っていうのは「何を補償するんだ」と。掴み金で、じゃあ1農家10アールあたりで3万円配ればいいのかって事になるとね、決してそうじゃない。
それで本当にコストが補償されたら誰も真面目にやる人がいなくなっちゃう。
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K : |
新しい形の「ばら撒き」じゃないですか。
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H : |
そういう事をひとつひとつ正していかないとね。
公共事業の問題も「八ッ場ダム」の件が象徴的だけど、全部コンクリートで作ったものは悪であるって言って、道路はやらない…島根県なんてまだ山陰自動車道もないんだけど。建設中でやっとこれからっていうところで、本当に止めていいのかっていう事。
地方からは生活の問題が出てくるんですね。つまりまぁ一家の主婦みたいなもんでね、政府っていうのはあらゆる人の要望に少しずつ応えなきゃならない。だから全員から見て不満かもしれないしね、みんなに満足してもらおうと思うと制度にいろんな欠陥が出るって事はある。長い間たつとその批判がたまってきて、今回のような革命的な政権交代が起こる。
じゃあそれで上手く行くかっていうと、そんなに上手くいかない構造をしてるんですね。収入が増えなきゃ駄目なんですよ、やっぱり。もうそれはハッキリしてるんです。だけどそれは棚上げだからね。
で元の話に戻ったんだけど、…政治が正しく国民の皆さんに訴えて、「こうでなければ駄目なんだなぁ」って分かるようにしたいんだけどね。これはマスコミの責任でもあるけど、…マスコミはそういう責任を放棄してるんだ。
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K : |
今ジャーナリズムは、野党になった自民党を味方してくれますかねぇ?
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H : |
うーん、…少なくとも、民主党に反旗を翻していく可能性は、これからありますよね。「あなた方が言ったように上手くは行かないじゃないか」と。一部今出てますけど。まだ今はねぇ、おだててますよ。「いやー、良くやってます」、「仕分けの作業、大いにやって無駄をなくして下さい」と。それはいいんですね。無駄がなくなる部分も1兆くらいあって、…しかし「無駄だ」と言って止めたけど実は打撃があるものが、多分1兆円くらいあってね。それが非常に大きな影響を与えていく。
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K : |
うーん、たった数人でジャッジしているんですもんねぇ…。
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H : |
なんて言うかなぁ、…「悪しき大衆裁判」みたいなね。あれは、イヤなムードでしょ?
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K : |
そうですね。絵ヅラで見たら、政治家としてもの凄く「凛としている」様に見えたりもするんですよ。蓮舫さんとか、「うわ、この人すごいなぁ!」って見えますよ。しかし果たしてそれが、…「本質はどこにあるのか」っていうと、なかなか見えないですね。だからパフォーマンス寄りに見えてしまうんです。
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H : |
「劇場政治」だね。わたしは…決してそれは良い事じゃないと思うよ。それを来年からどんどん追求していく。
予算案が出来てくるでしょ?そうすると被害者がいっぱい出てくるからね。追求していって、どこまで国民の皆さんに訴えられるかですよね。それが上手く行かないと参議院選挙でも負けちゃう。そうすると「労働組合主導型」の民主党政権がズーッと続いちゃう可能性もあるんですね。
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K : |
…そうですねぇ。
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H : |
…なんとなく「自由な雰囲気」がないのがいやらしいと思うんだよね。
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K : |
それはもしかしたら冒頭でもお話しましたが、グレーゾーンを無くして「白と黒に仕分け」しようとしているからじゃないですかね。「グレーが自由でいいか」っていうとそうではないのかもしれないですけど、まだこう…例えばブレーキで言ったら少し遊びがあるくらいが。
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H : |
やっぱり今まで役所がやってきた事や積み上げてきた事を、まぁ全員とは言わないけど理解してもらって。
