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きょうの社説 2009年12月28日
◎金沢駅舎整備案 「ドーム」との一体感は妥当
北陸新幹線金沢駅舎整備で金沢市の懇話会が示したデザイン3案は、いずれも駅東広場
「もてなしドーム」との調和を図り、ガラスを生かした開放的な空間となった。すでに金沢の顔として定着した広場との一体感を目指すのは妥当な方向性である。新幹線駅舎の姿は鉄道の1施設というより、金沢の都市景観を左右する大きな意味を持 つ。金沢都心部の重要文化的景観(重文景観)の選定も決まり、未来志向の斬新な建築デザインは重文景観を引き立たせ、金沢全体の街並みの歴史的な重層性や多様性をより強く印象づけることだろう。 日本の新幹線駅舎は機能性が重視された結果、どこも金太郎飴のような印象が否めず、 駅周辺のホテルや商業ビルなどに埋没して存在感が薄い施設が多い。巨大なガラスドームとの連続性を持たせれば金沢駅の個性が際立ち、都市のランドマークとしての存在感が一層高まることになる。 鉄道建設・運輸施設整備支援機構はデザイン案の提出を受け、来年度中に基本デザイン を確定する。新幹線駅舎は在来線ホームともてなしドームの間に位置し、構造や予算面などで一定の制約もあろうが、機構側は金沢の景観形成に大きな責任を担っていることを認識し、地元の要望を最大限に反映させてほしい。 金沢駅舎デザインの基本方針は「まちが見える心と体に気持ちがいい駅」となった。車 両やホームから街並みが見える配慮をし、3案は外観の造形やガラスによる採光の仕方などが異なっている。高架駅であれば眺望を生かす工夫は極めて大事である。造形も金沢という都市の表情が分かりやすいようアート感覚を前面に打ち出すのが望ましいだろう。 JR駅は金沢で最も多くの人が利用する公共空間であり、出会いや別れなど、さまざま な感情が生まれる都市の記憶装置でもある。駅という場所の性格にこだわり、市民、県民が誇りや愛着を持てるデザイン、観光客にとっては旅の期待感が高まるような印象付けが求められる。駅舎内部の意匠や仕掛けも含め、鉄道の専門家による発想を超え、地元からできる限り具体案を提示していきたい。
◎重要港湾の整備 選別は成長戦略に沿って
国土交通省は、金沢港など全国に103ある重要港湾の整備について、2011年度以
降は半数程度の港湾で岸壁や港湾道路などの新規整備事業を凍結する方向という。前原誠司国交相が進める直轄公共事業の「選択と集中」の一環で、貨物取扱量を物差しに対象港湾を選別する考えというが、港湾整備は国交省が現在策定作業を進める成長戦略の重要な柱の一つであり、港湾の選別に当たっては、貨物量という基準だけでなく、成長戦略との整合性も重視しなければなるまい。中国を先頭にしたアジアの経済成長と、国際ハブ港湾の競争で韓国の釜山や中国の上海 などに遅れをとっている現状に対応して、国内の港湾を戦略的に整備し、機能を強化する必要性はかねて強調されており、前政権下でもさまざまな提言がなされている。 北陸地域の港湾については、東アジアと三大都市圏を結ぶ、いわゆるゲートウェイとし ての地理的優位性と発展可能性の大きさが指摘されるところである。 国交省の方針では、重要港湾整備事業の「選択と集中」で、今後は▽継続中の施設整備 事業を終えた後は新規整備をやめる▽必要に応じて新規整備を行う―の二つに分類する予定という。 同省は来年夏をめどにした重要港湾整備の分類作業に並行して、同省としての成長戦略 をまとめる考えであり、先ごろ省内に設置した成長戦略会議で▽海洋国家復権をめざして港湾の競争力強化▽観光立国の推進▽航空業界の活性化など、大きく4分野での協議を開始したばかりである。 日本の今後の成長戦略の鍵の一つが、アジアの経済活力を取り込むことであれば、北陸 を中心に日本海側の港湾機能の強化が大変重要なことを認識してほしい。 北陸の港湾の国際コンテナ取扱量は、ここ10年で3倍の伸びを示している。08年は 特定重要港湾の伏木富山港が80万3千トンで全国17位、重要港湾の金沢港は61万トンで19位、敦賀港は11万8千トンで43位という状況である。港湾を管理する各自治体は取扱貨物量の増加に一層努力する必要がある。
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