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県、クローン牛研究中断 技術の途絶懸念

[2009年12月28日 09:55]

糸福の筋肉細胞から誕生させたクローン牛「夢福」

 大分県は優良な肉用牛を生む能力が高い牛をコピーし、保存や生産性向上に結び付けるため、12年間続けてきた「体細胞クローン牛」の研究を本年度から中断している。農林水産省が「消費者の理解を十分に得られない」としてクローン牛の肉の流通を認めておらず、中断の理由を県は「研究の出口が見えず、ほかの課題を優先させる判断をした」と説明している。

 クローンは「遺伝的に同一」で同じ個体を複製したもの。英国で1996年に世界初のクローン羊が誕生。これを契機に全国で研究が加速した。県畜産試験場は97年に体細胞クローン牛の研究に着手。98年にスーパー種雄牛として活躍した「糸福」の筋肉細胞から「夢福」を誕生させた。99年にも「第二夢福」を生んだ。
 今年2月までにクローン牛の子牛約20頭を生産し、成育の具合や解体後の肉質などを調べてきた。現在、生存するのは夢福、第二夢福のみ。
 内閣府の食品安全委員会は今年6月、体細胞クローン牛について「通常の牛と同等に安全」とする最終評価をまとめた。しかし、農水省は(1)消費者の食の安全性に対する意識の高まり(2)牛が早死にする傾向にあり、生産率が低く商業生産に課題もある―などを理由に流通を解禁していない。
 同試験場によると、全国で最大48の研究機関がクローン研究に取り組んできたが、現在はほぼ半分になったという。県は来年度から農林水産研究センターを再編する方針で、研究課題の絞り込みも中断に至った一因といえる。
 同試験場は「現状で研究を続ける意味はない」とした上で、「クローン牛の生産には職人芸のような高度な技術が必要。中断によって途絶えてしまわないかを懸念している」と話した。

 <ポイント>
 【体細胞クローン牛】 牛の皮膚や筋肉などの体細胞を、核を取り除いた未受精卵に融合させ、雌の子宮に入れて妊娠、出産させた牛。98年、近畿大などが世界に先駆け、石川県で1頭目を誕生させた。農水省の集計(3月末時点)では、これまでに自治体などの研究機関で計571頭がつくられた。

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