どうも今のムードは「あなた達は悪い事をしてきたんだから認めない、なに勝手な事を言ってるんだ」と、そういう事を言い切っていくからね。これは非常に…行政を進める者の士気を失わせるね。「あぁ、勝手にして下さい」って、各省の何万人という公務員が寝そべっているのが、我々には見えますね。「わたし達はそんな事でやっているんじゃないですよ」って。真面目に国にとってなにが必要かって事で散々議論してつけてる予算を、「悪意の結果作った予算である」って言ってるんだからね、「どうぞ勝手に査定して下さい、どうぞ政権政党なんですから」っていう、そういうムードが今どんどん出てきてるんだよね。それは良くないでしょ?だからもっと丁重に訊いてね、「これは効果ないんじゃないですか?止めましょうよ」っていうんならいいんですけど。もうバッサバッサ切っちゃう。…それは民主主義じゃないよね。
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K : |
うーん…。
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H : |
それは難しいところだよね。
やっぱりね、バンドでもなんでもチームなら同じだと思うんだけどさ、…人間ってけなして使ってもちっとも生産性上がらないじゃない?「お前はバカだ」、「お前は才能が無い」ってやってたらさ、誰もがやる気なくなっちゃってさ。…「じゃあサヨナラ」っていうんならまだいいんだけどさ、「サヨナラ」じゃなくてトグロを巻いちゃってるんだよ、役所の中で。自分が一生懸命になって予算の必要性を説明したってけなされるんならね、働くのがバカバカしいと。段々多くの人がそう思い始めてるとすると、これは国家的悲劇なんですよ。
…やっぱり褒めて使わないとね。我々自民党は褒めて使ってきたって自負してるんですよ。しかし、褒めて使って地方のために予算をつけてっていうのを全部「癒着」、悪しき意図を以って国家予算が出来上がってると割り切ってるわけだからね、民主党が。
…まぁ、革命みたいなもんだよね。だから反革命も必要なんですよ、どっかでね。立ち止まらなきゃいけない。フランス革命だってロシア革命だって、やった時には凄かったけど、結果的には悪い方向にもすごく行ってるんだよ。そしてものすごく時間がかかってる。だから日本でも、これ結構時間がかかるとね、…まぁ悲劇になりますよ。
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K : |
ちなみに「二大政党制」というのは、これは日本の風土に馴染むんでしょうか?
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H : |
…なかなか難しい質問ですね。…あんまり馴染まないだろうね。
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K : |
ボクもそう思うんですよ。
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H : |
いろんな人がいるのが望ましいかもしれないね。
アメリカなんかは「自分は共和党だ」、「自分は民主党だ」って党員になったり。新聞もテレビも日本みたいに隠してませんから。「我が新聞社は共和党を支持している」とか、まずそれを明らかにして、その上で「政党の言っている事のここがおかしい」とかそういう論調なんだよね。
その方が民主主義としては公正なんだけど、日本はそうじゃないんですよ。みんな仮面をかぶって「この政権を倒さなきゃいけない」って言うからね、まだ未熟なんですよ。
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K : |
今後日本の若者は、政治に対してどの様なきっかけで入っていけばいいんですかねぇ?それは本来はボク達の世代が考える事だと思うんですけれども…。
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H : |
一番純粋な形で考えると、政党の党員になる、そしてそこでボランティアでもいいから応援をして、討論をして集会をしてっていうのが「アメリカ型」で、最終的には成長するのではないかと思いますけど。日本にはやっぱりそこまでやろうって人はなかなかいないでしょ?
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K : |
…いないですね。
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H : |
そうするとテレビ観て「こっちが悪いらしい、こっちがいいらしい」ってなってしまうでしょ?だから彼(野津松江市議会議員)みたいになって「がんばろう」と思う人がたくさん出る方がいいんだけどね。まぁ支持者の中にはたくさんいるけど、やはりごく一部ですね。
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K : |
しかし今の日本の若者は、やりたい事がない者が多いと思うんですよ。みんな政治に関わればいいんですよね。簡単に関わるにはどうすればいいですか?
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H : |
やっぱり集会に出て、意見を言うとか…そういう事をすればいいと思うんだけどね。
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K : |
地元の携帯ショップに行くのと同じように、集会に行けばいいわけですね?
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H : |
そうそう。党員になったり、党の支部に行って「わたしはこういう事やりたい」と。しかしそういう人は、日本人の場合は極一部ですよ。
やっぱりわたしの選挙区だって、若い人は何人かはいるけれども、どちらかって言うと…もう無党派で、政治に関わりたくないような人が多いんだけどね。それを是非、コラムでも書いてもらって。
「政治に参加しようじゃないか」と。「それが政治じゃないか」と。
アメリカなんかはその点が非常に上手く行ってるね。
政治の世界はやっぱり、自分も興味があって、「政治こそ国民を良くする基じゃないか」と思う人があればね、そういう人がもっと増えてくれないと困るんだけど…。
小学校の頃からそういう教育をしないからいけないんだ。…政治こそ大事なんだから政治家になる事、或いは政治を支える事、主張する事がどんなに大事かって分かってる人が少ない。
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K : |
すごく遠く感じますよね。お茶の間で、テレビを通して見る政治の世界って。しかし「そうじゃない」と。文句を言うんだったら自分でやってみたらいいんですよね。
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H : |
そうなんですよ。そういう事を講義したり、若い人に伝えていく「指導者」が少ないんですね。
アメリカには随分いますよ。大学でも高校でも「政治が大事だ」と。「政治に関わるべきである」という前提で授業もやり、講義もやってるんですから。それは歴史上アメリカは、ヨーロッパを脱出して国家を作っていくにあたって、「ひとりひとりの国民が政治に関わらなきゃ国家が出来ない」という認識があったから。
日本は神代の昔から我が国というのがあって、明治維新が起こってね。自由民権運動だとか、その頃はまだ政治運動があったけど、戦後いつの頃からか「政治は汚い仕事だ」って事になっちゃった。「政治は嘘ばかりついてきた」とか、「国民をたくさん殺した」とか…そういう反省材料ばかり言って、その影響が今出てるんですね。
だから「今の政権がどんなに汚くて悪いか」って言う事で、初めて政権交代するような土壌になっちゃってる。もっと客観的に評価をして「いいか悪いか」を比較出来る様な社会であれば円満に、…過激にならずに政権交代があって、オーバーコミットメントをする必要がない。今民主党はオーバーコミットメントで、できない事をたくさん言ってしまったから四苦八苦してるんでしょ。それは不幸ですね。
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K : |
現時点で日本の政治家に必要な要素って、「ディベート」の上手さでしかないんじゃないかと思うんですよね。「口喧嘩がどっちが強いか」みたいな。本来政治家にとって必要な資質って何でしょうか?どうお考えですか?
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H : |
やっぱりディベート能力っていうのは大事で、アメリカのディベートに関する教育は非常に立派ですね。日本は…やっぱりそういう議論をさせても「だってイヤなんだもん」っていう感じじゃないですか。何でも議論して、正しい根拠を示して、皆さんに訴えるという事をその人の点数に加える、という事をしていないからね。
アメリカは小さい頃からやるんだよね?「Show & Tell」って言うのかな?月に一回くらい演壇に立って「わたしはこう思う」という事を、とうとうと20分くらい喋る。そして自己主張が上手く出来たかどうか、それを先生が評価する。つまり自己主張しないと生きていけない社会だから、アメリカは。黙ってたんじゃどんどん下層に落ち込んでいってしまう社会だから、そういう教育を小学校のときから始めてるんだよね。「喋って自己主張する事は良い事だ」と。
日本はどちらかと言うと「黙っているのが良い事だ」っていいながら教育してて、最後になるとやっぱり自己主張しないと駄目なわけだから、まぁいい加減な議論になっちゃっててね。
…やっぱりオバマさんだってそうだけど、上手いよね。この間の演説でも、非常に表現力もあるし。ただあれは訓練なんですよ。日本人はその訓練が全然足りない。政治家もそうなんです。だから鳩山さんだって…あまり悪口言っちゃいけないけど、鳩山さんは「友愛」だなんだってフワフワした、なんとなく「いい人」って事が分かるような言い方はするけども、ハッキリした主張は実はあまりないんだよね。だけどそれが受け入れられる土壌があるんだと思います。
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K : |
ボクはみんな、特に若い子は「友愛」に対しては相当クエスチョンマークがあると思いますよ。なんだか抽象的で。
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H : |
なんか綺麗事を並べたような感じはみんなしてるんだけど、だけどごく一部の人には「いい人じゃないの」と。フワフワと仲良くする事がいい事だと。「それは確かにそうだ」なんていう人がね。
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K : |
でも「仲良くする」って掲げてるわりには、言う事は言いますよね。言い方が攻撃的だし。民主党もハッキリ言って、生え抜きの議員が執行部を取るまで、あまり「独立した党」という感じには認められないですね。
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H : |
ハハハ。
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Interview 2009・11・16 自民党本部に於いて |